ビジネス文書の基礎知識

「本書」とは?意味・使い方から類語との違いまで徹底解説

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本書とは

ビジネスシーンや学術論文、契約書などで頻繁に目にする「本書」という言葉。一体どのような意味を持ち、どのような場面で使うのが適切なのでしょうか。また、「当書」といった類似表現との違いは何でしょうか。

本記事では、「本書」という言葉の基本的な意味から、具体的な使用シーン、類似表現との使い分け、さらには使用する上での注意点まで、網羅的に解説します。

この記事を読めば、「本書」に関する疑問が解消され、自信を持って使いこなせるようになるでしょう。

目次

「本書」とは?基本の意味を徹底解説

まず、「本書」という言葉が持つ基本的な意味合いを深く理解することが、適切な使用への第一歩です。この言葉は、文脈によって複数の意味を持つため、それぞれのニュアンスを把握することが重要となります。

「本書」が持つ複数の顔:主な4つの意味

「本書」という言葉は、辞書を引くと主に以下の4つの意味で解説されています。

主となる文書

添付文書や付録などに対して、中心となる文書や書物を指します。例えば、報告書本体とその補足資料がある場合、報告書本体が「本書」にあたります。この意味合いは、「本書」が複数の要素から構成される情報群の中で、核となる部分を指し示す機能を持つことを示しています。

正式な文書

下書きや写しなどに対して、正式に作成・提出される文書を指します。契約書であれば、最終的に署名・捺印されたものがこれに該当し、その権威性と最終性を強調します。

基準となる本・原本・正本

何かを参照したり、比較したりする際の基準となる書物や、複製ではないオリジナルの文書を指します。古典籍の研究や、法的に原本性が問われる場面でこの意味が重要になります。

この文書・書物

話題の中心となっている、まさに今読んでいる、あるいは議論している文書や書物そのものを指します。序文や論文などで「本書の目的は…」と記述される場合がこれにあたり、自己言及的な使われ方です。

これらの意味に共通して流れているのは、ある種の正式性や権威性です。「本書」と表現されるものは、単なるメモや下書きとは一線を画し、何らかの重要性や中心性を持つものとして扱われます。

この言葉が持つ重みが、ビジネスや学術といった正確性や信頼性が求められる場面での使用に適している理由の一つと言えるでしょう。

辞書から探る「本書」の核心

主要な国語辞典、例えば『デジタル大辞泉』や『goo辞書』などでは、前述の4つの意味が一貫して掲載されています。これは、「本書」という言葉が日本語において確立された、安定した意味を持つ語彙であることを示しています。

また、これらの辞書には「本書」の古い読み方として「ほんじょ」という形も見られることがあります。これは、「本書」という言葉が古くから日本語の中に存在し、使われてきたことを示唆する興味深い点です。

このように、辞書における定義の一貫性は、「本書」の基本的な意味が広く認知され、共通理解のもとに使用されていることの証左です。したがって、これらの核心的な意味を理解することは、誤用を避け、的確なコミュニケーションを行う上で不可欠と言えます。

「本書」はいつ、どう使う?シーン別徹底ガイド

「本書」はいつ、どう使う?シーン別徹底ガイド

「本書」の基本的な意味を理解したところで、次に具体的な使用シーンを見ていきましょう。どのような場面で、どのように「本書」が活用されるのかを知ることで、より実践的な理解が深まります。

ビジネスシーンでの「本書」:報告書からIR資料まで

ビジネスの現場では、「本書」という言葉が様々な文書で用いられます。これは、ビジネスコミュニケーションにおいて求められる明確性と公式性を、「本書」という言葉が効果的に表現できるためです。

報告書

プロジェクトの進捗報告書や調査報告書などで、本文を指す際に使われます。特に、詳細なデータや補足資料が別添となっている場合に、「詳細は本書のXXページをご参照ください」といった形で、読者を主要な情報へと導きます。

提案書

顧客や上司に対して提出する提案書そのものを指して、「本書にてご提案する内容は以下の通りです」のように用いられます。これにより、提示されている文書が正式な提案内容であることを明確にします。

