フリーランスの源泉徴収とは?計算方法や対応、注意するべきことを詳しく解説 最終更新日: 2024/04/17   公開日: 2024/04/17

フリーランスが受け取る報酬は、源泉徴収された状態で支払われることがあります。本記事では、フリーランスの源泉徴収の計算方法や注意点などについてわかりやすく解説します。

そもそも源泉徴収とは?

源泉徴収とは、給与や報酬を支払う事業者が、給料などから所得税をあらかじめ差し引いて支払う制度です。差し引いた所得税は、納税者(社員やフリーランスなど)の代わりに事業者が国に納付します。

会社員の場合、給与から徴収される所得税の金額は、1年間で発生する所得の金額に応じて決定します。源泉徴収の時点ではまだ所得の金額が確定していないため、徴収は概算で行われます。1年間の所得が確定したのちに年末調整を受けることで、これまでに支払った税額と本来支払うべき税額の差額を精算します。1年に1回会社から受け取る源泉徴収票は、1年で支払った税額などについて確認するための書類です。

フリーランスの場合は会社の年末調整がないため、自ら計算して確定申告を行うことで納税もしくは還付が生じます。自分が報酬を支払う立場である場合、自らが源泉徴収を行う側になる可能性もあります。

フリーランス(個人)の源泉徴収の対象となる所得・報酬

個人に対して支払われる所得のうち、源泉徴収の対象となるものについて紹介します。

給与所得

会社などに勤務している場合、給与や賞与に対して源泉徴収が行われます。食事手当や資格手当といった各種手当に関しても、所得税の課税対象となります。フリーランスであっても副業でアルバイトなどをしていれば、給与から金額に応じた所得税が差し引かれることがあります。

報酬

個人が以下の報酬などを受け取る際は、源泉徴収の対象となります。

・原稿料や講演料など
・弁護士、公認会計士、司法書士等の特定の資格を持つ人などに支払う報酬・料金
・社会保険診療報酬支払基金が支払う診療報酬
・プロ野球選手、プロサッカーの選手、プロテニスの選手、モデルや外交員などに支払う報酬・料金
・映画、演劇その他芸能(音楽、舞踊、漫才等)、テレビジョン放送等の出演等の報酬・料金や芸能プロダクションを営む個人に支払う報酬・料金
・ホテル、旅館などで行われる宴会等において、客に対して接待等を行うことを業務とするいわゆるバンケットホステス・コンパニオンやバー、キャバレーなどに勤めるホステスなどに支払う報酬・料金
・プロ野球選手の契約金など、役務の提供を約することにより一時に支払う契約金
・広告宣伝のための賞金や馬主に支払う競馬の賞金

参照:No.2792 源泉徴収が必要な報酬・料金等とは|国税庁

その他

これまでに紹介した給与や報酬以外にも、以下をはじめとする所得に関して源泉徴収が行われます。

・預貯金や投資信託などの利子
・配当金
・退職手当
・公的年金
・保険契約に基づく年金

源泉徴収票を受け取れるタイミング

源泉徴収票をもらえるタイミングについて、ケース別に解説します。

給与所得者の場合

会社などから給与を受け取っている社員・パート・アルバイトなどに関しては、1年間の所得が確定し、年末調整が行われた後に「給与所得の源泉徴収票」をもらえます。早ければ12月の給与明細と一緒に受け取れますが、事業者は遅くとも所得が支払われた年の翌年の1月31日までに源泉徴収票を交付しないといけないと定められています。

参照:No.7411 「給与所得の源泉徴収票」の提出範囲と提出枚数等|国税庁

退職者の場合

退職者は、最後の給与の金額が確定した後に「退職所得の源泉徴収票」をもらえます。事業者は退職後1ヶ月以内に交付しなくてはいけないと定められているため、遅くなるようであれば元の勤務先に発行を依頼しても構いません。また、一部の会社では年末に在職者の分と一緒に退職者の源泉徴収票を発行するケースもあるようです。

参照:No.7421 「退職所得の源泉徴収票」の提出範囲と提出枚数等|国税庁

再就職した場合

1年の途中で再就職すると、元の勤務先からもらった源泉徴収票を、再就職先の会社に提出することになります。1年の終わりには、再就職先の会社で年末調整を受けます。元の会社の源泉徴収票がないと、年末調整を行えない点に注意しましょう。

