白色申告で経費になるものは?具体例や範囲、収支内訳書の書き方も紹介 最終更新日: 2023/08/10   公開日: 2023/08/10

確定申告で適切に経費を計上することで、納める税金を削減できます。しかし、白色申告と青色申告では、経費として認められる支出の種類や条件に違いがあります。この記事では、白色申告における経費計上の適用範囲や例、収支内訳書などについて解説します。

白色申告で経費計上できるもの・できないもの

一般的に、個人事業を運営する際には、必要な支出を経費として計上することができます。例えば、仕事に使用するノートパソコンを購入した場合、その購入費用は経費計上できます。ただし、同じノートパソコンでも、それが事業主の趣味で使用するためのものであれば、経費にはできません。以下の表を参考にしてください。

経費にできる経費にできない
基本的な考え事業運営に必要な支出事業運営と関係のない支出
▪ 売上をあげるための仕入れ費用
▪ 従業員への給料
▪ 家賃
▪ 仕事場で使うテーブルなどの購入費      
▪ 仕入先へ行くための旅費交通費 
▪ インターネット接続料、電話料など  
▪ プライベートの飲食費
▪ 自宅の家賃
▪ 家で使用するテーブルなどの購入費
▪ 遊びに行くための旅費交通費

個人事業の場合、自宅のスペースの一部を事務所や店舗に利用する場合があります。このようなケースは、自宅兼事務所(SOHO)と呼ばれます。SOHOの場合は、仕事とプライベートの使用割合を面積などで算出し、その割合に応じて費用の一部を経費として計上することが可能です。この割合計算のことを「家事按分」と言い、家賃だけでなく、他の費用についても適用できます。

関連リンク:白色申告とは?青色申告との違いやメリット・デメリットを解説

白色申告での経費の種類と具体例

経費の項目は通常「科目」または「勘定科目」と呼ばれます。白色申告における経費は、租税公課、水道光熱費、消耗品費など、およそ20種類の科目で構成されています。

勘定科目概要・具体例
租税公課事業に関係する税金や公共料金など
例:固定資産税、事業税、自動車税、印紙税、行政サービスの手数料
地代家賃事業で使用している事務所や店舗の賃料や使用料
例:家賃、駐車場料金、倉庫使用料
水道光熱費事業運営に必要なエネルギーに要する経費
例:水道料金、電気料金、ガス料金
旅費交通費移動費用、宿泊費用など
例:電車賃、タクシー代、航空運賃、出張宿泊費
消耗品費使用可能期間が1年未満、または10万円未満の什器備品の購入費
例:文房具、コピー用紙、電球、電池、マウスやケーブル類、USBメモリ、DVD、10万円未満のパソコン
減価償却費10万円以上の固定資産を法令が定めた耐用年数に基づいて分割し、計上する費用
例:パソコン、自動車、コピー機、デスク、カメラ
通信費事業で使用する通信費や郵送費
例:インターネット料金、電話料金、切手代、はがき代
接待交際費取引先や得意先などの接待、慰安、贈答などにかかる費用
例:取引先との飲食代やゴルフ代、冠婚葬祭費、贈答品
給料賃金従業員に支払う給料
※青色事業専従者(親族従業員)に支払う専従者給与は、原則経費になりません。
福利厚生費従業員の慰安、医療、保健などのための費用
例:レクリエーション費用、社員旅行代、お祝い金、お見舞金、健康診断費用
荷造運賃商品や郵便物の梱包・配送にかかった費用
例:梱包材料費、郵便手数料、配送費
広告宣伝費商品やサービスの広告・宣伝に関わる費用
例:チラシ、DM、インターネット広告、新聞広告、試供品、ポスティング費用、看板
損害保険料事故や火災などの損害から事業を守るための保険料
例:自動車保険、火災保険、自賠責保険、賠償保険
修繕費事業に関わる建物や器具備品などの修理代
例:事務所の改修・修理費、パソコン修理代、自動車の修理費
外注工賃外部業者に業務委託した場合の費用
例:電気工事費、システム開発費、ホームページ運営費
利子割引料  借入の支払利息、手形の割引料、リボ・分割払いの手数料など
例:金融機関への支払利息、自動車や住宅のローン
貸倒金売掛金や貸付金など、得意先の倒産や経営悪化により回収できなくなった損害金額
例)売掛金、貸付金、未収金、前渡金
雑費他の勘定科目に当てはまらない少額な必要経費
例:ごみ処理費用、クリーニング代金、引越費用

