会社経営 為替手形って?約束手形との違いやメリット・デメリットについて解説 最終更新日: 2023/05/19   公開日: 2022/12/28

為替手形とは3者間での支払いを行う際に使う証書であり、期日までに支払うことを約束する意味合いがあります。本記事では基礎的な知識や約束手形との違い、為替手形のメリット・デメリットなどについてわかりやすく解説します。

為替手形って?

為替手形とは、3者間でお金のやり取りを行う際に使用する証書を指します。 そもそも手形とは、設定した期日までに手形に記載された金額を支払うことを約束する証書のことです。

その中でも為替手形は、手形を作成した振出人が支払人に依頼をすることで、代わりに受取人にお金を支払ってもらう際に使用します。「○月○日に指定の金額を支払う」ということを約束する証書であるため、支払い漏れや回収漏れを防ぐことにつながります。

為替手形に関わる人物

為替手形では以下の3つの立場の人が関わります。呼び方や役割について押さえておきましょう。

・振出人(差出人、手形作成者):手形を作成する人
・支払人(引受人、名宛人):支払を行う人
・受取人(指図人):支払いを受ける人

また、為替手形などの手形を作成することを「振り出す」と呼ぶこともあわせて覚えておきましょう。

為替手形を使う取引

為替手形とは手形に分類される取引方法ですが、その中でもさらに3つの取引方法に細分化されます。

・他人宛為替手形:通常の為替手形
・自己受為替手形:振出人と受取人が同じ
・自己宛為替手形:振出人と支払人が同じ

一般的に為替手形と言うと、3者間での取引で使われる「他人宛為替手形」を指します。前述した振出人・支払人・受取人の間で取引を行う方法です。

「自己受為替手形」とは振出人と受取人が同じ人になる方法であるため、為替手形であっても実質2者間の取引となります。貿易業などにおいて、確実な取り立てを行うために利用されることがあります。

「自己宛為替手形」は振出人と支払人が同じ人になる方法であり、こちらも2者間の取引として使われます。

為替手形の仕組み

為替手形の仕組みについて実際の取引の流れに沿って解説します。なお、ここでは以下の3社間での取引であると仮定します。

・A社:受取人
・B社:振出人
・C社:支払人

<1.商品の提供と為替手形の振り出し>
A社からB社に商品やサービスの提供を行い、B社に支払義務が発生します。B社は支払い方法として為替手形を発行します。

<2.取引依頼>
A社はB社から受け取った手形を元に、C社へ取引の依頼を行います。

<3.支払い>
C社は為替手形に記載された金額をA社に対して支払います。C社は取引先の銀行に入金し、A社が銀行に為替手形を呈示(相手に差し出して見せること)することでお金を受け取ることが可能です。

<4.買掛金の免除>
C社はB社に対して将来支払うべきお金である買掛金を抱えている場合に、A社へ手形代金を支払うことで、B社に対する買掛金の支払いとみなします。

振出人であるB社は、A社への売掛金とC社への買掛金を抱えていますが、為替手形によって1回の取引で同時に消し込みを行えたこととなり、取引の負担が軽減されます。

約束手形との違い

利用されるケースが異なる

約束手形は振出人が受取人に対して「○月○日に指定の金額を支払います」と約束するものであり、2者間の取引で利用されます。手形取引というと、ほとんどの場合はこの約束手形を指すことが一般的です。

それに対して為替手形は3者間での取引で利用されるものであるため、3者の合意や調整が必要となり、実務ではなかなか使いにくい側面があります。受取人と支払人の立場からすると、知らない会社とお金のやり取りを行うことになる可能性もあります。

そのため、為替手形を本来の3者間での取引で使うのではなく、前述した自己受為替手形や自己宛為替手形として利用するケースも多く存在します。自己受為替手形は確実な取り立てや貿易による決済を、自己宛為替手形は遠隔地にある支店の代わりに本店が支払いを行う際などによく利用されます。

