請求書の基礎知識

【ライター必見】ライターの請求書の書き方について。インボイス制度・源泉徴収について解説

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ライター 請求書

フリーランスのライターとして活動する上で、請求書は単に報酬を受け取るための書類以上の意味を持ちます。

正確でプロフェッショナルな請求書は、自身の専門性を反映し、健全な財務管理の基盤となる重要な要素です。

特に近年、インボイス制度(適格請求書等保存方式)のような新しい制度が導入され、ライターが対応すべき請求業務は複雑さを増しています。

この記事では、ライターが請求書に関して抱えるであろう疑問や不安を解消し、自信を持って請求業務を行えるよう、基礎知識から最新情報までを網羅的に解説します。

ライターのための請求書作成の基礎知識

請求書は、提供した役務や商品に対する対価を請求するために発行する書類であり、取引の証拠となる重要なものです。

フリーランスライターにとっても、クライアントとの間で金銭のやり取りを明確にし、スムーズな取引を維持するために不可欠です。

請求書には、法律で記載が義務付けられている必須項目があります。具体的には、書類作成者の氏名または名称、取引年月日、取引内容、取引金額(税込)、そして書類の交付を受ける事業者の氏名または名称です。

これらの項目が欠けていると、法的に有効な請求書とは見なされない可能性があるため、必ず記載しましょう。

必須項目に加えて、記載が推奨される項目もいくつかあります。これらを記載することで、請求書がよりプロフェッショナルに見え、取引先とのやり取りが円滑になります。

例えば、請求書番号は、請求書を管理しやすくするだけでなく、問い合わせの際にも役立ちます。支払期日を明記することは、入金の遅延を防ぐために重要です。

また、振込先の銀行名、支店名、口座種別、口座番号、口座名義は、正確な入金のために不可欠な情報です。

ライター特有の注意点として、ペンネームを使用している場合の請求書作成が挙げられます。ペンネームで請求書を作成すること自体は可能ですが、事前に取引先に確認することが賢明です。

特に、振込先の口座名義が本名である場合、請求書の名義と一致しないため、混乱を招く可能性があります。この場合、取引先には口座名義が本名であることを伝え、理解を得ておく必要があります。

住所や電話番号の記載は義務ではありませんが、記載しておくとより丁寧な印象を与えるでしょう。

請求金額や支払時期はもちろんのこと、振込手数料の負担や源泉徴収税の有無など、支払条件については、受注前にクライアントと十分に確認し、合意しておくことがトラブルを避ける上で非常に重要です。

請求書の正しい書き方を心がけ、クライアントとの円滑なコミュニケーションを保つことが、フリーランスとしての信頼を築く第一歩となります。

インボイス制度(適格請求書)とは?ライターへの影響と対応策

2023年10月1日から開始されたインボイス制度(適格請求書等保存方式)は、フリーランスライターを含む多くの事業者にとって大きな影響を与える制度です。

この制度は、消費税の仕入税額控除の適正化を目的としており、ライターもその内容を正確に理解し、適切に対応する必要があります。

適格請求書(インボイス)とは、売手が買手に対して、正確な適用税率や消費税額等を伝えるための書類です。従来の請求書に加えて、いくつかの項目を記載する必要があります。

具体的には、適格請求書発行事業者の登録番号、税率ごとに区分して合計した対価の額(税抜または税込)及び適用税率、そして税率ごとに区分した消費税額等です。

適格請求書を発行するためには、事前に税務署に申請し、「適格請求書発行事業者」としての登録を受ける必要があります。登録を受けると、事業者ごとに「T」から始まる13桁の登録番号が通知されます。

法人番号を有する課税事業者の場合は「T+法人番号」、個人事業者や人格のない社団等の場合は「T+マイナンバー(個人番号)ではない13桁の固有番号」となります。

インボイス制度の導入は、特にこれまで消費税の納税義務が免除されていた免税事業者(基準期間の課税売上高が1,000万円以下の事業者)のライターにとって、大きな判断を迫るものです。

