個人事業主が引っ越した際は、開業届(個人事業の開業届出・廃業届出等届出書)などの書類が必要です。また、状況に応じてその他の書類が必要となることもあります。本記事では、個人事業主の住所変更で必要な書類やその書き方などについてわかりやすく解説します。
目次
個人事業主の引越しや住所変更で必要な手続き
自宅を事業所としている個人事業主が引っ越したり、事業所の住所を変更したりした際は、移転から1ヶ月以内に新しい住所を記載した開業届(個人事業の開業届出・廃業届出等届出書)を税務署に再度提出します。
個人事業主の納税地を移転する場合の手続き
個人事業主の住所変更にあたっては、開業届だけではなく「所得税・消費税の納税地の異動又は変更に関する申出書」を提出することがあります。個人事業主の手続きを状況別に整理すると、以下のようになります。
・自宅だけ移転、事務所は変わらず:手続き不要
・自宅は変わらず、事務所は移転:納税地の変更、開業届の変更、社会保険等の変更など
・自宅で開業している場合:納税地の変更、開業届の変更、社会保険等の変更など
このほかにも、事業用に使っている銀行口座やクレジットカード、スマホ、車両など、状況に応じて必要な手続きを行いましょう。
なお、2023年1月1日以降は、新しい納税地を確定申告書に記載して提出すれば、原則として「所得税・消費税の納税地の異動又は変更に関する申出書」が不要となりました。これは提出された確定申告書の内容をもとに、変更後の納税地を把握できるためです。
参照:A1-6 所得税・消費税の納税地の異動又は変更に関する手続|国税庁
納税地の特例等に関する手続の変更について|国税庁
そもそも納税地とは
納税地とは一般的には住所地のことであり、日本国内に住んでいる人は原則としてその住所が納税地になります。
国内に住所ではなく居所がある人は、その居所地が納税地になります。ここで言う居所とは、住所ではないものの、長期間継続して住んでいる場所を指します。
そのほかにも、住所と居所の両方がある人は、居住地を納税地として選択できるなどの特例があります。この特例については、本記事の後半で詳しく解説します。
また、国税庁の「税務署の所在地などを知りたい方」のページでは、納税地から管轄の税務署を検索できます。
参照:No.2029 確定申告書の提出先(納税地)|国税庁
税務署の所在地などを知りたい方|国税庁
納税地の変更がある場合の書類の書き方
納税地に変更があった場合、変更後の納税地を管轄する税務署に「所得税・消費税の納税地の異動又は変更に関する届出書」を提出します。税務署に直接行って書類をもらったり、国税庁のホームページからダウンロードして入手したりする方法があります。また、e-Taxから作成・提出することも可能です。
書類の「納税地」の欄には変更前の納税地を記入し、その下の「異動・変更後の納税地」の欄に新しい納税地を記入します。
「振替納税を引き続き希望する」の欄は、以前から振替納税を利用している場合で、新しい納税地でも引き続き振替納税をしたい場合に「はい」を選択します。「はい」を選択すると同じ銀行口座から引き落としされますが、希望しないと再度振替納税の手続きが必要になるので注意しましょう。
提出の期限は設けられていませんが、納税地の変更後は速やかに提出するようにしましょう。
参照:A1-6 所得税・消費税の納税地の異動又は変更に関する手続|国税庁
振替納税をしている場合の提出書類
銀行口座からの引き落としによって納税する手続きを振替納税と言います。振替納税できるのは本人名義の口座だけであり、それ以外の口座を利用することはできません。また、管轄の税務署が変更にならなければ、振替納税が次回以降も自動で行われます。
税務署が変更になった場合、前項で解説した方法によって振替納税を希望する旨を記載して書類を提出します。「預貯金口座振替依頼書」を変更後の税務署に提出することでも手続きを依頼することが可能です。
また「預貯金口座振替依頼書兼納付書送付依頼書(振替依頼書)」をe-Taxで提出することもできます。
このほかにも、都道府県税事務所や年金事務所、労働基準監督署などでも手続きが必要な場合があります。詳細は管轄の公的機関などにもご確認ください。
参照:G-2-1 申告所得税及び復興特別所得税、消費税及び地方消費税(個人事業者)の振替納税手続による納付|国税庁
個人事業主の事業所の住所を変更する場合の手続き
個人事業主の事業所の住所が変更になった際は、開業届(個人事業の開業届出・廃業届出等届出書)を税務署に提出します。開業届は開業の際も提出したものですが「開業届出・廃業届出等」とある通り、変更事項が生じた時や、廃業する時も使える書類です。
参照:A1-5 個人事業の開業届出・廃業届出等手続|国税庁
事業所の住所変更がある場合の書類の書き方
書類の「納税地」の欄には、変更前の納税地の住所を記載します。書類の下部に「事業所等を新増設・移転・廃止した場合」という項目があるので、「新増設・移転後の所在地」に新しい住所を、「移転・廃止前の所在地」の欄に古い住所を記載しましょう。
また「届出の区分」の項目で「開業」と「移転」にチェックを入れます。
開業届は「所得税・消費税の納税地の異動又は変更に関する届出書」と同じく、税務署や国税庁のホームページでダウンロードできるほか、e-Taxで作成・提出することが可能です。
関連リンク:開業届って何?書き方や提出方法、メリット・デメリットまで解説
再提出期限を過ぎても提出できる?
