社員の副業はいくらまで?確定申告の判断基準や注意点を初心者向けに解説 最終更新日: 2024/01/11   公開日: 2023/07/02

会社員が副業をすると、確定申告の必要が生じることがあります。本記事では、副業で確定申告が必要な場合の判断基準をはじめ、確定申告の手順・注意点などを解説します。

そもそも副業とは?定義について

本業以外に行っている仕事を副業と言います。会社で正社員として働きながら空いた時間にアルバイトをしたり、自らの事業を行ったりなど、副業にはさまざまな種類があります。

副業は、収入やスキルを向上させるために注目されている働き方であり、会社が副業を認める動きも広まっています。副業の定義について法律で具体的に定められているわけではありませんが、会社の就業規則を見ると、その会社で許可または禁止されている副業の内容について定められていることもあります。

副業をしている会社員の割合は?

2020年7月に厚生労働省が行った調査では、対象者のうち、副業をしている人の割合は9.7%でした。

副業をしている割合として、正社員の人の場合は5.9%、契約社員・嘱託社員の人は10.4%と、本業の就業形態によって割合に差が出ました。また、自由業やフリーランスをしている人は29.8%と、高い割合で副業をしていることが分かりました。

2018年に厚生労働省が「副業・兼業の促進に関するガイドライン」を定めたことや、将来の不安などを理由に、副業に対する関心が高まっているものと考えられます。

参照:副業・兼業に係る実態把握の内容等について|厚生労働省
   副業・兼業の促進に関するガイドライン|厚生労働省

会社員が副業をする際に注意しておくべきこと

会社員が副業に取り組む際の注意点について、4つのポイントを紹介します。

就業規則を確認する

副業によって本業の仕事に専念できなくなるなどの理由によって、副業を禁止する会社も未だに存在します。

副業禁止の会社で黙って副業を始めると、減給などのペナルティを科されるリスクもあります。また、実際のペナルティは受けなくても、本来の仕事に集中していないといった理由で上司からの評価が下がってしまうといった影響が発生するかもしれません。副業を始める前は、就業規則をよく確認するようにしましょう。

自己管理を徹底する

会社員の場合、退勤前や退勤後の時間、休日を使って副業を行うこととなります。自己管理を怠れば、体を休めることができずに遅刻や欠勤といった事態になりかねません。副業をする際は自分のスケジュール管理をこれまで以上に大切にして、本業に支障が出ないように注意する必要があります。

怪しい副業もあることを知っておく

副業への関心が高まる中で、副業をしたいと思う人を利用してお金を騙し取るといったトラブルも発生しています。「未経験でも50万円」といった条件が良すぎる仕事や、「スマホだけで簡単に稼げる」といった具体的な仕事内容がわからない仕事には十分に注意しましょう。

中には、マルチ商法や銀行口座の売買などに加担させられてしまうケースもあります。怪しい副業とそうでない副業を見分けられるようになることが大切です。

口約束ではなく業務契約を結ぶ

副業を行う際は、業務内容や報酬などについて契約を結ぶように心がけましょう。契約を結ばないと、副業の条件について後々トラブルになったり、いざという時に法的な解決ができなくなったりなどのデメリットがあります。

現在はオンライン上で契約を結べるサービスも多数あります。また、契約書を作ったことがないから心配という方も、ネット上のテンプレートを利用すれば簡単に作成できます。取引先が契約書を作ってくれたという場合には、不利な内容になっていないかどうかを確認することが大切です。

会社員におすすめの副業は?

副業にはさまざまな種類があります。自分のスキルや興味、本業のスケジュールに応じて、好きなものに取り組むといいでしょう。

・ネットショップ運営
・家事代行
・フードデリバリー配達員
・セミナー講師
・アフィリエイト

また、自分で事業を営まなくても、ダブルワーク可の求人に応募してアルバイトをすることも副業と言えます。時給制のアルバイトであれば時間に応じて給与がもらえるため、確実に稼ぎたいという方にはおすすめです。

おすすめの副業については、以下の記事で詳しく解説しています。

関連リンク:始めやすいおすすめの副業20選 安全な副業の選び方や収入を得るコツを解説!

