会計の基礎知識

経理効率化の方法とは?あなたの会社を「守り」から「攻め」の経理へ変える

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経理 効率化

毎月の締め作業に追われ、残業が当たり前になっていませんか。請求書や領収書の山に埋もれ、本来やるべきであったはずの経営分析や業務改善に手が回らない状況は、多くの企業が抱える悩みです。

そのような状況から抜け出し、経理部門を単なるコストセンターから、会社の未来を創る戦略的なビジネスパートナーへと変革させたいという強い想いにお応えします。

本記事が描くのは、リアルタイムで経営状況を把握し、迅速かつ的確な意思決定をサポートする「攻めの経理」の未来です。この変革は、一部の大企業だけのものではありません。

多くの中小企業が、本記事で紹介する戦略的なアプローチによって、すでに経理業務のDX(デジタルトランスフォーメーション)を成功させています。これは遠い夢物語ではなく、あなたの会社でも実現可能な現実なのです。

この記事では、成功企業の実例に基づいた、具体的で実践的なロードマップを網羅的に解説します。「専門知識がない」「ITに詳しい人材がいない」「予算が限られている」「ベテラン社員の抵抗が心配」といった不安を抱えている方もご安心ください。

専門用語は丁寧に解説し、誰でも経理効率化への第一歩を踏み出せるよう、コストをかけずに始められるステップから段階的に解説していきます。

目次

なぜあなたの会社の経理は終わらないのか?非効率を生む4つの原因

多くの企業で経理業務が非効率な状態に陥っているのには、共通する根深い原因が存在します。表面的な問題ではなく、その根本にある原因を正確に診断することが、効果的な解決策を見つけるための第一歩です。ここでは、経理部門が抱えがちな4つの典型的な課題を解き明かしていきます。

手作業と紙文化からの脱却

多くの経理の現場では、いまだに紙の請求書や領収書の内容を手でシステムに転記する作業が中心となっています。この手作業への依存は、入力ミスや計算ミスといったヒューマンエラーの温床となり、作業の遅延を引き起こす最大の要因です。特に、月末や年度末などの繁忙期には処理件数が急増し、ミスのリスクはさらに高まります。

また、紙ベースでの書類管理は、必要な書類を探すのに膨大な時間を浪費させるだけでなく、保管スペースの確保やファイリングの手間、紛失や劣化のリスクといった多くの非効率を生み出します。

この問題の本質は、単なる作業の非効率さにとどまりません。手作業という付加価値の低い業務に多くの時間を奪われることで、経理担当者は本来注力すべき経営分析や業務改善といった、より戦略的な業務にリソースを割けなくなってしまいます。

つまり、「日々の業務に追われて忙しいから、改善活動に時間を割けない」という悪循環に陥っているのです。この悪循環を断ち切らない限り、経理部門の生産性が向上することはありません。

「あの人しか知らない」業務の属人化リスク

経理業務は簿記や税法などの専門知識を要するため、「この業務は特定の担当者しかわからない」という属人化が非常に起こりやすい領域です。ある調査では、経理担当者の半数以上が業務の属人化を悩みとして挙げています。

属人化は、企業にとって深刻な経営リスクをもたらします。担当者が急に休んだり、退職してしまったりした場合、業務が完全に停止してしまう恐れがあります。また、業務プロセスがブラックボックス化し、第三者のチェックが機能しなくなるため、ミスや不正の発見が遅れる原因にもなります。

しかし、属人化の最も根深い問題は、組織の変革を阻む大きな壁となる点にあります。業務が特定個人の経験と勘に依存している状態では、業務の標準化やシステム化といった改善活動を進めることが極めて困難になります。

なぜなら、その担当者自身が、自らの専門性や存在価値が揺らぐことを恐れ、無意識のうちに変化に対して抵抗勢力となってしまうことがあるからです。この問題は、単なる業務フローの見直しだけでなく、組織文化やマネジメントのあり方にも関わる、非常に根深い課題なのです。

