
銀行振込で代金を支払った場合、「領収書は必要なのか?」と疑問に感じたことはありませんか。
振込操作後に受け取る明細票や通帳の記録だけで十分なのか、あるいは改めて領収書を発行してもらうべきなのか悩む方も多いでしょう。
本記事では、銀行振込における領収書の必要性や扱いについて、背景から具体的な対処法、税務上のポイントまで包括的に解説します。
振込時の証明書類の違いや、領収書の発行義務、代替書類の活用方法、さらに電子化された経理対応まで網羅しています。
個人・企業・フリーランスのいずれの立場でも役立つ内容ですので、「振込で領収書はどうするの?」という検索意図にしっかり応える情報をぜひ参考にしてください。
目次
銀行振込で領収書が求められるケースと背景
銀行振込による支払いでは現金の受け渡しがないため、取引の証明として領収書が発行されないことがあります。しかし、領収書は金銭の授受を証明する重要な書類であり、特に経理や税務の場面で必要とされるケースがあります。
例えば、確定申告や会社の経費精算では、支出の事実を示す証憑書類として領収書等の保管が求められます。個人事業主が事業経費を計上する際や、会社員が出張費・交通費を精算する際にも、支払いを証明する書類が必要です。
また、寄付金控除を受ける場面では寄付金の支払い証明として振込の領収証明書(寄付先が発行する受領証)が要求されることがあります。
ビジネスにおいても取引相手との金銭トラブルを防ぐために、代金を受け取った側が正式に領収書を発行し双方で保管しておくことが望ましい場合があります。
このように、銀行振込で支払った場合でも領収書やそれに準じる証明書類が重要となる背景には、「いつ・誰が・何のために・いくら支払ったか」を明確にしておく必要性があります。
特に高額な取引や継続的な取引では後日の紛争防止のため、振込による支払い記録をきちんと残し、必要に応じて領収書を発行・受領しておくことが推奨されます。
領収書と振込明細書の違い
まず用語の整理として、領収書と銀行の振込明細書(振込控え)の違いを押さえましょう。領収書とは、代金を受け取った側(受領者)が「たしかに金銭を受領しました」という証拠として発行する書類です。
現金取引であれ銀行振込であれ、金銭の授受が完了した際に受領者から発行されるもので、支払日や金額、受取人(宛名)、但し書き(何の代金か)などが記載されます。
領収書は民法上も位置付けがあり、発行を請求する権利が支払い側に認められています(民法486条)。一方の振込明細書(振込利用明細、振込控えとも呼ばれます)は、銀行振込を行った際に銀行側が発行する取引記録です。
ATMで振込を行った場合に受け取る紙の明細票や、インターネットバンキングで振込完了後に表示・発行できる取引明細がこれに該当します。
振込明細書には振込実行日時や振込先口座名義、振込金額、手数料などが記録され、振込を行った支払者側に渡されます。
両者の違いは発行者と役割にあります。領収書は代金を受け取った側が発行する正式な受領証であり、金銭授受の証拠として法的にも認められる書類です。
一方、振込明細書は支払者側が受け取る取引記録であり、それ自体は単なる明細で法定の書式ではありません。ただし、記載事項を見ると振込明細書にも日付・振込先・金額などの情報が含まれており、取引の証拠としての価値があります。
実務上は、この振込明細書が領収書の代わりに扱われるケースが多々あります。
例えば企業間取引では、「振込明細をもって領収書に代えさせていただきます」と契約書や請求書に記載し、銀行振込の場合は別途領収書を発行しない取り決めとすることがあります。
重要なのは、振込明細書それ自体は正式な領収証ではないものの、支払い事実を示す証憑として税務上領収書と同様に扱える点です。
混同しないよう、領収書は受領者が発行する証明書、振込明細は銀行が発行する取引記録という違いを認識しておきましょう。
銀行振込時に得られる明細や確認書の種類
銀行振込で支払いを行うと、支払者は何らかの明細や確認書を受け取ります。これは支払いの証拠となるもので、形式はいくつかあります。
