請求書の基礎知識

請求書における振込手数料の取り扱い。知っておくべきすべてのこと

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請求書 振込手数料

今回は、ビジネスにおいて避けて通れない話題、「請求書の振込手数料」について詳しくお話しします。振込手数料って誰が払うの?請求書にはどう書けばいいの?そんな疑問にお答えしていきます。

振込手数料とは?基本を押さえよう

まずは、振込手数料の基本から押さえていきましょう。

振込手数料とは、銀行やその他の金融機関で口座間の送金を行う際に発生する手数料のことです。つまり、お金を振り込むたびに必要となる「お金を動かすためのお金」というわけです。

例えば、次のような場面で振込手数料が発生します。

  • 取引先に代金を支払う時
  • 給与を従業員の口座に振り込む時
  • 個人間で送金する時

振込手数料の金額は金融機関によって異なりますが、一般的に数百円程度です。同じ銀行の口座間なら無料になることもあります。

振込手数料は誰が負担するの?法律で決まっているのは本当?

さて、ここからが本題です。この振込手数料、いったい誰が払うべきなのでしょうか?

結論から言うと、原則として振込手数料は「支払う側」が負担することになっています。これは、ただの慣習ではなく、ちゃんと法律で定められています。

具体的には、民法第484条と第485条に根拠があります。ここでは、「持参債務の原則」というものが定められています。ちょっと難しい言葉ですが、要するに「お金を払う人が、相手のところまでお金を持っていく責任がある」ということです。

現代では、実際にお金を持参する代わりに振込で支払うことが一般的です。その場合、振込手数料は「お金を持っていくための費用」と考えられるため、支払う側が負担するというわけです。

ただし、これはあくまで「原則」です。取引先との合意があれば、別の取り決めをすることも可能です。例えば、長期的な取引関係がある場合などは、受け取る側が振込手数料を負担することもあります。

振込手数料の負担パターン:当方負担vs先方負担

振込手数料の負担パターン:当方負担vs先方負担

振込手数料の負担には、主に2つのパターンがあります。「当方負担」と「先方負担」です。

当方負担

「当方負担」とは、お金を支払う側(つまり、請求書を受け取った側)が振込手数料を負担することです。これが、先ほど説明した法律上の原則に沿ったパターンです。

例えば、請求金額が10万円で振込手数料が500円の場合

  • 支払う側は、10万500円を振り込みます。
  • 受け取る側の口座には、ぴったり10万円が入金されます。

先方負担

「先方負担」は、お金を受け取る側(つまり、請求書を発行した側)が振込手数料を負担するパターンです。これは、特別な合意がある場合に採用されます。

同じく請求金額が10万円で振込手数料が500円の場合

  • 支払う側は、ちょうど10万円を振り込みます。
  • 受け取る側の口座には、9万9,500円が入金されます。

どちらのパターンを採用するかは、取引先との関係や業界の慣習によって異なります。大切なのは、事前にしっかりと取り決めをしておくことです。

請求書への記載方法:トラブル防止のカギ

振込手数料の負担について決まったら、次は請求書にどう記載するかが重要です。ここをしっかりしておけば、後々のトラブルを防ぐことができます。

基本的な記載例

請求書に振込手数料について記載する際の基本的な文例をいくつか紹介します。

  1. 当方負担(支払側負担)の場合
    「恐れ入りますが、振込手数料はお客様にてご負担ください。」
  2. 先方負担(受取側負担)の場合
    「振込手数料は弊社にて負担いたします。」
  3. 条件付きの場合
    「○○円以上のお振込みの場合、手数料は弊社負担とさせていただきます。」

これらの文言を、請求書の備考欄や注意事項の部分に記載するとよいでしょう。

具体的な請求書の例

実際の請求書ではどのように記載するのか、具体例を見てみましょう。

株式会社〇〇御中

請求書

請求番号: 12345
請求日: 2024年10月7日

以下の通り、ご請求申し上げます。

項目           数量   単価      金額
商品A          10     1,000円   10,000円
商品B           5     2,000円   10,000円

合計金額: 20,000円

振込先情報:
銀行名: 〇〇銀行
支店名: 〇〇支店
口座番号: 1234567
口座名義: 株式会社△△

※恐れ入りますが、振込手数料はお客様にてご負担ください。

株式会社△△

このように、振込先情報の下に振込手数料に関する注意書きを入れるのが一般的です。

インボイス制度導入後の影響と対応

インボイス制度導入後の影響と対応

2023年10月から導入されたインボイス制度。これによって、振込手数料の取り扱いに変更はあるのでしょうか?

結論から言うと、インボイス制度導入後も、振込手数料の負担に関する基本的な原則は変わりません。つまり、原則として買い手側(支払う側)が負担することになっています。

ただし、インボイス制度の導入により、消費税の取り扱いについては注意が必要です。

買い手側(支払側)の場合

買い手側が課税事業者の場合、振込手数料に含まれる消費税分の税額控除を受けられます。ただし、そのためには金融機関が発行する適格請求書(インボイス)が必要です。

売り手側(受取側)の場合

売り手側が振込手数料を負担する場合、その処理方法には主に2つのパターンがあります:

  1. 売上値引きとして処理する
    振込手数料分を差し引いた金額で買い手側に請求します。
  2. 支払手数料として処理する
    振込手数料を支払手数料として処理し、消費税法上は売上値引きと同じように扱います。この場合、買い手側から立替金精算書を受け取る必要があります。

どちらの方法を選択するかは、取引の状況や会計処理の方針によって異なります。税理士や会計士に相談して、最適な方法を選択するとよいでしょう。

トラブル防止のための注意点

振込手数料に関するトラブルを防ぐために、以下の点に注意しましょう。

  1. 事前の取り決めを明確にする
    取引開始時に、振込手数料の負担について明確に合意しておきましょう。可能であれば、契約書にも明記するとよいでしょう。
  2. 請求書に明記する
    毎回の請求書に、振込手数料の負担について明記しましょう。これにより、その都度確認ができます。
  3. 業界の慣習を確認する
    業界によっては、振込手数料の負担に関する一般的な慣習があることもあります。新規取引を始める際は、その業界の慣習を確認するとよいでしょう。
  4. 金額の確認を徹底する
    特に先方負担の場合、実際に入金される金額が請求金額と異なることに注意が必要です。入金額の確認を徹底しましょう。
  5. インボイス制度への対応
    インボイス制度導入後は、振込手数料に関する消費税の取り扱いに注意が必要です。必要に応じて専門家に相談しましょう。

まとめ:振込手数料、きちんと理解して適切に対応しよう

ここまで、請求書における振込手数料の取り扱いについて詳しく見てきました。重要なポイントを整理すると

  1. 振込手数料は原則として支払う側が負担する
  2. 法律(民法)で定められているが、合意があれば変更可能
  3. 請求書には振込手数料の負担について明記する
  4. インボイス制度導入後も基本的な原則は変わらないが、消費税の取り扱いに注意が必要
  5. トラブル防止のため、事前の取り決めと明確な記載が重要

振込手数料は金額としては小さいかもしれませんが、ビジネスにおいては重要な要素です。適切に対応することで、スムーズな取引と良好な取引関係を維持することができます。

この記事を参考に、自社の振込手数料の取り扱いを見直してみてはいかがでしょうか?疑問点がある場合は、税理士や会計士などの専門家に相談することをおすすめします。

ビジネスの成功は、こういった細かい部分への配慮の積み重ねから生まれるものです。振込手数料の適切な取り扱いが、皆さんのビジネスの一助となることを願っています。

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この記事の投稿者:

hasegawa

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