社内通達

企業内で発せられる公式な通知や指示事項を記した文書を指す場合にも使われます。

IR資料

企業が投資家向けに公開する中期経営計画書や決算説明資料などでも、「本書」という言葉は頻繁に登場します。

例えば、資料の冒頭で「本書は、当社の中期的な経営戦略を説明するものです」といった形で、その文書の目的や位置づけを明確にします。これは、投資家という外部のステークホルダーに対して、公式かつ権威ある情報を提供しているという姿勢を示す上で重要です。

展示会報告書

参加した展示会の内容や成果をまとめた報告書でも、「本書」は使用されます。例えば、「本展示会を通じて得られた知見を、本書にまとめました」のように、報告書自体を指し示す際に活用できます。

これらの例からもわかるように、ビジネスシーンにおける「本書」の使用は、その文書が議論の中心であり、公式な情報源であることを強調する効果があります。単に「この資料」と言うよりも、「本書」と表現することで、文書に重みとフォーマルな印象を与えることができるのです。

契約書・法的文書における「本書」の役割

契約書や法的文書において、「本書」という言葉は極めて重要な役割を果たします。これらの文書では、一言一句が法的な拘束力を持ちうるため、指し示す対象を明確に特定する必要があるからです。

「本書」は、その契約文書自体を指し示すために用いられます。例えば、「本書は、甲と乙との間の契約条件を定めるものである」という一文では、「本書」がまさにその契約書そのものを指していることが明確になります。これにより、契約の範囲や対象が曖昧になることを防ぎます。

また、法的文書では「原本」と「写し」の区別が重要となる場面が多くありますが、「本書」はしばしばその「正式な文書」や「原本」を指すニュアンスで使われます。

例えば、古い判例などで「然るに本書には特に女子の婬乱を以て離縁の理由とす」とある場合、その特定の法的文書における記述を指しています。

このように、法的文書における「本書」は、その文書が持つ法的拘束力の源泉たるテキストそのものを特定し、後日の紛争を防ぐための明確性の担保に寄与します。単なる「文書」ではなく、「本書」とすることで、その文書の決定的な権威性が強調されるのです。

学術の世界での「本書」:論文・研究における使い方

学術論文や専門書、研究発表など、アカデミックな領域でも「本書」は頻繁に用いられる表現です。ここでは、著者が自身の著作物や研究内容を指し示す際に、フォーマルな言葉遣いとして活用されます。

自身の著作物を指す場合

論文や書籍の著者自身が、その執筆中の、あるいは完成した著作物を指して「本書」と表現します。

「本書の目的は~である」のように、その著作物の目的を明確に述べる際に使われます。

「本書では~について論じる」といった形で、その著作物で取り扱うテーマや範囲を示す際にも用いられます。

「本書の構成は以下の通りである」と、著作物全体の構成を説明する導入としても一般的です。 

このような自己言及的な使用法は、著者が読者に対して、自身の著作物の意図や射程を明確に伝えるためのオーソドックスな表現として定着しています。

主要な研究対象を指す場合

特定の古典や重要な文献を研究対象とする際に、その文献を指して「本書」と呼ぶこともありますが、これは通常、その文献が研究の中心であることが文脈上明らかな場合に限られます。

参考文献との区別

重要な点として、学術論文における「本書」は、基本的に著者自身の著作物を指すのに対し、他者の著作物を参照する場合は「参考文献」として別途リストアップされます。この区別は、学術的なオリジナリティと引用のルールを遵守する上で不可欠です。

学術的な文脈で「本書」を用いることは、著者が自身の研究や議論の範囲を明確に定義し、読者に対してオーソリティ(権威性)を持って語りかける効果があります。それは、著者が提示する情報が、その特定の「本書」という枠組みの中で展開されることを示す宣言でもあるのです。

書籍や記事で出会う「本書」:文脈による意味の違い

書籍の序文やあとがき、あるいは書評記事などでも「本書」という言葉によく出会います。これらの文脈では、「本書」が指す対象が、その言葉が使われている立場によって異なる点に注意が必要です。

著者による使用(序文・あとがきなど)

書籍の著者が序文やあとがきで「本書」という場合、それは自身が執筆したその本自体を指します。例えば、「本書が読者の皆様の一助となれば幸いです」といった表現は、著者が自著に込めた願いを示す典型的な例です。