典型的な例を挙げると、まずATMから振込をした場合には、その場で「振込利用明細票」(レシート状の紙)が発行されます。
この明細票には振込日時、振込先の銀行・支店名や口座番号、受取人名、振込金額、振込手数料などが印字されており、小さな領収証のような役割を果たします。
ATMを利用した際はこの明細票を必ず受け取り、大切に保管しておきましょう。
次に、インターネットバンキングを利用した場合です。オンラインで振込を完了すると、画面上に振込完了の詳細が表示され、多くのネットバンキングではその明細を印刷したりPDFで保存したりできる機能があります。
また、登録しているメールアドレス宛に振込受付の通知メールが届く銀行もあります。このメールには取引IDや金額、日時といった情報が記載されるため、削除せず電子保存しておくことで証明資料になります。
加えて、銀行口座をお持ちの場合は通帳(預金通帳)への記帳という形でも振込の記録が残ります。ATMや窓口で通帳に記帳すれば、「○月○日 振込 入金先○○○ ¥○○○○」のように振込内容が印字されます。
通帳の記載は公的な取引記録ですので、紙の明細票を失くしてしまっても通帳更新をしていれば支払いの証跡が確認できます。
場合によっては、銀行が発行する正式な振込証明書を取得することも可能です。
例えば何らかの公式な手続きで振込の証明が必要になった際、銀行窓口で所定の手数料を支払えば「振込証明書」や「送金証明書」といった書類を発行してもらえます。
ただしこれは即時には発行されないことが多く、費用もかかりますので、通常はATM明細やネットバンキングの記録で十分でしょう。
以上のように、銀行振込時にはATMのレシート、ネットバンキングの画面やメール通知、通帳記帳、必要に応じて銀行発行の証明書といった様々な形で支払いの記録が残ります。
支払者としては、これらの記録を領収書代わりの証拠として適切に保管しておくことが大切です。
振込を受け取る側の領収書発行:義務と書き方
銀行振込で代金を受け取った受領者側は、基本的に現金受領時のような領収書発行は「不要」とされる場合が多いです。
なぜなら、前述のように支払者は振込明細などで支払いの証拠を得ているため、二重の証明がなくても税務上問題がないからです。
特に継続的な取引では、毎回入金のたびに領収書を作成・郵送するのは手間やコスト(収入印紙代や郵送料)がかかるため、あらかじめ「銀行振込の場合は領収書発行不要」と合意しておくケースもあります。
実際、請求書に「※お振込みの控えをもって領収書に代えさせていただきます」といった注記を記載し、支払者の了承を得ている企業も多いでしょう。
支払者の了承がある場合には、振込での支払いに対し受領側が領収書を交付しなくても問題ありません。
しかし注意すべきは、支払者から領収書発行の請求があった場合です。民法486条の規定により、「弁済(支払い)をした者は受領者に対し受取証書(領収書)の交付を請求できる」とされています。
つまり銀行振込であっても、支払った側が「領収書をください」と請求すれば、受け取った側には領収書を発行する法的義務が生じます。このため、取引先や顧客から求められた際には正当に対応しなければなりません。
ただし、前述のように事前の契約や合意で「振込明細書を領収書の代わりとする」旨を取り決めている場合には、その合意が優先され領収書発行義務は免除されます。
では、いざ領収書を発行するとなった場合、その書き方や注意点はどうでしょうか。基本的な領収書の書き方は、現金取引の場合と大きく変わりません。
領収書には発行日付、受領金額、誰から受け取ったか(宛名)、何の代金か(但し書き)、そして発行者(自社名や担当者名)の情報を記載します。
振込による受領であることを明確にしたい場合、但し書きに「○月○日付○○サービス代(金額)銀行振込により受領」などと記載すると良いでしょう。発行者側の社判や印鑑(領収印)も押しておけば、公印として信頼性が高まります。
なお、紙の領収書を発行する場合は収入印紙にも注意が必要です。取引金額が5万円以上の領収書を発行する際には所定の印紙税が課税されますので、金額に応じた収入印紙を貼付し、消印をする義務があります。
