個人事業主は経費を管理する際にクレジットカードを利用すると便利です。個人のクレジットカードで支払いをしても経費計上できるのかが気になっている人もいるでしょう。この記事では個人事業主がクレジットカードで経費計上をする方法と注意点をご紹介します。
目次
クレジットカードで経費計上はできるのか
個人事業主がクレジットカードを事業に関連する支払いに使用したときには経費にできます。個人事業主の場合には個人名義のクレジットカードを利用している方もいると思いますが、個人名義でも法人名義でも経費計上が可能です。
個人事業主が個人のクレジットカードで事業に関連する支払いをした際には、事業主借として経費を仕訳します。事業主借とは、事業主が個人資産を事業目的で使用したときに使用する勘定科目です。クレジットカードで支払いをした際に経費に計上して対応します。
クレジットカードで経費計上するメリット
クレジットカードで経費計上をすると、個人事業主にとって業務負担の軽減と事業の推進をしやすくなります。ここではクレジットカードを使って経費計上をするメリットを詳しく解説します。
クレジットカード明細書で経費を一覧にまとめられる
クレジットカードで経費計上をすると支払いをした内容がクレジットカード明細書に明記されるので管理しやすくなります。事業の経費専用のクレジットカードで支払いをすれば、明細書を見れば経費を一覧にして確認できます。
経費には交通費や取引先への支払い、消耗品の購入などのさまざまな種類があるため、一覧にするには手間がかかるでしょう。クレジットカードで経費の支払いをすれば、自分で支払い内容を表にまとめる手間がかかりません。事業にかかった経費の総額や内訳を計算するときに明細書を活用できるのがメリットです。
会計ソフトと連携して業務効率化ができる
クレジットカードで経費の支払いをすると経理業務の効率化が可能です。多くの会計ソフトではクレジットカード会社と連携していて、クレジットカードの支払い内容を自動で取り込むことができます。
取引の明細書や領収書を見て経費を手入力したり、一枚ずつスキャンをしてデータを取りこんだりするのは手間がかかるでしょう。クレジットカードで支払いをすると自動取り込みができるので業務負担を軽減できます。
手入力では入力ミスによるトラブルが起こるリスクがあるため、ダブルチェックも必要です。しかし、連携して自動入力すれば正しい情報を確実に入力できます。
使途に合わせてクレジットカードを使い分けられる
クレジットカードは使途に合わせて複数枚を使い分けることが可能です。経費の種類に応じてクレジットカードを使い分けると経費を管理しやすくなります。消耗品費と接待交際費を切り分けたり、固定資産の購入額をわかりやすくするために別のクレジットカードで購入したりする方法があります。
クレジットカードを使い分けると、それぞれの明細書で支払い内容を集計できます。1枚のクレジットカードであらゆる経費の支払いをすると、勘定科目ごとに分けたいときにも手間がかかるでしょう。使途に合わせて複数のクレジットカードを使うと業務効率をさらに上げられます。
キャッシュフローを改善できる
クレジットカードを経費の支払いに使用するとキャッシュフローを改善できます。クレジットカードは信用取引で、翌月の一括払いや分割払いをすることが可能です。現金での支払いではすぐに支払わなければならない場合でも、クレジットカードで翌月一括払いにすれば現金の支出を先延ばしできます。
翌月一括払いなら手数料もかからないので資金繰りの対策として有効です。キャッシュの不足の対策方法として融資やファクタリングもありますが、個人事業主では契約が難しい場合もあります。クレジットカードなら個人事業主でも発行しやすいので有効な対策です。
利用金額に応じてポイントが付与される
クレジットカードには利用金額に応じてポイントが還元されるサービスがあります。クレジットカードの種類によってポイント還元率は異なりますが、一般的には0.5%前後のポイント還元を受けられます。クレジットカードで経費を支払ったら、経費の一部をポイントとして受け取れるので実質的な値引きになるのがメリットです。
クレジットカードのポイントは消耗品の購入やクレジットカード代金の支払いなどに使用できます。キャッシュバックを受けられるクレジットカードなら、貯まったポイントを現金にしてさまざまな支払いに利用することも可能です。
個人事業主が事業用にクレジットカードを持つメリット