変化を拒む固定観念と多忙の悪循環

「今までこのやり方で問題なかった」「経理業務とは本来こうあるべきだ」といった固定観念も、効率化を阻む大きな要因です。長年続けてきた業務フローを変えることへの心理的な抵抗感は、新しいツールの導入やプロセスの見直しに対して、大きな障壁となります。

この保守的なマインドは、「日々の業務が多忙で、新しいことに取り組む余裕がない」という現実と結びつくことで、さらに強力な悪循環を生み出します。特に、少人数の経理部門で日々の業務に追われている中小企業では、この傾向が顕著です。

「改善に取り組むべきだと頭ではわかっているが、時間がない」という状況は、経営戦略上の大きな失敗を示唆しています。業務効率化が「できればやった方が良いプロジェクト」と見なされ、「事業継続に不可欠な活動」として認識されていない証拠です。

その結果、組織は常に目の前の緊急タスクに追われ、業務プロセスの再設計といった重要タスクへの投資を先送りし続けます。この「何もしない」ことによって生じる見えないコストは、効率化への投資額をはるかに上回っていることが多いのです。

迫りくる法改正の波

近年、経理業務を取り巻く法制度は目まぐるしく変化しています。特に、「電子帳簿保存法」の改正や「インボイス制度」の導入は、すべての企業に大きな影響を与えています。

これらの法改正に対応するためには、新しい知識の習得や業務フローの見直し、そして多くの場合、新しいシステムの導入が不可欠となり、すでに逼迫している経理部門にさらなる負担を強いています。

しかし、この法改正の波を単なる「負担」として捉えるべきではありません。むしろ、これは社内の抵抗勢力を乗り越え、長年先送りにしてきた業務改革を一気に推進するための、またとない「追い風」と捉えるべきです。

法対応という、誰もが否定できない明確な大義名分があるため、「変えるべきか?」という議論から「どう変えるべきか?」という建設的な議論へと移行させることができます。法改正をきっかけに、単に最低限の対応をするだけでなく、業務全体のデジタル化を推進した企業は、そうでない企業に対して大きな競争優位性を築くことができるでしょう。

効率化への第一歩:現状把握と改善のフレームワーク

経理業務の非効率という漠然とした問題意識を、具体的な行動計画に変えるためには、体系的なアプローチが必要です。ここでは、現状を正確に把握し、改善策を導き出すための実践的なフレームワークを紹介します。

業務の「見える化」から始める

効率化への道のりは、まず自分たちの業務を客観的に把握することから始まります。具体的には、経理部門で行われているすべての業務をリストアップし、「誰が」「何を」「どのくらいの時間(工数)をかけて」行っているのかを詳細に記録し、業務フロー全体を可視化します。

この「見える化」のプロセスは、単に作業リストを作成すること以上の意味を持ちます。業務が文書化されず、特定の担当者の頭の中にしか存在しない属人化した状態では、建設的な改善の議論は不可能です。

業務フローを文書という客観的な形に落とし込むことで、問題が個人から切り離され、「あなたのやり方」ではなく「会社の現在のプロセス」として、チーム全体で分析、議論できるようになります。

これは、変化への抵抗感を和らげ、前向きな改善活動を進める上で、非常に重要な心理的ステップとなります。この地道な作業こそが、ボトルネックや重複作業といった問題点を浮き彫りにする最も確実な方法なのです。

「ECRSの原則」で無駄を削ぎ落とす

業務フローの全体像が見えたら、次はその中に潜む「ムダ」を徹底的に排除していきます。その際に有効なのが、「ECRS(イクルス)の原則」という改善フレームワークです。これは、以下の4つの視点で業務を見直す手法です。

  • Eliminate(排除):その業務は本当に必要か?なくせないか?
  • Combine(結合):似たような業務を一緒にできないか?
  • Rearrange(交換):作業の順序を入れ替えて効率化できないか?
  • Simplify(簡素化):もっと単純に、楽にできないか?

