資金繰り表とは、会社における資金の動きを可視化して、適切に資金繰りを行えるようにするための表です。本記事では、資金繰り表の作り方や活用方法・作成するメリットについて、初心者の方にもわかりやすいように解説します。
目次
資金繰り表って?
資金繰り表とは、一定期間における資金の動きを把握するための表です。そもそも資金繰りとは、会社における資金を適切に管理して、滞りのない支払いを目指すことを指します。資金繰り表は、残高が不足して取引先や従業員への支払いができなくなったり、倒産してしまったりすることを防ぐために、経営状況を可視化してチェックするためのものです。
商品が売れているのにも関わらず、掛け取引を行っていることを理由に数ヶ月間現金が受け取れないこともあります。利益が出ているからといって安心していると、支払いのタイミングで必要な資金を用意できないということもあるでしょう。そのような事態による倒産を「黒字倒産」と呼び、資金繰りがうまくできていないことによる失敗事例と捉えられています。
作成の際は、エクセルはもちろん、資金繰り表の作成に対応している会計ソフトや経理システムなどのツールを利用することもできます。資金繰り表を作成するツールにはさまざまなものがあるため、好みのものを探してみるといいでしょう。
資金繰り表の項目について
資金繰り表の書式は特に定められていないため、会社の事業内容や把握したい資金の動きなどによって自由にひな形を作ることができます。一般的に、資金繰り表に記載することの多い項目は以下の通りです。
・前月繰越:前月から繰り越された金額
・営業収支:営業活動に関する金額
・財務収支:営業活動とは関係のない金額
・経常収支:経常的に発生するものの金額
・翌月繰越:前月の繰越残高と、今月の収支を足した金額
資金繰りの予測が必要な期間について
余裕を持って資金繰りを行えるよう、現在の資金の状況はもちろん、今後の予測についても記載します。具体的な期間に決まりはありませんが、現在から3ヶ月程度先の資金繰りについて予測することが一般的です。
日頃の業務に追われていると、資金の不足になかなか気づかず、突然資金不足が起こるということもありえます。余裕を持って資金繰りを検討するためにも、数ヶ月間先の資金の目処をつけておくようにしましょう。
資金繰り表のメリット
黒字倒産を防ぐ
現金や預金が不足し、経営するための資金が足りなくなってしまうことを「資金ショート」と呼びます。商品が売れていても、資金ショートを起こすことで黒字倒産となってしまう可能性があるため、経営する上では十分に留意する必要があります。
会計においては、売上が確定した際に売掛金として利益を帳簿に反映しますが、実際は未入金であるため、帳簿上の利益と実際の現金残高にズレが発生します。帳簿上の売上をあてにしていると、支払いのタイミングで「思ったよりも残高が少なかった」と慌てる事態に陥りかねません。
このような事態を防ぐために、入出金のタイミングを確実に把握する必要があります。資金繰り表を作成して支払いを行えるかどうかをチェックすることで、黒字倒産を防げるでしょう。
融資を受ける際の参考として提出できる
金融機関で融資を受ける際には、借入を行う必要があるかどうか、返済できる見込みがあるかといった点をチェックされます。もしうまく説明できなければ、担当者の信頼を得られない可能性があります。
資金繰り表を作成していれば「商品は売れているが、取引先からの入金が遅いため、一時的に資金が必要である」など合理的な説明が可能です。担当者に納得してもらうことで、融資をスムーズに受けられる可能性が高まるでしょう。
経営方針を検討する際に利用できる
会社では貸借対照表や損益計算書、現金出納帳など会計に関する書類を数多く作成しますが、資金繰りを考える上でそれらの書類だけでは不十分です。安定した入金があるか、支払いや借入金の返済が滞ることはないかといった点からチェックするためには、資金繰り表を作成して状況を可視化することが役立ちます。
資金繰り表を作らなかった場合
資金繰り表を作らない場合には、作成する別の書類で資金繰りを検討することになります。しかし、損益計算書はさまざまな項目が記載されているため、資金繰りを行うための書類としては見にくく、わかりにくいでしょう。
現金出納帳や預金出納帳・売掛帳などもありますが、いつどのような入出金があるのかを把握しにくいため、資金の流れを掴みにくいデメリットがあります。資金が不足することに気づかず、資金が不足してから慌てて対処するなどのトラブルにつながるかもしれません。
また、資金繰りを作成していなければ融資を受けるときにスムーズに交渉が進まない可能性もあるので、注意が必要です。
資金繰り表に必要な資料
予測数値の入力
将来的な売上や支出の金額を予測したものを「予測数値」として資金繰り表に記載します。この予算数値の入力には、設備投資や販売に関する計画表、人員計画と必要な費用などについてまとめた表などが役立ちます。
これらの表を作成するには時間がかかりますが、将来的な資金繰りの予測を立てるためにはさまざまな視点からの計画を盛り込む必要があります。決算書や帳簿の数値も参考にできますが、あくまで過去や現状の数値であるため、それだけでは予測が難しい点に注意しましょう。
実績数値の入力
「実績数値」とは、 確定した売上額や、仕入・人件費などの支出額などを表す数値です。 実績数値の記載にあたっては、どの会社でも作成を求められる「総勘定元帳」などを参考にできます。 会計ソフトなどの数値を使えばいいので、予測数値の入力より簡単に済みます。また、作成している場合は現金出納帳や預金出納帳などを参考にしてもいいでしょう。
資金繰り表の作成方法について
経常収支、非経常収支、財務収支を入力する
