個人事業主はどの社会保険に加入する?種類や保険料、加入方法などを詳しく解説 最終更新日: 2023/11/24   公開日: 2023/11/24

個人事業主は会社員と違って加入保険について自分で検討する必要があります。そのため、個人事業主の中には保険の種類や料金、加入方法などを詳しく知りたい人も多いはずです。本記事では個人事業主の保険について解説していきます。

個人事業主の社会保険はどうなる?

日本では国民皆保険という制度が採用されているため、全ての国民が社会保険(健康保険)、もしくは国民健康保険のいずれかに加入しなければなりません。

日本における健康保険制度には以下の5種類があります。

・健康保険…企業勤めの社員が対象
・共済組合…公務員、および私学の教職員が対象
・船員保険…船員が対象
・後期高齢者医療制度…75歳以上、および65~74歳で一定の障害のある方が対象
・国民健康保険…上記以外の人が対象

上記の健康保険制度の中で個人事業主が対象となる保険は国民健康保険になります。

参照:医療保険制度の体系 | こんな時に健保 | 全国健康保険協会
関連リンク:個人事業主とは?フリーランスや自営業との違いやメリット・デメリットも解説!

会社員が加入する社会保険との違い

社会保険(健康保険)は企業に勤める社員が加入する保険で、厚生年金保険や介護保険などと合わせて社会保険と呼ばれています。

一方で、個人事業主が加入する国民健康保険は居住する地方自治体が運営しています。会社勤めをしていない人や無職の人など、社会保険に加入していない全ての人が対象となる保険です。

社会保険と国民健康保険の違いを以下の表にまとめましたので確認してみてください。

個人事業主会社員
保険の種類国民健康保険社会保険(健康保険)
保険料の負担割合全額自己負担労使折半
医療費負担3割負担3割負担
出産手当・傷病手当なしあり
保険料の算出前年の所得により算出 
※世帯人数により増額    
一定期間の給与等の平均額から算出
※扶養人数による増額なし
支払い方法自分で支払いを行う給与から天引き

国民健康保険は社会保険の対象ではないからと自動で加入となるものではなく、自分で加入手続きを行わなければなりません。

保険料は住んでいる地域や所得によって異なります。また、国民健康保険は社会保険と同様に医療費の自己負担額は3割ですが、出産手当や傷病手当などはありません。

個人事業主が加入可能な健康保険の種類

個人事業主の多くが国民健康保険に加入していますが、場合によっては別の健康保険への加入も認められます。

個人事業主が国民健康保険以外に加入対象となる保険は以下になります。

・家族の社会保険に扶養家族として加入
・健康保険組合などの任意継続
・各団体の国民健康保険組合

上記の保険それぞれに申請期限や所得などの加入条件があり、審査にパスしなければ加入が認められません。

個人事業主の健康保険①国民健康保険

国民健康保険は他の健康保険に加入しておらず、かつ該当する都道府県の区域内に住所を有する人が対象となります。

会社員から個人事業主に転身した場合も国民健康保険への加入を行うケースが多いです。国民健康保険への加入手続きは会社を退職した日の翌日から14日以内に行わなければなりません。

国民健康保険加入の手続きには以下の書類が必要です。

・健康保険の資格喪失証明書
・マイナンバーカード(マイナンバーを確認できるもの)
・本人の身元確認ができるもの

保険料は納税者の前年所得や自治体ごとに異なり、年間納付額のお知らせは翌年1月~2月上旬頃に送られてきます。会社員が加入する社会保険は給与から保険料が天引きされますが、国民健康保険は自分で支払いを行わなければなりません。

参照:会社を退職して(又は被扶養者ではなくなったので)国民健康保険に加入したいのですが。|横浜市

保険証発行までの流れ

国民健康保険への加入手続きは居住する市区町村役所の窓口で行うのが一般的です。ただし、市区町村によっては郵送で手続きを受け付けています。

国民健康保険証は必要書類がそろっており、手続きが問題なく完了すればその日のうちに窓口で発行されることが多いと見受けられます。ただし、即日発行している自治体であっても、代理人が申請を行った場合には保険証は後日郵送となることもあります。

