請求書の基礎知識

請求書に電子印鑑は使用可能?作り方や法的効力について

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請求書 電子印鑑

業務の効率化やテレワークの推進といった目的で、業務をオンライン上で進める機会も増えてきました。本記事では、請求書と電子印鑑の関係性や、電子印鑑の作り方・法的効力などについてわかりやすく解説します。

電子印鑑とは

電子印鑑とは、画面内の文書に押印できるようにデータ化した印鑑です。

従来は、パソコンで作成した文書に印鑑を押す場合、一度印刷して印鑑を押すことが必要でした。しかし、電子印鑑はパソコンがあればPDFやExceで作成した文書にも直接印影を付与できるため、効率化やテレワーク推進に貢献するものと考えられています。

通常の印鑑との違い

通常の印鑑と電子印鑑で、法的な効力に違いが生じるわけではありません。電子署名法では、電子書面に関して以下のように述べられています。

(引用)電磁的記録であって情報を表すために作成されたもの(公務員が職務上作成したものを除く。)は、当該電磁的記録に記録された情報について本人による電子署名(これを行うために必要な符号及び物件を適正に管理することにより、本人だけが行うことができることとなるものに限る。)が行われているときは、真正に成立したものと推定する。

引用:電子署名及び認証業務に関する法律(第三条)

つまり、電子印鑑であっても、国が定める要件を満たし、かつ本人の電子署名である場合には、真正に成立したもの(偽造ではないもの)として推定されるということです。

また、通常の印鑑とは異なり、電子印鑑は印刷や押印・スキャンといった作業を行わずに印鑑の押された書類をメールなどで送信できます。

なぜ電子印鑑が求められるのか

近年は会計に関する業務や手続きの電子化が進んでいます。特に、2020年度分から法人税の電子申告が義務化され、資本金が1億円を超えるなどの要件に該当する大企業は、オンラインで申告を行うようになりました。

また、請求書や領収書といった書類を紙で発行せず、電子的に発行・やり取りする機会も増えています。このような流れの中で、印鑑についても従来の方法ではなく、電子的な方法で押印しようという流れが進んでいるものと考えられます。

参照:大法人の電子申告義務化について

請求書への押印は義務なの?

請求書への押印は義務ではありません。押印がなくても、書類として問題なく使用できます。

しかし、印鑑が押してある方が正式な書類に見えると考える方もいます。現在も請求書に押印をする会社は、そのようなイメージから押印をしているのかもしれません。また、特に理由なく長年そのようなルールで運用していたり、ただ単に担当者を明確にするために押印したりするケースもあるでしょう。

請求書に電子印鑑は使える?

請求書に電子印鑑は使える?

請求書に電子印鑑を使用することは可能です。

紙の請求書と同じく、Excelなどのツールで電子的に作成した請求書にも、印鑑は必要ありません。しかし、会社のルールなどで印鑑を押さなくてはいけない場合などには電子印鑑を使えます。

請求書に押印する理由

請求書に押印すると、請求書を受け取った相手に「しっかりとした会社だ」「これは大事な書類だ」という印象を与えます。相手に信頼感を与えることで、今後も良好な関係性を維持できる可能性があるでしょう。

また、書類が偽造された時、押印がされていない場合に比べ、押印がされている場合の方が発覚した時の刑罰が重くなります。取引でトラブルが発生するリスクを少しでも減らしたいために、押印しておく方が安心と考える会社もあるでしょう。

参照:刑法(第159条)

電子印鑑は2種類

電子印鑑は「印影をデータ化したもの」と「印影のデータにタイムスタンプの機能を与えたもの」の2つに分けられます。

単に印影をデータ化した電子印鑑は、本物の印鑑を紙に押して取り込み、編集を行うなどの作業によって比較的簡単に使い始められます。しかし、本当にその人が押印したのか、いつ押印したのかを特定することはできず、その点に関して法的な効力を発揮するわけではありません。

その一方で、タイムスタンプの機能を与えた電子印鑑は、押印した人や日付・時間を特定できます。タイムスタンプはTSA(時刻認証局)という機関が発行する正式な仕組みであり、証拠能力を持つため、より信頼性のある事務処理ができる特徴があります。