銀行振込だから印紙が不要という誤解があるかもしれませんが、領収書という文書を発行する以上、現金取引と同様に印紙税法の対象になります(※電子的に発行する領収書であれば印紙は不要です)。
領収書は一度しか発行できない書類ですので、宛名や金額などに誤りがないよう正確に作成し、控えも含めて適切に管理しましょう。
再発行についても触れておきます。領収書は原則として再発行の義務はありません。受領者としては重複発行により悪用されるリスクを避けるため、紛失などによる再発行依頼は基本的に断ることができます。
どうしても必要な場合は、例えば「○月○日○○代金支払証明書」といったタイトルで、領収書ではなく支払証明書など別形式の書類を作成して対応することもあります。
いずれにせよ、振込で支払いを受けた側は状況に応じて適切に領収書を発行し、発行しない場合も取引先に説明して納得を得ることが円滑な取引関係につながるでしょう。
領収書は法的に必須か?代わりとなる証憑の扱い
結論から言えば、領収書そのものが法的に絶対必須というわけではありません。前述の通り、民法上は支払い側の請求に応じて発行する義務がありますが、逆に言えば請求されなければ発行義務は生じません。
また税務上も、領収書が無ければ経費にできないということではなく、他の証憑書類で代替することが可能です。重要なのは支出の事実と内容を証明できるかどうかであり、それを満たす書類であれば領収書でなくても認められます。
領収書の代わりに証明書類として認められるものの例としては、銀行の振込明細書や通帳の該当記帳、クレジットカード利用明細、電子マネーの利用履歴、ETCの利用明細など、実際に支払いが行われたことを示す記録が挙げられます。
例えば銀行振込での支払いで領収書が発行されなかった場合、振込時に取得したATMの明細票やネットバンキングの取引明細をもって支出の証拠とすることができます。
ただし、振込明細書などには「何の支払いか」の内訳までは書かれていないこともあるため、可能であれば請求書や納品書とセットで保管するとより確実です。
請求書に記載の金額と同額が振込明細に記録されていれば、二つを合わせて領収書と同等の証明力を発揮します。
万一、請求書もなく明細しかない場合は、明細の余白や別紙メモに支払目的(商品名やサービス内容)を記しておくとよいでしょう。
また、取引先との契約書に支払金額や振込日が明記されている場合、その契約書も支出の証明として有効です。
税務調査などの際には、「領収書が無い支出」があっても上記のような他の証憑類が揃っていれば原則として経費計上は認められます。ただし、消費税の仕入税額控除(支払った消費税の控除)を受ける場合には注意が必要です。
2023年に適格請求書等保存方式(インボイス制度)が導入されたこともあり、消費税計算上は一定金額以上の取引には適格請求書(またはそれに準じる書類)の保存が求められます。
領収書がなくとも請求書と振込記録があれば支出自体は認められますが、取引額が大きい場合には請求書に消費税額や適格請求書発行事業者番号などが記載されている必要があります。
要するに、領収書が無くても他の書類で代用可能だが、その書類には支払日・支払先・金額・内容といった必要情報が網羅されていなければならないということです。
銀行振込の明細は日付・振込先・金額は示してくれますから、あとは支払内容(何の代金か)さえ把握できれば、有力な証拠書類として機能します。
振込支払い時の税務処理と帳簿付け(個人・法人)
銀行振込で支払った場合でも、経理上の処理手続き自体は現金払いの場合と基本的に変わりません。しかし、証憑の整理方法や保存期間といった点で留意すべき事項があります。
まず個人事業主やフリーランス(所得税の確定申告)の場合、確定申告書に領収書類を添付提出する必要はありません。ただし、経費の根拠となる書類は自宅や事務所で適切に保管しておく義務があります。
青色申告をしている場合は原則として7年間、白色申告でも5年間は帳簿や領収証等の書類を保存しなければなりません。
