個人事業主 個人事業主とは?フリーランスや自営業との違いやメリット・デメリットも解説! 最終更新日: 2022/11/05   公開日: 2022/11/05

働き方が多様化している現代、会社員を辞めて、個人事業主として働くことを選択する人も少なくありません。そこで、本記事では個人事業主とはどのような働き方で、フリーランスや自営業との違いはどこにあるのかを解説します。個人事業と法人の違い、個人事業主のメリット・デメリット、個人事業主になるための手続きなどもご紹介します。

個人事業主とは?

個人事業主とは個人で事業を行い、事業所得を得ている人を指します。「株式会社○○」など、法人を設立せずに、会社や組織に属さないで独立した事業を営む人のことです。税務署に対して開業届を提出すると、税法上で個人事業主となります。ただし、開業届を提出していなくても個人事業主を名乗ることは可能で、事業で一定以上の所得があれば開業届を出していなくても納税の義務があります。なお、ここでいう事業とは、継続して行う仕事のことであり、収益を継続的に上げていくことが必要です。

個人事業主とフリーランス・自営業の違い

フリーランス

フリーランスとは、法人や団体などに所属せずに、独立して自ら業務を行う働き方です。会社員は会社と雇用契約を結びますが、フリーランスは案件ごとにさまざまな顧客と自由に契約をします。カメラマン、ライター、デザイナーといった、自分の持っているスキルや専門技術を個人で提供する人をフリーランスと呼ぶことが多い傾向にあります。なお、フリーランスとはあくまで働き方を表す言葉のため、税法には関係がありません。

自営業

自営業とは、自ら事業を営んでいる人のことで、職種や業種も多岐にわたります。一般的に、1人、または家族や従業員を雇用するなど、従業員数や規模などに関わらず自ら事業を営む場合は自営業に分類されます。自ら会社を立ち上げている会社経営者も自営業者といえるでしょう。自営業の対象は幅広く、自営業の定義がはっきりしていない部分がありますが、自営業にはフリーランスや個人事業主も含まれると考えることができます。

個人事業主とフリーランス・自営業はどんな関係?

フリーランスは「組織に依存しない働き方の呼称」です。案件ごとにクライアントと契約し、自身の才覚を活かして働く働き方のため、フリーランスとして働く個人事業主もいます。つまりフリーランスという大きな枠内に個人も法人も含むことができます。

自営業は「自ら事業を営む人」を指します。個人事業主をはじめ、自分で法人を設立した法人経営者や、家業を継いだ経営者も含まれます。すなわち、自営業は独立して事業を営む事業者の総称といえます。

個人事業主は個人で事業を行い、税務署へ個人事業の開業届を提出している人のことです。

この3つの言葉の違いは、フリーランスは「働き方」、自営業は「事業のやり方」、個人事業主は「税務上の区分」と認識しておくと良いでしょう。

白色申告から青色申告への切り替えのタイミング

確定申告には白色申告と青色申告の2種類があり、個人事業主はどちらも選択することができます。白色申告では節税になるものはありませんが、青色申告では税制上の優遇措置を受けられるため、節税効果を得たい方にはおすすめです。ただし、届出を税務署へ提出する必要があります。

青色申告へ切り替えたい場合に必要な届出は「開業届」と「青色申告承認申請書」です。

開業届は事業開始の日からひと月以内に提出が必要です。青色申告承認申請書は1月1日〜1月15日までに開業した場合は3月15日まで、3月16日以降に開業した場合は2ヶ月以内が提出期限となっています。

また、青色申告承認申請書は原則、青色申告の承認を受けようとする年の3月15日までが提出期限と定められています。そのため、例えば2022年3月15日に青色申告承認申請書を提出した場合は2022年分の確定申告から青色申告ができるようになりますが、2022年3月16日に提出した場合は2023年分の確定申告から青色申告できるようになります。

個人事業と法人の違い

設立時

法人では、登記や定款など、会社設立のために必要な書類や手続きが多く煩雑です。設立時には最低でも20万円程度の費用が必要となります。個人事業主の場合は、開業届などを提出するのみで完了します。法定費用もかからず、事業に必要な費用のみで開業することが可能です。

廃業時

法人の場合、解散や清算の登記といった手続きがあり時間がかかります。また解散登記の登録免許税などの費用も必要です。個人事業主では、廃業時に廃業届を提出するのみで、廃業に関する手続き上で費用が発生することはほとんどありません。

税金

個人事業主に適用される税金は所得税、法人に適用される税金は法人税です。他にどちらも住民税や事業税も課税されます。

法人の場合、利益に関わらず税率はある程度一定しており、住民税、事業税も含め、法人にかかる税金は法人所得の3割ほどです。しかし赤字の場合でも最低7万円の税金がかかってくるため、利益が低い場合は不利になる可能性があります。

一方、個人事業主に適応される所得税は所得が高くなれば税率も高くなる累進課税となっています。個人事業の場合、控除額が少なく、必要経費として認められる範囲も法人よりも狭いため、利益が出たときに不利になるケースも考えられます。