ECRSの原則が強力なのは、システム導入などのテクノロジー投資の「前」に、業務プロセスそのものを最適化できる点にあります。多くの企業が陥りがちな失敗は、非効率な業務プロセスをそのまま自動化してしまうことです。

まずECRSで業務の贅肉を削ぎ落とし、スリム化したプロセスを構築することで、その後のテクノロジー投資の効果を最大化できるのです。

目標設定で目指すべきゴールを明確化する

業務改善の方向性が定まったら、次に具体的で測定可能な目標を設定します。「業務を効率化する」といった曖昧な目標では、施策の優先順位も効果測定もできません。代わりに、以下のような定量的な目標を設定することが重要です。

  • 月末の月次決算にかかる日数を、現状の10営業日から5営業日に短縮する
  • 請求書1枚あたりの処理コストを30%削減する
  • 手作業によるデータ入力時間を、月間で40時間削減する

このような具体的な数値目標を設定することは、2つの重要な役割を果たします。第一に、チーム内で目指すべきゴールが明確になり、施策の進捗を客観的に評価する基準となります。

第二に、経営層への説明責任を果たし、予算を獲得するための強力な武器となります。「このシステムにX円投資することで、残業代を年間Z円削減できる見込みです」という提案は、経営者が理解し、承認しやすい具体的なビジネスケースとなるのです。

明日からできる!経理DXの基礎を築く3つの打ち手

本格的なシステム導入の前に、まずは経理DXの土台となる基礎固めから始めましょう。ここで紹介する3つの施策は、比較的低コストで着手でき、大きな効果が期待できるものです。これらの「クイックウィン」を積み重ねることが、部門全体の変革への勢いを生み出します。

ペーパーレス化の徹底

経理業務における手作業の最大の原因は「紙」です。したがって、最もインパクトの大きい施策の一つが、徹底したペーパーレス化の推進です。ペーパーレス化は、大きく2つの流れで進めます。

一つは、郵送などで受け取った紙の請求書や領収書をスキャナやAI-OCRで読み取り、電子データとして保存すること。もう一つは、取引先との間で請求書を電子データで送受信する仕組みに切り替えることです。これらの取り組みは、電子帳簿保存法の要件に準拠して行う必要があります。

ただし、ペーパーレス化は単にスキャナを導入すれば完了するわけではありません。これは、全社的な業務ルールの変更を伴う「ポリシーの変革」です。導入には初期コストや従業員への教育、システム障害のリスクといった課題が伴います。

特に、取引先の協力が不可欠であり、丁寧なコミュニケーションが求められます。成功のためには、経営層による明確な方針の提示、経理部門だけでなく全部門を対象とした新しい業務フローの構築、そして例外への対処法を定めておくことが不可欠です。

キャッシュレス化の推進と小口現金の廃止

日々の少額な経費精算のために「小口現金」を管理する業務は、現金の残高確認や帳簿との照合など、非常に手間がかかりミスも発生しやすい作業です。この課題を根本的に解決する強力な一手は、小口現金制度そのものを廃止し、法人向けクレジットカードや経費精算システム、銀行振込などに完全に切り替えることです。

小口現金の廃止は、経理担当者の手間を削減する以上の効果をもたらします。まず、現金の紛失や不正利用のリスクが低減され、内部統制が強化されます。さらに重要なのは、経費データの質が劇的に向上することです。

法人カードを利用すれば、「いつ」「どこで」「誰が」「いくら」使ったかという取引データが自動的に記録されます。この構造化されたデータは、後述する会計ソフトに自動で取り込むことができ、仕訳作業の大幅な自動化へと繋がります。小口現金の廃止は、業務効率、内部統制、データ品質のすべてを向上させる、費用対効果の非常に高い施策なのです。

フォーマット統一と業務マニュアルの整備

社内の各部署から提出される経費精算書や稟議書のフォーマットがバラバラであることは、確認作業の遅れや入力ミスを誘発する大きな原因となります。シンプルですが非常に効果的なのが、社内で使用する各種申請書類のテンプレートを統一し、その利用を徹底することです。

さらに、このフォーマット統一と並行して、正しい業務手順を記した「業務マニュアル」を整備することが極めて重要です。フォーマットの標準化と業務マニュアルの整備は、「属人化」に対する最も効果的な処方箋です。これにより、個人の頭の中にしかなかった業務知識が、会社全体の共有資産へと変わります。

