一人でもできる!合同会社設立の流れや手続きを解説 最終更新日: 2024/02/19   公開日: 2024/02/19

合同会社は、株式会社ほど手続きが複雑でないため、初めて会社設立を考えている方にもおすすめされています。この記事では、株式会社との違い、合同会社設立の手順、そして設立後の手続きについてご紹介します。

合同会社とは?

合同会社とは、2006年に制定された新しい会社法に基づく会社形態であり、アメリカのLLC(Limited Liability Company)がモデルとなっています。国内では現在、株式会社に次ぎ、2番目に設立数の多い会社形態です。会社法上、合同会社は、合資会社、合名会社と同じく「持分会社」に分類されます。

合同会社は、出資した人が会社の経営者となるため、出資したすべての社員が会社の意思決定権を有し、経営を行います。ここでの「社員」は持分会社における出資者のことです。また、出資者のうち代表権を有するメンバーを「代表社員」と呼びます。近年、大手外資企業の日本法人、例えば、Amazon、Apple、Googleなども合同会社の形態を採用しています。

合同会社と株式会社の違い

以下に、合同会社と株式会社の主な違いをまとめました。

合同会社株式会社
意思決定の要件全社員の同意株主総会
所有と経営一致分離
役員の任期任期なし最長10年
代表者の名称代表社員代表取締役
決算公告の義務不要必要
定款認証不要認証必要
利益配分定款で自由に規定出資比率に応じる
設立費用安い(約100,000円〜)高い(約250,000円〜)

株式会社と合同会社も、出資者の責任が間接有限責任(※)であることは共通点ですが、主な違いは、会社の所有と経営についてです。株式会社では、出資者(株主)が経営を経営者に委ね、経営者が業務を遂行します(所有と経営の分離)。一方、合同会社では、出資者自身に業務執行権限があり、会社の業務を実施します(所有と経営の一致)。

※間接有限責任とは|出資者が出資額の範囲内において責任を負うこと

関連リンク:会社設立の流れとは?必要な手続き、費用、メリット・デメリットを紹介

一人でもできる!合同会社設立の手順

実際に合同会社を設立するには、どのような手順で進めればよいでしょうか。合同会社と株式会社の設立手続きにおける大きな違いは、合同会社では定款の認証が不要であることです。以下に、設立手続きの手順をご紹介します。フローに沿って準備と手続きを始めましょう。

設立の手順1. 基本情報を決定する

合同会社を設立するにあたって、まずやるべきことは会社の概要を決めることです。これらの基本事項は後述の定款にも必須の記入項目であり、これを怠ると定款が無効になるため、慎重に記入しましょう。

参照:合同会社の設立手続について|法務省

商号(会社名)

商号は会社の正式な名称であり、特定の規則が適用されます。商号には特定の文字や符号の使用が制限され、銀行などを指し示す商号は使用できません。合同会社の場合は、社名に「合同会社」という表記が必要です。商号は登記簿に記載され、公式文書などで使用されます。商号を正式に登記することで、その名称が法的に認められ、以後はその商号で契約などの取引が行われます。商号は個人の名前と同じくらい重要な要素です。

事業目的

次に事業内容を決定します。事業内容は詳細に記載します。定款にない事業は実施できませんので、将来的な事業も含めて記載するのが一般的です。ただし、設立したばかりの会社で事業目的が過剰だと、理解しにくくマイナスの印象を与える可能性があります。事業目的が多くなりすぎる場合は、「前各号に付帯関連する一切の事業」と総括的に記載しましょう。

本店所在地

登記簿上での会社の本拠地が、本店所在地です。本店所在地は、特に規制がないため、自由に選択できます。本店所在地には、自宅、賃貸事務所、レンタルオフィスなど何処でも本店移転登記を行えば変更可能です。定款に記載する際は最小の行政区画までを記載しますが、登記の際には具体的な地番まで詳細に記載します。

例えば、定款での記載例が「東京都千代田区」である場合、登記簿上の記載は「東京都千代田区内神田一丁目1番地1号」のように、より具体的な地番まで詳細に記述する必要があります。

資本金(出資財産額)

資本金には法的な下限がなく、1円でも合同会社の設立が可能です。ただし、一般建設業の場合、自己資本が500万円以上なければ許認可を受けられません。通常、資本金は初期費用に加えて、3か月から半年間くらいは売り上げがなくても事業を継続できる金額に設定されます。資本金は会社の健全性や信用度にも影響するため、取引先や金融機関の評価を考慮して金額を決めることが重要です。

発起人の氏名と住所

合同会社を設立する際には、会社設立の手続きを行う人である「発起人」の氏名と住所を記載することが必要です。発起人は、資本金の出資、定款の作成など、会社設立に関する手続きを担当する人を指します。複数の発起人がいる場合は、それぞれの氏名と住所の記載が必要です。一人で会社を設立する場合は、自分自身が発起人となります。

社員構成の決定

合同会社では、通常、社員全員が業務執行権を持っています。しかし、同じ権限を持つ社員が多いと、意見の不一致や衝突が発生し、会社の運営が円滑でなくなることがあります。このため、責任と権限を明確にするために、実際に業務を担当する「業務執行社員」と、社員全体の代表として決定権を持つ「代表社員」を指定しておくことが重要です。

会計年度(任意的記載事項)

会計年度とは、企業が収支を計算する期間であり、通常は1年間(例えば、4月1日から3月31日まで)です。会計年度は国の基準に合わせるか、繁忙期を避けることが一般的ですが、設定は自由です。事業の性格や状況の変化、さらに会計年度が事業活動に与える影響、法改正などの理由により、会計年度を変更することが可能です。