消費税については、課税売上高が1,000万円を超えると、法人も個人事業主も納付の義務があります。1,000万円以下は免税事業者となり、納税義務はありません。売上げがある程度出てくるようになったら、消費税の納付を意識しましょう。

個人事業主になるメリット

開業手続きが比較的簡単で費用が発生しない 

法人化する場合は会社設立に複雑な手続きや費用がかかりますが、個人事業主であれば開業届等の書類を提出するのみなので手続きに手間はそれほどかかりません。また開業の手続き自体に費用はかからず、基本的に届出を出せば手続きは完了します。

開業の手続きで提出必須の書類は、税務署へ提出する「開業届」です。都道府県税事務所への「事業開始等申告書」も提出する必要がありますが、提出していないことで何か罰則があるわけではないため、提出してない方も多くいるようです。

また、個々のケースに応じて提出する書類は「青色申告承認申請書」「青色事業専従者給与に関する届出書」「給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書」「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書」などがあります。

税務申告が簡単

個人事業主として開業したら1月1日から12月31日までの1年分の売上や経費などを翌年の2月16日〜3月15日(※変更になる場合もあり)までに確定申告をする必要があります。1年分の売上や経費などの帳簿付けをもとに、確定申告書類を作成し税務署へ提出します。

複雑に感じる青色申告の場合にも、使い勝手の良い経理ソフトを使うと初心者でも比較的簡単に処理できます。青色申告が適用になると、節税効果が期待できることはメリットです。また事業年度が赤字になっても、最大3年間赤字を繰り越せるため、売上が不安定な傾向がある開業数年間は大きなメリットといえるでしょう。

一方法人の場合、法人税の申告書作成にはかなりの知識が必要ですので、通常は税理士に依頼する場合が多く、税理士への報酬の支払いもあります。

所得が少ない間は税負担も少ない

個人事業主では所得税を支払いますが、所得(利益)が少ないうちは、個人事業主の方が法人よりも税負担は少なくなります。所得税の税率が法人税の税率よりも低いためです。事業が軌道に乗ってくるまで個人事業を営み、利益が増えてきた段階で個人事業から法人化に切り替える人が多い傾向にあります。

新たな事業は、経営が軌道に乗るまでに時間がかかることが多いでしょう。そのため、開業して間もない、所得が低い期間を個人事業主としてやっていくことで税負担を抑えられることはメリットの一つと言えます。

経理の事務負担が少ない

個人事業主は通常、国民年金と国民健康保険に加入するため、法人を設立している場合よりも手続きや事務負担が少なくすみます。個人事業で自分一人だけであれば、給与の支払いもなく、面倒な給与計算などもありません。基本的に、個人事業の所得(利益)は収入から必要経費を引いた金額です。確定申告は自分で行うこともできます。

法人を設立すると、経理作業が複雑になります。会社から自分(社長)に給与を支払いますが、給与計算を行い、所得税、健康保険や厚生年金などを源泉徴収し、納付することが必要です。

個人事業主になるデメリット

法人に比べると信用度が低い

個人事業は登記がなく、法人よりも設立や運営が簡単にできる分、会社組織よりも社会的信用度が劣ります。個人事業との契約を避ける企業も中にはあります。

融資を受けるのが難しい

個人事業主は法人と比べると融資を受けにくいことがデメリットといえます。個人事業主の場合、売上の増減が起こりやすく、収入が不安定になるリスクがあるため、融資の審査は厳しくなります。すでに借り入れがある場合、新たに融資を受けるのはハードルが高いでしょう。

税金での優遇が少ない

先述しましたが、個人事業が支払う所得税は所得金額が増えると税率も上がる累進課税で、個人事業税も課せられます。経費に計上できる費用が法人よりも少なく、税負担が増える場合があり、税制面であまり優遇されていません。

人材採用で不利

人材の採用募集では、個人事業主の場合、法人よりも不利になりやすいです。求職者にとって安定したイメージのある企業と比べると、個人事業にはどうしても不安定さを感じるためです。条件が同じような求人があった場合、求職者の多くは法人へ応募する傾向があります。

個人事業主か法人のどちらにするか迷ったときは?

個人事業主か法人設立で迷ったときは、次の判断基準を参考に検討してみましょう。

1.見込み取引先の条件
すでに見込み取引先がある場合は、まず取引や契約条件を確認してからどちらかを選択しましょう。信用面や社内手続きの煩雑さが理由で個人事業主と取引をしない会社もあるので下調べが必要です。

2.開業資金の調達方法
金融機関から融資を受ける場合、個人事業でも融資が受けられるかを確認しておきましょう。

3.従業員の雇用
事業内容によりますが、開業時から従業員を雇う場合は、経費に給与を計上することを考慮して、利益が高くなるのはどちらかを考えましょう。

個人事業主になる前にしておいた方が良いこと

クレジットカードや住宅ローンの契約

住宅ローンやクレジットカードを申し込んでおくことをおすすめします。個人事業主は一般的には会社員よりも社会的信用が低いため、会社を辞めると、カードやローンの審査に通りにくいためです。会社員で借金やカード代金の滞納がなければ、クレジットカードは比較的簡単に作成できますので、会社員のうちに済ませておきましょう。