経費の範囲の判断方法

白色申告での経費の範囲については、「いくらまでなら経費にできるか」とか、「何が経費になるか」という問いに一律に答えることはできません。事業内容や規模に応じて個別に判断されます。

基本的な判断基準は、その支出が事業の運営に必要なものかどうかです。ただし、事業規模に不釣り合いな支出や、事業と直接関係のない支出は経費とは見なされません。収支バランスや業種の特性などを考慮し、客観的に納得のいく支出であれば、経費に認められます。もし税務調査が行われた場合は、調査官がその支出を経費として妥当と判断してくれれば問題ありません。

収支内訳書とは何か?

収支内訳書は、白色申告に提出される書類の1つであり、確定申告書に添付されます。2枚の用紙から成り立っており、1枚目では売上や経費などを個別の勘定科目ごとに詳細に記入し、2枚目は売上金額や仕入金額の明細を記載します。

確定申告は具体的な所得の内容について申告する必要があるため、収支内訳書には売上や経費に関する情報を詳細に記載しなければなりません。収支内訳書は青色申告者が提出する青色申告決算書と同様の役割を果たす書類ですが、収支内訳書の方が項目数は少ないです。

収支内訳書の提出が必要な人

所得税を計算する際には、所得を10種類に分類し、税額を算出します。このうち、事業所得、不動産所得、山林所得のうちいずれかの所得がある場合、または前々年の雑所得が
1000万円を超える場合(※)は、確定申告時に収支内訳書の提出が必要です。

事業所得事業を営むことで得られた所得
事業の種類:農業・漁業・製造業・卸売業・小売業・サービス業・その他の事業
不動産所得  土地や建物の貸付け、不動産の上に存する権利の設定と貸付け、船舶や航空機の貸付け
山林所得 伐採した山林の譲渡、立木のままでの譲渡で生ずる所得
※但し、山林取得後5年以内の伐採または譲渡を除く
雑所得事業所得、不動産所得、山林所得など、所得税法で定められたいずれの所得にも該当しない所得
ネットビジネスの売り上げ、株式投資の利益、書籍の印税、講演料など

※令和5年の提出分から、雑所得が1000万円を超える場合も、収支内訳書の提出が義務付けられました。例えば、令和6年度(2024年度)の確定申告(2023年分)の場合、2021年の雑所得が1000万円を超える方は、収支内訳書の作成が必要です。

収支内訳書の提出が不要な人

事業所得、不動産所得、山林所得、雑所得(※2年前の収入が1000万円以上)のいずれの所得もない場合、白色申告の際に収支内訳書の提出は必要ありません。また、収支内訳書は確定申告の義務がある場合に提出する書類のため、確定申告の義務がない場合は提出不要です。
なお、事業所得、不動産所得、山林所得、雑所得がある場合でも、所得額が少なく確定申告の義務が生じない場合には、確定申告を行わず、収支内訳書も提出する必要はありません。

収支内訳書を提出しない場合のペナルティは?

要件を満たす場合、白色申告をする人は収支内訳書の提出が必要ですが、提出しなくても罰則はありません。ただし、収支内訳書が提出されていない場合、通常は税務署から督促状が送られてきます。したがって、罰則はないとはいえ、税務署の目を引くことは望ましくありません。

初めて確定申告を行う人は、収支内訳書の書き方に慣れていないため、作成に時間がかかる可能性があります。提出が必要な場合は、確定申告に向けて早めに準備し、申告期限までに収支内訳書を提出するよう心掛けましょう。

収支内訳書は3種類

収支内訳書は、申告する収入の種類によって用紙が異なります。一般用、不動産所得用、農業所得用の3種類です。

一般用は、基本的に不動産所得や農業所得以外の所得を申告するために使用されます。主に個人事業主や、雑所得により作成が必要な人が利用します。
不動産所得用は、所有する不動産からの賃借料など、不動産収入があった場合に使用されます。項目の内容には、賃借人の氏名や賃貸料など、不動産収入に関連する情報が含まれます。
農業所得用は、農業を営んでいる人が使用する用紙です。記入項目には種苗費や肥料費などが含まれています。

収支内訳書はどこで入手できる?