また、自治体によっては申請手続きに問題がなかった場合でも、世帯主あてに保険証を一律で簡易書留で郵送しています。不在が続いたり、郵便の受け取りを忘れたりすると保険証は市区町村の窓口に戻され、本人確認資料を持参して窓口に取りに行くことになります。

保険証の発行を急いでいる人は市区町村役所の窓口で、もっとも早く保険証が発行される方法を確認しておくと安心です。

保険料

国民健康保険料は加入者全て同額ではなく、地域ごとに異なる他、主に以下3つの項目で決定されます。

・医療分保険料
・後期高齢者支援金分保険料
・介護分保険料

この3つの保険料の合計が年間の国民健康保険料となります。

なお、医療分保険料と後期高齢者支援金分保険料は加入者全員が対象となりますが、介護分保険料は40歳から64歳の加入者のみ対象です。39歳以下の加入者よりも負担が増大します。

各保険料の計算は以下の通りになります。

各保険料=①均等割+②所得割
①均等割:均等割額 × 加入者数
②所得割:所得割算定基礎額(※)× 所得割額
※所得割算定基礎額は、前年の年間収入から必要経費(給与所得控除、公的年金控除を含む)を差し引いた所得金額から基礎控除(43万円)した金額。

均等割額や所得割額については各保険料により変わります。

参照:保険料の計算 | 国民健康保険料 | 渋谷区ポータル

また、地域によっては、均等割と所得割の他に平均割と資産割が含まれることもあります。

参照:国民健康保険税の算定について | 茅野市ホームページ

個人事業主の健康保険②健康保険組合などの任意継続

個人事業主は健康保険組合などを任意継続するという選択ができることもあります。任意継続できれば扶養家族分の保険料を支払わなくてもよいため、扶養家族が多い場合は国民健康保険に加入するよりも保険料が割安になることもあります。

健康保険組合などの任意継続が認められる条件として主に以下2つが挙げられます。

・該当の健康保険に2カ月以上継続して加入していた
・退職日から20日以内に継続の申請を行う

ただし、任意継続が認められたとしても最長で2年と定められています。2年を過ぎると、国民健康保険に加入しなければなりません。

参照:任意継続の加入条件について | よくあるご質問 | 全国健康保険協会
   加入期間について | よくあるご質問 | 全国健康保険協会

任意継続をする方法

会社員時代に加入していた健康保険を任意継続するには退職日の翌日から20日以内に申請しなければなりません。この期間を過ぎると申請が認められなくなるため注意してください。

任意継続の手続きの流れは以下になります。

1. 任意継続要件の確認を行う
2. 任意継続被保険者資格取得申出書を取得し、必要項目を記入する
3. 居住地域を管轄する組合、もしくは協会に任意継続被保険者資格取得申出書を提出する

保険料

前述のように任意継続が認められれば、会社員時代に加入していた健康保険を継続できます。しかし、保険料は会社との折半にならないため自分で全額支払わなければなりません。そのため、会社員時代よりも自己負担額が大きくなります。

任意継続期間の2年を経過すると、任意継続被保険者資格喪失通知書が送られてきます。この通知書を受け取ったら、指示に従って保険証を期日までに返却しましょう。

なお、任意継続では保険料の支払いが1日でも遅れると脱退となりますので注意してください。

個人事業主の健康保険③国民健康保険組合

個人事業主はお住まいの地域や職業によっては国民健康保険組合に加入できます。

該当の国民健康保険組合の加入条件を満たしていることを確認し、事業の業態に関する書類や住民票、資格取得届など必要書類を組合に提出します。審査にパスした場合、後日、保険証が郵送で送られてきます。

国民健康保険組合は国民健康保険に加入するよりも費用を抑えられたり、国民健康保険にはない給付を受けられたりすることもありますので、ご自身が対象となる保険はないか確認してみてください。

地方自治体ごとの国民健康保険組合

各地方自治体には前述の健康保険以外にも、地方自治体や職種ごとに構成された健康保険組合が存在します。

お住まいの地域と健康保険組合と検索を行うことで各自治体の国民健康保険組合の存在を知ることができます。

(一社)全協ホームページ

東京美容国民健康保険組合

東京美容国民健康保険組合とは美容業界における唯一の公法人組合です。この保険組合は東京都内の事業所で美容に関する業務に従事しており、かつ東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県、茨城県、山梨県に居住していることが条件です。

