経理業務について 総勘定元帳とは?メリットや記載項目、書き方、保存期間などを徹底解説 最終更新日: 2024/01/11   公開日: 2022/11/02

総勘定元帳は、勘定科目別に取引をまとめたものであり、企業の決算書や試算表を作成する上で必要な帳簿です。本記事では、総勘定元帳の書き方や転記の方法・保存期間まで、わかりやすく解説します。

総勘定元帳とは何か?

総勘定元帳(そうかんじょうもとちょう)とは、事業において発生したすべての取引を勘定科目ごとに記録するための帳簿です。何かしらのお金の動きがあった際には「仕訳帳(しわけちょう)」と呼ばれる帳簿に取引の内容を記入します。その後、該当する勘定科目の総勘定元帳に、取引の内容を転記するという流れです。

法人を経営する上では「主要簿」と「補助簿」と呼ばれる2種類の帳簿を作成しますが、総勘定元帳は必ず作成しなくてはいけない「主要簿」に該当します。

総勘定元帳は決算書を作成する際に使うほか、税務調査が入った際に他の帳簿とあわせて提示を求められることがあります。

参考コラム:帳簿とは?種類や付け方・書き方を徹底解説!

総勘定元帳の保存期間は?

総勘定元帳は、法人税法によって7年間の保管が義務付けられています。 総勘定元帳は「帳簿」に分類され、他にも7年間の保存が必要な帳簿には、以下をはじめとするものがあります。

・仕訳帳
・現金出納帳
・売掛金元帳
・固定資産台帳
・仕入帳

なお、欠損金額が発生した事業年度に関しては、帳簿を10年間保存することが求められます。

総勘定元帳を保存しないと、過去の経営状況を振り返ることが難しくなります。税務調査の際に帳簿を提出できないと罰金が課される可能性もあるため、大切に保存するようにしましょう。

参照:No.5930 帳簿書類等の保存期間 | 国税庁
   帳簿の提出がない場合等の加算税の加重措置に関する Q&A

総勘定元帳と仕訳帳、現金出納帳の違い

総勘定元帳の他にも、仕訳帳や現金出納帳など、経営のために帳簿を作成することになります。それぞれの意味や違いについて確認しましょう。

仕訳帳との違い

仕訳帳は、事業で発生した取引を日付順に記録する帳簿です。勘定科目や取引先などによって分類されることがないため、発生したすべての取引が仕訳帳に記載されていることになります。

それに対して、総勘定元帳は勘定科目ごとに日付順に記録する帳簿です。売上高や普通預金など、特定の勘定科目の累計額や残高を確認する際などに用いられます。

仕訳帳も総勘定元帳と同じく、法人経営のために必要とされる主要簿に該当します。

参考コラム:仕訳帳とは?仕訳例や記入例、書き方、流れをわかりやすく解説

現金出納帳との違い

現金出納帳とは、銀行口座から現金を引き出したり、現金で消耗品を買ったりなど、現金に関する取引が発生した際に記載する帳簿です。必ずしも作成する必要のない補助簿に該当しますが、現金はほとんどの事業で扱うものであることから、残高を把握するために多くの企業が作成しています。

「現金」の勘定科目を使用する際は、仕訳帳・総勘定元帳・現金出納帳にそれぞれ記載することになります。なお、会計ソフトでは1つの取引を入力すると関連する帳簿も自動的に同期されるため、それぞれの帳簿に何度も記載する必要はありません。

参考コラム:現金出納帳とは、企業における現金の入出金を管理するための帳簿です。本記事では、現金出納帳の書き方や締め方などをわかりやすく紹介します。

総勘定元帳の形式について

総勘定元帳には「標準式」と「残高式」の2種類があります。それぞれの概要や書き方について解説します。

①標準式

<標準式の総勘定元帳の一例>

日付借方科目借方金額日付貸方科目貸方金額

標準式は、左側の「借方」と右側の「貸方」に分けて記載する方法です。各項目に記載する内容は、以下の通りです。

・日付:お金の動きがあった日付
・借方科目: 資産の増加や売上の減少などに該当する勘定科目
・借方金額:取引で発生した借方の金額
・貸方科目:資産の減少や売上の増加などに該当する勘定科目
・貸方金額:取引で発生した貸方の金額

標準式では、賃借(貸方と借方)が明確に分かれているため、どのような取引であったかどうかをすぐに判断できるメリットがあります。

②残高式

<残高式の総勘定元帳の一例>

日付 相手勘定科目摘要 借方金額 貸方金額 残高  

残高式とは、該当する勘定科目の残高を記載する方法です。残高式での総勘定元帳には、以下をはじめとする項目を記載します。

・日付:お金の動きがあった日付
・相手勘定科目:ある勘定科目から見て、相手方となる勘定科目
・摘要:取引先や使い道、取引の発生した理由など
・借方金額:取引で発生した借方の金額
・貸方金額:取引で発生した貸方の金額
・残高:残高の金額