副業した際の所得の種類

所得税法では、所得を10種類に分類しています。そのうち、副業の所得として該当することが多いのは、以下の4つです。

・給与所得:勤務先から受け取る給与や賞与などの所得
・事業所得:卸売業・小売業・サービス業をはじめとする事業から生じる所得
・不動産所得:土地や建物などの貸し付けによる所得
・雑所得:他の9種類の所得のいずれにも該当しない所得

参照:No.1300 所得の区分のあらまし|国税庁

事業所得・雑所得の判断基準

前項で解説した所得の種類のうち、事業所得と雑所得のどちらに該当するのか、判断が難しいことがあります。国税庁はこの判断について、以下のように述べています。

<引用>
事業所得と認められるかどうかは、その所得を得るための活動が、社会通念上事業と称するに至る程度で行っているかどうかで判定する。
なお、その所得に係る取引を記録した帳簿書類の保存がない場合(その所得に係る収入金額が300万円を超え、かつ、事業所得と認められる事実がある場合を除く。)には、業務に係る雑所得(資産(山林を除く。)の譲渡から生ずる所得については、譲渡所得又はその他雑所得)に該当することに留意する。
引用:法第35条((雑所得))関係

取引を記録するための帳簿書類の保存がないと、雑所得に分類されます。また、帳簿をつけている場合には、副業の収入が300万円以下であっても事業所得として確定申告できます。

収入金額記帳・帳簿書類の保存あり記帳・帳簿種類の保存なし
300万円超おおむね事業所得おおむね事業に関わる雑所得
300万円以下おおむね事業所得業務に関わる雑所得

なお、事業所得か雑所得か判断する上で、どんな状況にも確実に適用されるような基準があるわけではありません。事業所得か雑所得のどちらに該当するのかわからない時は、税務署の相談窓口や税理士などに相談することをおすすめします。

参照:「所得税基本通達の制定について」の一部改正について(法令解釈通達)|国税庁

副業で確定申告が必要なケース

副業で確定申告が必要になる場合について、3つのケースを紹介します。

副業が給与所得である

本業で会社などに雇用されて働いている場合、従業員は年末調整を受けて、会社からもらった所得に関する所得税の計算を行います。1年間の副業で稼いだ給与所得が20万円を超えると、自分で副業の分の所得に関する確定申告を行うことになります。

会社で働いていると、年末調整を受けるための「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」の提出を年に一度求められます。年末調整は会社員にとっての確定申告のような意味合いがありますが、この書類を提出できるのは1人に対して1つの事業所であるため、基本的には収入の多い本業の勤務先でのみこれを提出します。

副業の勤務先ではこれを提出せず、自ら確定申告を行う必要があります。なお、この場合の確定申告の対象者は、収入の額など細かな条件によっても異なるため、詳しくは国税庁のホームページをご覧ください。

参照:令和5年度 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書
   No.1900 給与所得者で確定申告が必要な人|国税庁

副業が事業所得もしくは雑所得である

副業として生じた事業所得や雑所得が20万円を超えた場合、確定申告が必要です。この金額は収入ではなく、経費を差し引いて求めた利益で考えます。

事業所得または雑所得 = 収入 – 経費

例えば、副業の収入が23万円でも、経費を5万円使っていた場合、事業所得もしくは雑所得が17万円になります。20万円を超えないため、確定申告は不要です。経費はビジネスを営む上で必要な支出を指すものであり、プライベートの支出まで計上していいわけではない点に注意しましょう。

また、確定申告は青色申告と白色申告に分かれますが、青色申告かつ事業所得を選択すると、税制上の優遇を受けられることを覚えておきましょう。

参照:No.2072 青色申告特別控除|国税庁

副業が不動産所得である

不動産所得の場合にも確定申告を行います。事業所得や雑所得と同様に、以下のように不動産所得を計算しましょう。

不動産所得 = 不動産による収入 – 経費

アパートなどは10部屋以上、独立した家屋は5棟以上あれば、不動産所得として判断されます。また、社会通念上、事業と呼べる程度の規模であるかどうかという点も考慮されます。

