請求書の管理 棚卸しとは?目的や棚卸し作業のやり方、評価方法を解説 最終更新日: 2023/06/24   公開日: 2023/06/24

棚卸しとは、商品の在庫数を確認することで、正しい棚卸資産の金額を把握するために行われる作業です。本記事では、棚卸しの目的ややり方、評価方法などについてわかりやすく解説します。

棚卸しとは

棚卸しとは、店舗や倉庫などで保有している商品や原材料の数量・状態について調査することです。品目ごとに一つ一つ確認し、棚卸表と呼ばれる書類に記入していきます。

棚卸の時期や頻度はどのくらい?

企業が決算を行う時は、倉庫などにある売れ残った商品の価値である「期末棚卸高」を把握することが必要です。そのため、最低でも年に1回は棚卸しをすることになります。

しかし、年に1回しか棚卸しを行わないと、帳簿とのズレに気づくのが遅れたり、在庫の商品を適切に管理したりすることが難しくなる可能性があります。事業の規模や取り扱う商品などによっても異なりますが、四半期ごと、もしくは毎月など、頻繁に棚卸しを行うことが望ましい場合もあります。

在庫の抱えすぎによる資金繰りへの影響

在庫を抱えすぎている場合、商品の仕入に対しての支払いと、それを売り払った際に生じる入金に、間が空いてしまいます。資金を効率的に活用できているとは言えず、資金繰りが悪化してしまう可能性もあるでしょう。

その反面、在庫数を適切な水準にできれば、資金繰りも良くなると言えます。棚卸しを定期的に行って在庫を管理することは、安定した資金繰りに繋がる可能性があると言えるでしょう。

企業の棚卸しの目的

企業が棚卸しを行う目的を、4つのポイントから解説します。

帳簿上の在庫と実際の在庫を照らし合わせる

経理業務の都合上、商品の在庫数やその価値を把握しておく必要があります。棚卸しは、帳簿上の在庫数と実際の在庫数を照らし合わせることで、ズレが発生していないかどうかを確認します。

商品の状態を確認する

倉庫などに保管している商品が、汚れたり劣化したりしていないかどうかを確認します。状態に問題のある商品が見つかった場合は、その分の金額を帳簿に反映させるとともに、誤って販売しないように区別します。

在庫数を適切に保つ

在庫数が多すぎると、商品が劣化してしまったり、保管場所にかかるコストが増加してしまったりするリスクがあります。反対に、在庫数が少なすぎると、販売のチャンスを逃してしまうこともあるでしょう。より効率的な経営を行うためにも、棚卸しをして在庫数を把握することが役立ちます。

期末棚卸高を出す

事業年度の終わりには、決算のために企業がどれだけの資産や負債を持っているのかをまとめる必要があります。倉庫などに保管している商品に関しても企業が保有している資産と考えるため、棚卸しをして期末棚卸高を計算する必要があります。

棚卸の実施方法の種類

棚卸の方法について「タグ方式」と「リスト方式」の2つを紹介します。

①タグ方式

品目名と数量をタグに書いて、商品や棚に貼る方法です。タグを貼り終えた後は集計し、帳簿上の在庫数と照合します。実際の在庫数を優先してチェックするため、計上漏れや数え間違いが発生しにくいメリットがあります。

②リスト方式

在庫管理表などの帳簿に記載された在庫数を見ながら、実際の在庫数と照合する方法です。リストと在庫数を照らしあわせながら作業を進めるため、在庫数があわない時にすぐに気づけるメリットがあります。リスト方式を採用するには、すでに正確なリストが作成してあることが求められます。

棚卸在庫の具体的な評価方法

決算時には、倉庫などに置いてある商品の在庫数を確認したのち、それを金額に直して計上する必要があります。この工程を「棚卸在庫の評価」と言い、求めた金額は「評価額」と言います。

評価の方法には、主に「原価法」と「低価法」の2つの方法があります。原価法は、棚卸資産を購入する際に支払った金額を元にする方法です。

それに対して低価法とは、原価法の評価額と、期末時点における時価のうち、どちらか低い方の金額を使って評価額を計算する方法です。時間の経過によって劣化しやすい商品や、ニーズの低下が起きやすい商品に適用される傾向があります。

棚卸時の評価方法について、ある会社で取引されている商品Aの場合と仮定して考えてみましょう。

受入払出残高
4/1前期繰越
50個(1個10円)
50個
10/1仕入
90個(1個10円)
140個
12/1売上
100個(1個13円)
40個
3/31次期繰越
40個

なお、今回の例では以下の条件を想定しています。

・事業年度は4月1日〜3月31日である
・商品Aの3月31日時点の時価は8円であった

原価法による評価

期末時点において商品Aの在庫数は40個であり、それはどれも10円で仕入れたものです。従って、期末の評価額は以下のように計算できます。

期末在庫 × 仕入金額 = 評価額
40個 × 10円 = 400円

定価法を利用した場合の利益は以下のように計算できます。

期首在庫 + 仕入金額 − 期末在庫 = 売上原価
50個 × 10円 + 90個 × 10円 – 40個 × 10円 = 1,000円

利益は売上から売上原価を差し引くことで求められるため、定価法における利益は以下のようになります。

売上 − 売上原価 = 利益
100個 × 13円 – 1000円 = 300円

低価法による評価

今回の例の場合、仕入れた際の原価よりも時価のほうが安いため、商品Aの1個あたりの評価額は8円です。したがって、低価法による期末在庫の評価額は、以下のように計算できます。

