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確定申告でクレジットカード支払いの経費を計上する方法
クレジットカードを使って経費計上する際、利用日と支払い日には1〜2ヵ月ほどの時間差があるため、経理処理は通常の現金支払いとは異なります。記帳は、原則、取引成立の時点で計上される「発生主義」が適用されますが、カード決済の場合の記帳方法は、確定申告などの方法によって異なります。以下の見出しで詳しく説明しますので、把握しておきましょう。
青色申告の65万控除でクレジットカードを利用した場合
青色申告の特別控除は、青色申告の中でも大きなメリットとされています。これは、売上から必要経費を差し引いた所得から、最大で65万円をさらに差し引いて税金を計算することができる制度です。この65万円の控除を「青色申告特別控除」と呼びます。経費がなくても、売上から最大で65万円を差し引くことができるため、節税メリットが非常に高いと言えます。
特に、65万円の控除を受ける場合は、「発生主義」に基づいた複式簿記での記帳が必要です。発生主義では、商取引が成立した時点と実際に収入や支出が発生した時点の2回にわたって記帳します。ただし、個人用のカードか法人用のカードかによって、記帳のタイミングや勘定科目が異なるため、注意が必要です。
例えば、クレジットカードを使って事業用の事務用机25,000円を購入した場合の記帳方法を見ていきましょう。
個人用のクレジットカードを使った場合
青色申告の65万円控除では、個人用カードで支払いをした場合、帳簿上では「支払いを行ったカードの所有者が、事業主から借りたお金を使用した。」ということになるため、適切な勘定科目を選んで記帳します。つまり、経費を個人のカードで支払った場合は、「未払金」や「普通預金」などではなく、「事業主借」で仕訳します。
◇6月10日にクレジットカードを利用した場合
日付 | 借方勘定科目 | 借方金額 | 貸方勘定科目 | 貸方金額 |
---|---|---|---|---|
6月10日 | 消耗品費 | 25,000円 | 事業主借 | 25,000円 |
帳簿上では、クレジットカードの引き落とし時には金銭の移動がないため、会計処理は必要ありません。
法人用クレジットカードを使った場合
青色申告の65万円控除を利用して、法人用カードで支払いした場合、決済日に「未払金」を記帳し、引き落とし日には「普通預金」の勘定科目で未払金を相殺する処理が必要です。
◇6月10日にクレジットカードを利用し7月25日に引き落とされる場合
日付 | 借方勘定科目 | 借方金額 | 貸方勘定科目 | 貸方金額 |
---|---|---|---|---|
6月10日 | 消耗品費 | 25,000円 | 未払金 | 25,000円 |
7月25日 | 未払金 | 25,000円 | 普通預金 | 25,000円 |
なお、支払いが年をまたぐ「年またぎ」を除いて、「未払金」を使わずに、以下のように仕訳を簡略化することも可能です。
日付 | 借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|---|
7月25日 | 消耗品費 | 25,000円 | 普通預金 | 25,000円 |
白色申告もしくは青色申告の10万円控除でクレジットカードを利用した場合
白色申告や青色申告での10万円の控除を受けるには、「現金主義」の単式簿記を使用します。複式簿記を必要とせず、記帳方法は非常に簡単です。記帳は商取引の成立日と支払日が異なっていても、支払った日のみを対象とします。
例えば、クレジットカードで10,000円の消耗品を購入した場合、支払日(口座引き落とし日)に消耗品費を借方に記入します。貸方は、個人用カードなら「事業主借」、法人用なら「普通預金」で記入します。
個人のクレジットカードでも支払いの経費計上は出来る
事業に関連する支出であれば、個人のカードで支払いを行っていても経費計上が可能です。ただし、個人のカードをビジネスとプライベートの両方で使用する場合、後で利用明細を細かく確認し、それぞれの支出を事業用とプライベート用に分類する必要があります。
この処理には毎月かなりの時間と労力がかかり、帳簿の入力ミスや漏れといったリスクが発生する可能性があり、本業にも支障をきたしかねません。それぞれの支出を明確に分けるためには、個人用とは別に事業専用のクレジットカードを所持するのが賢明です。
個人のクレジットカードで支払った場合は「事業主借」で仕訳
カードで経費を支払うとき、気になるのは経費の処理方法です。処理のしかたについてしっかりと理解していないまま処理してしまうと、後で修正に手間取ったり、確定申告の際にトラブルが生じたりする可能性があります。そのため、この機会にしっかり確認しておきましょう。
同じカード決済でも、個人カードと法人カードでは会計処理が異なります。個人のカードを使った場合、仕訳に使うのは「事業主借」という勘定科目です。事業主借は、事業主が個人資金を事業目的で使用した際の仕訳に使われます。クレジットカードの決済日が取引日となり、引き落とし日の仕訳は不要です。
例えば、7月5日に個人用カードで業務用プリンターを6万円で購入し、8月10日に個人名義の銀行口座から使った金額が引き落とされた場合、以下の仕訳になります。
日付 | 借方勘定科目 | 借方金額 | 貸方勘定科目 | 貸方金額 |
---|---|---|---|---|
7月5日 | 消耗品費 | 60,000円 | 事業主借 | 60,000円 |
クレジットカードで経費計上することのメリット
事業収入が増えるとともに、税金の額も増えてきます。そのため、納税額を抑えるためには、経費の計上が必要不可欠です。ここでは、カードでの経費計上のメリットを4つご紹介します。
