
年が明けて最初の仕事始め。新年のご挨拶メールや手紙を書く際に、どのような言葉で始めれば良いか迷っていませんか?1月上旬にはビジネス文書の書き出しに時候の挨拶を入れる場面が多くあります。
今回は、1月上旬に使える季節の挨拶(新春・初春・七草)について解説し、ビジネスで使える例文やマナーのポイントをご紹介します。季節にふさわしい挨拶文を押さえて、新年のコミュニケーションを円滑に始めましょう。
目次
時候の挨拶とは何か
時候の挨拶とは、その季節や時節に合わせた季節感あふれる挨拶文のことです。ビジネスレターや案内状、あるいはビジネスメールの冒頭で用いられることが多く、季節に触れた一文を添えることで、書き手の心遣いを相手に伝える効果があります。
四季折々の言葉を使った挨拶は、日本ならではの伝統的なビジネスマナーの一つです。忙しいビジネスの場面でも季節の挨拶を入れることで、文章が丁寧になり、読み手に好印象を与えることができます。
漢語調と口語調の使い分け
時候の挨拶には大きく分けて漢語調と口語調の2種類があります。それぞれ文体と言葉遣いが異なり、使う相手や場面に応じて使い分けることが大切です。
漢語調(かんごちょう)
「~の候」「~のみぎり」など、季節を表す漢語(昔からの格式ばった語)を短いフレーズで用いる表現です。簡潔ながら格調高く、改まった印象を与えます。ビジネス文書や正式な手紙では通常こちらが使われます(例:「新春の候、益々ご清栄のこととお慶び申し上げます」)。
口語調(こうごちょう)
日常の言葉遣いに近い柔らかい表現で季節感を伝えるものです。「~頃となりました」「~が感じられる季節となりました」などと書き、親しみやすい印象になります。親しい相手への手紙やカジュアルなメールで用いられることが多いです(例:「寒さが一段と厳しく感じられる頃となりましたが、お元気でお過ごしでしょうか」)。
ビジネスシーンでは漢語調を使うのが一般的です。漢語調を用いると文章が引き締まり丁寧な印象になるため、社外向けの文書や改まった案内状などでは適切でしょう。
一方、社内メールやプライベートな相手に送る場合は、口語調のほうが自然に感じられることもあります。相手との関係性や文書の種類に合わせて、漢語調と口語調を上手に使い分けましょう。
1月上旬に使える季節の挨拶(新春・初春・七草)
1月上旬は新年にあたるため、お正月ならではの季節の言葉が時候の挨拶に使われます。代表的なのは「新春」「初春」といった新年を寿ぐ表現や、1月7日の行事に由来する「七草」です。それぞれの意味と使える時期、例文を確認しておきましょう(※いずれも文末に「~の候」を付けて使います)。
新春の候(しんしゅんのこう)
「新春」とは「新しい春」、すなわち新年を迎えた時期を指す言葉です。お正月の祝いムードを含んだ季節の挨拶で、ビジネス書簡の前文でも新年の喜びを伝える目的でよく使われます。
使用時期は1月全般で問題ありませんが、「新春」という言葉にはお正月のイメージが強くあります。そのため、一般的には松の内(まつのうち:元旦から1月7日まで。地域によっては1月15日まで)に使うのが無難でしょう。
例文
拝啓 新春の候、貴社ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。
※「新春の候」に続けて、「貴社ますますご清栄のこととお慶び申し上げます」と相手の繁栄や健康を喜ぶ一文を添えるのが一般的な形です。
初春の候(はつはるのこう)
「初春」は「初めての春」、つまり年明け早々の時期(新春と同義)を意味します。古くは立春(2月初旬)の頃を指しましたが、新年を迎えた喜びを表す言葉として現在ではお正月に広く用いられています。
「初春の候」も1月の上旬~中旬に使われることが多く、特に松の内である1月7日頃までに使うと季節感が伝わりやすいでしょう。新春との違いはほとんどなく、言い換え表現として使えます。
例文
拝啓 初春の候、〇〇様におかれましてはますますご健勝のこととお喜び申し上げます。
七草の候(ななくさのこう)
「七草」とは人日の節句(七草の節句)である1月7日頃を指す季語です。新年最初の節句で七草粥を食べ、一年の無病息災を願う風習にちなみます。
「七草の候」は使える時期が非常に限られ、1月7日当日かその直前に送る文書で使うのが一般的です(それ以降は時機に合わなくなるため避けましょう)。この表現を使うと「今日は七草ですね」と季節行事に触れた挨拶になり、相手に親しみや季節感を伝えることができます。
例文
拝啓 七草の候、皆様におかれましては健やかに新年をお迎えのことと存じます。
※「七草の候」を用いる場合は1月7日前後の日付で出す手紙やメールに限ります。それ以外の日に使うと不自然になってしまうので注意しましょう。