公務員の場合

一般的には、普通の会社員よりも公務員の方が源泉徴収票をもらえるタイミングが遅いとされています。具体的には毎年1月中旬〜下旬であるケースが多いようです。

参照:Q 源泉徴収票は、いつ頃送られてくるのでしょうか。 | 年金 | KKR-国家公務員共済組合連合会

源泉徴収の対象となる期間

1月1日から12月31日までの1年間で支払われた給与・報酬などが源泉徴収の対象となります。

実際にお金が支払われたタイミングによって、どの年の分になるかどうかが決まります。例えば「月末締め・翌月10日払い」で給与が支払われる会社の場合、12月に働いた分の給与が次の年の1月10日に支払われるでしょう。この場合は支払われるのが翌年であるため、年内の12月に働いた分であっても、当年の源泉徴収票には反映されません。

源泉徴収額の求め方・計算方法

源泉徴収額の計算方法について、所得の種類別に紹介します。

報酬の計算

弁護士や税理士、外部のフリーランスなどに対して支払う報酬は、報酬額に10.21%を乗じた金額を源泉徴収税として差し引きます。

源泉徴収税額 = 支払金額 × 10.21%

<例>1回の支払い金額が10万円の場合

10万円 × 10.21 % = 10,210円

また、1回に支払う金額が100万円を超える場合は、100万円を超える部分に対して20.42%を乗じた金額を差し引きます。100万円以下の部分に関しては、通常通り10.21%を適用して計算した金額である102,100円が課されます。

源泉徴収税額 =(支払金額 – 100万円)× 20.42% + 102,100円

<例>1回の支払い金額が200万円の場合

(200万 – 100万円)× 20.42% + 102,100円 = 306,300円

参照:No.2795 原稿料や講演料等を支払ったとき|国税庁

給与所得の計算

会社が従業員に対して支払う給与所得は、国税庁が作成する「源泉徴収税額表」によって確認します。表の左側にその月の給与の金額が、上に扶養親族等の数が記載されているため、当てはまる項目を探し、行と列が交わった場所に記載されてる税額を適用しましょう。

給与の金額は年金や健康保険料といった社会保険料を差し引いた後の金額を用います。また、1ヶ月の給与が88,000円未満の場合は扶養する親族の数にかかわらず0円であるため、パートやアルバイトだと源泉徴収税が発生しないこともあります。

表の右側にある「乙」とは、従業員が「給与所得者の扶養控除等申告書」を提出していない場合に適用される金額です。副業であるためにその勤務先で申告書を提出していない場合や、個人事業主として働いていて自ら確定申告を行う場合などには、この乙欄の金額が使われます。

参照:令和5年分 源泉徴収税額表|国税庁
関連リンク:所得税の計算方法とは?税率改定の影響や注意するべきポイントを解説!

源泉徴収票の見方

源泉徴収票を確認することで、1年間で生じた給与や税金の金額などを確認できます。それぞれの項目の意味について見ていきましょう。

支払金額

「支払金額」の項目に記載されるのは、1月1日〜12月31日に支払われた給与や賞与の合計額です。

この金額に通勤手当などの非課税所得は含まれません。通勤手当は非課税ですが、通勤手段などに応じた「非課税限度額」が定められ、限度額を超える部分に関しては課税されます。支払金額の項目には、総支給額から非課税限度額内の通勤手当を控除した残りの金額(課税支給額)が記載されます。

給与所得控除後の金額(調整控除後)

給与所得控除とは、会社員にとっての必要経費のような位置付けです。個人事業主であれば、文房具やパソコンの購入費といった事業に必要な支出を経費として計上できますが、会社員にはそれがありません。その事情を考慮して、給与所得者に対して認められている控除が給与所得控除です。

具体的には、前項の「支払金額」から法律で認められている給与所得控除の金額を差し引いた金額が「給与所得控除後の金額(調整控除後)」に記載されます。

なお、会社で年末調整を行わなかった場合にはこの項目は空欄となります。

参照:No.1410 給与所得控除|国税庁

所得控除の額の合計額

会社員は前項で解説した給与所得以外にも、さまざまな控除を受けられます。例えば、健康保険料や厚生年金保険料などを支払った場合には、社会保険料控除としてその金額を差し引き、課税対象となる所得を減らすことができます。

また、生命保険の保険料を支払った時に受けられる「生命保険料控除」など、個人の事情に応じたさまざまな種類の所得控除があります。この「所得控除の額の合計額」とは、それらの控除の額の合計です。前項と同様に、会社で年末調整を行わなかった場合にはこの項目は空欄になります。

源泉徴収税額

会社で年末調整をした場合は、給与所得控除や所得控除を反映して計算した金額を元に年間の源泉徴収税額が記載されます。会社で年末調整をしなかった場合、ただ単に給与から差し引かれた源泉徴収税額の合計額が記載されます。

