
請求書の印刷業務に、時間やコストをかけすぎていませんか。毎月の請求書発行は、正確さと効率が求められる重要な業務です。しかし、印刷方法の選択、法律要件への対応、郵送準備といった一連の作業は、多くの事業者にとって悩みの種と考えられます。
この記事を読めば、請求書業務は劇的に変わる可能性があります。請求書の印刷から管理まで、すべてのプロセスがスムーズになり、法改正にも完全に対応した、ミスのないワークフローを構築できる未来が待っています。月末の煩雑な作業に追われる日々を終わらせましょう。
本記事では、コンビニでの手軽な印刷方法から、自宅やオフィスでのコストを抑えた印刷、さらには法律で定められた要件まで、誰にでも実践できるよう、一つひとつのステップを丁寧に解説します。専門知識がなくても、今日からビジネスに最適な請求書管理を実現できます。
目次
請求書を印刷する3つの主な方法:状況に応じた最適解を見つける
請求書を印刷するには、主に3つの方法が存在します。それぞれの方法には特徴があり、事業の規模や状況によって最適な選択は異なります。まずは全体像を把握し、自社に合った方法を見つけるための指針を理解しましょう。
オフィスや自宅での印刷
社内にプリンターがある場合に最も一般的な方法です。手元で作業が完結するため、印刷プロセスを完全に管理したい、または定期的に印刷業務が発生する事業者に向いています。
コンビニでの印刷
プリンターがない個人事業主や、外出先で急に印刷が必要になった場合に非常に便利な選択肢です。全国どこにでもあるコンビニのマルチコピー機を利用することで、柔軟かつ迅速に対応できます。
印刷代行サービスへの外注
毎月大量の請求書を発行する企業にとって、最も効率的な方法といえます。印刷だけでなく、封入や発送作業までを専門業者に委託することで、社内のリソースをコア業務に集中させることが可能です。
これらの選択肢は、単なる代替案ではありません。事業の成長段階を反映するものでもあります。例えば、事業を始めたばかりのフリーランスはコンビニ印刷を活用し、事業が軌道に乗ればオフィスにプリンターを導入、そして規模が拡大すれば外注を検討するという流れが考えられます。
事業のフェーズに応じて印刷方法を見直すことが、賢明な経営判断といえるでしょう。
状況別の請求書印刷方法

ここでは、前述した3つの印刷方法について、具体的な手順や注意点を詳しく解説します。それぞれのメリット・デメリットを理解し、ビジネスに最適な方法を選びましょう。
オフィスや自宅で印刷する場合:コストと品質のバランスをとる
自社で印刷を行うことは、多くの事業者にとって最も身近な方法です。コストを管理しやすく、必要な時にすぐに対応できる利点がありますが、適切な機材選びが重要になります。
プリンターの選び方:インクジェットとレーザーの違い
プリンターには大きく分けて「インクジェット」と「レーザー」の2種類があり、それぞれに長所と短所があります。請求書の発行枚数や求める品質に応じて選ぶことが肝要です。
インクジェットプリンターは、液体インクを用紙に直接吹き付けて印刷します。本体価格が比較的安価で、写真や画像の印刷に適した高い解像度が魅力です。しかし、印刷速度が遅く、1枚あたりの印刷コストはレーザープリンターに比べて高くなる傾向があります。毎月の請求書発行枚数が少ない場合に適しています。
一方、レーザープリンターは粉末状のトナーを熱で用紙に定着させます。印刷速度が非常に速く、文字が鮮明に印刷されるため、大量の文書印刷に最適です。本体や消耗品は高価ですが、1枚あたりのコストは低く抑えられます。多くの請求書を効率的に印刷したい事業者におすすめです。
どちらのプリンターを選ぶかは、初期投資とランニングコスト、そして業務効率のバランスを考える上で重要な判断となります。以下の比較表を参考に、自社の状況に合ったプリンターを選択してください。
項目 | インクジェットプリンター | レーザープリンター |
本体価格 | 低い | 高い |
印刷速度 | 遅い | 速い |
1枚あたりコスト | 高い | 低い |
解像度 | 高い | 低い |
適した用途 | 画像、少量の文書 | 大量の文書 |
用紙とサイズ:A4普通紙で十分な理由
請求書の印刷に、特別な高級紙は必要ありません。一般的なA4サイズのコピー用紙(普通紙)で十分です。取引先もA4サイズで書類を管理していることが多いため、サイズを統一することで相手方の手間を省く配慮にもなります。
コストを重視するなら普通紙、環境への配慮を示すなら再生紙を選ぶとよいでしょう。ただし、光沢紙などの特殊な用紙は、レーザープリンターでは使用できない場合があるため注意が必要です。
押印は必要か:角印と電子印鑑の使い分け
印刷した請求書への押印は、法律で義務付けられているわけではありません。しかし、日本の商習慣においては、請求書の信頼性や改ざん防止の観点から押印するのが一般的なマナーとされています。
使用する印鑑は、法務局に登録された代表者印(実印)である必要はなく、会社の認印である「角印」を用いるのが通例です。個人事業主の場合は、通常の認印で問題ありません。