以上のように、1月上旬には新年にまつわる言葉を用いた時候の挨拶が適しています。なお、1月中旬以降になると「小寒(しょうかん)」「大寒(だいかん)」「寒中(かんちゅう)」といった寒さを表す言葉に切り替わっていきます。時候の挨拶は時期に応じて表現が変わるので、使うタイミングに合った言葉を選ぶことが大切です。
ビジネス文例と使い方(書き出しと結び)
時候の挨拶の意味を押さえたところで、次は実際のビジネス文書での使い方を見てみましょう。手紙(書面)やビジネスメールでの書き出しに季節の挨拶を取り入れる例文と、その構成上のポイントを解説します。
また、あわせて文末の結びの挨拶の例文もご紹介します。適切な書き出しと結びの表現を知って、より洗練されたビジネス文を書けるようにしましょう。
手紙の書き出し例
正式な手紙や文書では、頭語である「拝啓」の後に時候の挨拶を入れるのが基本です。その後で相手の繁栄や健康を喜ぶ言葉や日頃の感謝を述べ、続いて本文に入ります。新年最初の書簡であれば、時候の挨拶自体が賀詞に近い役割も果たします。
例文(書面での書き出し)
拝啓 初春の候、貴社ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。 平素は格別のご高配を賜り、厚く御礼申し上げます。
構成ポイント
上記の例文では、まず「拝啓」という頭語に続けて「初春の候」という時候の挨拶を入れています。次に「貴社ますますご清栄のこととお慶び申し上げます」と、相手(貴社)の繁栄と健康を喜ぶ定型表現が続きます。
これは相手の近況を気遣う前文にあたり、ビジネスレターではよく使われるフレーズです。さらにその後、「平素は格別のご高配を賜り、厚く御礼申し上げます」と日頃の支援への感謝を述べています。
このように、頭語 → 時候の挨拶 → 相手の安否や繁栄を慶ぶ言葉 → 日頃の感謝という順序で書き出すと、丁寧で礼儀正しい導入になります。挨拶文の後は改行し、「さて、・・・」と本文の要件に入っていきます。
ビジネスメールの書き出し例
ビジネスメールの場合、手紙とは形式が異なり頭語や結語(拝啓・敬具など)は省略するのが通常です。ただし、メールの本文冒頭に時候の挨拶を入れること自体は問題ありません。むしろ改まった依頼メールや、新年の挨拶メールであれば季節の挨拶を冒頭に加えることで、丁寧な印象を与えられます。
例文(メールでの書き出し)
株式会社○○の山田と申します。いつもお世話になっております。新春の候、貴社ますますご隆盛のこととお慶び申し上げます。 本年もどうぞよろしくお願いいたします。
構成ポイント
メールでは差出人が分かりやすいよう、本文の最初に自社名・自分の名前を名乗るのが親切です(上記例では「株式会社○○の山田と申します。」)。次に「いつもお世話になっております。」と日頃の関係に対するお礼や挨拶を述べています。
その後に時候の挨拶として「新春の候、貴社ますますご隆盛のこととお慶び申し上げます。」と続け、新年にあたり相手企業の発展を喜ぶ気持ちを伝えています。最後に「本年もどうぞよろしくお願いいたします。」と新年の付き合いのお願いで締めくくりました。
このようにメールでも、自己紹介(または挨拶)→時候の挨拶→賀詞やお願いという流れで書き出すと、ビジネスにふさわしい丁寧な導入になります。
※メールでは状況に応じて、時候の挨拶を省略し簡潔に始めるケースもあります。たとえば社内向けのメールや、やり取りの頻繁な相手への短いメールでは「お世話になります。○○の山田です。
本題に入りますが、・・・」といった具合に挨拶を簡潔に済ませることもあります。相手や内容に合わせて使い分けましょう。
結びの挨拶の例
ビジネス文書では、本文が終わった後に締めの挨拶(結びの挨拶)を入れるのが丁寧です。結びの挨拶では、相手の健康や発展を祈る言葉、今後の関係継続への願いなどを述べます。時候の挨拶と同じく季節感を織り交ぜたり、新年であれば賀詞を入れたりすると良いでしょう。手紙の場合は結びの挨拶の後、最後に結語「敬具」などで締めます。
例文(結びの挨拶)
寒さ厳しき折ではございますが、皆様のご健勝とご発展を心よりお祈り申し上げます。
ポイント: 上記は冬の時期によく使われる結びの挨拶の一例です。「寒さ厳しき折ではございますが、・・・」と季節(厳寒の時期)に触れつつ、相手の健康と発展を祈る内容になっています。「ご健勝」は健康、「ご発展」は事業などの繁栄を意味する丁寧な語です。
「心よりお祈り申し上げます」と結ぶことで、相手の幸せを真心から願う気持ちを伝えられます。手紙ではこの一文の後に改行し、結語「敬具」などで締めくくってください。
結びの挨拶はこの他にも状況に応じて様々な言い回しがあります。新年の時期であれば「本年も変わらぬご愛顧を賜りますようお願い申し上げます。」や「皆様にとりまして佳き一年となりますよう祈念いたします。」といった新年ならではのフレーズを入れることもできます。