ここでは、収入や支出を以下の3つに分けて記載する方法を解説します。
・経常収支
・非経常収支
・財務収支
「経常収支」の項目には、毎月継続的に発生する収入や支出について記載します。収入の欄には、定期的に発生する売上や、回収できる予定の売掛金などの金額を入力しましょう。支出の欄には、家賃などの「固定費」や、原材料費や外注費など金額が毎月変動する「変動費」に分けることが一般的です。
「非経常収支」とは、毎月発生するわけではない収入・支出を指します。収入には臨時の雑収入や補助金・保険金などによる収入が、支出には固定資産の購入や消費税の支払いなどが該当します。
「財務収支」は、営業活動とは関係のない収支や、金融機関からの借入・返済などについて記載します。赤字となりそうな時は、ここに財務収入として「借入」の項目を作って融資などを受けることで、資金ショートを防ぎましょう。
予測数値を入力する
前項で作成した3つの収支それぞれに対して、予算数値・実績数値を入力していきます。
予算数値は、日頃から販売計画や人員計画などについて書類にまとめておくことで、より合理的に数値を決定できます。そのような計画書がない場合や、まだ決まっていない場合には、過去の数値を参考に入力するといいでしょう。
予測数値は「このくらいの収入は見込めるだろう」というような楽観的な姿勢よりも、確実で無理のない範囲で決定することが大切です。何らかの理由で収入が減ったり、支出が増えたりすることを見込んで、余裕を持った金額を入力します。そのような方法で予測数値を決定することで、多少の変動にも慌てることなく安心して事業を運営できるでしょう。
実績数値を入力する
一定期間が経過したら、確定額である実績数値を入力します。経理担当者が日頃から作成している帳簿などを参考にすれば、比較的簡単に入力が済みます。総勘定元帳や現金出納帳・預金出納帳などから転記を行うといいでしょう。
また、資金繰りに対応した会計ソフトやシステムなどを使用している場合には、経理業務として日々入力している取引から資金繰り表を出力できることもあります。実績数値の転記が不要となるため、ミスなく効率的に資金繰り表を作成できるでしょう。
資金繰り表作成のポイント
予測数値は経営計画の視点も取り入れる
資金繰り表を作成する際、予測数値の入力に迷うという方は少なくありません。そこで、予測を行う際のコツを簡単に紹介します。
・毎月確実に発生するものから入力していく
・原価は平均原価を参考に入力する
・変動費はこれまでの推移を見ながら予測する
・資金繰り表だけではなく、経営計画も含めた検討も視野に入れる
経営計画などを中心に、これまでの原価・支出金額などを含めて総合的に判断します。予測数値がなかなか入力できないという場合には、過去の記録が蓄積されていなかったり、経営計画が曖昧であったりなどの原因が考えられます。継続して記録を行うとともに、経営計画などを含めた問題であることを意識しましょう。
作成する資金繰り表は会社で1つあればよい
複数の店舗などを持っていると「資金繰り表を店舗ごとに作成した方がいいのだろうか?」と悩まれる方もいらっしゃいます。しかし、資金繰り表は経営する会社や事業全体を俯瞰するものであるため、店舗ごとに作成する必要は基本的にありません。
会社全体の資金繰り表を作成することで、店舗の新規出店や撤退・改善点の洗い出しなどの検討がしやすくなります。また、会社全体の資金繰り表を見て危機感を感じた時には、店舗ごとの損益を詳細にチェックするようにしましょう。
取引先ごとの管理を行う
経常的な売上は「経常収入」としてひとまとめにすることもありますが、取引先が少ない場合には、売掛金をA社・B社・C社というように分けて管理することもあります。その際は、「毎月○日入金」「翌月末入金」など支払いサイトも記載しておくと、資金繰りについて検討しやすくなるでしょう。買掛金も同様に、仕入れ先が少ない場合には会社ごとに管理するとわかりやすくなります。
資金繰り表の活用方法
資金繰り表を作成した後は、今後も支払いが滞りなく行えるかどうかをチェックします。順調に黒字を維持できている場合には、借入金を早めに返済したり、今後に向けての投資を検討したりしましょう。
反対に資金が不足しがちな時は、売掛金の早期回収を目指す、金融機関からの借入を目指すといった対策を行います。ポイントは、資金繰りに不安が生じた段階で早めに具体的な対策について検討することです。特に、銀行からの借り入れは審査が必要で時間がかかります。どのような制度・金融機関を利用できるのかといった検討に時間を要するという点も覚えておきましょう。
資金繰り表の作成ならINVOY
会社を安定して経営していくためには、常に資金繰りについて余裕を持って検討していくことが大切です。しかし、資金繰り表の作成のためには考えるべきポイントが多く、忙しくてなかなか手が回らないという方も多いのではないでしょうか。
資金繰り表を作成する際に使えるのが、弊社のサービスである「INVOY」です。INVOYは、資金繰り表の作成や銀行口座との連携、請求書の発行・管理など、経営のために必要な機能を数多く揃えていますので、ぜひ登録をご検討ください。
まとめ
資金繰り表は会社における資金の動きを可視化するものであり、経営にとって大いに役立ちます。「今後どのように経営していけばいいか」「なぜ儲かっているのか」といった部分を明確に捉えられるため、資金繰り表の作成によって安心して経営に打ち込めるという経営者の方も多くいらっしゃいます。これを機に、資金繰り表の作成にチャレンジしてみてはいかがでしょうか。
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