業務プロセスが標準化、文書化されることで、担当者の急な不在や退職にも対応できるようになり、新入社員でもスムーズに業務を覚えることができます。これは、属人性を排し、組織として拡張可能で管理しやすい経理機能の基盤を築くことに他なりません。

経理業務を劇的に変えるテクノロジー活用術

経理業務を劇的に変えるテクノロジー活用術

業務プロセスの見直しと基礎固めが完了したら、次はいよいよテクノロジーを活用して、業務効率を飛躍的に向上させる段階です。ここでは、経理DXの中核を担う主要なツールについて、その機能や選び方、導入のポイントを具体的に解説します。

クラウド会計ソフトで業務の中核を刷新する

現代の効率的な経理部門において、クラウド会計ソフトは業務の中心的なハブとなります。銀行口座やクレジットカードの取引データを自動で取り込み、AIが勘定科目を推測して「自動仕訳」を行う機能は、日々の記帳業務を劇的に効率化します。

また、データがリアルタイムで更新されるため、経営者はいつでも最新の財務状況をダッシュボードで確認できます。法改正や税率変更にも自動でアップデート対応してくれるため、コンプライアンス面でも安心です。

クラウド会計ソフトの真の価値は、単なる作業の自動化にとどまりません。社内に散在していた財務情報を一元管理し、「信頼できる唯一のデータソース」を構築することにあります。従来のExcelや紙を中心とした業務では、データが分断され、整合性を取るのに多大な労力がかかっていました。

クラウド会計ソフトは、このデータを一箇所に集約し、リアルタイムで可視化することで、経理部門を過去の記録係から、未来を予測し経営判断を支援するビジネスインテリジェンスの提供者へと変貌させる力を持っています。

ただし、自社に合わないソフトを選んでしまうと宝の持ち腐れになりかねません。ソフト選定の際は、自社の事業規模や業種、必要な機能、操作性、既存システムとの連携性、サポート体制などを総合的に比較検討することが重要です。

RPAとAI-OCRで定型業務から解放される

クラウド会計ソフトが経理業務の「頭脳」を刷新するなら、RPAとAI-OCRは「手足」となって定型業務から人間を完全に解放するツールです。

RPA(Robotic Process Automation)は、人がPC上で行うクリックやキーボード入力といった定型的な操作を記憶し、自動で再現するソフトウェアロボットです。データの転記、レポートの自動作成、システム間の情報連携など、ルールが決まっている繰り返し作業を、24時間365日、ミスなく実行します。

AI-OCR(AI搭載の光学的文字認識)は、従来のOCR技術にAIを組み合わせることで、請求書などの帳票から文字情報を高精度で読み取り、デジタルデータに変換する技術です。フォーマットが異なる書類でも、AIが項目を自動で認識し、構造化されたデータとして抽出できます。

この2つの技術を組み合わせることで、「紙で受け取った請求書をAI-OCRで読み取り、抽出されたデータをRPAが会計システムへ自動入力し、発注データと照合して承認フローへ回す」といった一連のプロセスを完全自動化できます。RPAやAI-OCRの導入は、業務の「正確性」と「拡張性」を獲得することにも繋がります。

失敗しないツールの選び方と導入ステップ

高機能なツールを導入しても、使い方を間違えれば効果は得られません。ツール導入で失敗しないためには、以下のステップを慎重に踏むことが重要です。

  1. 要件定義を明確にする
    まず、「どの業務の」「何を解決したいのか」を具体的に定義し、ツールに求める必須機能をリストアップします。
  2. 既存システムとの連携性を確認する
    新しいツールが、現在使用している会計ソフトや販売管理システムなどとスムーズにデータ連携できるかを確認します。
  3. 操作性(ユーザビリティ)を重視する
    誰にとっても直感的で使いやすいことが重要です。必ず無料トライアルを活用し、実際の画面を操作して使い勝手を確認しましょう。
  4. セキュリティとサポート体制を検証する
    企業の機密情報を扱うため、ベンダーのセキュリティ対策は厳しくチェックする必要があります。迅速で的確なサポートを受けられるかも重要な選定基準です。
  5. スモールスタートで始める
    いきなり全社展開するのではなく、まずは特定の部署や業務に限定して試験的に導入し、効果を検証しながら段階的に範囲を広げていくのが成功の秘訣です。