したがって、振込で経費を支払った場合は、その振込記録(明細票や通帳コピーなど)および請求書や契約書を一緒にファイリングしておき、後日税務署から求められた際に提示できるようにしておきましょう。
帳簿への記載においては、現金出納帳ではなく預金出納帳(または振替伝票)に「○月○日 ○○銀行振込 支払先△△ 株式会社○○コンサルタント料 ¥□□□」などと記録します。
要は支払手段が振込であったことをわかるように記載しておくことがポイントです。
次に法人(企業会計)の場合ですが、基本的な経理処理は個人事業と同様です。仕訳上は「(借方)経費○○ / (貸方)当座預金(普通預金)」という形で振込による支出を記録します。
法人税法でも経費の証拠書類保存は重要であり、決算申告時に領収書そのものを提出することはありませんが、後日の税務調査に備えて原則7年間の保存が必要です。
企業では通常、伝票処理を行う際に領収書や請求書をホチキスで添付し、ひとつの証憑セットとして管理します。銀行振込で支払った場合は、請求書に「振込済」とメモを付けたり入金確認の印を押すなどして、振込明細票をその裏に貼付するケースが一般的です。
これにより、請求書(金額や内容の明細)と振込明細(支払実行の事実)がひと組になって証憑性が高まります。また、法人の場合も消費税の控除のため、2023年以降は適格請求書の保存が求められます。
取引先から領収書をもらえなかった場合でも、適格請求書(または適格簡易請求書)と銀行振込記録があれば問題なく経費処理・税務処理が可能です。
要注意なのは、勘定科目の整合性や消費税区分です。振込手数料を支払った場合、その手数料も経費になりますが、銀行からの利用明細に手数料額が載っていますので忘れず計上しましょう(振込手数料は非課税取引として処理)。
また、振込で前払金や預り金の決済を行った場合、領収書がないからといって処理を怠ると帳簿残高が合わなくなります。
振込の事実はすべて通帳やネットバンキング履歴に残りますので、必ず帳簿に反映させ、対応する証憑を揃えておくことが健全な経理には欠かせません。
フリーランスが振込・領収書で注意すべきポイント
フリーランス(個人事業主)の方は、銀行振込による支払い・受取りの双方において注意が必要です。まず収入面では、クライアントからの支払いが銀行振込で行われることが多いでしょう。
フリーランスがサービス提供者として代金を受領する立場の場合、請求書を発行して振込で支払ってもらう流れになります。この際、領収書の扱いについて事前に相手と認識を合わせておくとスムーズです。
多くの企業クライアントは振込控えをエビデンスとするため領収書不要としていますが、中には社内規程で領収書を必須とするところもあります。
請求書の備考欄に「銀行振込の控えをもって領収証に代えさせていただきます」と明記しておけば、大半の場合は追加の領収書発行は求められません。ただし、もし取引先から領収書を求められたら、迅速に対応しましょう。
フリーランスにとっては信用が第一ですので、「振込だから出しません」という姿勢ではなく、法律上の義務でもあるのできちんと発行して送付することが信頼関係維持につながります。
一方、支出面では、フリーランスは事業の様々な経費を日々支払いますが、その多くが銀行振込やクレジットカード払いなどのキャッシュレス決済になっているでしょう。
例えば外注先への支払いを振込で行ったり、仕入れやツール利用料をオンライン決済したりといったケースです。これらについては証憑管理を怠らないようにしましょう。
相手から領収書が発行されない場合でも、請求書や利用明細メール、銀行振込の控えをしっかり保存し、内容がひと目で分かる形で整理します。
特にフリーランスの場合、確定申告時に領収書類の提出こそ不要ですが、税務署からの質問や提示要請に自分で対応することになります。
その際に「何にいくら支払ったか」が説明できるよう、日頃から経理資料をまとめておくことが重要です。
万一領収書を紛失してしまった経費がある場合でも、慌てずに代替資料を用意しましょう。