事業について考える

何を事業とするのかについて考えることが大切です。個人事業とは、反復・継続する仕事で、組織に所属せず、独立している仕事を指します。最初のうちは継続できるかどうかわからないかもしれません。その場合には「雑所得」として確定申告し、継続できることがはっきりしてきた時点で「事業所得」で確定申告すると良いでしょう。

副業の場合は注意が必要

最近では、副業で個人事業主として活動する人も増えてきていますが、副業の場合は、会社の就業規則や確定申告に気を付けなければなりません。副業を禁止している会社もありますので、副業をしていることでトラブルになることも考えられます。また、年間の副業所得が20万円を超える場合は確定申告が必要です。

個人事業主になる手順

開業届の提出

まず、個人事業の開業届(正式名は個人事業の開業・廃業等届出書)を税務署に提出します。用紙は、所轄の税務署で受け取るか、国税庁のHPからダウンロードが可能です。原則、事業開始日から1ヶ月以内に提出します。なお、開業届の提出を忘れた場合に罰則はありません。

参照:[手続名]個人事業の開業届出・廃業届出等手続 | 国税庁

青色申告承認申請書の提出

個人事業主になるにあたり、確定申告の際に青色申告か白色申告を選択します。青色申告を選択する場合は、青色申告承認申請書を開業届と合わせて提出します。新規開業の場合、提出期限は事業開始日から2ヶ月以内です。

なお、青色申告をしようと手続きを済ませておいたけれど白色申告に戻したい場合には、白色申告に戻したい年の翌年の3月15日(土日祝日の場合は翌平日)までに「所得税の青色申告の取りやめ届出書」を提出する決まりになっています。つまり、確定申告は翌年の3月15日までとなっているため、確定申告時に白色で確定申告書類を作成し、「所得税の青色申告の取りやめ届出書」と一緒に提出すれば問題ありません。

青色申告か白色申告か迷っている場合は青色申告承認申請書を提出しておくと良いでしょう。

参照:No.2070 青色申告制度 | 国税庁

その他の種類の届出

その他にも、家族従業員の給与を必要経費として計上するための「青色事業専従者給与に関する届出書」、国内において給与等の支払事務を取り扱う事務所等を開設、移転又は廃止した場合に提出する「給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書」、源泉徴収得税の納期を年2回にまとめて納付するための「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書」などを必要があれば提出します。

参照:
[手続名]給与支払事務所等の開設・移転・廃止の届出 | 国税庁
[手続名]青色事業専従者給与に関する届出手続 | 国税庁
[手続名]源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請 | 国税庁

個人事業主になった後に行うこと

国民健康保険への加入

会社を辞めて個人事業主になると、国民健康保険への加入か、会社の健康保険の任意継続かの選択肢があります。また、各業界に特化した国民健康保険組合などもあります。一般的には、国民健康保険への加入を選択する方が多いようです。ただし、扶養家族がいる場合は、国民健康保険ではなく、任意継続を選択した方がお金の負担が少なくすむ場合もあります。任意継続を選択しない場合は、退職日から14日以内に手続きを済ませましょう。

なお、個人事業主としての収入がまだ十分でなく、一定以下になる場合、家族の健康保険の扶養に入るという選択肢もあります。

国民年金への加入

年金についても、会社を辞めて個人事業主になる場合は厚生年金から国民年金へ切り替えることになります。国民年金への切り替え手続きも、国民健康保険と同様に、退職日から14日以内にする必要がありますので忘れないようにしましょう。なお、会社員が加入する厚生年金と比べると、国民年金だけでは、将来もらえる受取金額が大きく下がります。そのため、国民年金基金や個人型確定拠出年金(iDeCo)などを活用して、老後に備えると安心です。

名刺やホームページの作成

個人事業主として活動するにあたり、名刺やホームページを作成して宣伝を積極的に行っていきましょう。名刺は営業活動に必要です。名刺によりプロフィールが分かるため、初対面の方も安心感をもつことができます。また、ホームページがきっかけで新規顧客の獲得につながることはよくあります。ホームページには、事業の概要、仕事への姿勢、仕事の実績やポートフォリオなどを掲載し、アクセスしてきた見込み客にアピールしましょう。また、名刺にホームページのURLやQRコードを載せておくことをおすすめします。

事業用の銀行口座開設

個人の口座と別に、事業用の口座をつくることで、帳簿を管理しやすくなります。事業のお金の流れも口座を見ることで理解しやすく、今後の予算を立てるのに役立つでしょう。また、個人名で開設するよりも、屋号付きの口座で開設することをおすすめします。屋号付き口座は通常口座の開設と比べて提出書類が多く、申し込みは窓口でしかできませんが、個人事業主として活動するには、屋号付き口座の方が顧客からの信頼を得られます。

まとめ

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この記事の投稿者:

shimohigoshiyuta

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