残高式では常に残高を記載するため、現金や普通預金・売掛金などの現在の金額をすぐに確認できるメリットがあります。

総勘定元帳に必要な記入項目と書き方

総勘定元帳の各項目について、記載すべき内容や具体的な書き方を紹介します。また、今回は実務で使われることの多い残高式を前提としています。

日付

取引のあった日付を記載します。例えば、消耗品を購入した日付や、売上が確定した日付などです。

企業の会計期間はほとんどの場合1年間であるため、 取引の発生した年までは書かないことが一般的です。2022年4月から2023年3月までの会計期間を例とする場合、4月1日は一回しかないため「4/1」とだけ記入すれば構いません。

勘定科目

勘定科目は、相手方の勘定科目を記載します。例えば「普通預金口座から現金を下ろした」という仕訳を行う場合、普通預金から見た相手方の勘定科目は「現金」、現金から見た相手方の勘定科目は「普通預金」となります。

勘定科目が複数ある場合は「諸口(しょくち)」という処理方法を使います。ATMで口座から現金をおろす際に手数料がかかった場合を例にすると、普通預金の総勘定元帳には現金と支払手数料の2つの勘定科目を使用する必要があります。総勘定元帳には2つの勘定科目を記載せず、諸口と記載します。

摘要

総勘定元帳の摘要には、以下をはじめとする情報を記載することが一般的です。

・取引先の名前
・購入した店舗の名前
・購入した品物の名前
・振込先、入金元の名義

摘要は後で見直した時にどのような取引であったかわかるように記載するものであり、明確なルールはありません。

しかし、税務調査が来た際は総勘定元帳をはじめとする帳簿を調査官に見せることがあります。どのような取引か説明できなかったり、あまりにも不明な取引が多かったりすると、 税務官からの印象が悪くなってしまう可能性があります。疑われることのないよう、毎回記入しておくようにしましょう。

仕丁

仕丁(しちょう)には、該当する取引が仕訳帳のどのページに書かれているかを記載します。あまり馴染みのない言葉ですが、仕訳帳の「仕」と、ページ数を数える単位である「丁」からできています。

簿記のルール上、仕訳帳に記載した取引を総勘定元帳に転記する必要があるため、どのページが対応しているかどうかを記録しておかなくてはなりません。総勘定元帳を見ていて、より詳しい内容が知りたい場合などには、仕訳帳を確認することがあります。仕訳帳の対応するページをすぐに探せるよう、仕丁の項目にページ数を記入します。

なお、会計ソフトでは表示をクリックすることで自動的に詳細が見られるといった機能があるため、仕丁の入力項目がないことが一般的です。

借方金額・貸方金額

総勘定元帳では、借方と貸方のどちらかに金額を記載します。どちらに記載するかは取引によって異なり、簿記のルールに基づいて借方・貸方を判断する必要があります。

借方に記載するのは、現金や預金などの資産が増えた場合や、返品などの理由により売上が減る場合です。それに対し、貸方に記載するのは、資産が減った場合や売上が上がった場合などが挙げられます。

会計ソフトでは入力した内容に応じて自動的に判断してくれるものも多いため、どちらに記載すべきかわからなくても大きな問題はありません。

残高

残高の項目には、取引の結果の金額を記入します。例えば、普通預金の勘定科目であれば口座としての残高を、売上の勘定科目であれば現在の累計額を記載します。

エクセルで総勘定元帳を作成する場合には、関数を使用することで自動的に残高が計算できます。また、会計ソフトは自動的に残高を計算してくれるため、金額におかしな点がないかを確認するだけで構いません。

仕訳帳から総勘定元帳に転記をする方法

仕訳帳からの転記は、以下の方法で行います。

・仕訳帳に総勘定元帳のページ数を記入する
・総勘定元帳の該当するページに、取引の情報を記入する
・総勘定元帳に仕訳帳のページ数を記入する

仕訳帳の仕丁欄には総勘定元帳のページ数を、総勘定元帳の仕丁欄には仕訳帳のページ数を期待することがポイントです。

また、借方・貸方が出てくる複式簿記による経理は、1回の取引につき2つ以上の勘定科目が出てくるため、それに応じた転記をする必要があります。例えば、商品が現金で売れたとしましょう。その場合は、総勘定元帳の現金と売上のページにそれぞれ転記をする必要があります。

相手勘定科目が複数ある場合の総勘定元帳の書き方

相手勘定科目が複数ある場合は、前述した「諸口」を使って転記をします。 例えば、4月1日にATMを使って銀行口座から10,000円をおろしたとしましょう。 その際、手数料として110円が口座から引き落とされたと仮定します。その場合、以下のように記載します。