例えば、クライアント先とのメールのやり取りで金額が確認できるならそれを印刷しておく、銀行の取引明細を取得しておく、自分で出金伝票を起票して支出内容・日付・金額を記録し上長(自分自身の場合はメモ扱い)の承認印代わりの署名をする、といった対応策があります。
また、フリーランスは電子帳簿保存法やインボイス制度など新しい制度への対応も自身で行わねばなりません。
2024年以降は電子取引データの保存義務が強化されているため、取引の請求書や領収書がメールやクラウドで届いた場合は、紙に印刷して保管するだけでなく電子データとしての保存要件を満たす形で保管する必要があります
(詳しくは後述します)。
クラウド会計ソフトや経費管理サービスを活用すれば、銀行明細や領収書画像の取り込み・保存が自動化できるので、積極的に取り入れると良いでしょう。
フリーランスにとって経理は本業ではありませんが、領収書や証憑の管理は税務リスクの回避と信頼性の確保に直結します。
日頃から振込記録と関連書類を整理し、取引先とも領収書対応について円滑にコミュニケーションを取っておくことが大切です。
電子帳簿保存法における振込記録・領収書の扱い
近年は経理関連の法制度として電子帳簿保存法が大幅に改正され、領収書や請求書の電子データ保存に関するルールが変わりました。
この法律では、電子的にやり取りした取引情報は電子取引とみなされ、紙に出力して保存するのではなく原則データのまま保存することが義務付けられています。
銀行のインターネットバンキングで振込を行った場合、その取引明細は紙の通帳に記帳することもできますが、多くの場合Web上で確認する電子データです。
税法上はこうしたネットバンキングの振込明細も「電子取引データ」に該当し、2024年1月以降、データでの保存が完全義務化されています。
つまり、ネットバンキングの画面をプリントアウトして紙だけ保管しても、正式には要件を満たさない可能性があるということです。
適切な対応としては、振込明細のPDFをダウンロードして所定のフォルダに保存したり、画面のスクリーンショットを日時が分かる形で保存し、それらを後からすぐ検索・参照できる状態にしておく必要があります。
電子帳簿保存法では、電子取引データを保存する際に「検索要件」を満たすことなどが求められます。
例えば、保存したファイル名やシステム上のメタデータに日付・金額・取引先といった項目を入れておけば、簡単に検索できるようになります。
クラウド会計や証憑管理システムを導入している場合は、振込データを取り込むと自動的にこれらの要件を満たす形で保存できる機能があります。
また、銀行から紙の明細書が郵送されてくるようなケース(振込依頼書の控え等)も、厳密には電子ではなく紙の証憑となりますが、それをスキャンしてPDF化し電子保存することも可能です。
スキャナ保存の要件も2022年の法改正で緩和され、タイムスタンプ付与や解像度要件などが緩和されています。
したがって、ATMで受け取った振込利用明細票など紙の証憑も、スキャンしてクラウド上に保存すればペーパーレスで管理できます。
ただし、オリジナルが電子データで提供された(例えばメールで受領した領収書PDFなど)のに、それを印刷した紙しか残していない場合は不十分とされるので注意しましょう。
電子メールで受け取った請求書・領収書や、ウェブ上でダウンロードした明細については、印刷物ではなく原本データを保存することが義務となっています。
要約すると、銀行振込に関する記録も含め、電子的にやり取りした取引情報は電子のまま適切に保管する必要があるということです。
具体的には、ネットバンキングの振込明細ページをPDF保存して所定のフォルダに格納し、必要項目で検索できる状態にする、メールで届いた領収書PDFはメールソフト上やクラウドストレージ上で整理して保持する、クラウド会計ソフトに取引データを連携保存しておく等の方法があります。
こうした電子保存を徹底すれば、税務調査の際にも紙束を探す手間が省け、迅速に必要データを提示できる利点があります。
逆に電子取引データを紙出力だけで管理していると、法令違反となる可能性がありますので、今後は十分に留意しましょう。
