年末調整と確定申告の違いとは?時期や対象者、必要となるケースについて解説! 最終更新日: 2023/09/23   公開日: 2023/09/23

会社員の方の多くは、年末調整で所得税の計算を行い、還付を受けることも珍しくありません。しかし、年末調整では適用にならない所得控除もあるため、必要に応じて確定申告を行うことで、さらなる節税につながる場合もあります。ここでは、年末調整と確定申告の違いや、それぞれの対象者、必要性についてご紹介します。

年末調整と確定申告の違いとは?

まず押さえておきたいポイントは、年末調整も確定申告も、どちらも所得税に関わる手続きであり、収入のある方はいずれかの方法で所得税を確定し税金を適正に納めなければなりません。年末調整と確定申告は手続きの方法や内容が異なるため、その違いを整理しておきましょう。

年末調整は、一般的な会社員が対象となる手続きで、それを先導して行うのは会社側になります。多くの会社員は、実は毎月の給与から所得税が天引きされ、本人に代わり会社が税金を納めています。これを、源泉徴収と呼びます。ただ、天引きされる金額は概算であり、正しい金額ではありません。なぜなら、所得税は1年間の給与が確定しなければ本来の適正な税額が分からないからです。そこで、会社は年末に1年間の給与が確定した段階で個々の所得税を計算し、納めすぎた税金があれば還付、逆に足りなければ追加徴収を行います。これが、年末調整です。

個人事業主や自営業の場合は、毎年確定申告で所得税を算出し、納める決まりとなっています。会社とは違い、1年間の所得を計算し、自分で所得税を算出して納める仕組みです。そのため、会社員が毎月天引きされる所得税とは違い、個人事業主や自営業者は基本的には一括で1年分の所得税を支払います。

会社員の中には、年末調整を行った上で確定申告も必要になる方もいます。なぜなら、年末調整では会社から支払われる所得しか対象にならないからです。家賃収入や農業収入、副業など会社の給与以外の収入がある場合には、確定申告ですべての所得の申告をする必要があります。

年末調整と確定申告が行われる時期

年末調整は、その年の1月1日から12月31日までの給与収入をもとに行います。言い換えれば、12月の給与が確定しなければ、年末調整を行うことができません。したがって、時期としては12月中に年末調整をし、12月か翌年の1月に還付または追加徴収を行うのが一般的です。

所得税の確定申告は、毎年2月16日~3月15日の1ヶ月間が受付期間となっています。年末調整と同じく、対象となる期間は前年の1月1日~12月31日までの所得です。

年末調整の対象者は?

年末調整の対象者は、会社から給与を支払われている会社員、パート、アルバイト等です。しかし、会社員であっても、給与総額が2,000万円を超える方や災害減免法によって所得税の猶予や還付を受けている方は対象外となります。

年末調整の時期は、基本的には年末ですが、退職等の事情により年の途中で行われる場合もあります。以下に該当する場合は、年末以外のタイミングで年末調整をすることとなるでしょう。

・海外への転勤により非居住者になる人
・死亡で退職した人
・再就職の予定がない、著しい心身の障害のために退職した人
・12月の給与を受け取ったあとで退職した人
・パート等が退職し、年間の給与総額が103万円かつ他の勤務先から給与を受ける予定のない人

これらに該当する場合は、年の半ばでも年末調整が行われます。

確定申告の対象者は?