参照:タイムスタンプの機能|内閣府

電子印鑑の作り方・押し方

ここでは、電子印鑑を導入するための方法について紹介します。

無料あり!電子印鑑の作り方

電子印鑑は主に以下のいずれかの方法で作成します。

・Excelで作成する
・Adobeの機能を使う
・本物の陰影をスキャンして編集する
・無料ツールを使う

Excelでは、図形の中に自分の苗字などのテキストを追加して、グループ化を行うことで陰影を作成できます。色を赤にしたり、印鑑らしい書式にしたりすることで、本格的な印鑑のように見せることができるでしょう。

また、PDF用のソフトであるAdobe Acrobat Readerには電子印鑑のテンプレートが用意されているため、PDFに電子印鑑を押印したい場合に使えます。

その他、本物の印鑑を紙に押してスキャンしたり、ネット上の無料ツールを使ったりする方法があります。

電子印鑑の押し方

電子印鑑は、作成した印影の画像データを書類に貼り付けることで押印します。また、PDFの場合は前述したAdobe Acrobat Readerでデータを作成・押印することが可能です。

電子印鑑の法的効力は?

電子印鑑の法的効力は?

電子印鑑は「本人性」「存在性・非改ざん性」を証明することで、法的な効力を発揮するものと捉えられます。次項から2つの条件について詳しく解説します。

条件①本人性の証明

電子署名及び認証義務に関する法律では、電子署名の要件の1つとして「当該情報が当該措置を行った者の作成に係るものであることを示すためのものであること」と定めています。

つまり、電子印鑑が法的効力を認められるためには、その印鑑が所有者本人のものであるということを証明する必要があるということです。具体的には、国の指定を受けた認証局から発行される電子証明書を付与します。

そもそも電子証明書とは、オンライン上における印鑑証明書のような意味合いを持つものです。書面で契約などの手続きを行うときは、文書に押印して印鑑証明書を提出することがありますが、電子署名と電子証明書はそのオンライン版と言えます。

参照:電子署名及び認証義務に関する法律(二条)

条件②存在性・非改ざん性

前述した法律では、電子署名の要件について「当該情報について改変が行われていないかどうかを確認することができるものであること」とも述べられています。

パソコンで作成した書類は改変がしやすいため、法的な効力を持たせるためには、その書類がいつ作成されたのか、またはいつ変更されたのかを証明します。その上で「この日時以降には内容が変更されていない」ということを示す必要があるということです。そのために、タイムスタンプを付与することで存在性・非改ざん性を証明します。

参照:電子署名及び認証義務に関する法律(二条)

無料の電子印鑑はデメリットあり?

電子印鑑を作成するためのツールは無料で公開されていることもありますが、前述した要件を満たしていないために、法的効力がないケースがあります。押印した人や時間を特定できないことも多いため、万が一書類の改ざんがあってもそれを証明することはできないでしょう。

また、無料のツールは有料のものに比べセキュリティが弱く、第三者に使われてしまうなどのトラブルが起こることも考えられます。

有料電子化サービス導入の流れ

有料電子化サービス導入の流れ

請求書をはじめとする国税関連の書類は、電子化に向けてさまざまな取り組みが進んでいます。特に2022年の電子帳簿保存法の改正は、電子的に作成した書類を共有フォルダなどに保存する際の要件が緩和され、より電子化の流れを加速させるものとして話題になりました。

今後はさまざまなビジネスシーンで電子化が求められていくものと考えられます。これまで書面で行ってきた業務を画面上で行えるよう、業務を適宜見直してみてはいかがでしょうか。

参照:電子帳簿保存法が改正されました|国税庁

経理業務の効率化なら「INVOY」

「INVOY」は、見積書などの経理書類をWeb上で発行・保管するためのサービスです。以下をはじめとする機能によって業務の効率化をサポートします。

・見積書、請求書、発注書、領収書の発行
・受領した書類のクラウド管理
・受領した請求書のカード決済
・会計ソフトとのCSV連携

INVOYは、印影の画像データをアップロードすることで書類に反映できるほか、電子帳簿保存法にも対応しています。また、改ざんを防ぐために、編集ができない状態で保管することも可能です。

まとめ

請求書に必ずしも電子印鑑を押す必要はありませんが、押印することで書類の信頼性が高まるなどの効果が期待できます。

電子印鑑は、印影の画像データを作成して書類に貼り付けたり、既存のシステムなどを使って押印することが可能です。また、法的な効力を持たせたいのであれば、電子署名・タイムスタンプに対応したシステムを使うことになります。業務の電子化を行うためにも、自社の業務に適した方法を採用してみてはいかがでしょうか。

この記事の投稿者:

nakashima

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