<仕訳帳>

日付借方貸方摘要
4/1現金 10,000普通預金 10,110ATM
支払手数料 110

<普通預金の総勘定元帳>

日付相手勘定科目借方貸方摘要残高
4/1諸口10,110ATM○○○

普通預金の勘定科目から見れば、現金と支払手数料の2つの相手勘定科目があるため、相手勘定科目の欄には諸口と記入します。今回の例では、普通預金の総勘定元帳だけ見ても何に10,110円を使ったのかわかりません。その場合は、仕訳帳の該当する仕訳を見ることで具体的な使い道を知ることができます。

月に一回試算表で帳簿を締め切る

総勘定元帳は月末に締め切り、正しく記入できているかどうかを確認します。確認は「試算表」と呼ばれる書類を作成することによって行います。試算表は総勘定元帳の各勘定科目を中継してまとめたものであり、以下の3種類があります。

・合計試算表:勘定科目別に借方・貸方それぞれの合計額を求める表
・残高試算表:勘定科目別に借方・貸方それぞれの残高を求める表
・合計残高試算表:合計試算表と残高試算表をあわせた表

これらの表を使い、勘定科目ごとの合計額や残高を把握します。借方と貸方の金額は必ず一致するため、一致しなければどこかでミスをしていることがわかります。

総勘定元帳のメリット

総勘定元帳を作成するメリットを「残高や合計額が確認できる」と「ミスを探しやすくなる」の2つの観点から紹介します。

残高や合計額が確認できる

総勘定元帳は勘定科目ごとに分かれているため、各勘定科目の残高や合計額が一目で確認できます。現金や売掛金、借入金などの金額を確認することで、経営状況を明確な数値として捉えられます。

ミスを探しやすくなる

総勘定元帳から試算表を作成することにより、経理業務にミスがないかどうかをチェックできます。試算表でミスに気づいた場合は、該当する勘定科目の部分を総勘定元帳で見直すことで、効率的にミスの原因を探せるでしょう。

残高不一致の場合に原因を特定しやすい

決算の際に残高が一致しないと、正しい決算書を作成することができません。残高が不一致の場合はそれまでの取引を確認し、どこに間違いがあるのか探すことになります。総勘定元帳は勘定科目ごとに分類されている帳簿であるため、勘定科目を1つずつチェックすることで誤りを見つけやすい傾向にあります。

金額の推移を把握しやすい

総勘定元帳を正しく作成していれば、何にいくら使ったのか、推移を把握しやすくなります。例えば、売上高の総勘定元帳をチェックすれば、毎月の売上の変動について把握できるでしょう。また、消耗品費や水道光熱費などを勘定科目ごとに見直すことで、経費を使いすぎていないか確認することも可能です。

総勘定元帳を作成するための様式

総勘定元帳の作成時に使用する様式を、手書き・表計算ソフト・会計ソフトの3つから紹介します。

手書きで作成する

市販されているノートなどを使って作成する方法です。時間はかかりますが、自ら手を動かしながら作成することで、経営状況や簿記に関する理解が深まるでしょう。手書きで作成する際は、計算ミスや転記ミスが起こりやすい点に注意する必要があります。

表計算ソフトを活用する

エクセルなどの表計算ソフトを使って総勘定元帳を作成することもできます。特に、エクセルは多くの人が活用するソフトであるため、従業員や税理士とも共有しやすい点にメリットがあります。 また、インターネット上のテンプレートを使用すれば、すぐに作成を始められます。

表計算ソフトを使用する場合は、正しい表が作成できているかどうか自分で判断することが求められるため、ある程度の知識がある方が望ましいでしょう。

会計ソフトを活用する

会計ソフトは入力した情報を必要な箇所に自動で反映してくれるため、仕訳帳から総勘定元帳への転記も必要ありません。ミスが起こりにくく、効率的に業務を行うことができるでしょう。画面の指示に従って入力することで帳簿を作成できるため、簿記の知識がない方も安心です。なお、使用する会計ソフトによっては初期費用や月額費用がかかることがあります。

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総勘定元帳は事業の経営において重要な帳簿ですが、日頃から請求や支払いを正しく管理しているからこそ作成できるものと言えます。

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まとめ

総勘定元帳は勘定科目別にまとめる帳簿であることから、事業に関するお金の流れを把握するためにとても便利です。日頃からこまめに記入しておくことで、経営判断の参考にしたり、決算期にスムーズに決算書を作成できたりと、何かと役立ちます。会計ソフトやエクセル・各種ツールなどを利用することで、余裕を持って総勘定元帳を作成しましょう。

この記事の投稿者:

shimohigoshiyuta

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