これらの条件を満たし、不動産所得に該当する場合には、青色申告特別控除と呼ばれる優遇を受けられる可能性があります。

参照:
No.2072 青色申告特別控除|国税庁
No.1373 事業としての不動産貸付けとそれ以外の不動産貸付けとの区分|国税庁

関連リンク:副業はいくらから確定申告が必要?税金の計算方法や20万以下の場合も解説

副業による所得が20万円以下の場合の注意点

副業の収入が20万円以下の場合も、状況によっては確定申告をすることがあります。

確定申告をするべきケース

所得税は1年間の所得に応じて金額が決まるものであるため、1年が終わらないと、正確な額を計算することはできません。勤務先で源泉徴収されている所得税の金額は概算であり、1年間の所得が確定した後、年末調整によってその金額を調整します。所得税を支払いすぎている場合には還付を受けることが可能です。

副業の勤務先では年末調整は行いませんが、確定申告をすることで払いすぎた所得税の還付を受けられる可能性があります。副業の収入が20万円以下であっても、所得税額が多かった場合には、確定申告を検討するといいでしょう。

また、医療費控除や寄付金控除などは、年末調整では対象となりません。確定申告でのみ処理できるものであるため、該当する控除を受けられる方は、確定申告をした方が得をする可能性があります。

確定申告が不要でも住民税の申告が必要

確定申告を行うと、その情報を元にして市区町村が住民税の計算をします。確定申告を行わないと、正しい所得の金額を市区町村が把握することができません。

そのため、副業による収入が20万円以下で確定申告をしない方は、市区町村に対して住民税の申告をする必要があります。「住民税申告書」と呼ばれる書類を記入して、収入のあった年の翌年3月15日までに提出しましょう。詳しい対応方法については、各市区町村のホームページで確認できます。

参照:令和5年度住民税の申告について:新宿区

副業による所得金額と所得税の計算方法

副業の所得金額と、それに応じた所得税の金額を計算する方法を、実際の流れに沿って解説します。

本業と副業の所得金額を計算する

本業の所得は、会社からもらう源泉徴収票で確認できます。副業の所得は、前述した通り、以下の計算式で求めましょう。

所得金額 = 収入 – 経費

本業と副業の所得金額を合計し、自分が1年間で稼いだ全体の所得金額を把握します。

所得税の課税対象となる所得金額を計算する

所得金額のすべてに対して所得税が発生するわけではなく、所得控除を考慮された金額に対して所得税が発生します。課税対象となる所得金額は、以下のように所得控除を差し引くことで計算できます。

課税対象となる所得金額 = 所得金額 – 所得控除

所得控除には、配偶者控除や扶養控除、医療費控除など、さまざまな種類があります。自分が適用できそうなものがないかチェックしておきましょう。

参照:No.1100 所得控除のあらまし|国税庁

所得税を計算する

前項で求めた課税対象となる所得金額を使い、以下の方法で所得税を計算できます。

所得税額 = 課税対象となる所得金額 × 税率 – 控除額

計算で使う税率と控除額は、課税される所得金額に応じて以下のように定められています。

課税される所得金額税率控除額
1,000円〜1,949,000円5%0円
1,950,000円〜3,299,000円10%97,500円
3,300,000円〜6,949,000円20%427,500円
6,950,000円〜8,999,000円23%636,000円
9,000,000円〜17,999,000円33%1,536,000円
18,000,000円〜39,999,000円40%2,796,000円
40,000,000円〜45%4,796,000円

例えば、前項で課税対象となる所得金額が400万円であるとわかった場合は、所得税の金額は以下のように計算できます。

4,000,000円 × 20% – 427,500円 = 372,500円

参照:No.2260 所得税の税率|国税庁

副業による収入を事業所得として確定申告するために必要な手続き

副業で事業所得が生じる際の手続きや作業について解説します。

①開業届・青色申告承認申請書の提出

事業を始める際は、税務署に開業届(個人事業の開業・廃業等届出書)を提出します。節税効果の大きい青色申告を行いたいという方は、所得税の青色申告承認申請書もあわせて提出しましょう。

参照:[手続名]個人事業の開業届出・廃業届出等手続|国税庁
   [手続名]所得税の青色申告承認申請手続|国税庁

②帳簿の作成

事業における取引を記録するための帳簿を作成します。青色申告では、借方・貸方に分けて記載する複式簿記と呼ばれる方法で作成することが一般的です。白色申告は単式簿記と呼ばれる方法で、家計簿のような感覚で簡易的に作成することができます。