確定申告の対象者は、基本的には個人事業主や自営業者、フリーランス等の事業所得のある人です。そして、会社員のうち2,000万円以上の給与収入がある人、副業で年間20万円以上の所得がある人も対象となります。

また、医療費控除や寄付金控除などの、年末調整では適用されない控除がある場合には、会社員で年末調整をした後でも確定申告によって所得税の還付が受けられる場合があります。

年末調整と確定申告の両方が必要なケース

ここまででご紹介したように、会社員の場合は年末調整をした後でも確定申告を行うケースが珍しくありません。特に以下に当てはまる場合は、年末調整と確定申告の両方が必要になります。

給与所得以外で20万円以上の所得がある会社員

近年は、副業を認める会社も増えていることから、このケースに該当する人も多くなっていると考えられます。休日はフリーランスとして働いたり、家賃収入を得たりと、働き方はそれぞれありますが、会社の給与以外の所得が年間20万円を超える場合は確定申告をしなければなりません。

この20万円とは、必要経費を差し引いた金額となるため、たとえ収入が20万円を超えていても経費で所得が20万円を下回る場合は確定申告の必要がありません。

副業でパートやアルバイトをしている会社員

休日に個人で事業を行うのではなく、他の会社にアルバイトやパート勤務している場合は、2ヶ所の会社から給与の支払いを受けている状況となります。どちらの会社も、給与の支払い時には所得税が天引きされた状態になってはいるものの、年末調整が行えるのは本業の会社のみとなります。したがって、アルバイトやパートで雇われている会社からは年末調整されません。年末調整されなかった給与の所得および退職所得以外の所得金額との合計が20万円を超える場合は確定申告が必要です。

雑所得に当てはまる所得がある人

ネットオークションやフリマサイトなどで、使わなくなったものを売買する人が増えました。基本的に、古着や家財などを売って個人間で取引をするのは、事業として行わない限りは非課税です。つまり、この場合は確定申告が必要ではありません。

しかし、以下のようなケースは雑所得に分類され、確定申告が必要になります。

・自家用車等のレンタルで得た所得
・ベビーシッター、家庭教師などのサービスで受け取った所得
・暗号資産の売却等で得た所得
・日常利用ではない衣服や雑貨、家電などの売却で得た所得

これらを提供して得た所得については、雑所得として計上し確定申告をする必要があります。

年末調整や確定申告で受けられる所得控除

年末調整や確定申告では、所得控除によって所得税を抑えることが可能です。所得控除は全部で15種類ありますが、種類によっては年末調整では適用にならず確定申告のみ行えるものもあるため注意が必要です。

物的控除

以下の表に記載する7つが物的控除に分類されます。

控除の種類内容、条件年末調整
の適用   
確定申告の適用 
雑損控除災害や盗難で資産が損害を受けた場合に適用される ×
医療費控除納税者本人と生計を一にする家族が一定以上の医療費を支払った場合に受けられ る×
寄付金控除国や地方公共団体などに寄付を行った場合に適用される×
社会保険料控除健康保険料(税)や国民年金保険料などの公的な保険料を支払ったときに受けられる
※生計を一にする配偶者や子ども、親族の公的な保険料を支払った場合も含められる
※生計を一にする配偶者や子ども、親族の公的な保険料を支払った場合も含められる    
小規模企業共済等掛金控除小規模企業共済などで支払った掛金の全額が差し引かれる
・企業型DC、iDeCo、障害者扶養共済制度なども含む
生命保険料控除民間の保険会社に支払った生命保険料や介護医療保険料、個人年金保険料などを支払った場合に適用される
地震保険料控除特定の損害保険のうち、地震による損害部分の保険料や掛金を支払った場合に受けられる