適格請求書発行事業者として登録するということは、課税事業者になることを意味し、消費税の申告・納税義務が生じます。

クライアント(買手)が課税事業者である場合、原則として適格請求書がなければ仕入税額控除を受けることができません。

つまり、ライターが適格請求書を発行できない免税事業者のままでいると、クライアントは消費税の負担が増えることになります。

その結果、クライアントが適格請求書を発行できるライターを優先したり、あるいは消費税負担分を考慮した報酬額の減額交渉をしたりする可能性が考えられます。これは、ライターの受注機会や収入に直接的な影響を及ぼしかねません。

一方で、適格請求書発行事業者になると、消費税の納税義務が発生するため、これまで手取りだった消費税分を納めることになり、実質的な収入が減少する可能性があります。

ただし、インボイス制度への対応を機に免税事業者から課税事業者になった事業者向けには、一定期間、納税額を売上税額の2割に軽減する「2割特例」などの負担軽減措置も設けられています。

この制度変更は、単なる税務上の手続きに留まらず、ライター自身のビジネス戦略、クライアントとの関係性、そして事務負担の増加といった多角的な検討を必要とします。

自身のクライアント層(課税事業者が多いか、免税事業者や消費者が多いかなど)や、事務処理能力、収入への影響などを総合的に考慮し、適格請求書発行事業者になるかどうかを慎重に判断する必要があります。

以下に、ライターがインボイス制度に関して登録するか否かを検討する上での比較ポイントをまとめます。

観点適格請求書発行事業者に登録する場合登録しない場合(免税事業者のまま)
クライアントへの影響課税事業者のクライアントは仕入税額控除が可能課税事業者のクライアントは原則として仕入税額控除が不可(経過措置あり)
消費税の納税義務発生する(2割特例等の負担軽減措置あり)原則として発生しない
請求書発行適格請求書の記載要件を満たす必要あり(登録番号、税率毎の金額・消費税額等)従来の請求書で可(ただし、クライアントから適格請求書を求められる可能性あり)
事務負担消費税の申告・納税、適格請求書の保存・管理など増加従来通り(ただし、クライアントとの交渉等が発生する可能性あり)
受注機会課税事業者クライアントからの受注を維持・獲得しやすい可能性課税事業者クライアントから敬遠される、または値引き交渉される可能性
収入への影響消費税納税により手取りが減少する可能性。ただし、価格交渉により維持・増加の可能性も。報酬が維持される可能性もあるが、値引きにより減少する可能性も。

この比較はあくまで一般的なものであり、個々の状況によって最適な選択は異なります。国税庁のウェブサイトや税理士などの専門家にも相談し、情報を収集した上で判断することが推奨されます。

ライターなら知っておきたい源泉徴収の仕組みと請求書への記載方法

ライターなら知っておきたい源泉徴収の仕組みと請求書への記載方法

フリーランスのライターが報酬を受け取る際、多くの場合に関わってくるのが「源泉徴収」です。源泉徴収とは、報酬を支払う側(クライアント)が、あらかじめ所得税及び復興特別所得税を報酬から差し引いて国に納付する制度です。

ライターの執筆料(原稿料)は、一般的にこの源泉徴収の対象となります。

源泉徴収される税額の計算方法は、支払金額によって異なります。同一人に対し1回に支払われる金額が100万円以下の場合は、支払金額に10.21%を乗じた額です。

100万円を超える場合は、その超える部分については20.42%の税率が適用され、計算式は「(支払金額 - 100万円)× 20.42% + 102,100円」となります。計算した税額に1円未満の端数がある場合は切り捨てます。

請求書には、この源泉徴収税額を明記することが一般的です。通常、小計(税抜金額+消費税額)の下に源泉徴収税額を記載し、それを差し引いた金額を最終的な請求金額(差引支払額)として示します。