ペーパーレス経理とクラウド会計における振込記録の管理
経理業務のデジタル化が進む中で、ペーパーレス経理やクラウド会計ソフトの活用が一般的になりつつあります。銀行振込の記録管理にも、これらのデジタルツールが大いに役立ちます。
例えば、クラウド会計ソフトでは、自分の銀行口座とシステムを連携させることで、振込や入金の明細データを自動で取得できます。
毎日の取引がソフト上に取り込まれ、日付・金額・振込相手の名前といった情報が自動記録されるため、手入力の手間を省くだけでなく記録漏れも防げます。
こうした銀行明細の自動連携データは、そのまま証憑のひとつとみなせるため、紙の通帳記帳やATM明細に頼らなくてもデータ上で経理処理が完結します。
振込で支払ったケースでは、請求書のPDFと振込完了画面のスクリーンショットをセットで添付しておく、といった運用も可能です。
こうした方法により、ファイルの紛失リスクを大幅に減らし、紙を保管するスペースや管理コストも削減できます。
加えて、電子データであればテキスト検索やタグ付けで目的の記録をすぐ探せるため、経理担当者にとっても効率的です。
ペーパーレス経理を進める上で忘れてはならないのがバックアップと法令対応です。
クラウド上にデータを保存しているからといって安心せず、定期的にバックアップデータをダウンロードする、あるいは信頼性の高いサービスを選ぶようにしましょう。
また、電子帳簿保存法の要件(真実性・可視性の確保など)にクラウドサービスが対応しているかを確認し、必要に応じて設定を行います。
例えば、領収書画像の改ざん防止措置としてタイムスタンプが付与できるか、検索機能が備わっているかなどです。
幸い主要なクラウド会計ソフトや証憑管理サービスは改正電帳法に対応済みで、利用者はそれほど意識せずとも要件を満たせるようになっているものが多いです。
総じて、クラウド会計とペーパーレス化によって銀行振込の記録管理は格段に楽になります。振込と同時に自動記録され、領収書もデータでやり取り・保存する時代です。
これから起業する方や経理を見直したい企業は、ぜひデジタルツールを活用して、振込記録の管理を効率化・確実化していくとよいでしょう。
振込と領収書にまつわる誤解・トラブル例と対処法
最後に、銀行振込と領収書に関してよくある誤解やトラブルについて触れ、その対処法をまとめます。
「振込だから領収書はいらない」と思い込んでいた
銀行振込をすれば相手から領収書は出ないもの、と考えがちですが、実際には支払者が請求すれば受領者には発行義務があります。「振込=領収書不要」はあくまで双方合意の上で成り立つ慣習に過ぎません。
取引先から領収書が欲しいと言われたら、振込であっても速やかに発行しましょう。
また社内の経費精算ルールで「振込の場合も領収書提出を求める」ケースもあるため、社員の立場では振込控えだけでなく取引先に領収書発行を依頼しなければならない場合もあります。
安易に「振込控えがあるから十分」と判断せず、必要に応じて領収書を受け取る姿勢も大切です。
領収書を発行してもらえず困った
オンラインショッピングやサービス利用で代金を振り込んだ際に、先方から「当社では領収書は発行しておりません」と案内されることがあります。
この場合、多くは「振込明細書をもって領収書に代えています」という趣旨が明記されているはずです。
法律上は請求すれば発行してもらえる権利がありますが、相手の業務慣行として発行しない方針の場合、どうしても必要な事情があれば丁寧に事情を説明してお願いするしかありません。
例えば会社の経費精算でどうしても領収書が必要だといった場合には、その旨を連絡すれば発行に応じてもらえることがあります。
それでも断られる場合には、振込先の通帳記帳の写しや、請求書と振込控えのセットで代替できないか、社内の経理担当者と相談してみましょう。
領収書に収入印紙が貼っていなかった
5万円以上の取引で発行される領収書には本来収入印紙の貼付が必要です。しかし、銀行振込に関連して発行される領収書では、現金のやり取りではないから印紙税が不要だという誤解が一部にあります。