関係者の呼び方が異なる

振出人名宛人指図人
為替手形手形を振り出すものの、支払いは行わない代金を支払う
(支払人、引受人)    
代金を受け取る
(受取人)    
約束手形手形を振り出し、支払いを行う
(支払人)
代金を受け取る
(受取人)
なし

為替手形と約束手形とでは関係者の呼び方が上記のように異なります。為替手形では振出人と支払人が異なるのに対して、約束手形では振出人と支払人は同一です。

為替手形では代金を受け取る受取人のことを「指図人」とも呼びます。指図とは、特定の人を債権の弁済受領者として指定することです。つまり振出人が受取人に対して、代金を受け取る権利がある人であると指図される人という意味合いがあります。指図人は2者間での取引である約束手形では使われない概念と言えるでしょう。

また、為替手形では支払いを引き受ける人という意味で「引受人」という言葉が使われることもあります。 手形の種類によってどの呼び方が誰を指すのかが異なるため、混同しないように注意しましょう。

参考コラム:約束手形って?仕組みや小切手との違いについて解説

手形と小切手の違いについて

手形と同様にお金の代わりとして扱われるものに小切手があります。受け取る側からすると、手形は指定した期日にならないと現金化できないのに対し、小切手は受け取った直後から現金化できるという違いがあります。

支払う側から考えると、手形は期日までに銀行口座に現金を用意すれば構いませんが、小切手は振り出す時点で銀行口座に現金がないと発行できません。

為替手形のメリット

為替手形のメリットとして、以下の4つの点が挙げられます。

・買掛金の消し込みが簡略化される(振出人)
・ほぼ確実に取り立てできる(受取人)
・支払いまでに猶予が生まれる(支払人)
・支払利息が発生しない(支払人)

通常の取引では振出人は取引先にお金を振り込むことで買掛金の消し込みを行いますが、 為替手形を発行することで、実際の入出金をせずに消し込みを行うことが可能です。

受取人としては、支払人からほぼ確実に取り立てができるメリットがあります。為替手形を振り出した際、支払いが遅れると支払人は最悪の場合銀行での取引ができなくなるなどの大きなペナルティがあるため、為替手形は強制力の強い取引手段と考えられています。

支払人の立場から見ると、支払いまでに猶予がある点がメリットとして挙げられます。通常の銀行取引を行う際は1ヶ月など短い期間で支払いを行うことが一般的ですが、為替手形の取引は数ヶ月後の期日を設定する傾向にあります。資金の準備に余裕があるため、資金繰りが行いやすくなるでしょう。通常の融資や借入とは異なり利息が発生しないため、コストを抑えることも可能です。

為替手形のデメリット

為替手形のデメリットは以下の通りです。

・不渡りを出すとペナルティがある(支払人)
・手形があっても現金が受け取れない可能性もある(受取人)
・期日前に現金を受け取る場合に、手数料が発生する(受取人)

為替手形による支払義務があるのにもかかわらず、支払期日までに銀行口座にお金を準備できないことを「不渡り」と呼びます。 6ヶ月のうちに2回以上の不渡りを出すと当座預金の取引が2年間できなくなってしまいます。 会社としての信用度が落ち、多くの会社は倒産してしまいます。

受取人としても、支払人が万が一不渡りを出せば現金を受け取ることができません。また、会社の資金繰りが悪化しているなどの理由で期日よりも前に現金を受け取ることができますが、その場合には手数料が発生します。受け取れる金額が本来の額よりも減ってしまう点に注意が必要です。