人的控除

続いて、人的控除についても見てみましょう。

控除の種類内容、条件年末調整の適用確定申告の適用
ひとり親控除同一生計の子を扶養していて、納税者本人の合計所得金額が500万円以下の単身者は35万円の控除が受けられる
※婚姻歴や性別は問わない
寡婦控除原則、その年の12月31日時点で「ひとり親控除」に該当せず、次のいずれかに当てはまる場合は27万円の所得控除が受けられる
夫との離婚後婚姻をしておらず、扶養親族がいて、合計所得額が500万円以下である
夫との死別後婚姻をしていないまたは夫の生死が明らかでない人で、合計所得金額が500万円以下である      
勤労学生控除勤労学生で、その給与収入が130万円以下である
障害者控除納税者本人や配偶者、扶養親族が障害者である場合、障害者1人あたり27万円(特別障害者は40万円)の控除が受けられる
配偶者控除合計所得金額が1,000万円未満の納税者の、配偶者の給与収入が103万円以下の場合に、13万円~48万円の範囲内で控除が受けられる
配偶者特別控除合計所得金額が1,000万円未満の納税者の、配偶者の給与収入が48万~133万円以下の場合などに、1万円~38万円の範囲内で控除が受けられる
扶養控除一定の所得以下の子どもや親、親族を養っている場合に控除が受けられる
基礎控除合計所得金額2,400万円以下の場合、48万円の控除が受けられる
合計所得金額が基準より多ければ控除額が減る、もしくは受けられない
参照:No.1100 所得控除のあらまし|国税庁

確定申告だけで受けられる所得控除

以上の表のように、所得控除には年末調整で適用外となるものもあるため注意しましょう。医療費控除、雑損控除、寄付金控除については、確定申告での申請が必要になります。

医療費控除

医療費控除は、自分や生計を同じくする家族に一定額以上の医療費を支払った場合に受けられる控除です。一定額とは10万円、もしくは合計所得金額200万円未満の場合は合計所得金額の5%となります。

控除の計算式は以下のとおりです。

支払った医療費(上限200万円)-保険会社から補填された保険金等-10万円

もしくは

合計所得金額200万円未満の場合は合計所得金額の5%

寄付金控除

寄付金控除には、ふるさと納税も含まれます。控除額の計算は、以下のとおりです。

寄付をした金額-2,000円
参照:総務省|ふるさと納税のしくみ|税金の控除について

しかし、控除される金額には上限があり、納税者本人の年収や家族構成によっても変わるため、あらかじめ控除額シミュレーションで確認されることをおすすめします。確定申告時には、国税庁のWebサイトのツールを用いると便利です。

雑損控除

雑損控除の計算式は以下のとおりです。以下のいずれかのうち、多い金額の方を適用できます。

1.(損害金額+災害等関連支出の金額-保険金等の額)-(総所得金額等)×10%
2.(災害関連支出の金額-保険金等の額)-5万円
出典:国税庁「No.1110 災害や盗難などで資産に損害を受けたとき(雑損控除)」より

損害金額については、国税庁の提示する「合理的な計算方法」で求めることが可能です。詳しくは国税庁のWebサイトを確認しましょう。

参照:Ⅰ‐2 雑損控除の適用における「損失額の合理的な計算方法」|国税庁

年末調整や確定申告で受けられる税額控除

税額控除とは、算出した納税額から直接差し引くことのできる控除のことをいいます。住宅ローンがこれにあたり、会社員の場合は初年度のみ確定申告が必要ですが、それ以降は年末調整で申請できます。

住宅ローン控除は、住宅ローンを利用して住まいを取得または増改築した時に受けられる控除です。控除額については住み始めた年等で変わってきます。

確定申告に使う書類はシステムで管理するのがおすすめ

確定申告は、初心者にとってはなかなか分かりにくい部分も多々あり、自分の行う計算が間違っていれば正しい税額を納めたり還付してもらったりすることができません。近年は、必要な情報だけ入力すればシステムが自動的に計算をしてくれるなど、便利なものも用いられるようになっており、忙しい人や不安な人にとっては安心できる存在です。確定申告に使う書類はシステムで管理できていると、最低限の入力で済むなど業務も効率化できます。ぜひ、システムの導入を検討してみてはいかがでしょうか。

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まとめ

所得税は、収入のある方のほとんどが納めなければならない税金です。その額は決して少なくありません。法律で認められている控除の仕組みをよく知ることは、節税にもつながり、知らずにそのままにしておけば損をしてしまうこともあります。年末調整では適用にならない控除もあるため、確定申告との違いを理解して、必要に応じて確定申告も検討しましょう。

この記事の投稿者:

shimohigoshiyuta

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