クレジットカードは事業用に作成して使用した方が便利です。個人事業主は個人的にプライベートで使っているカードを使うことも可能ですが、事業用クレジットカードを持つと以下のようなメリットがあります。
個人利用分との振り分けが簡単になる
個人用と事業用のクレジットカードを分けると、クレジットカードの明細を個人で使った分と事業で使った分に明確に区分できます。個人用クレジットカードをプライベートでも事業でも使用してしまうと、個人利用分と経費利用分がクレジットカードの明細書に混在します。経費を計算するときには個人利用分と事業利用分の振り分けが必要です。事業用クレジットカードを用意すれば、振り分けの手間がなくなるので経理処理が簡単になります。
個人事業主でも法人カードを発行できる
事業用クレジットカードとして主流なのは法人カードです。法人カードは事業向けの資金使途で利用できるクレジットカードで、ビジネスカードと呼ばれている場合もあります。法人カードは法人でなくても事業者なら発行可能です。法人カードの審査では、個人事業主の場合には過去の事業状況よりも個人信用情報が重視されます。事業実績がまだ上がっていない初期段階でも法人カードを利用して経費の支払いに使用できます。
クレジットカードの利用可能枠が大きい
事業用クレジットカードは利用枠を大きくできるため、設備投資などの大きな金額の支払いにも利用可能です。事業用クレジットカードは個人用クレジットカードよりも利用可能枠が高めになっているのが一般的です。クレジットカードの発行には審査があるため、審査結果によっては利用可能枠があまり大きくならない場合もあります。しかし、個人事業主でも個人信用情報に問題がなければ数百万円の利用可能枠のカードを発行できる可能性があります。
年会費を経費にして節税対策ができる
事業用クレジットカードにすれば、クレジットカードの年会費を経費にできます。事業目的でクレジットカードの契約が必要と解釈すれば、契約の維持に必要な年会費は必要経費だからです。個人用クレジットカードの場合にはプライベートでの利用が基本なので、年会費を経費にはできません。年会費のかかる個人用クレジットカードを作るよりは、事業用クレジットカードを用意した方が、年会費を経費にできるので節税対策になります。
付帯サービスや特典を活用できる
法人カードやビジネスカードにはビジネスで役に立つ付帯サービスや特典があります。法人カードでは国内外の空港ラウンジを無料で利用できたり、充実した内容の海外旅行保険が付帯していたりしているのがメリットです。弁護士や税理士に無料相談できるサービスを受けられる場合もあります。カードの種類やグレードによって特典内容は異なりますが、経費を減らせる付帯サービスが多いので、法人カードを使用すると資金を節約できます。
関連リンク:個人事業主が事業用に法人用クレジットカードを作るメリットは?注意点や選び方も紹介
クレジットカードにて支払った経費を確定申告で計上するための方法
確定申告をするときにはクレジットカードで支払った経費を正しく計上し、正しい税額を算出することが必要です。青色申告・白色申告の控除によって対応の方法が異なるので注意しましょう。ここでは、個人事業主が確定申告で経費計上をする方法を2つのケースに分けて解説します。
クレジットカードを青色申告65万円控除で利用する場合
青色申告をすると最大で65万円の特別控除を受けられます。青色申告で65万円の控除を受けるには不動産所得または事業所得を営んでいて、複式簿記による記帳をしていることに加え、電子帳簿保存の実施またはe-Taxによる確定申告をすることなどが求められます。クレジットカードを使用したときには、個人用か事業用かによって仕訳が異なるので注意しましょう。
個人用クレジットカードで支払いをした場合には支払いが発生した時点で記帳をします。消耗品を個人用クレジットカードで購入した場合には以下のように記帳します。帳簿上では事業の銀行口座や現金に変動はないため、個人の銀行口座から引き落としがあったときにも対応は必要ありません。
借方 | 貸方 | |||
3月12日 | 消耗品費 | 4,400円 | 事業主借 | 4,400円 |
事業用クレジットカードで購入した場合には、クレジットカードでの支払いを未払金として処理します。翌月に銀行口座からクレジットカード代金の引き落としがあった時点で以下のように再度記帳をすることが必要です。
借方 | 貸方 | |||
3月12日 | 消耗品費 | 4,400円 | 未払金 | 4,400円 |