期限は移転から1ヶ月以内と定められていますが、過ぎた場合の罰則については定められていません。1ヶ月を過ぎてしまっても、気付いた時点で早めに提出するようにしましょう。
給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書の提出は必要?
「給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書」とは、給与の支払いが発生するような事務所を開設・移転・廃止する場合に、税務署に提出する書類です。
事業所を移転する際は「個人事業の開業・廃業等届出書」を提出するため、従業員に給与を支払う個人事業主であっても、この「給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書」を改めて提出する必要はありません。
参照:A2-7 給与支払事務所等の開設・移転・廃止の届出|国税庁
労働保険・社会保険に加入している場合の提出書類
労働保険や社会保険に加入している場合、以下の届出を提出します。
・健康保険・厚生年金保険事務所関係変更(訂正)届出書
・適用事業所所在地・名称変更(訂正)届
書類は日本年金機構のホームページからダウンロードできます。提出先は、事業所の所在地を管轄する事務センター(年金事務所)です。郵送や窓口への持参といった方法のほか、電子申請による手続きも可能です。
参照:
事業主の変更や事業所に関する事項の変更(訂正)があったとき|日本年金機構
適用事業所の名称・所在地を変更するとき(管轄内の場合)の手続き|日本年金機構
個人事業主で海外に住所変更する場合の手続き
海外に引っ越しをして日本の住所がなくなると、所得税法における非居住者となります。非居住者になると、家族や友人などから手続きを代行する納税管理人を決め、決定後は
「所得税・消費税の納税管理人の届出書」を納税地を管轄する税務署に提出します。
この届出書を提出すると、税務署は税務に関連する書類を納税管理人に送付します。しかし、確定申告書は非居住者の納税地を管轄する税務署に提出することが求められます。
非居住者であっても、日本国内で稼得した所得(国内源泉所得)であれば、日本での課税対象と見なされます。また、帰国して居住者に戻るために納税管理人を解任する場合は「所得税・消費税の納税管理人の解任届出書」を提出する必要があります。
参照:
No.1923 海外勤務と納税管理人の選任|国税庁
No.2878 国内源泉所得の範囲(平成29年分以降)|国税庁
個人事業主の納税地の特例について
個人事業主の納税地の特例として、住所と居所の両方がある人は、住所の代わりに居所を納税地にすることが認められています。
また、国内に事業所がある場合は、住所や居所の代わりに事業所がある場所を納税地にすることができます。
この特例を利用するためには、本来の納税地を管轄する税務署に「所得税・消費税の納税地の異動又は変更に関する届出書」を提出する必要がありましたが、2023年1月1日以降の変更に関しては提出が不要になりました。
参照:No.2029 確定申告書の提出先(納税地)|国税庁
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まとめ
個人事業主が引っ越した場合、その内容に応じて「個人事業の開業届出・廃業届出等届出書」などの書類を提出する必要があります。
振替納税や労働保険・社会保険への加入など、個人事業主の状況に応じて提出する書類が異なります。従業員がいる場合、手続きを適切に行わないと従業員に対しても影響が発生することがあります。必要な書類を早めに確認し、確実な手続きを行うよう心がけましょう。
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