法人カードとは、法人や個人事業主に発行される事業目的で利用するクレジットカードです。法人カードは種類や特徴を理解して自社に合うカードを選ぶことが大切です。この記事では法人カードの選び方を詳しく解説します。
目次
法人カードとは法人や個人事業主のためのクレジットカードのこと
法人カードとは、事業での支払いを使途として事業者が利用できるクレジットカードです。法人カードは法人だけでなく個人事業主でも発行できます。法人カードはビジネスで利用しやすいように複数枚のカードの発行に対応していたり、利用限度額が高かったり、法人口座を引き落とし口座にできたりするサービスが整えられているのが特徴です。
法人カードの種類
法人カードにはビジネスカードとコーポレートカードの2種類に分けられます。どちらもクレジットカードとしての基本機能は同じですが、サービス面に違いがあります。コーポレートカードはビジネスカードに比べると、規模が大きい企業の現場で使用しやすいサービスが整っているのが特徴です。ここでは一般的なビジネスカードとコーポレートカードの区分に基づいて、それぞれの特徴と違いをわかりやすく紹介します。
中小企業と個人事業主向けのビジネスカード
ビジネスカードは中小企業や個人事業主の利用を主に想定している法人カードです。20人以下の利用者を目安としていて、カードの発行枚数の上限が低くなっています。ビジネスカードには法人だけでなく事業代表者個人の信用情報による与信調査を行う仕組みのカードがあります。中小企業や個人事業主にとって発行審査を受けやすい法人カードです。
大企業向けのコーポレートカード
コーポレートカードは多数のカードを発行しやすく、利用限度額も高く設定されている法人カードです。コーポレートカードでは多数の従業員がいる大企業を主な利用者として想定されています。カード利用の自由度が高いので使いやすい反面、与信審査が厳しい傾向があります。事業が安定していて収益が大きい企業に適している法人カードです。
法人カードの決済による違いの特徴
法人カードには、広義ではクレジットカードの他にプリペイドカードとデビットカードがあります。法人カードの決済方法の違いを考慮して必要なカードを用意して利用することが大切です。
クレジットカードは翌月一括払いや分割払いなどができる後払いのカードです。カード会社からの信用によって成立する取引なので、徹底した与信審査があります。審査が通ると利用限度額が設定されて、枠内で支払いに利用できます。
プリペイドカードは事前にカードにチャージをして、カードに入金された金額の範囲内で支払いできるカードです。審査不要で発行できるので与信審査に不安がある場合でも利用できます。プリペイドカードは事前に現金をチャージする必要があるため、クレジットカードと違って信用に基づく後払いの取引ではないからです。
デビットカードは銀行口座と紐づけられていて、決済と同時に口座残高から支払い金額が引き落とされる仕組みのカードです。法人用のデビットカードでは法人口座に紐づけて発行してもらいます。デビットカードの発行は審査不要ですが、法人口座の開設のときに審査があります。
法人カードと個人カードの違いは口座と利用枠、サービスが異なる
法人カードは個人カードと同様に基本的なクレジットカードの機能を持っています。しかし、法人カードはビジネスで利用しやすいサービスを整えている点が個人カードとは異なります。利用できる口座や利用限度額についても違いがあるので、事業目的では法人カードが用いられるのが一般的です。ここでは法人カードと個人カードで異なる点を詳しくご紹介します。
法人口座から引き落としが可能
個人カードの場合には個人の銀行口座しか引き落とし口座にできませんが、法人カードは法人口座を引き落とし口座として指定できます。個人カードでは法人口座からの引き落としができないので、法人化して口座管理をするときに資金管理が難しくなります。
事業経営ではプライベートのお金と事業資金を切り分けて管理することで経理や財務の業務負担を減らせます。会社設立のときには法人口座を用意して、事業資金の一元管理をすると効率的な資金管理ができます。個人事業主では法人口座の開設が難しいことがありますが、事業用の銀行口座を個人名義で開設してプライベートと切り分けることは可能です。法人カードならどちらの場合でも特定の銀行口座を引き落とし口座に指定できます。
大きいカード利用枠
法人カードでは利用限度枠を大きくできる可能性があります。法人カードでも審査結果によって枠が決まる点は個人カードと同じです。コーポレートカードでは大企業で大きな資金を動かす目的で使用する可能性があるため、安定して収益を得ている企業なら大きなカード利用枠を手に入れられることがあります。一般カードでは10万円〜100万円のカードが多いですが、ゴールドカード以上になると300万円〜500万円くらいを上限にしているカードもあります。
従業員向けの追加カードの発行が可能
法人カードでは追加カードを発行して従業員が支払いに使用しやすい環境を作れます。従業員の法人カードの利用ルールや管理方法を定めて運用すると良いでしょう。導入・運用が軌道に乗ると、従業員に法人カードで支払いをさせることで個人立替精算をなくせます。経理業務の負担を軽減することができる使い方です。