為替手形の振り出し方

為替手形の項目

為替手形に記入する項目は、次の通りです。

<振出人に関する項目>
・振出人: 手形を振り出す会社名もしくは個人名
・振出日:手形を作成した日付
・振出地住所:振出人の住所と会社名

<受取人に関する項目>
・受取人(指図人):お金を受け取る会社名もしくは個人

<支払人に関する項目>
・支払人:お金を支払う会社名もしくは個人名
・引受日:為替手形を引き受けた日付
・支払日(支払期日):お金を支払う日付

<その他の項目>
・支払地:支払う金融機関の住所
・支払い場所:金融機関名と支店名
・金額:支払う金額
・通し番号:判別のために設定する番号

金額を記載する際、領収書などに金額を打ち込むための「チェックライター」と呼ばれる器具を使うことが一般的です。追記されることを防ぐために、金額の頭に「¥」を、末尾に「※」などをつけましょう。

振出人が空欄の場合の対応

為替手形には印紙税が課せられるため、収入印紙を貼り付ける必要があります。印紙税は文書を作成する際に納税する義務が成立するものであり、通常は振出人が負担します。

しかし振出人の欄が空欄である場合には、支払人などが負担しなくてはいけません。相手に不要な手間をかけないためにも、記載すべき項目は漏れなく記載することが大切です。また、万が一空欄のある為替手形を受け取った場合には、脱税とならないよう慎重に対応しましょう。

参照:課税文書の作成時期及び作成者

裏書について

手形を別の人に譲渡した場合に、手形の裏面にその旨を書き残しておくことを「裏書」と呼びます。裏書をする際は以下の情報を記入します。

・手形を元々持っていた持ち主(裏書人)の情報
・手形を譲渡される人(被裏書人)の情報

裏書のある手形を譲渡された被裏書人は、お金の支払いを受ける受取人となります。銀行は裏書の情報をチェックして振込先を判断し、支払期日になると被裏書人へ支払いを行います。

支払人が被裏書人へお金を支払わなかった場合に、裏書人に支払いの義務が生じる点に注意が必要です。裏書を活用して取引を行う際には、支払人がお金を確実に払えるかどうか判断する必要があるでしょう。

印紙税額について

為替手形には印紙税が課税されるため、振出人が金額に応じた収入印紙を貼り付ける必要があります。税額については印紙税法で以下のように定められています。

手形に記載された金額税額    
10万円未満非課税
10万円以上100万円以下200円
100万円を超え200万円以下400円
200万円を超え300万円以下600円
300万円を超え500万円以下1千円
500万円を超え1千万円以下2千円
1千万円を超え2千万円以下4千円
2千万円を超え3千万円以下6千円
3千万円を超え5千万円以下1万円
5千万円を超え1億円以下2万円
1億円を超え2億円以下4万円
2億円を超え3億円以下6万円
3億円を超え5億円以下10万円
5億円を超え10億円以下15万円
10億円を超えるもの20万円

前述した通り、振出人の名前がなかった場合には支払人などが貼り付けます。また、為替手形に金額の記載がなかった際は、金額を記載した人が貼り付ける必要があります。

参照:印紙税法
参照:No.7140 印紙税額の一覧表(その1)第1号文書から第4号文書まで

為替手形の仕訳について

振り出し時の仕訳

借方貸方
振出人仕入 100,000売掛金 100,000
支払人買掛金 100,000支払手形 100,000
受取人受取手形 100,000売上 100,000

10万円の為替手形であると仮定すると、振り出し時には振出人・支払人・受取人それぞれが上記の仕訳を行います。支払人は手形による支払いを行う際の「支払手形」の勘定科目を、受取人は手形による支払いを受ける際の「受取手形」の勘定科目を使用しましょう。

現金化時の仕訳

借方貸方
振出人
支払人支払手形 100,000当座預金 100,000
受取人当座預金 100,000受取手形 100,000

為替手形を現金化した際は、支払人・受取人が上記の仕訳を行います。振出人は振り出し時の1回で済むため、今回は仕訳を行う必要はありません。

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まとめ

為替手形は使う場面が比較的限られた取引方法ではありますが、利便性や確実性などから現在も利用してる会社が存在します。扱う際には特有のルールを元に利用することが求められるので、記入方法や取引の手順などについてよく確認し、慎重な対応を心がけましょう。

この記事の投稿者:

shimohigoshiyuta

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