4月28日 | 未払金 | 4,400円 | 普通預金 | 4,400円 |
クレジットカードを白色申告または青色申告10万円控除で利用した場合
白色申告をする場合や、青色申告で10万円控除を受ける場合には単式簿記で帳簿を作成します。現在の現金の状況に基づいて記帳するのが単式簿記の特徴です。個人用クレジットカードでは事業主借、事業用クレジットカードでは普通預金を貸方の勘定科目として仕訳をします。取引日は支払いをして現金が減った日で、クレジットカード決済をした日ではありません。
・個人用クレジットカードの場合
借方 | 貸方 | |||
4月28日 | 消耗品費 | 4,400円 | 事業主借 | 4,400円 |
・事業用クレジットカードの場合
借方 | 貸方 | |||
4月28日 | 消耗品費 | 4,400円 | 普通預金 | 4,400円 |
クレジットカード決済時の宛名入りの領収書について
経費の証憑として宛名入りの領収書が有効です。経費での支払いの際には取引先に宛名入りの領収書の発行を求めることが多いですが、クレジットカード決済の際には必須ではありません。クレジットカードではオンライン決済で取引先から個別の領収書を受け取ることが困難な場合もあります。この際には支払いを証明できる書類の交付を受ければ、領収書の代わりとして利用できます。
クレジットカードの利用明細書やお客様控えは記載事項が不足していることが多いため、領収書の代用にはなりません。取引先から発行されるレシートや取引明細を証憑にできます。取引先名、取引内容、取引年月日、金額、宛名の記載があれば領収書の代わりにすることが可能です。
クレジットカードで経費を支払う際の注意点
クレジットカードで経費の支払いをするときには、経理や管理上の対策が必要です。クレジットカードの利用に伴って発生する費用や収入については特に気を付けましょう。ここではクレジットカードを使用する際の注意点を解説します。
ポイントによる雑収入の仕訳が必要
クレジットカードを利用するとポイントやマイルなどを支払いに使用できます。購入時にポイントで支払いをして割引になった場合には仕訳が必要なので注意しましょう。例えば、1万円の消耗品を購入するときに、普通預金から9,500円、ポイントで500円を支払ったとします。この際には、以下のようにポイントによる支払い分を雑収入として処理して記帳します。
借方 | 貸方 | ||
消耗品費 | 10,000円 | 普通預金 | 9,500円 |
雑収入 | 500円 |
キャッシュバックや商品券の受け取り時には経費処理が必要
クレジットカードの特典としてポイントがキャッシュバックされる場合があります。キャッシュバックを受け取ったときには雑収入として経費処理をするのが一般的です。ポイントが付与されたタイミングではなく、キャッシュバックとして銀行口座に振り込まれたときに雑収入を計上します。1万円のキャッシュバックが普通預金口座に振り込まれたときには以下のように記帳します。
借方 | 貸方 | ||
普通預金 | 10,000円 | 雑収入 | 10,000円 |
証憑の5年または7年の保管が必要
青色申告をする場合にはクレジットカードの取引明細などの証憑は5年または7年の保管が求められます。所得税法施行規則の第63条、第102条に義務が定められていて、書類の種類によって義務付けられている保管期間が異なります。課税事業者の個人事業主の場合には、消費税法施工令でも書類の保管が定められているため、帳票の保管には注意が必要です。確定申告や納税を終えても破棄せず、判読可能な状態を保てるように保管しましょう。
参照:
所得税法施行規則 | e-Gov法令検索(第六十三条・第百二条)
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まとめ
個人事業主はクレジットカードで支払ったときにも、事業に必要な出費であれば経費に計上できます。個人用クレジットカードでの支払いでも経費にできますが、事業用クレジットカードを用意した方が便利です。プライベートの支払いと事業目的の支払いをカードごとに分けると、経費の管理をしやすくなるからです。
INVOYカード払いは個人事業主も利用可能で、経費管理に適しているサービスなので、クレジットカード払いを活用しやすくするツールとして導入を検討してみましょう。
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