ビジネス向けの付帯サービスがある
法人カードにはビジネスに適したサービスが付帯しています。法人カードを申し込むときには付帯サービスを比較して選ぶのも重要なポイントです。各カード会社が他社と競って付帯サービスを導入しているので、だんだんと内容が充実してきています。ここでは法人カードに付帯している代表的なビジネス向けのサービスを紹介します。
サポートサービス
ビジネス向けのサポートサービスは内容が多岐にわたっています。新幹線・航空機・ホテル・レンタカーなどの予約手配や割引、パソコンやオフィス消耗品の購入・配送などが代表例です。VISAやMastercardなどのカードブランドが提供しているサポートサービスをクレジットカード会社経由で利用できる場合もあります。
福利厚生の代行
法人カードには福利厚生代行が含まれている場合があります。従業員の健康診断の割引サービス、スポーツクラブやレジャー施設の割引優待などが代表例です。懇親会や慰労会などの福利厚生に活用できるサービスです。
損害保険付帯や海外でのキャッシング利用
法人カードは海外旅行保険や国内旅行保険、ショッピング保険などが付帯されている場合があります。キャッシングを海外でも利用できるカードもあるため、海外出張のときに便利です。
マイレージやポイントへの移行
法人カードを利用すると、個人カードと同様にポイントが貯まります。貯まったポイントは航空会社のマイレージや他のポイントに移行できるのが一般的です。カードの請求に対する支払いにポイントを使用できる場合もあります。
複数のクレジットカードのポイントを集約
法人カードは複数枚の発行を受けて個々のカードで支払いをしても、付与されるポイントは1つのアカウントに集約できます。
法人カードのメリット
法人カードの利用は事業のサポートになります。ここでは法人カードによる支払いを導入するメリットを紹介します。
経理業務の効率化
資金管理方法を整理することで経理業務の効率を上げられることが法人カードを導入するメリットです。財務会計システムや会計ソフトなどを利用すると、法人カードの支払い内容を自動で取り込むことが可能です。請求書や領収書などを見て、内容や金額を手入力する手間をなくし、確認作業だけで済ませられるようになります。
また、法人カードの導入によって個人の立替精算に関する経理業務の負担を減らせます。オフィスで使用するパソコンやデスク、仕事中に使用しているペンや付箋などの消耗品は法人カードで購入可能です。出張の旅費、セミナーへの参加費なども法人カードを使えることが多くなっています。個人が立替精算をしていることが多いこのような支払いを法人カードに集約して管理できるようになります。
さらに、口座振込による銀行決済も法人カードに切り替えられるケースがあります。振込の期日は取引先によって異なり、スケジュールを誤ってトラブルを起こさないように日々期日を確認しなければなりません。法人カード決済にすれば支払日が一律で口座振替による引き落としになるため、支払処理の負担が小さくなります。
公私の区別が可能
法人カードを利用すると口座を使い分けて公私混同をなくせます。個人事業主の場合にはビジネスで個人カードを使用するとプライベートとの切り分けが難しくなります。経費精算のときには支払明細書の内容を吟味して処理しなければなりません。同じ支払いの中にビジネス用とプライベート用のものが含まれていて処理がさらに煩雑になる場合もあります。
法人カードがあれば仕事のクレジットカード払いを一元化して、プライベートと明確に切り分けることが可能です。仕事の支払いの内容を正確に記録できるのでガバナンス強化にもつながります。
キャッシュフローへのゆとり
キャッシュフローにゆとりを生み出し、ビジネスを加速させる糸口になるのは法人カードのメリットです。口座振込や現金払いとは異なり、クレジットカード払いでは翌月または翌々月に口座振替になります。支払いが発生したときにすぐにキャッシュが出ていかないため、給与などの現金払いしかできない支払いにキャッシュを優先して利用できます。
ポイントがたまる
法人カードで支払いをすればポイント還元を受けられます。ポイントは支払いに利用できるので経費削減になるのがメリットです。ポイントの利用範囲はカードの種類によって異なりますが、消耗品の購入や税金の支払いなどにも利用できるシステムのポイントを導入している法人カードもあります。利用先を考慮して、使いやすいポイントサービスと提携している法人カードを選ぶと効率的な費用削減が可能です。
クレジットカードのポイントは他のポイントやマイルに移行できる場合もあります。マイルにしてフライト料金の支払いに使用するといった使い方も選べます。
法人カードの注意点
法人カードの導入にはリスクがあります。ここでは法人カードの運用を始める際に押さえておいた方が良い注意点を説明します。
年会費がある
