請求書の管理 消費税の小数点以下は「切り捨て」か「切り上げ」か?端数処理のポイントを解説 最終更新日: 2023/06/24   公開日: 2023/06/24

商品の値段を設定する時や、請求書を発行する時などに、消費税の小数点以下の端数をどのように処理していいのか迷うことがあります。本記事では、消費税の端数処理のポイントについて、計算式を交えながら詳しく解説します。

そもそも消費税とは?

消費税とは、商品やサービスの売買・提供に対してかかる税金です。商品やサービスを購入した消費者が支払い、販売した事業者は預かった消費税を後日納付します。

しかし、土地の譲渡や貸付、利子、保険料など、その特性から消費税がかからない取引も存在します。このような取引は「非課税取引」と呼ばれ、国税庁のホームページなどから確認できます。

参照:消費税のしくみ|国税庁

課税事業者・免税事業者とは?

消費税を納税する義務のある事業者を「課税事業者」と呼びます。課税事業者とは、会社の前々事業年度における課税売上高が1,000万円を超えたなどの条件に該当した事業者です。個人事業主の場合は、前々年の1月1日から12月31日の間の課税売上高で判定します。

この条件に該当しない事業者は免税事業者と呼ばれ、消費税を納める義務は免除されます。免税事業者に関しても、商品やサービスを販売する際、消費税を含めた金額を請求することが認められています。受け取った消費税は国に納める必要はなく、手元に残しておくことが可能です。

参照:No.6125 国内取引の納税義務者|国税庁

標準税率・軽減税率の違い

消費税の税率には「標準税率(10%)」と「軽減税率(8%)」の2種類があります。

2019年の10月1日に消費税が10%に増税された際、生活の負担を軽減するために導入されたのが軽減税率です。軽減税率の対象となる商品は、以下の通りです。

・食品(酒類、テイクアウトを除く)
・週2回以上発行される定期契約の新聞

また、おもちゃ付きのお菓子など、食品と食品以外の商品が一体となっているものについては、一定の条件のもと、軽減税率の対象として認められるケースがあります。

参照:No.6102 消費税の軽減税率制度|国税庁

内税の算出方法・計算式

内税とは、消費税がすでに含まれている金額を消費者に提示する方法であり「総額表示」とも呼ばれます。内税で価格が表示されている場合、その中に占める消費税額は以下のように計算できます。

内税の消費税額 = 税込価格 ÷(1 + 消費税率)× 消費税率

チラシや店頭での価格表示など、不特定多数が金額を目にする場合には総額表示が義務付けられています。

参照:No.6902 「総額表示」の義務付け|国税庁

外税の算出方法・計算式

外税とは、税抜の価格と税額を別に表記する方法です。外税で表記されている場合、以下のように消費税額を求めることができます。

外税の消費税額 = 税抜価格 × 消費税率

請求書や見積書といった書類に関しては、外税が使われることが一般的です。商品の税抜の合計額と消費税額を別々で記載し、税込の合計額を改めて記載します。

販売時の消費税の端数処理について

税抜価格に消費税率を乗じて税込価格を設定する際、小数点以下の端数が生じることがあります。その場合の対処について、財務省のホームページで以下のように述べられています。

端数をどのように処理(切捨て、切上げ、四捨五入など)して「税込価格」を設定するかは、それぞれの事業者のご判断によることとなります。
引用:総額表示に関する主な質問 : 財務省

このように、小数点以下の端数の処理方法に法的な定めはなく、事業者の判断により決定できます。

なお、端数の処理方法によっては、取引先と「計算があわない」といった話に発展する可能性があります。処理方法について、社内や関係者間でルールを定めておくことが望ましいでしょう。

インボイス制度導入における端数処理の注意点

2023年10月1日からインボイス制度が施行されるにあたって、注意したいポイントを紹介します。

適格請求書の記載方法の変更点

インボイス制度に対応するためには「適格請求書(インボイス)」と呼ばれる請求書を発行する必要があります。適格請求書には、従来の区分記載請求書に加えて、以下の項目を記載します。

・インボイス制度の登録番号
・軽減税率の対象品目であるものはその旨
・税率ごとに区分して合計した対価の額、及び適用税率
・税率ごとに区分して合計した消費税額等

消費税改正後の端数処理の行い方

区分記載請求書では、商品ごとに消費税の端数を処理することが認められていました。しかし、適格請求書では税率ごとの合計額に対して端数を1回処理することとなります。

例えば、1枚の請求書の中に8%の商品と10%の商品が混在している場合、まずはそれぞれの税率ごとに税抜の金額の合計額を計算します。その後、その金額に税率を乗じることで、8%の商品にかかる消費税額と、10%の商品にかかる消費税額を求めることとなります。

参照:適格請求書等保存方式の概要(6ページ)

今後どうなる?消費税申告時の端数処理の行い方

消費税の端数の問題は、請求書などを発行する時の他にも、消費税の申告や納税を行う時にも発生します。消費税の端数について、国税庁のホームページでは以下のように述べられています。

その課税期間の課税標準額は、原則として、その課税期間中の課税資産の譲渡等の税込価額(消費税額および地方消費税額を含みます。)の合計額に110分の100(軽減税率の適用対象となる課税資産の譲渡等については108分の100)を乗じて算出した金額となります。そして、この金額に1,000円未満の端数があるときは、その端数を切り捨てます。
引用:No.6371 端数計算

また、インボイス制度の導入後は、従来の方法である割戻し計算のほか、積上げ計算も可能な場合があります。

・積上げ計算:適格請求書に記載された消費税額などを積み上げて計算する方法
・割戻し計算:適用税率ごとの合計を割り戻して計算する方法

売上にかかる税額の計算で積上げ計算を選択した場合には、仕入にかかる税額の計算でも積上げ計算を使用します。売上にかかる税額の計算で割戻し計算を選択した場合には、積上げ計算と割戻し計算のどちらを選択しても構いません。

参照:税額計算の方法

国税庁による消費税の端数計算

実際に納付するべき消費税額の端数については、国税庁のホームページで以下のように述べられています。

(1)課税期間ごとの課税仕入れに係る消費税額は、原則として、その課税期間中の課税仕入れに係る支払対価の額の合計額に110分の7.8(軽減税率の適用対象となる課税仕入れについては108分の6.24)を乗じて計算した金額となり、この金額に1円未満の端数があるときはその端数を切り捨てます。また、売上対価の返還等に係る消費税額および貸倒れに係る消費税額に1円未満の端数があるときも同様に、その端数を切り捨てます。

(2)課税標準額に対する消費税額から課税仕入れ等に係る消費税額などを控除した税額に100円未満の端数があるときは、その端数を切り捨てます。

(3)還付金に相当する消費税額に1円未満の端数があるときは、その端数を切り捨て、還付金に相当する消費税額が1円未満であるときは、1円とします。
引用:No.6371 端数計算|国税庁

まとめ

販売する際の消費税については、切捨て・切上げ・四捨五入など、好きな方法を採用することが認められています。しかし、2023年10月1日以降は、インボイス制度の導入により、請求書上の端数処理は1つの税率に対して1回限りといったルールが定められました。

制度の変更などに対して適切に対応できているか、今一度確認しておきましょう。また、会計ソフトや請求書システムであれば、消費税の端数処理が自動的に行われますが、現行の制度にあわせた設定ができているか念のためチェックしてみるとよいでしょう。

この記事の投稿者:

shimohigoshiyuta

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