毎回手で押印するのが手間だと感じる場合は、電子印鑑の活用が便利です。電子印鑑はデータ化された印影で、PDFやExcelファイルに直接押印できます。これにより、印刷後に押印する手間を省き、請求書作成から送付までのプロセスを効率化できます。
プリンターがない場合の選択肢:コンビニでの印刷
自宅やオフィスにプリンターがない場合や、外出先で急遽印刷が必要になった際には、コンビニのマルチコピー機が非常に役立ちます。24時間いつでも利用でき、高品質な印刷が可能です。
主要コンビニ別印刷サービス
主要なコンビニチェーンでは、スマートフォンやパソコンからデータをアップロードし、店頭のマルチコピー機で印刷できる「ネットワークプリントサービス」を提供しています。例えば、セブン-イレブンでは「netprint」や「かんたんnetprint」といったアプリを利用でき、会員登録が不要なサービスもあるため手軽さが特徴です。
ファミリーマートやローソンでは、SHARPが提供する「ネットワークプリントサービス」に対応しており、同様に専用アプリやウェブサイトからファイルを登録して印刷が可能です。
スマホ・USBからの印刷手順と料金
基本的な手順はどのコンビニでもほぼ同じです。まず、専用のアプリやウェブサイトに、印刷したい請求書のPDFファイルをアップロードします。アップロードが完了すると、印刷用の予約番号やQRコードが発行されるので、それを取得します。
次に、コンビニのマルチコピー機で「ネットプリント」などのメニューを選択し、取得した予約番号を入力するか、QRコードをかざします。最後に、画面の指示に従って操作し、料金を支払うと印刷が完了します。
料金は、A4サイズの白黒印刷で1枚20円程度が一般的です。また、USBメモリなどのメディアに保存したファイルを直接マルチコピー機で読み込ませて印刷することも可能です。
コンビニ印刷のメリット・デメリット
手軽で便利なコンビニ印刷ですが、利用する際にはメリットとデメリットの両方を理解しておくことが重要です。
メリットは以下の通りです。
- プリンターを購入・維持する必要がない
- 24時間365日、必要な時にいつでも利用できる
- 業務用レベルの高品質な印刷が可能
一方で、デメリットも存在します。
- 自宅での印刷に比べて1枚あたりのコストが高い
- 大量に印刷する場合は、時間と手間がかかる
- 公共の場で機密情報を扱うため、情報漏洩のリスクがある
特にセキュリティリスクは重要です。コンビニで印刷する際は、画面や印刷物から他人に情報を見られないよう注意し、印刷後はサーバーからファイルを確実に削除するなど、情報管理には細心の注意を払いましょう。この利便性は、柔軟な働き方を支える一方で、従来のオフィス環境にはなかった新たなセキュリティ意識を事業者に求めているのです。
印刷前に必須の確認事項:正しい請求書の作成方法
どのような方法で印刷するにしても、その大前提として、記載内容が正確で法的に有効な請求書を作成する必要があります。特に2023年10月から始まったインボイス制度への対応は、すべての事業者にとって必須の課題です。
無料テンプレートの活用法
請求書は、無料のテンプレートを使えば簡単かつ効率的に作成できます。Excel形式のテンプレートは、計算式を組むことで合計金額などを自動計算できるため、計算ミスを防ぎたい場合に最適です。
Word形式のテンプレートは、デザインの自由度が高く、レイアウトやフォントを簡単にカスタマイズできるため、オリジナリティのある請求書を作成したい場合に向いています。PDF形式のテンプレートは、レイアウトが崩れず、どの環境でも同じように表示されるため、送付用のファイルとして適しています。
これらのテンプレートは、多くのウェブサイトで無料で配布されています。また、「Canva」や「INVOY」のようなオンラインツールを使えば、デザイン性の高い請求書をブラウザ上で手軽に作成することも可能です。
2023年開始のインボイス制度対応:必須記載項目
インボイス制度(適格請求書等保存方式)の開始により、仕入税額控除の適用を受けるためには、請求書に定められた項目をすべて記載する必要が生じました。従来の請求書から追加された項目があるため、印刷前に必ず確認しましょう。
この制度は、消費税の流れを正確に把握するための国の政策です。事業者が発行する一枚一枚の請求書が、税務上の重要なデータを持つ書類へとその役割を変えたことを意味します。このデータ要件の複雑化は、手作業によるミスを誘発しやすく、結果として請求書発行システムのようなデジタルツールの導入を後押ししています。
以下のチェックリストを使い、自社の請求書フォーマットが要件を満たしているかを確認してください。
- 発行事業者の氏名または名称
- 登録番号
- 取引年月日
- 取引内容(軽減税率対象品目はその旨を明記)
- 税率ごとに区分した合計対価の額と適用税率
- 税率ごとに区分した消費税額
- 交付を受ける事業者の氏名または名称
特に、「登録番号」「税率ごとの対価と適用税率」「税率ごとの消費税額」が、インボイス制度で新たに追加・変更された重要な項目です。これらの記載漏れは、取引先が仕入税額控除を受けられなくなるという重大な問題につながるため、細心の注意が必要です。