年会費がかかる法人カードが多いので注意しましょう。年会費無料の法人カードもありますが、利用可能枠が大きくてサービスが充実しているカードでは年会費がかかるケースがほとんどです。法人カードの年会費は経費に計上できますが、導入によって経費がかさみ、メリットを十分に享受できていないのでは惜しいでしょう。毎年かかる固定費になるので、支払いに法人カードを積極的に使ってメリットを大きくすることが重要です。
法人カードの年会費の金額はカード会社やカードの種類によって違います。年会費が高くても特典を十分に生かせれば費用対効果が上がるので、トータルで考えてプラスになる法人カードを導入することが大切です。
不正利用のリスクがある
法人カードは不正利用によるトラブルが発生するリスクがあるので運用方法を十分に検討する必要があります。従業員に持たせた法人カードをプライベートの買い物で使用されてしまう、紛失や盗難によって悪用されるといった不正使用が起こるリスクがあるので社内ルールを整備して対策を立てましょう。
紛失や盗難による不正利用についてはカード会社の補償を受けられます。しかし、社内で意図的に起こされた不正利用は補償の対象になりません。法人カードによる支払いをコントロールするための仕組みを整えなければならないのは事業主にとって負担になります。特に複数枚の法人カードを従業員に貸与する場合にはリテラシー教育も含めた対応をしてリスク対策をする必要があります。
法人カードの選び方
法人カードは運用方法を考えて使いやすいサービスを選ぶことが重要です。導入によって得られる特典も考慮して、メリットの大きいカードを選定しましょう。ここでは法人カードの選び方のポイントをわかりやすく解説します。
ポイント還元率
ポイント還元率の高さは法人カード払いによるメリットに大きな影響があります。ポイント還元率が高い法人カードを選んだ方が経費を減らせるのでおすすめです。法人カードのポイント還元率の相場は0.5%~1%です。カードの種類によっては特定のECサイトや店舗ではポイント還元率が上がることがあるので、利用頻度が高い仕入先がある場合にはカード選びのときに考慮しましょう。
ポイント還元率が低めでも他の特典が豊富なこともあるため、総合的な判断は必要になります。しかし、ポイント還元率が高ければメリットが大きいのは事実なのでまず検討するのをおすすめします。
年会費
年会費は法人カードの固定費になります。法人カードの年会費は無料の法人カードもありますが、高い場合には10万円程度です。ポイント還元率や付帯サービスなどを加味し、年会費を支払う価値があるカードかどうかを判断することが重要です。年会費が低い法人カードではポイント還元率が低かったり、海外旅行保険の補償内容が充実していなかったりすることもあります。
法人カードの年会費は完全に固定されている場合もありますが、条件をクリアすると無料あるいは割引になる場合もあります。典型的なのは年間利用額が一定以上になると年会費の軽減があるシステムです。
永年無料の法人カードを選べば取引額にかかわらずに固定費がかからないというメリットがあります。また、毎年一定額以上の支払いがあるなら、条件付きで無料になる法人カードを選んでも年会費の負担がありません。法人カードを導入した後でどのくらいの支払額になるかを見積もると、費用負担がない法人カードの候補を広げられます。
カード利用枠
カード利用枠は法人カードの利便性と経理業務の効率化に深く関わる重要なポイントです。しかし、法人カードの利用限度額は審査を受けてみなければわかりません。カードごとに上限額は定められているのが一般的ですが、法人カードの発行時にいくらの利用枠になるかは最後までわかりません。
しかし、法人カードを本格的に利用するならカード利用枠が不足しないように準備することが必要です。どのくらいの金額の支払いができれば良いかを財務諸表から確認して、少なくとも利用限度額がその金額を超える枠を設定している法人カードを選びましょう。
追加カードの発行可能数
追加カードの枚数は法人カードの運用方法によっては重要な選定ポイントになります。コーポレートカードは発行可能数が多いので、大企業で従業員に法人カードを個々に持たせたいときに適しています。個人事業主で経営者自身しか使用しないというときには1枚しか発行できないビジネスカードでも問題ありません。
追加カードの発行可能数については今後の企業成長も踏まえて考えることが重要です。今は15枚で十分でも、3年後には従業員を増やす予定で30枚は必要になるということはよくあります。法人カードの枚数を中長期的に増やしていくなら、発行枚数の上限が大きい法人カードを選びましょう。
まとめ
法人カードはプライベートとは切り分けてビジネスの目的で使用するのに適しているクレジットカードです。個人カードとは違って法人口座を引き落とし口座に指定することができ、利用可能枠も大きく、追加カードも発行できるといったさまざまな魅力があります。法人カード払いはキャッシュフローの改善にも有効です。年会費による固定費がかかる場合もあることを考慮して、費用対効果の高い法人カードを選んで導入しましょう。
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