期末在庫 × 仕入金額 = 評価額
40個 × 8円 = 320円

その後は原価法と同じように計算していくと、売上原価は1,080円、商品Aによる1年間の利益は220円となります。同じ商品でも、採用する方法によって利益の金額が変動することがわかります。

棚卸を行う際のポイントや注意点

棚卸をミスなく効率的に行うためにはどのような点に気をつければいいのでしょうか。ポイントや注意点を3つ紹介します。

ヒューマンエラーを防止する仕組みを作る

人間の手によって商品の在庫数を一つ一つ数えていては、数え間違いなどのミスが発生することが十分に考えられます。商品にバーコードをつけて機械的に管理したり、ダブルチェックを取り入れたりと、ミスを防ぐための仕組みを取り入れることが求められます。

通常業務に支障が出ないように気をつける

棚卸しは通常の業務と並行して行わなくてはいけないため、スタッフに負荷がかかりやすいリスクがあります。通常業務に支障が出ないよう、スタッフを多めに配置するなど、無理なく棚卸しができるようなスケジュールを組み立てましょう。

棚卸しのルールを統一する

担当者によって数え方や記録の取り方が異なると、正確な棚卸しとならない可能性があります。棚卸しのルールや、疑問点が発生した時などの対応を統一して、作業者が異なっても毎回同じ条件に沿った棚卸しが行えるようにしましょう。

棚卸しでよくあるトラブル例と対処法

棚卸しで発生しやすいトラブルと、その対処法について紹介します。

在庫数があわない

帳簿上の在庫数と、実際に倉庫などにある在庫数があわないケースです。数があわない場合は、もう一度在庫数を数え直して、数え間違いなどがないかチェックしましょう。

どうしても在庫数があわない場合には帳簿上の在庫数を実際の在庫数に直す処理を行います。例えば、ある商品の帳簿上の在庫数が100個あるのにも関わらず、倉庫には98個しかないとしましょう。なお、この商品の原価は200円とします。

この場合は2個のズレが発生しているため、金額に直すと400円のズレが発生していることになります。その際は、以下のように仕訳を行うことで帳簿上の残高を減らします。

借方貸方
棚卸減耗費 400繰越商品 400

反対に、実際の在庫数が帳簿上の在庫数よりも多い場合には、以下のように帳簿上の残高を増やすことで残高をあわせます。

借方貸方
繰越商品 400仕入 400

なお、このような処理を行うことは可能ですが、システムの導入やチェック体制の構築など、ズレが発生しない環境をあらかじめ構築することが大切です。

不良在庫がある

不良在庫とは、販売できる目処が立たない在庫であり、過剰に仕入れてしまったものや、ニーズの減少などにより売れ残ってしまったものなどを指します。このような不良在庫は、棚卸資産として計上せず、棚卸資産評価損として計上するなどの対応を行います。

「棚卸資産評価損」とは、その言葉通り、商品の在庫の価値が下がることで発生した損失です。例えば、原価20円の商品の不良在庫が500個見つかった場合には、以下のように計上します。

借方貸方
棚卸資産評価損 10,000棚卸資産 10,000

また、できるだけ不良在庫が発生しないよう、仕入や管理の方法を見直すことも大切です。

棚卸しが終わらない

原則として、法人は事業年度が終了した日の翌日から2ヶ月以内に決算を済ませる必要があります。棚卸しを終わらせないと、決算も完了できない点に注意しましょう。

棚卸しは期末などの時点の在庫数を把握できれば、作業するのはいつでも構いません。在庫数が動かない商品については先に棚卸しを進めておくなどして、余裕を持って作業を行いましょう。

棚卸表の保存期間

法人の場合、確定申告書の提出期限の翌日から原則7年間、棚卸表を保管する必要があります。貸借対照表や損益計算書、領収書など、他の書類と一緒に保管しましょう。

棚卸表には以下の項目を設けます。

・棚卸しを実施した日
・商品名
・商品コード
・数量
・単価
・在庫金額
・在庫状態

商品が返品された際は、その分の在庫数が増えて、売上高が減ります。現金で売り上げた商品10,000円が返品された際は、以下の仕分けを行いましょう。

借方貸方
売上 10,000現金 10,000

参照:No.5930 帳簿書類等の保存期間|国税庁

棚卸しの作業は電子化するのがおすすめ

棚卸しを手作業で行うと、数え間違いや記入漏れといったミスが発生しやすくなります。ミスを防ぐためには、在庫管理ソフトなどを導入し、効率的に棚卸しを行うことが求められます。

例えば、商品をバーコードと紐付けて管理することで、複数の拠点の在庫数を一括して把握できるといったシステムがあります。そのようなシステムを導入することによって、棚卸しや日常の在庫管理の効率化に期待できるでしょう。

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まとめ

棚卸しは保有している棚卸資産の金額を把握するための大切な業務です。数え間違いをしたり、期限に間に合わなかったりすれば、決算の業務に支障をきたすこともあります。計画的に棚卸しを実施することで、実情に即した内容を会計に反映しましょう。

棚卸しを効率的に行うためには、在庫管理システムなどを取り入れて、ミスが発生しにくい体制を構築するのも大切です。日頃から正しく在庫を管理することで、滞りなく棚卸しを終えましょう。

この記事の投稿者:

shimohigoshiyuta

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