ツール導入の成否は、テクノロジーそのものよりも、計画、教育、そして変化に対応する組織のマネジメントといった「ソフト面」の要因に大きく左右されます。

外部リソースの戦略的活用:経理アウトソーシングという選択肢

社内のリソースだけで効率化を進めるのが難しい場合、外部の専門家の力を借りる「経理アウトソーシング」も有力な選択肢となります。これは単なる業務の丸投げではなく、経営資源をコア業務に集中させるための戦略的な一手です。

アウトソーシングのメリットとデメリット

経理業務を外部に委託することで、多くのメリットが期待できる一方、注意すべきデメリットも存在します。

メリット

  • コア業務への集中
    経理などのノンコア業務を専門家に任せることで、経営者や従業員は本来注力すべき製品開発や営業活動にリソースを集中できます。
  • コスト削減
    経理担当者を正社員として雇用する場合にかかる採用コスト、教育コスト、社会保険料などが不要になり、人件費を削減できる可能性があります。
  • 専門性の確保とコンプライアンス強化
    経理のプロフェッショナルに業務を委託するため、業務品質が向上し、頻繁な法改正にも迅速かつ正確に対応してもらえます。
  • 内部統制の強化
    業務プロセスが外部の第三者によって客観的に管理されるため、社内の不正やミスを防止する効果も期待できます。

デメリット

  • 社内にノウハウが蓄積されない
    業務を外部に依存するため、社内に経理の知識やスキルが育ちにくくなります。
  • 情報漏洩のリスク
    売上や利益、従業員の個人情報といった機密情報を外部に渡すため、セキュリティリスクが伴います。
  • コミュニケーションの課題
    社内の担当者と比べて、コミュニケーションにタイムラグが生じることがあります。
  • コストが割高になる可能性
    委託する業務範囲によっては、パートタイマーを雇用するよりもコストが高くつくケースもあります。

アウトソーシングを検討する際は、単純なコスト比較だけでなく、自社にとって何が「コア業務」で何が「ノンコア業務」なのかを戦略的に見極めることが重要です。

賢いアウトソーシング先の選び方

アウトソーシングの成否は、パートナー選びで決まると言っても過言ではありません。価格の安さだけで選ぶと、品質の低さやコミュニケーション不足でかえって業務が混乱する事態になりかねません。以下のポイントを総合的に評価し、信頼できるパートナーを選びましょう。

  • 対応業務の範囲
    自社が委託したい業務をすべてカバーしているかを確認します。税務申告などの税務代理業務は、税理士の資格がなければ行えません。
  • 実績と専門性
    自社と同じ業種や同程度の事業規模の企業の支援実績が豊富かを確認しましょう。
  • セキュリティ体制
    プライバシーマークやISMS認証の取得は、信頼性を判断する一つの指標となります。
  • コミュニケーションの質
    レスポンスの速さ、連絡手段、担当者との相性などを、契約前の相談段階で見極めましょう。
  • テクノロジーへの対応力
    クラウド会計ソフトの扱いに習熟しているかどうかも重要なポイントです。

優れたアウトソーシングパートナーは、単なる作業代行者ではなく、業務プロセスの改善提案や財務データに基づいた経営助言まで行ってくれる、いわば「社外の経理部長」のような存在です。

料金相場の目安

アウトソーシングの費用は、業務の量や内容によって大きく変動します。以下に、主要な業務の料金相場をまとめました。具体的な見積もりを取る際の参考にしてください。

業務内容単位料金相場
記帳代行100仕訳あたり10,000円~15,000円
給与計算従業員1名・月あたり1,000円~2,000円
決算申告1回あたり100,000円~250,000円

※上記は一般的な目安であり、企業の規模や取引の複雑さによって料金は変動します。

成功事例に学ぶ:効率化を実現した中小企業のリアル

成功事例に学ぶ:効率化を実現した中小企業のリアル

理論だけでなく、実際に効率化を成し遂げた企業の事例は、自社の取り組みを具体的にイメージする上で大きなヒントとなります。ここでは、異なるアプローチで成功を収めた3つの中小企業の事例を紹介します。