設立の手順2. 実印、定款を作成する

実印は、商号が確定したら作成します。実印は、重要な決定を行う際に使用される印鑑で、主に会社設立や契約締結などの場面で利用します。登記申請時には印鑑届出書の提出も必要です。

定款は、会社の基本情報や規則が書かれたもので、会社設立において極めて重要な書類の1つです。定款には、前述した基本情報を記入します。紙の定款と電子定款の2つの作成方法がありますが、電子定款の場合は収入印紙代が要らないため、コストを削減できます。

設立の手順3. 出資金を払い込む

合同会社を設立する際には、出資者が資本金を支払う必要があります。ただし、法人口座は登記が完了した後に開設できるため、初回の資本金支払いは発起人の個人口座から行います。登記申請時には払込証明書が必要ですので、「通帳の表紙と1ページ目」および「振込内容が記載されているページ」をコピーして保存しておきましょう。

設立の手順4. 登記に必要な書類を作成する

定款ができたら、登記申請に必要な書類を作成し、まとめます。合同会社を設立するためには、下記の書類が必要です。

● 定款
● 印鑑届出書
● 代表社員の印鑑登録証明書
● 払込証明書
● 代表社員、本店所在地及び資本金決定書(定款に記載されていれば不要)
● 代表社員就任承諾書
● 登記用紙と同一の用紙(CD-Rも可)
● 登録免許税納付用台紙
● 合同会社設立登記申請書

最後に、予め綴じておいた上記の書類も含め、以下の順序で登記申請書類を1つにまとめましょう。

● 登記申請書(収入印紙貼り付け台紙とあわせた状態)
● 定款
● 代表社員、本店所在地及び資本金決定書
● 代表社員の就任承諾書
● 代表社員の印鑑登録証明書
● 払込証明書(通帳のコピーをあわせた状態)

設立の手順5. 登記書類を法務局に提出する

登記手続きは、登記申請書類と印鑑届出書を法務局に提出することで完了します。書類に不備がなければ、通常、1週間前後で登記が完了します。なお、法務局からの連絡はありません。会社設立日は登記申請をした日になるため、法務局が休みである土日祝を会社設立日にすることはできません。また、会社設立日を特定の日に合わせたい場合は、その日に法務局に登記書類を提出する必要があります。

合同会社設立後の手続き

合同会社設立後も、やるべき手続きがいろいろあります。設立後の手続きについて4つに分けて説明します。

税務について

会社の本店所在地を管轄する税務署に、設立後5日から2か月以内に届出を行います。提出する書類は以下の4点です。提出期限が短い場合もあるため、早めに準備しましょう。

● 法人設立届出書
● 給与支払事務所等の開設届出書
● 青色申告の承認申請書
● 源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書

書類の詳細は、以下のリンクを参照してください。

参照:内国普通法人等の設立の届出|国税庁
   給与支払事務所等の開設・移転・廃止の届出|国税庁
   青色申告書の承認の申請|国税庁
   源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請|国税庁

法人設立届出書は、本店が所在する都道府県税事務所、市町村役場にも提出します。地域ごとに書類名や手続きがわずかに異なる可能性がありますので、詳細は各地方自治体に直接問い合わせましょう。

地方税について

会社の本店がある都道府県や市区町村に、地方税に関する手続きが必要です。
提出する書類は以下の3つです。

● 法人設立届出書
● 定款の写し
● 登記事項証明書

上記の届出書は、申請書類の形式や提出期限が都道府県・市町村区によって異なるため、関連する自治体のホームページで確認しましょう。なお、本店所在地が東京23区内にある場合は、都税事務所への提出だけで、市町村区役場へ提出する必要はありません。
提出期限はそれぞれの自治体によって異なりますので、ご注意ください。

社会保険について

会社を設立した際は、各種の社会保険に加入する必要があります。社会保険には、健康保険・介護保険・厚生年金保険の3つの種類があり、必要な書類は以下の通りです。

● 健康保険・厚生年金保険新規適用届
● 健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届
● 健康保険被扶養者(異動)届

これらの書類は登記後5日以内に提出する必要があります。期限が短いため、注意して手続きを行いましょう。

参照:新規適用の手続き|日本年金機構

労働保険について

新しく企業を設立し、従業員を雇う際には、労働保険(労災保険・雇用保険)にも加入手続きが必要です。

労災保険の手続きは、所轄の労働基準監督署又は公共職業安定所で行います。必要な書類は以下の通りです。

● 労働保険関係成立届
● 労働保険概算保険料申告書

また、雇用保険の適用事業となった場合は、雇用保険の手続きを所轄の公共職業安定所で行います。

必要な書類は以下の通りです。

● 雇用保険 適用事業所設置届
● 雇用保険 被保険者資格取得届

各書類の提出条件や提出期限は異なりますので、注意して手続きを進めましょう。

参照:労働保険の成立手続|厚生労働省

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会社を設立すると、準備から事業開始まで、多くの書類の用意や手続きが必要になり、事業者にとって負担が大きくなります。事業者はできるだけ負担を抑え、会社経営をスムーズに進めたいと考えるでしょう。

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まとめ

合同会社の設立は株式会社に比べて簡単であり、自分だけで会社を設立する場合、すべての手続きを一人で行うことは不可能ではありません。ただし、設立には定款の作成や登記手続きなど、さまざまな作業が必要です。これから始める事業に集中したい方にとって、これらの手続きは負担と感じられるかもしれません。その場合は、専門家に相談してみるのも選択肢の一つです。

この記事の投稿者:

shimohigoshiyuta

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