収支内訳書を入手する方法は、主に以下の3つがあります。

1.税務署へ行って用紙を受け取り、手書きにて作成する
2.国税庁のウェブサイトかダウンロード後、パソコン画面上で入力して作成する
3.国税庁のウェブサイトの「確定申告書等作成コーナー」を使い、パソコン画面上で入力して作成する

収支内訳書の用紙は、以下の国税庁のサイトにてダウンロード可能です。このサイトでは確定申告書など他の書類も提供されていますので、白色申告を行う方は必要な用紙をダウンロードしてください。

参照:確定申告書等の様式・手引き等(令和3年分の所得税及び復興特別所得税の確定申告分)|国税庁

収支内訳書作成に必要な準備

収支内訳書を作成するためには、以下の準備が必要です。

・必要な書類を揃える
・減価償却するものを確認しておく
・収入や経費などの金額を分類し、集計する
・帳簿や書類を保存する

各準備について詳しく説明します。

準備が必要な書類

まず、事業に関連する1年間の売上や費用などの金額に関する情報を含む資料をすべて用意しましょう。売上に関する資料は、請求書、銀行の通帳など振込履歴が確認できるものです。また、レシートや領収書なども必要です。これらの資料に基づいて作成した帳簿も用意します。また、日付、金額、売上、費用の詳細などを記載したメモがあれば、それらも用意しておきましょう。もし日常的にエクセルなどを使用して事業経費を管理しているのであれば、印刷して手元に置くこともおすすめです。

減価償却で処理が必要なもの

経費の計上方法には、一定の条件を満たす場合に複数年に分けて計上する「減価償却」という方法もあります。資産は時間が経過するにつて価値が減少するため、経費の計上も時間の経過に応じて行う方法です。

事業用の建物や設備、機械装置、器具備品、車両などの資産には、以下の条件のいずれかに該当するものがあれば、取得価額の全額をその年の経費とすることができます。ただし、それ以外の資産については、原則、減価償却による処理が必要です。

・使用可能期間が1年未満の場合
・取得価額が10万円未満の場合

減価償却の対象となる資産には、種類ごとに年数(法定耐用年数)が決まっており、例えばパソコン(サーバー用を除く)の耐用年数は4年です。国税庁のウェブサイトで、資産ごとの耐用年数を確認できます。

参照:主な減価償却資産の耐用年数表|国税庁
関連リンク:減価償却費とは?意味や計算方法、仕訳方法をわかりやすく解説

収入と経費の分類と集計

収入や経費などの金額を適切に分類し、集計することも重要です。収支内訳書は、収入と経費を詳細に分類して記載するものであり、正確な金額を計算するためには、事前に該当する収入や経費を適切に分類して集計しておく必要があります。収入は源泉区分(例: 給与所得、事業所得、不動産所得など)ごとに分類し、経費もその性質に応じて分類しましょう。このように金額を整理し集計することで、確定申告書を正確かつスムーズに作成することができます。

帳簿や書類の保存とデータ化について

白色申告を行う場合、収入金額や必要経費に関する情報を記帳し、帳簿や書類を保存する必要があります。

以前は、取引先からの請求書などを印刷して保存することが原則として認められていましたが、2022年1月からは電子データによる保存が義務付けられる予定でした。しかし、2023年12月までの電子取引に関しては、印刷して保存することも認められることとなっています。つまり、電子データによる保存でなくても問題ありません。ただし、2024年1月以降は、電子データ保存の義務化が予定されているため、それまでに必要な準備を行っておくことが重要です。

収支内訳書の書き方

ここでは、「一般用」の書き方を説明します。

収支内訳書は2枚構成となっており、1枚目に収入や費用の詳細、2枚目に一部の科目の内訳を記入します。国税庁のサイトからダウンロードする際には、2枚揃っていることを確認してください。

以下、記入の際の注意点です。

・1枚目の左上部分の日付には書類の提出日を記入します。
・令和5年提出分から、「営業等」または「雑(業務)」という項目が追加されました。該当する方に丸を付けてください。
・「営業等」または「雑(業務)」の欄の横に、再度日付欄がありますが、ここには会計期間を記入します。個人事業主の場合は、「1月1日〜12月31日」と記入してください。ただし年度途中で開業した場合、開業日から12月31日となりますので注意しましょう。