事例1:クラウド会計導入で月次決算を早期化した挑戦

ストーリー

ある中小企業は、自社でクラウド会計ソフトの導入を試みましたが、専門知識の不足から初期設定がうまくいかず、かえって業務が煩雑化し、経理担当者が退職する事態に陥りました。その後、クラウド会計に強い税理士法人に支援を依頼。専門家の手によってシステムの再設定や各種データ連携が正しく行われ、効率的な業務フローが構築されました。

成果

従来は翌月以降にずれ込んでいた月次試算表が、翌月15日には完成する体制を構築しました。経営状況を迅速に把握できるようになったことで、経営の意思決定スピードが劇的に向上しました。

成功のポイント

テクノロジーは導入するだけでは機能しません。その効果を最大限に引き出すためには、専門家による適切な初期設定と、ツールに合わせた業務プロセスの再設計が不可欠であることを示唆しています。

事例2:RPAとAI-OCR活用で請求書処理時間を大幅削減したDX事例

ストーリー

株式会社大塚商会では、毎月大量に届く紙の請求書の処理に膨大な時間が費やされていました。この課題に対し、AI-OCRを導入して請求書を自動でデータ化し、会計システムと連携させる仕組みを構築しました。

成果

この取り組みにより、請求書処理にかかっていた作業時間を月間約500時間削減することに成功しました。同時に、手入力による転記ミスも撲滅されました。

成功のポイント

請求書処理のように、大量かつ定型的な紙の書類を扱う業務において、AI-OCRとRPAの組み合わせは絶大な効果を発揮します。最も時間のかかるボトルネック業務に的を絞ってテクノロジーを投資することが、大きなリターンを生むことを示しています。

事例3:担当者退職を機にアウトソーシングで再生した事例

ストーリー

フェネトル・パートナーズ株式会社は、経理・労務を一人で担当していた社員が突然退職するという危機に直面しました。専門知識を持つ人材の採用が難航する中、経理代行サービスの活用を決断しました。

成果

採用活動に時間を費やすことなく、専門スキルを持つ外部チームに経理・労務業務を即座に委託しました。担当者不在による業務の停滞を完全に回避し、経営陣は事業の中断なくコア業務に専念できる環境を維持しました。

成功のポイント

アウトソーシングは、事業継続計画(BCP)の観点からも非常に有効な戦略です。「属人化」のリスクを回避し、重要なスキルギャップを迅速に埋めることで、組織の安定性を高めることができます。

まとめ

本記事では、多くの企業が抱える経理業務の非効率性を克服し、戦略的な経理部門へと変革するための具体的なロードマップを解説しました。最後に、その要点を再確認します。

経理部門が抱える問題の根源には、多くの場合、4つの原因が存在します。

  • 手作業と紙文化からの脱却
  • 業務の属人化リスク
  • 変化を拒む固定観念と多忙の悪循環
  • 迫りくる法改正の波

これらの課題を解決するための道筋は、決して複雑ではありません。

  • 現状把握と改善のフレームワーク
    まずは業務を「見える化」し、ECRSの原則で無駄を削ぎ落とすことから始めます。
  • DXの基礎固め
    ペーパーレス化、キャッシュレス化、フォーマット統一といった、明日からでも始められる施策で土台を築きます。
  • テクノロジーの活用
    クラウド会計ソフトを中核に据え、RPAやAI-OCRといったツールで定型業務を自動化します。
  • 外部リソースの戦略的活用
    必要に応じて、経理アウトソーシングを賢く利用し、自社のリソースをコア業務に集中させます。

経理の効率化は、一夜にして成し遂げられるものではありません。しかし、最も重要なのは、完璧な計画を待つことではなく、まず「第一歩」を踏み出すことです。ぜひ本記事を参考に、まずは一つの業務フローを書き出すことから始めてみてください。

その小さな一歩の積み重ねが、やがてあなたの会社を「守り」から「攻め」の経理へと導く、大きな変革に繋がるはずです。

この記事の投稿者:

hasegawa

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