フリーランスの源泉徴収で注意するべきポイント

フリーランスが源泉徴収について注意したいポイントを5つ紹介します。

復興特別所得税も含まれる

復興特別所得税とは、東日本大震災からの復興のために必要な財源を確保する目的で設けられた税金です。2013年〜2037年に生じる所得に関しては、所得税だけではなく、この復興特別所得税も同時に発生することとなります。

個人に対して発生する報酬について「10.21%(100万円を超える部分に対して20.42%)」という数字を用いて所得税の計算を行いました。このうち0.21%(0.42%)は復興特別所得税の税率を表しています。

参照:個人の方に係る復興特別所得税のあらまし|国税庁

消費税を除いた金額を対象にできるケースがある

個人に対して支払われる所得税は、消費税が含まれた報酬の金額に規定の割合を乗じることで計算を行います。

しかし、請求書などで報酬の金額と消費税の額が明確に区分されている場合には、消費税の額を除いた報酬の金額だけを源泉徴収の対象とすることも可能です。

例えば、報酬が11万円(そのうち消費税が1万円)であったと仮定すると、以下のいずれかの方法で源泉所得税額を計算することになります。

<例①>消費税込みの金額で計算する場合の源泉所得税額
110,000円 × 10.21% = 11,231円

<例②>消費税抜きの金額で計算する場合の源泉所得税額
100,000円 × 10.21% = 10,210円
参照:No.6929 消費税等と源泉所得税及び復興特別所得税|国税庁

確定申告を忘れずに行う

フリーランスが確定申告を行う際は、源泉徴収によって差し引かれた所得税の金額を確定申告書に記載します。

これまでに解説してきた通り、個人に対して支払う報酬は、報酬に対して一定の割合を乗じて求めた所得税が差し引かれています。多くのケースでは所得税を支払いすぎになっているため、確定申告によって還付を受けられます。

フリーランスには会社員が受けられる年末調整がないため、確定申告を行わないとこの還付を受けることができません。請求書や取引先からもらう支払調書などを参考にしながら、忘れずに確定申告を行いましょう。

関連リンク:
個人事業主は確定申告が必要?必要書類や注意点、流れを紹介
確定申告のやり方は?【初心者向け】流れ、必要書類、対象者、納税をわかりやすく紹介

フリーランスが源泉徴収義務者になるケースを把握する

フリーランスなどの個人であっても、従業員を雇って給与を支払ったり、誰かに仕事を発注して報酬を支払ったりすると、源泉徴収を行う義務のある「源泉徴収義務者」となります。

ただし、以下のいずれかのケースに該当する個人に関しては、給与や報酬を支払う立場であっても源泉徴収を行わなくて構いません。

・常時2人以下の家事使用人(お手伝いさんなど)だけに給与を支払っている方
・給与の支払いがなく、弁護士や税理士などの報酬だけ支払っている方

なお、フリーランスが新しくアルバイトを雇うなどの理由で源泉徴収義務者となる場合、所轄の税務署に「給与支払事務所等の開設届出書」を提出する必要があります。

参照:No.2502 源泉徴収義務者とは|国税庁

納付期限は毎月(特例は年2回)

源泉徴収義務者は、差し引いた所得税を税務署もしくは金融機関で納付しなければなりません。

納付する際は、収める金額について記載した「所得税徴収高計算書」を作成して提出します。所得税徴収高計算書は税務署などで入手できるほか、e-Taxを通じて作成・提出することも可能です。

納付期限は、給与や報酬を実際に支払った月の翌月10日までです。しかし、給与の支給人員が常時10人未満の源泉徴収義務者に関しては、半年分まとめて納付できる特例が設けられています。その場合の納付期限は以下の通りです。

・1月から6月までに源泉徴収した所得税:7月10日
・7月から12月までに源泉徴収した所得税:翌年の1月20日

なお、制度を利用するためには税務署にあらかじめ「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書」を提出しておく必要があります。

参照:No.2505 源泉所得税及び復興特別所得税の納付期限と納期の特例|国税庁

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まとめ

源泉徴収とは、あらかじめ所得税が差し引かれた状態で給与や報酬が支払われる制度です。フリーランスが取引先から受け取る報酬も業務内容などによって源泉徴収の対象となり、所得税が差し引かれて振り込まれます。

報酬にかかる源泉徴収税は一定の割合を使って金額が計算されるため、税金を払い過ぎてしまう可能性があります。払い過ぎた税金は確定申告を行うことで還付を受けましょう。

この記事の投稿者:

shimohigoshiyuta

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