クライアントが法人である場合、源泉徴収は義務であるため、請求書に記載がなくても源泉徴収は行われますが、記載することで双方の確認がスムーズになり、経理処理の助けとなります。

ここで重要なのが、源泉徴収の対象となる金額に消費税を含めるかどうかという点です。原則として、報酬・料金等の額に消費税額が含まれている場合は、消費税額を含めた全額が源泉徴収の対象となります。

しかし、請求書等において報酬・料金等の額と消費税等の額が明確に区分して記載されている場合には、その報酬・料金等の税抜額のみを源泉徴収の対象とすることができます。

ライターにとっては、税抜金額を基準に源泉徴収された方が、手元に残る金額が一時的に多くなるため有利です。そのため、請求書には消費税額を明確に分けて記載することが推奨されます。

源泉徴収された税金は、あくまで所得税の前払いです。年間の所得が確定した後、確定申告を行うことで、最終的な所得税額が計算されます。もし源泉徴収された金額が本来納めるべき所得税額よりも多い場合は、差額が還付されます。

逆に少ない場合は追加で納税します。特に所得が低い場合、所得税率は10.21%よりも低くなることがあるため、確定申告によって税金が還付されるケースは少なくありません。

この仕組みを理解しておくことで、源泉徴収に対する漠然とした不安を軽減し、適切なタックスプランニングを行うことができます。クライアントとの間で源泉徴収の扱いに不明な点があれば、事前に確認しておくことが大切です。

ライター向け請求書の書き方【項目別解説と見本】

実際にライターが請求書を作成する際の各項目の書き方について、具体的に解説します。正確で分かりやすい請求書は、スムーズな支払いとクライアントとの良好な関係構築に繋がります。

まず「宛名」です。請求先の会社名や屋号、氏名を正確に記載します。会社宛の場合は「株式会社〇〇 御中」、部署宛の場合は「株式会社〇〇 △△部 御中」のように記載します。

担当者名まで記載する場合は「株式会社〇〇 △△部 □□様」のように「様」を用います。「御中」と「様」を併用することはありません。

次に「発行者情報」です。自身の氏名または屋号、住所、電話番号を記載します。インボイス制度に対応する場合は、適格請求書発行事業者の登録番号も忘れずに記載しましょう。

「請求日」は、請求書を発行した日付を記載しますが、取引先の締め日に合わせることが一般的です。

例えば、月末締め翌月末払いの契約であれば、請求日は作業月の末日や翌月の初日など、事前にクライアントと確認した日付を記載します。

「支払期限」もクライアントとの契約に基づいて記載します。金融機関の休業日と重なる場合は、その前後のどちらにするかなども確認しておくと良いでしょう。

「請求書番号」は、自身で管理しやすい任意の番号を振ります。発行日と連番を組み合わせるなどの方法があります。

「品目」には、提供したサービス内容を具体的に記載します。「記事執筆料」「コラム作成費」「取材費」などとし、可能であれば記事タイトルや納品日、文字数なども補足するとより丁寧です。

曖昧な表現は避け、誰が見ても内容が理解できるように心がけましょう。例えば、「〇〇に関する記事執筆(約△△文字)」のように記載します。

「単価」は、1記事あたり、1文字あたりなど、契約に基づいた単価を記載します。「数量」は、納品した記事数や文字数を記載します。「金額」は、単価と数量を乗じた各品目の金額を記載します。

「小計」として、各品目の金額の合計を記載します。その下に「消費税」を明記します。インボイス制度対応の場合は、適用税率(通常10%)と税率ごとの消費税額を記載する必要があります。

源泉徴収の対象となる場合は、「源泉徴収税額」を記載します。通常、小計(または消費税込みの金額)から計算した税額をマイナス表示します。

「合計金額」または「請求金額」として、クライアントに最終的に支払ってもらう金額を明記します。これは、小計+消費税-源泉徴収税額(該当する場合)となります。

金額を記載する際は、「¥123,456-」や「金123,456円也」のように、改ざん防止のための表記を用いることもあります。また、金額には3桁ごとにカンマを打つと見やすくなります。