印刷業務からの脱却:請求書電子化への移行

ここまで請求書の印刷方法について解説してきましたが、現代のビジネス環境と法制度は、「印刷しない」という、よりスマートな選択肢を提示しています。請求書の電子化は、単なる効率化だけでなく、法対応の観点からも不可欠な流れとなっています。
電子帳簿保存法とは:データ保存の基本ルール
電子帳簿保存法は、国税関係の帳簿や書類を電子データで保存するためのルールを定めた法律です。この法律は年々改正されており、特に2022年1月の改正は大きな転換点となりました。
最も重要な変更点は、電子的に受け取った取引情報(例:メールで送られてきたPDFの請求書)を、紙に印刷して保存することが原則として認められなくなったことです。つまり、電子データで受け取った請求書は、電子データのまま、法律の要件を満たして保存することが義務付けられました。
この法律は、事業者が請求書を印刷するという行為そのものの前提を覆すものです。たとえ自社が紙で請求書を発行していても、取引先から電子データで請求書を受け取った場合、そのデータは電子的に保存しなければなりません。この法的な要請は、紙と電子が混在する管理体制の限界を示唆しており、すべての業務をデジタルで完結させることの合理性を強く裏付けています。
請求書発行システム導入のメリット
法改正への対応と業務効率化を両立する最適な解決策が、請求書発行システムの導入です。「楽楽明細」や「BtoBプラットフォーム 請求書」といったシステムは、請求書業務に大きな変革をもたらします。
導入のメリットとして、まずコスト削減が挙げられます。紙、インク、封筒、郵送費といった物理的なコストが不要になります。次に、業務効率化です。請求書の作成から送付、入金管理までを自動化し、手作業による印刷や封入の手間を根本から解消します。
さらに、コンプライアンス対応も大きな利点です。インボイス制度や電子帳簿保存法といった最新の法制度に自動で対応するため、法改正のたびにフォーマットを見直す必要がありません。また、クラウドベースのシステムなら、場所を選ばずに請求書業務を行えるため、リモートワークといった柔軟な働き方を推進します。
請求書の電子化は、もはや単なる選択肢ではなく、将来の事業継続性を見据えた戦略的な投資といえるでしょう。
封筒の準備と郵送のマナー
電子化が推奨される一方で、取引先の要望などにより、依然として紙の請求書を郵送する必要がある場合もあります。その際は、ビジネスマナーに則った正しい方法で郵送することが、企業の信頼性を高める上で重要です。
宛名と「請求書在中」の正しい記載位置
封筒の表面には、受け取る相手への配慮を示すためのいくつかの決まり事があります。宛名は、会社や部署といった組織宛ての場合は「御中」、個人宛ての場合は「様」を使い分けます。株式会社を「(株)」と略さず、正式名称で記載するのがマナーです。
封筒の中に重要な請求書が入っていることを示すために「請求書在中」という添え書きをします。これにより、受け取った相手が他の郵便物と区別しやすくなります。記載位置は、縦書き封筒の場合は左下、横書き封筒の場合は右下です。
色は黒でも問題ありませんが、目立たせるために青色で書くのが一般的です。赤色は「赤字」を連想させるため、避けるのが無難とされています。
封筒の裏面には、自社の住所、社名、担当者名といった差出人情報を忘れずに記載します。
請求書のきれいな三つ折り方法と封入の向き
A4サイズの請求書は、長形3号の封筒に入れるために三つ折りにするのが一般的です。折り方と封入の向きにもマナーがあります。まず、請求書の印字面を内側にして、下から3分の1を上に折り上げます。
次に、上の残りの3分の1を下に折り重ねます。こうすることで、相手が封筒から出して開いたときに、書類のタイトルである「請求書」という文字が最初に見えるようになります。
封入する際は、封筒の裏側から見て、折りたたんだ請求書の右上(書き出し部分)が、封筒の右上にくるように入れます。これにより、相手が中身を取り出したときに、請求書が正しい向きで出てくることになります。
また、送付状を同封するのも丁寧なビジネスマナーです。送付状を請求書の上に重ねてから、一緒に三つ折りにするとよいでしょう。
まとめ
本記事では、請求書の印刷に関するあらゆる側面を網羅的に解説しました。最後に、重要なポイントを再確認しましょう。
- 印刷方法の選択
事業の規模や状況に応じて、「自宅・オフィス」「コンビニ」「外注」の中から最適な方法を選びましょう。それぞれにコストや手間の面で一長一短があります。 - 法規制への準拠
インボイス制度と電子帳簿保存法への対応は、避けては通れない経営課題です。特に、電子データで受け取った請求書は電子保存が義務化されている点を忘れてはなりません。 - デジタル化への移行
長期的な視点で見れば、請求書業務の電子化はコスト削減、業務効率化、そして法遵守の観点から最も合理的な選択です。請求書発行システムは、その強力な推進力となります。
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