本来これは誤りで、支払方法にかかわらず金銭の受領事実を証する文書(領収書)を発行すれば印紙税法の課税対象です。
もし受け取った領収書に印紙が貼られていない場合、金額が5万円未満であれば問題ありませんが、50万円や100万円といった大きな金額なのに無印紙であれば発行者側がルールを理解していない可能性があります
(電子領収書であれば印紙不要です)。
こうした場合、自社の経理処理上は受け取った領収書で問題なく経費計上できますが、発行者に教えてあげると親切かもしれません。逆に自分が発行側になるときは、振込だろうと印紙の要否を正しく判断しましょう。
領収書を再発行してと言われた
一度発行した領収書を紛失したので再発行してほしい、と依頼されるケースもあります。基本的に前述した通り再発行義務はありません。
なぜなら、二重発行すると本来一度きりの支払いで2枚の領収書が存在することになり、不正利用(例えば経費を二重に請求するなど)されるリスクがあるからです。
そのため多くの企業・店舗は「領収書の再発行は致しかねます」としています。
どうしても必要な場合は、提案できる対処として領収書ではなく支払証明書や購入証明書を代わりに発行する方法があります。
これは「○年○月○日 △△様より〇〇代として金◯円受領しました」等と記載した書面で、領収書と同様の情報を載せつつ通し番号や「再発行」といった文言を付記することで内部管理します。
いずれにせよ、頼まれるままホイホイ再発行するのではなく、リスクに留意した対応が必要です。
領収書を紛失してしまった
支払者側で領収書を無くしてしまった場合も考えましょう。
この場合、その支出を証明するものが手元にない状況ですが、あわてずに他の手段で証拠を補完します。
具体的には、銀行の振込明細書やクレジットカード明細、取引先から受け取った請求書・契約書など、支払い事実を示すものを探します。
先方に事情を話して「○月○日に確かに入金されています」という受領確認書を発行してもらえないか依頼する手もあります。税務上は領収書そのものが必須ではないので、他の証憑で代替可能です。
ただ、領収書をなくすと自社内の経費処理規程で認められないこともあるため、最終手段としては上司の許可のもと出金伝票を起票して紛失した旨を記録し、支払先や金額、用途を明示しておくという方法もあります。
再発行を求める際は、前述の通り原本と引き換えなど慎重な手続きを踏むようにしましょう。
ネットバンキング画面を印刷しただけで保存していた
これは電子帳簿保存法の項目でも触れましたが、ネットバンキングの振込結果画面を印刷して紙でファイリングし、データを保存していないケースです。
従来はそれでも問題視されませんでしたが、2024年以降は電子取引データの原本保存が義務化されています。したがって、紙で保存している方は、今からでも電子保存に切り替える必要があります。
具体的には、各銀行のネットバンキングから振込明細をCSVやPDFでダウンロードする、スクリーンショット画像を保存するなどして電子データを確保してください。
その上で、パソコン内やクラウド上のフォルダに日付や取引先ごとに整理し、検索できる状態にします。
こうすることで法令遵守になるだけでなく、後から探すのも容易になります。紙のままでは検索性が低く、保管コストもかかりますので、これを機にペーパーレス化を進めることをおすすめします。
以上、振込に関する領収書の扱いについて様々な角度から解説しました。銀行振込での支払いは日常的に多くの場面で行われますが、その証拠としての領収書や証憑の管理は怠りなく行いましょう。
領収書と振込明細書の違いを正しく理解し、必要な場面では適切に領収書を発行・要求すること、そして税務上問題なく経理処理を行うことが大切です。
紙の領収書にこだわりすぎず、デジタル記録も活用しながら、証拠書類をきちんと残しておけば、確定申告や経費精算もスムーズに進みます。今日解説した内容を踏まえ、適切な領収書対応と経理管理を実践してみてください。
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