また、「詳細については本書の第X章で述べる」のように、読者を本の中の特定の部分へ誘導する際にも使われます。

書評者など第三者による使用

一方、書評記事などで「本書」と書かれている場合、それはレビューの対象となっている書籍を指します。

例えば、「本書は、睡眠学研究の第一人者である柳沢正史氏が監修している」という文では、「本書」は柳沢氏が監修した特定の書籍を指しています。このように、書籍や記事における「本書」は、それが誰によって、どのような文脈で使われているかによって、指し示す対象が変わります。

著者が使う場合は自己言及的であり、読者に対してその著作物の範囲や内容を案内する役割を果たします。これは、著者と読者の間で「この特定の作品について話している」という暗黙の了解を形成するものです。一方、第三者が使う場合は、特定の作品を客観的に指示する機能を持ちます。

「本書」と類似表現の使い分けについて

「本書」という言葉の理解を深める上で、しばしば混同されがちな類似表現との違いを明確にすることは非常に重要です。特にビジネスシーンでは、これらの言葉のニュアンスを正確に捉え、適切に使い分けることが、プロフェッショナルなコミュニケーションにつながります。

「本書」vs「この本/この資料」:ニュアンスの違い

「本書」と「この本」や「この資料」は、どちらも目の前にある、あるいは話題にしている書物や文書を指す点で共通していますが、そのフォーマルさとニュアンスには大きな違いがあります。

「本書」は、前述の通り、非常にフォーマルな表現であり、主に書き言葉や改まった場での話し言葉で用いられます。契約書、公式レポート、学術論文、書籍の序文など、ある程度の権威性や客観性が求められる文脈で好まれます。

一方、「この本」や「この資料」は、より口語的で一般的な表現です。日常会話からビジネスシーンまで幅広く使えますが、「本書」ほどの堅苦しさはありません。例えば、同僚との打ち合わせで資料を指すなら「この資料の件ですが」で十分ですし、友人に本を勧めるなら「この本、面白いよ」と表現するのが自然です。

この使い分けは、日本語の敬体・常体や待遇表現にも通じる、言語使用における「場」の意識の表れと言えます。

フォーマルな場では「本書」を用いることで、その場にふさわしい言葉遣いとなり、相手に敬意を示すと同時に、内容の重要性を際立たせることができます。

逆に、インフォーマルな場で「本書」を多用すると、やや堅苦しく、不自然な印象を与えかねません。このニュアンスの違いを理解することは、洗練された日本語運用能力の証となります。

最重要ポイント:「本~」と「当~」の使い分け(「本書」と「当書」)

「本書」に関連して、特にビジネスパーソンが押さえておくべき重要な使い分けが、接頭辞「本(ほん)」と「当(とう)」の区別です。これらは「本書」と「当書(とうしょ)」のように、後に続く名詞に特定のニュアンスを加えます。

「本~」の特徴

「本~」は、「この」「現在の」「主要な」といった意味合いを持ちます。例えば、「本日(ほんじつ)」は「今日」、「本件(ほんけん)」は「この案件」を指します。「本書」もこの系列にあり、「この書物・文書」という意味合いが基本です。

言語学的な分析によれば、「本」は、話し手と聞き手が心理的に同じグループに属している、あるいは同じ対象を共有しているという包含的な状況や、話し手の内的な視点から対象を捉える際に用いられる傾向があります。つまり、話し手が聞き手と同じ立場に立って、共通の話題の対象を指し示すような場合に馴染みやすい表現です。

「当~」の特徴

「当~」も「この」「現在の」といった意味を持ちますが、多くの場合、「わが社の」「当方の」といった、話し手自身が所属する組織や立場を意識したニュアンスが加わります。

例えば、「当社(とうしゃ)」は「わが社」、「当サイト(とうさいと)」は「この(私たちの運営する)サイト」を指します。

「当」は、「本」とは対照的に、話し手と聞き手が異なるグループに属している、あるいは話し手が聞き手に対してある種の対外的な立場から発言する際に用いられることが多いとされています。

顧客に対して自社の製品を説明する場合など、話し手が自身(または自組織)を代表し、聞き手とは区別された立場から対象を提示する際に適しています。

このため、「当」には聞き手との間に心理的な距離感や、場合によっては対立的とまではいかなくとも区別された立場関係が意識されることがあります。

「本書」と「当書」の使い分け

これを踏まえると、「本書」は、その文書の内容自体に焦点がある場合や、著者(話し手)が読者(聞き手)とある種共通の基盤の上で文書を提示している場合に適しています。

例えば、学術論文の著者が「本書では~を論じる」と言う場合や、社内報告で「本書の結論は~です」と述べる場合などです。

一方、「当書」は、その文書が「当方(例えば自社)から発出されたものである」という帰属を意識させたい場合に用いられることがあります。企業が顧客に提出する見積書や提案書を指して、「当書の内容をご確認ください」と言う場合などが考えられます。