また、メールの場合は手紙ほど形式張らずとも、「今後とも何卒よろしくお願い申し上げます。」など簡潔な一文で締めても構いません。大切なのは、最後に相手への感謝や気遣いの気持ちをもうひと押し伝えることです。
書き方のマナー・注意点
時候の挨拶や季節の言葉を使う際には、いくつか気を付けておきたいマナーや注意点があります。ここでは、ビジネス文書で季節の挨拶を書くときに押さえておきたいポイントをまとめました。
ネガティブな表現は避ける
時候の挨拶には「酷暑」「厳寒」など気候の厳しさを表す言葉もありますが、できるだけネガティブな印象を与えない表現にしましょう。例えば、「寒さが厳しくつらい毎日です」といったマイナスイメージの直接的な表現は避けるべきです。
ビジネスの挨拶文では、たとえ寒さや暑さに触れる場合でも、相手の健康や繁栄を気遣う前向きな内容にすることが大切です。
良くない例
「連日の厳寒で身も凍る思いの日々ですが…」→(寒さの辛さばかりが強調され、暗い印象になります)
良い例
「厳寒の折ではございますが、皆様ますますご健勝のこととお慶び申し上げます」→(寒さに触れつつも、相手の健勝を喜ぶポジティブな内容になっています)
このように、季節に言及するときはネガティブワードの単独使用は避け、ポジティブな結びにつなげるのがコツです。特に真冬や真夏は「厳しい寒さ」「厳しい暑さ」という表現が使いやすい反面、そのままでは否定的な響きになりかねません。
「〜ですが…」と続けて相手を気遣う言葉を添えるなど、前向きな印象になる工夫をしましょう。
相手や地域に合わせて表現を工夫する
時候の挨拶は定型文になりがちですが、送り先の状況に合わせて微調整する配慮も大切です。たとえば、相手のいる地域の気候が自分の地域と大きく異なる場合を考えてみましょう。
北海道の取引先に「穏やかな早春の候」と書くと現実の厳冬の気候とずれてしまいますし、沖縄の相手に「厳寒の候」と書くと違和感を与えるかもしれません。そのため、相手先の土地の気候感にも目を向けて表現を選ぶと良いでしょう。
また、長年の付き合いがある取引先や親しいお客様への手紙では、定型句そのままよりも少しオリジナリティを加えると心が伝わります。
例えば「例年になく暖かい新春となりましたが、いかがお過ごしでしょうか」と現実の天候に触れたり、「○○様におかれましては本年もご活躍の年となりますようお祈りいたします」と相手個人に合わせたメッセージを入れたりするのも効果的です。
ただしビジネス文書の場合はあまり砕けすぎず、礼儀を保った範囲で相手本位の表現を心がけましょう。
賀詞とのバランスにも配慮する
1月上旬の挨拶では、新年の賀詞(がし)を使うケースも多いです。「賀詞」とは「謹賀新年」「恭賀新年」「明けましておめでとうございます」など、新年を祝う決まり文句のことです。時候の挨拶も新年を祝う内容を含むため、賀詞と季節の挨拶のバランスに注意しましょう。
まず、賀詞を入れる場合は時候の挨拶を無理に入れなくても構いません。 たとえば、ビジネスレターの前文を「拝啓 謹んで新年のご祝詞を申し上げます。平素は格別のご高配を賜り厚く御礼申し上げます。」と始めれば、これはこれで正式な新年の挨拶文になります。
この例では「新春の候」といった季節の言葉はあえて入れていませんが、賀詞(新年のご祝詞)が季節の挨拶の役割を果たしています。賀詞と時候の挨拶はどちらも冒頭の挨拶表現なので、両方を盛り込みすぎると冗長になることがあります。
シーンに応じてどちらか一方を用いるか、あるいはシンプルな表現にまとめましょう。もちろん、賀詞と時候の挨拶を組み合わせて使うことも可能です。ただしその際は文章が長くなりすぎないよう注意します。
例えばメールで「新年明けましておめでとうございます。初春の候、貴社ますますご繁栄のこととお慶び申し上げます。」とすれば賀詞と季節の挨拶を両方入れた丁寧な表現になります。
このように賀詞も入れる場合は、松の内(1月7日頃)までに限定するのがマナーです。1月7日を過ぎてから「明けましておめでとうございます」は避け、代わりに「寒中お見舞い申し上げます」など時期に即した挨拶に切り替えましょう。
総じて、新年の挨拶文では賀詞・時候の挨拶・日頃のお礼など盛り込む要素が多くなりがちです。盛り込みすぎるとかえって読みづらいため、伝えたいポイントに優先順位を付けて簡潔にまとめることも心掛けてください。
まとめ
1月上旬に使える時候の挨拶について、代表的な表現やその使い方、さらにビジネス文での具体例や注意点を解説しました。新春ならではの挨拶言葉を正しく使えば、年始のコミュニケーションをより丁寧で好印象なものにできます。季節の挨拶を上手に取り入れて、ビジネス相手との円滑なやり取りを進めていきましょう。
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