「振込先」には、銀行名、支店名、預金種別(普通・当座など)、口座番号、口座名義(カタカナ表記が望ましい)を正確に記載します。口座名義は、請求書発行者名義と一致している必要があります。

「備考」欄には、振込手数料の負担について(例:「振込手数料は貴社にてご負担をお願いいたします」)や、その他特記事項があれば記載します。

これらの項目を一つ一つ丁寧に、そして正確に記載することが、請求書作成の基本であり、最も重要なポイントです。誤った情報は支払いの遅延やトラブルの原因となるため、発行前には必ず内容を再確認しましょう。

請求書作成を効率化。ツール・テンプレート活用術

請求書作成を効率化。ツール・テンプレート活用術

請求書の作成は、フリーランスライターにとって毎月発生する可能性のある業務です。これを効率的に行うことは、執筆活動に集中するための時間を確保する上で非常に重要です。

請求書の作成方法には、ExcelやWordなどのソフトで手動作成する方法と、クラウド型の請求書作成ソフトを利用する方法があります。

ExcelやWordのテンプレートを利用する方法は、初期費用がかからず手軽に始められるメリットがあります。インターネット上には、インボイス制度に対応した無料のテンプレートも多数公開されています。

これらを活用すれば、必要な項目が網羅された請求書を比較的簡単に作成できます。ただし、計算ミスや入力漏れが起こりやすく、請求書の管理も自分で行う必要があるというデメリットがあります。

一方、クラウド型の請求書作成ソフトは、月額費用がかかる場合もありますが、多くのメリットがあります。例えば、INVOY、マネーフォワード クラウド請求書、freee請求書などが人気です。

これらのソフトは、見積書から納品書、請求書への変換、定期的な請求書の自動作成・送付機能、入金管理機能などを備えていることが多く、請求業務全体を大幅に効率化できます。

また、インボイス制度への対応もソフト側で更新されるため、法改正への対応もスムーズです。計算ミスを防ぎ、プロフェッショナルな見た目の請求書を簡単に作成できる点も魅力です。

会計ソフトと連携できるものであれば、確定申告の際の手間も軽減されます。

どちらの方法を選ぶかは、ライター自身の請求書発行枚数、予算、ITスキル、そして求める機能によって異なります。

以下に、請求書作成方法の比較をまとめます。

作成方法メリットデメリットおすすめのライター
Excel/Wordテンプレート無料または安価で利用可能。操作に慣れている人が多い。手入力によるミスが発生しやすい。管理が煩雑。インボイス制度対応の確認が必要。請求書発行枚数が少なく、コストを抑えたい初心者ライター。
無料請求書作成ソフト基本機能は無料で利用可能。テンプレートが豊富。一部自動化機能あり。機能制限がある場合が多い。サポートが限定的。発行枚数が比較的少なく、基本的な請求書作成・管理を効率化したいライター。
有料請求書作成ソフト機能が充実(自動作成、郵送代行、入金管理、会計ソフト連携等)。インボイス制度に確実に対応。ミス削減。月額費用が発生する。多機能ゆえに慣れるまで時間がかかる場合も。請求書発行枚数が多く、インボイス対応と業務全体の効率化を重視するライター。

インボイス制度の導入により、請求書の記載要件が複雑化したことを考えると、請求書作成ソフトの利用は、正確性の担保と業務効率化の観点から、多くのライターにとって有益な選択肢と言えるでしょう。

無料プランやトライアル期間を提供しているソフトも多いので、まずは試してみて、自分に合ったツールを見つけることをお勧めします。

請求書発行後の流れとビジネスマナー

請求書は作成して終わりではありません。発行後の適切な対応とビジネスマナーが、スムーズな入金とクライアントとの良好な関係維持に繋がります。

請求書を送付するタイミングは、クライアントとの契約形態によって異なります。「都度方式」は、納品ごとやプロジェクト完了ごとに請求書を発行する方法で、新規の取引先や単発の案件の場合に用いられることが一般的です。