この「本」と「当」の使い分けは、日本語における「内(うち)」と「外(そと)」の意識の言語的な現れとも解釈できます。

「本」が比較的「内」向きの、あるいは共通基盤的なニュアンスを持つのに対し、「当」は「外」向きの、あるいは自他の区別を意識したニュアンスを持つ傾向があると言えるでしょう。

この違いを理解し使い分けることは、単に語彙の知識に留まらず、コミュニケーションにおける立場性や相手との関係性を適切に表現する高度な言語運用能力と言えます。

以下に、「本〇〇」と「当〇〇」の主なニュアンスの違いをまとめます。

接頭辞主な意味視点話し手と聞き手の関係使われる主な文脈例主な例
この、現在の、主要な内的・共通包含的話題の中心となる事物、共通認識の対象を指す場合本書、本日、本件、本校、本会議
この、現在の(多くは「当方の」「わが~」)外的・帰属的除外的・対外的話し手が所属組織を代表して外部に提示する場合、帰属を明確にしたい場合当書、当日、当件、当社、当行、当サイト

この表は、「本」と「当」の大まかな傾向を示すものであり、実際の使用は文脈によって柔軟に判断する必要があります。しかし、この基本的な違いを意識することで、より的確な言葉選びが可能になるでしょう。

「書籍」「文献」とはどう違う?類語との境界線

「本書」の他にも、書物や文書を指す言葉として「書籍(しょせき)」や「文献(ぶんけん)」があります。これらの言葉は、それぞれ異なるニュアンスと使用範囲を持っています。

書籍(しょせき)

一般的に、印刷され製本された「本」を指す、やや硬い表現です。雑誌やパンフレットのような簡易的なものは通常含みません。

例えば、「書籍の販売部数」や「貴重な書籍を所蔵する」のように使われます。「本書」が特定の「この本」を指すのに対し、「書籍」はより一般的なカテゴリー名としての性格が強いです。

文献(ぶんけん)

書かれたもの、印刷された資料全般を指しますが、特に学術研究や調査の際に参考とされる資料、という意味合いが強い言葉です。

「参考文献リスト」や「歴史文献を調べる」といった用例が代表的です。「文献」は、その内容が情報源としての価値を持つことを含意します。

これらの言葉と「本書」との主な違いは、指示の具体性と使用される文脈にあります。「本書」は、多くの場合、文脈上特定されている「この(今話題の、あるいは私が書いた)書物・文書」を具体的に指し示す指示性が高い言葉です。

一方、「書籍」は本という形態を持つ出版物を一般的に指し、「文献」は研究や調査の資料となるものを指します。これらは、「本書」のように特定の一個を指すのではなく、ある種のカテゴリーに属するものを総称的に表す場合が多いです。

したがって、あるレポートの中で著者が「本書では先行研究を概観する」と書く場合、そのレポート自体を指します。そして、その中で参照した個々の論文や書籍は「文献」として扱われ、それらが物理的な本であれば広義には「書籍」とも言えます。

このように、これらの言葉は、指し示す対象の範囲や、どのような目的・文脈で言及されるかによって使い分けられます。

「本書」を使いこなすための実践ポイントと注意点

「本書」の意味や類似表現との違いを理解した上で、実際に使いこなすためにはいくつかの実践的なポイントと注意点があります。これらを意識することで、より正確でプロフェッショナルな文書作成が可能になります。

何を指すか明確に:誤解を招かないために

「本書」という言葉は、通常、それが使われている文書そのものを指すため、誤解を生むことは少ないです。特に文書の冒頭で「本書の目的は…」と使われる場合は、指し示す対象は明白です。

しかし、非常に複雑な文書群を扱っている場合や、長いやり取りの中で複数の文書が言及されているような特殊な状況では、稀に「本書」が具体的にどの文書を指しているのかが一瞬不明瞭になる可能性もゼロではありません。