収支内訳書の記載方法の詳細については、以下の税務署のサイトを参照してください。

参照:令和4年分 収支内訳書(一般用)の書き方|税務署

収支内訳書を提出する方法

提出方法①税務署で提出または郵送

収支内訳書は確定申告書と一緒に提出します。税務署で提出する方法は、必要書類に不備がないかを確認してもらえるため、確定申告が初めての方におすすめです。税務署の開庁時間は、平日午前8時30分から午後5時までとなっています。確定申告書類を郵送または窓口で提出する場合、原則として送付先・提出先は、住所地を管轄する税務署です。管轄する税務署の所在地やその他の情報を知りたい方は、以下の国税庁サイトをご覧ください。

参照:税務署の所在地などを知りたい方|国税庁

提出方法②e-tax申請

「確定申告書等作成コーナー」で作成した確定申告書や収支内訳書はe-Taxを利用すれば、インターネット経由で簡単に提出することができます。パソコン画面上で書類の提出が完了するため、手間が省けて便利です。税務署への申告書の持参や郵送の手続きも必要ありません。

ただし、e-Taxを利用するには事前に利用申請を行う必要があります。申請方法は複数ありますが、e-Taxを利用できるまでに時間がかかることがあります。国税庁のサイトで申請方法などを確認し、早めに手続きしましょう。

関連リンク:e-Taxでの確定申告のやり方とは?スマホでの手順や必要なものを紹介

提出方法③確定申告ソフトやアプリから申告

市販の会計ソフトやアプリには、確定申告書や収支内訳書の作成から提出までできるものがあります。確定申告の負担を軽減したい人にとって、会計ソフトやアプリを活用することはおすすめです。会計ソフトは通常、最新の確定申告書類の形式や税制に対応しているため、前年との変更点を自分で調べる手間が省け、申告手続きをスムーズに行うことができます。
ただし、使用料や機能が製品により違うため、事前に確認することが必要です。

レシートで申告できる?領収書が貰えない場合は?

経費の証明には手書きの領収証が必要と考えている方が多いかもしれませんが、手書きの領収証にこだわらなくても大丈夫です。通常のレシートでも、十分な証憑効果があります。

ただし、一部のレシートでは、一目で何を購入したのかがわかりにくい場合もあります。そのような場合には、後で用途がわかりやすくなるようにメモを追加しましょう。飲食代の領収書やレシートには、誰と一緒に食事をしたかをメモしておくと、税務調査の際に有効な対策となります。

交通費などで領収書を受け取れなかった場合は、自分で出金伝票を作成することができます。交通費の場合、出金伝票には「日付・区間・料金・外出の目的」などをメモしておきましょう。出金伝票は100円均一の店などでも入手可能ですので、必要な時に備えて1セット手元に置いておくことをおすすめします。

関連リンク:領収証の正しい書き方を解説!【見本付き】注意点なども詳しく紹介

白色申告と青色申告の税額の違い

白色申告と青色申告の税額では、特別控除の差が存在します。白白色申告は簡易な帳簿づけが許される一方で、青色申告には特典として「青色申告特別控除」などが適用され、控除額は最大で65万円です。

個々の控除額などによって納税額の差が生じるため、白色申告と青色申告の間でどれだけ差が出るかは一概には言えませんが、差額の大まかな範囲を把握しておきましょう。

例えば、収入が700万円、必要経費が200万円、各種控除が120万円(※基礎控除48万円とその他控除72万円)の場合、所得税額を計算すると、以下のとおりです。

・白色申告の場合

700万 - 200万円 - 120万円 = 380万円
380万円 × 20% - 427,500円 = 332,500円

・青色申告65万円控除の場合

700万 - 200万円- 65万円 - 120万円 = 315万円
315万円 × 10% - 97,500円 = 217,500円

差額は、332,500円-217,500円=115,000円です。

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個人事業主が確定申告を円滑に行うためには、日常的に経理業務を進めておくことが必要です。請求書や領収書などを整理し、会計ソフトに入力しておけば、確定申告期間も焦ることなく終えることができます。

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まとめ

白色申告の場合でも、事業に必要な支出は経費として申告できます。もしも物品やサービスが事業用と私用の両方に兼用されている場合は、家事按分の方法を用いて一部を経費として計上することが可能です。白色申告では、収支内訳書を確定申告時に提出します。この書類には、約20種類の経費項目が掲載されており、項目ごとにその年の合計金額を記入します。必要に応じて、任意の項目を追加することも可能です。経費の証拠としては、領収証やレシートを保管することが望ましいですが、領収証が入手できない場合には、出金伝票を作成することをおすすめします。

この記事の投稿者:

shimohigoshiyuta

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