出産育児金や高額療養費、入院手当金なども給付されるため、国民健康保険よりも手厚い保証となります。

保険料は所得関係なく、一律となっています。

事業主組合員/月額19,000円(内訳:医療分15,500円・後期高齢者支援金分3,500円)
同一世帯家族/月額8,500円(内訳:医療分5,000円・後期高齢者支援金分3,500円)
未就学児/月額確認5,000円

※一人当たり保険料

介護保険料/月額満40歳から64歳までの被保険者
(組合に加入するすべての人)3,000円        
※2023年10月時点の情報を元に掲載
参照
東京美容国民健康保険組合
保険料について|東京美容国民健康保険組合

文芸美術国民健康保険組合

文芸美術健康保険組合とは法人化を行わず、文芸や美術、著作などに従事する個人事業主を対象としている保険組合です。組合文芸美術国民健康保険組合に加入するにはこの組合を構成している団体のいずれかに加入していることが前提となります。

加盟団体の例として以下が挙げられます。

・NHK専属作家協会
・日本アニメーション協会
・東京イラストレーターズ・ソサエティ
・アンチモニー型工芸組合
・いけばな協会
・NHK専属作家協会

その他の加盟団体についてはこちらのリンクから確認してください。

保険料は所得関係なく、一律となっています。

事業主組合員/月額24,800円(内訳:医療分19,600円・後期高齢者支援金分5,200円)
同一世帯家族/月額14,800円(内訳:医療分9,600円・後期高齢者支援金分5,200円)
未就学児/月額確認年額12,000円の保険料軽減

※一人当たり保険料

介護保険料/月額満40歳から64歳までの被保険者
(組合に加入するすべての人)5,700円        
※2023年10月時点の情報を元に掲載
参照
文芸美術国民健康保険組合の成り立ち | 文芸美術国民健康保険組合
保険料について | 文芸美術国民健康保険組合

個人事業主の健康保険④扶養に入る

個人事業主として開業している方であっても所得によっては家族が加入している社会保険の扶養に入れます。

個人事業主が家族の扶養に入るには主に以下の条件があります。

・民法上の配偶者である
・その年の12月31日時点に納税者と生計を一にしている
・その年の合計所得金額が48万円(基礎控除額)以下(給与所得のみの場合は103万円以下)である

参照:被扶養者とは? | こんな時に健保 | 全国健康保険協会

個人事業主が納付する健康保険料

個人事業主は健康保険料や年金を自身で納付しなければなりません。ここでは、個人事業主が納付すべき健康保険料や年金について確認していきましょう。

〇健康保険(医療保険)

・国民健康保険
保険料は世帯収入に応じて決定され、全額自己負担となる

・その他健康保険
保険ごとに保険料が異なる

〇年金保険
・国民年金
月額16,540円を支払わなければならない(1年分をまとめて支払うことも可能)
・国民年金基金(※任意)
最大月額68,000円の掛金を上乗せして支払うことで受給年金額を増やせる
・付加年金(※任意)
付加保険料(400円)を上乗せして収めることで受給年金額を増やせる

参照:国民年金保険料|日本年金機構

確定申告について

会社員は税金を差し引いた分の給与が振り込まれるのに対し、個人事業主は毎年自分で確定申告を行って納税しなければなりません。所得税は毎年の所得額に応じて決まり、自分で売上から経費や保険料を差し引いて算出する必要があります。

確定申告は1月1日〜12月31日までの所得に関する申告書を翌年の2月16日~3月15日までに税務署に提出します。ただし、社会情勢によっては確定申告の期間が延長されることもあります。

関連リンク
個人事業主にかかる所得税はいくら?計算方法や節税のための確定申告のポイントを解説
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まとめ

個人事業主は会社員とは異なり自分で保険に加入しなければなりません。個人事業主の多くが国民健康保険に加入していますが、本記事で見てきたように国民健康保険以外にも選択できる保険はあります。

ご自身の状況や扶養家族の有無、保険料などを考慮し、自分に合った保険を検討してみましょう。

この記事の投稿者:

shimohigoshiyuta

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