このような事態を避けるためには、常に読み手の視点に立ち、文脈から「本書」の指示対象が明確に理解できるかを確認する姿勢が大切です。これは「本書」に限らず、あらゆる指示語に言える文章作成の基本ですが、フォーマルな文書で用いられる「本書」だからこそ、その指し示す対象の明確性は特に重要となります。

文書全体を通して、指示語が一貫して明確な対象を指し示していることは、プロフェッショナルな文書の必須条件です。

「本書」の多用は禁物?適切な頻度とは

「本書」は、そのフォーマルな響きと明確な指示性から、序文、導入部、あるいは文書の目的や構成を説明する箇所で効果的に使用されます。しかし、どのような言葉も過度な繰り返しは文章を不自然にし、読みにくくする原因となります。

「本書」も例外ではなく、一つの段落で何度も繰り返したり、全ての文で主語のように使ったりすると、文章が硬直化し、自己中心的でくどい印象を与えかねません。例えば、「本書は〇〇を目的とします。

また、本書は△△についても触れます。さらに本書では□□を提案します」といった具合です。適切な頻度としては、文脈上「この文書」と明確に示したい場合や、フォーマルなトーンを維持したい重要な箇所に絞って使用するのが望ましいでしょう。

他の箇所では、「本稿では」「本レポートでは」といった類似表現に置き換えたり、あるいは主語を省略したりするなど、表現に変化をつけることで、フォーマルさを保ちつつも、より自然で読みやすい文章を目指すことが重要です。

重要なのは、言葉の持つ格調高さと、文章全体の読みやすさとのバランスです。

「本書」を使う際の一般的な注意点

「本書」を効果的に使用するためには、いくつかの一般的な注意点を念頭に置く必要があります。これらは、言葉の持つ性質と、それが使用される社会的な文脈への配慮に基づいています。

文脈の適切性

「本書」はフォーマルな言葉であるため、使用する文脈がそのフォーマルさに適しているかを確認する必要があります。友人とのカジュアルなメールや日常会話で「本書」を用いると、場違いで不自然な印象を与えてしまいます。

ビジネスレポート、契約書、学術論文、公式な案内状など、改まった場面での使用が基本です。

読者層への配慮

どのような読者を対象とした文書なのかを考慮することも重要です。一般的に、ビジネス関係者や学術関係者であれば「本書」という言葉に馴染んでいますが、例えば非常に広範な一般読者を対象とした読み物などでは、より平易な「この本」「この資料」といった表現の方が親切な場合もあります。

「本」接頭辞の明確性

「本書」自体は指示対象が明確な場合が多いですが、「本」を接頭辞とする他の言葉(例:「本件」「本問題」)を使用する際には、それが具体的に何を指しているのかが文脈から明らかであることを常に確認する必要があります。

これらの注意点は、「本書」という言葉が持つフォーマルさや権威性を理解し、それを尊重した上で、時と場合と相手(TPO)に応じて適切に使い分けるという、コミュニケーションの基本原則に立ち返るものです。

言葉の正確な理解と、それが使用される状況への洞察が、プロフェッショナルな言語運用には不可欠です。

まとめ

本記事では、「本書」という言葉の基本的な意味、多様な使用シーン、類似表現との使い分け、そして実践的な注意点について詳しく解説してきました。

「本書」が持つ主な意味は、「主となる文書」「正式な文書」「基準となる本・原本・正本」、そして「この文書・書物」の4つであり、これらは辞書にも一貫して記載されています。

ビジネス、法律、学術といったフォーマルな場面で頻繁に用いられ、その文書の重要性や中心性を示唆します。

特に重要なのは、「本~」と「当~」の使い分けであり、「本書」が話し手と聞き手が共通の対象を指す内的な視点や包含的な関係で使われやすいのに対し、「当書」は話し手が所属組織を代表して外部に提示するような、帰属意識や対外的な立場を伴う場合に使われる傾向がある点を理解することが肝要です。

「本書」を正しく理解し、文脈に応じて適切に使い分けることは、日本語によるコミュニケーション能力、特にビジネスやアカデミックな場面における文書作成能力を高める上で非常に重要です。

本記事で得た知識が、皆様のより明確で、プロフェッショナルなコミュニケーションの一助となれば幸いです。

この記事の投稿者:

hasegawa

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