経費の可視化
交通費、インターネット料金、家賃や光熱費など、事業にかかる支出を経費として計上し、所得から控除することで、課税所得を減らすことができます。これが経費計上による節税の仕組みです。これらの経費をクレジットカードで支払うと、月ごとの明細書やオンライン上で、支出の詳細が簡単に確認でき、お金の流れを把握しやすくすることができます。
また、法人カードを利用すれば、従業員それぞれにカードを持たせることができ、全ての利用代金を法人口座にまとめて管理することが可能です。これにより、経費の発生状況をリアルタイムで把握できるため、無駄な経費を見つけやすく、経費削減の対策もスムーズに行えるでしょう。
経理業務の効率化
会計ソフトと連携することで、領収書やレシートを使って手作業で処理する手間を省くことができ、経理業務が効率化され、管理が容易になります。日々の忙しさで経理処理をつい後回しにすることはないでしょうか。後回しにすると、確定申告直前に大量の領収書を手入力しなければならず、計算のミスで何度も作業をやり直すことはよくあることです。現金で経費を支払うと、お金の出入りを把握するのが難しく、経費処理に手間がかかり、さらにミスが起こりやすくなります。より正確にそして迅速に作業を行うなら、クレジットカードが最適な決済手段と言えるでしょう。
資金繰りの改善
クレジットカードは資金繰りの手助けにもなります。個人事業主が資金を調達する方法には、金融機関からの融資、リース、割賦販売などがありますが、すぐに十分な資金を手に入れるのは簡単ではありません。
こうした状況で役立つのがクレジットカードです。現金が不足していても、事業を継続するために仕入れを行いたい場合、カードを使うことで仕入れと支払いの間に約1〜2ヵ月のタイムラグが生まれ、その間に資金繰りを改善する余裕が生まれます。
ポイントの付与
クレジットカードを使うと、現金支払いとは異なり、毎回ポイントが付与されます。オフィスの賃料や光熱費、通信費などの大きな額の固定費をカードで支払うと、より効率的にポイントを貯めることが可能です。貯まったポイントを使ってさまざまな特典が受けられるのも魅力のひとつです。ポイントは、景品やギフトカードなどと交換することもでき、会社の経費削減にも一役買うでしょう。
クレジットカード決済は宛名入りの領収書は必要?
クレジットカードで経費を支払う際、手書きのあて名入りの領収書が必要とは限りません。ただし、代わりになる書類が必要であり、支払いの証明がポイントです。「お客さま控え」やカード会社が提供する「利用明細」には、支払いの事実が記載されていないため、領収書の代わりになりません。
支払いを証明するためには、レシートや金額が記載された利用伝票が使えます。ウェブで経費を支払った場合は、販売店が提供するウェブ明細や取引明細が必要です。実店舗で購入した場合は、レシート、またはレシートに相当する引書類が取引書類となります。これらの書類に、店名、購入日、購入した商品やサービスの内容、金額、購入者の氏名または会社名が記載されていれば、支払いの証明として有効です。
クレジットカードで経費を支払う際の注意点
クレジットカードを使って経費を支払うことには、たくさんの利点がありますが、注意が必要な点もいくつかあります。以下の2つの注意点を押さえておきましょう。
ポイントやマイルの仕訳
カードのポイントやマイルを使った際には、会計処理に気を配る必要があります。ポイントやマイルを使って値引きを受ける場合、その取り扱いを「値引き」として処理するか、「雑収入」として処理するかを選択する必要があります。どちらを選ぶかは具体的なケースによりますが、支払い時にポイントが差し引かれる場合は「値引き」、ポイントがキャッシュバックされる場合は「雑収入」として計上するのがわかりやすいでしょう。
保管期間と保管方法
販売店や店舗から提供される取引明細は、一定の期間保管する必要があります。確定申告の方法に応じて、保管期間は通常5年または7年となっています。このように取引明細は長期間にわたり保管するため、紛失しないように注意することが必要です。さらに、取引明細書や領収書が感熱紙で印刷されている場合、時間が経つと印字がぼやけたり消えたりすることがあるため、保管環境も考慮する必要があります。
INVOYカード払いがおすすめな理由
INVOYカード払いを利用すると、取引先から届いた請求書の画像やPDFをINVOYにアップロードすることで、データ化され、クレジットカードでの支払いが可能になります。支払い手続きが完了すると、指定の口座に3営業日以内に振り込まれます。このサービスを利用することで、期限が迫った請求書にも迅速に対応でき、カード引き落とし日まで支払いを延ばすことが可能です。これにより、資金繰りの改善につながるため、個人事業主の方々にも広く支持されています。支払い業務を円滑に進め、急な資金ニーズにも迅速に対応できる便利なINVOYカード払いを検討してみてください。
まとめ
個人用クレジットカードで支払ったものを経費に計上することはできますが、その処理は手間がかかり、業務が滞る可能性があります。そのため、事業に支障をきたさないように、個人用のカードとは別に法人カードを持つと便利です。法人カードを使うことで、ビジネスのさまざまな経費を1枚のカードで管理でき、業務の効率化が図れます。また、ビジネスで役立つ特典やサービスも利用できます。
なお、月またぎや年またぎでの経費精算は可能ですが、できるだけ月内や決算期前に処理を
するのが望ましいです。さらに、月末や月初めは経理部門が多忙になるため、経費精算の申請が集中しないような取り組みを検討することも重要です。
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