③請求書・領収証の保存

事業で発生した帳簿や書類は、法律で定められた期間保存することが求められます。保存する期間は、帳簿や書類の種類、青色申告・白色申告といった条件によって異なり、国税庁のホームページで確認可能です。

参照:記帳や帳簿等保存・青色申告|国税庁

確定申告の流れ

確定申告書の提出や納税について、実際の流れに基づいて解説します。

確定申告に必要な書類を揃える

確定申告書に必要な書類は状況によっても異なりますが、主に次の書類を準備します。

・確定申告書
・本人確認書類
・源泉徴収票
・銀行口座の情報がわかるもの(還付がある場合)
・控除証明書(控除の対象となる場合)
・収支内訳書(白色申告の場合)
・青色申告決算書(青色申告の場合)

控除証明書とは、確定申告で控除を受けるための書類であり「社会保険料控除証明書」「生命保険料控除証明書」などがあります。収支内訳書や青色申告決算書は、会計ソフトを利用して作成することが一般的です。

確定申告に必要な書類を作成する

確定申告書は以下をはじめとする方法で作成できます。

・国税庁のホームページからダウンロードして記入する
・確定申告書等作成コーナーから作成する
・税務署の相談窓口などで相談しながら作成する
・会計ソフトを利用して作成する

どの方法を選んでも構いませんが、節税効果の高い65万円の青色申告特別控除を受けるためには、e-Taxに対応している確定申告書等作成コーナーや会計ソフトを選択しましょう。

参照:【確定申告書等作成コーナー】-作成コーナートップ
   No.2072 青色申告特別控除|国税庁

確定申告書とその他の必要書類を提出する

作成した確定申告書と必要書類を、税務署への持参・郵送・e-Taxなどの方法で提出します。提出の際は、本人確認書類を提示するか、コピーを提出する必要があります。マイナンバーカードの有無によって方法が異なるため、詳しくは国税庁のホームページなどからご確認ください。

参照:〔令和4年分 所得税及び復興特別所得税の確定申告の手引き〕申告書に添付・提示する書類|国税庁

所得税を納める・還付金が入金される

所得税の納付がある場合、e-Taxのダイレクト納付や、金融機関の口座振替・クレジットカードなどの方法によって納付できます。還付金がある場合は、申告した内容に問題がなければ、確定申告書に記載した口座に自動的に振り込まれます。

参照:[手続名]国税の納付手続(納期限・振替日・納付方法)|国税庁

確定申告の期日を過ぎた場合のペナルティ

1年間で発生した所得は、翌年の2月16日から3月15日の間に確定申告します。忘れてしまった時や、過ぎてしまった時も、できるだけ早めに確定申告しましょう。

この場合は、本来支払うべき税金の他にも、無申告加算税や延滞税が発生します。加算税は、本来納付すべき税額に対し、50万円まで15%、50万円を超える部分に対して20%の割合を乗じて計算した金額の納付が必要です。

延滞税は、確定申告の期限の翌日から、本来支払うべき税金を納める日までの日数に応じて発生します。確定申告を期限内に終えられても、納付が遅れると延滞税が発生してしまうため注意しましょう。

参照:No.2024 確定申告を忘れたとき|国税庁
   No.9205 延滞税について|国税庁

経理業務を楽にするならINVOY

収入やスキルを高めるなどの目的で副業に取り組む方が増えていますが、経理業務や確定申告の手間が増え、億劫に感じているというケースも多いのではないでしょうか。

副業を行う方におすすめなのが、クラウド請求書プラットフォームの「INVOY」です。INVOYは、経理業務の効率化を目的としたサービスであり、クラウド上で簡単に請求書を発行・管理できます。

また、スマートフォンから書類を作成することもできるため、本業の合間や移動時間などにも利用可能です。

INVOYはほとんどの機能を無料で利用できるため、副業を始めたばかりという方も安心です。この機会に利用を検討してみてはいかがでしょうか。

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まとめ

副業は収入アップやスキルアップを目指す上で役立ちますが、確定申告を行う必要が生じることがあります。必要な書類や手続きを確認し、余裕を持って確定申告を終えられるようにしましょう。

また、確定申告を行う上では、請求書などの書類を正しく発行・管理することも大切です。確定申告の期限前に慌てなくて済むよう、日頃から計画的に経理業務を進めましょう。

この記事の投稿者:

shimohigoshiyuta

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