この場合、納品後速やかに、または納品と同時に請求書を送付します。「掛売り方式」は、継続的に取引がある場合に、月末締め翌月払いなど、一定期間の取引をまとめて請求する方法です。

この場合は、締め日から翌月の上旬までに送付するのが一般的ですが、クライアントの経理サイクルによって異なるため、事前に確認しておくことが重要です。

いずれの方式であっても、クライアントの支払いサイクルを尊重し、早めの発行を心がけることが大切です。

請求書の送付方法としては、近年ではPDF形式にしてメールで送付するのが主流です。

メールで送る際は、件名に「【〇〇(自社名)】〇月分ご請求書」のように内容がわかるように記載し、本文には挨拶、請求書を添付した旨、支払期限などを簡潔に記載します。

情報漏洩防止の観点から、PDFファイルにパスワードを設定し、パスワードは別メールで通知するといった配慮も有効です。

郵送の場合は、A4サイズの書類が折らずに入る封筒(長形3号や角形2号など)を使用し、封筒の表面には「請求書在中」と明記すると、他の郵便物と区別されやすくなります。スタンプを利用するのも良いでしょう。

発行した請求書は、必ず控えを保存しておく必要があります。

これは、自身の経理処理や確定申告のためだけでなく、万が一クライアントとの間で認識の齟齬が生じた場合の証拠ともなります。

電子データで保存する場合は、ファイル名を「20240531_株式会社〇〇様請求書」のように日付と取引先名で統一すると管理しやすくなります。

特に初めて取引するクライアントや、高額な請求の場合は、請求書送付後に「請求書をお送りいたしましたので、ご確認ください」といったフォローアップの連絡を入れると、より丁寧な印象を与え、受け取り確認にも繋がります。

請求書発行後のこれらのプロセスは、単なる事務作業ではなく、クライアントに対するプロフェッショナルな姿勢を示す機会でもあります。細やかな配慮が、信頼関係の構築に貢献することを忘れないようにしましょう。

請求書のトラブル回避と対処法

細心の注意を払っていても、請求書に関するトラブルが発生することはあります。事前に回避策を講じるとともに、万が一トラブルが発生した場合の対処法を知っておくことが重要です。

よくある請求書のミスとしては、請求金額の計算間違い、宛名や発行者情報の誤記、必須項目の記載漏れ、振込先の誤りなどが挙げられます。

これらのミスを防ぐためには、請求書発行前のダブルチェックが不可欠です。特に金額や口座情報、インボイス制度関連の記載(登録番号、税率ごとの金額など)は念入りに確認しましょう。

もし請求書に誤りが見つかった場合、またはクライアントから指摘された場合は、速やかに謝罪し、訂正した請求書を再発行するのが基本です。

軽微な修正であれば訂正印と二重線で対応することも不可能ではありませんが、特に金額に関わる重要な誤りや、インボイス制度対応の請求書の場合は、再発行が望ましいでしょう。

再発行する際は、請求書に「再発行」と明記し、元の請求書と区別できるように請求書番号の末尾に枝番を付ける(例:INV001-2)などの工夫をすると、クライアント側も管理しやすくなります。

発行日については、原則として元の請求書と同じ日付を記載しますが、クライアントの希望があればそれに従います。再発行した請求書を送付する際は、お詫びの言葉を添えるのがマナーです。

支払いが遅延している場合の対応も重要です。まずは、支払期限から数日~1週間程度経過した時点で、確認のメールを送ります。

この際、高圧的な表現は避け、「〇月〇日期限の請求書につきまして、入金が確認できておりませんが、状況はいかがでしょうか」といった形で、あくまで状況確認を促す丁寧な文面を心がけます。

行き違いで入金済みの場合もあるため、その旨も一言添えると良いでしょう。

それでも入金がない場合は、再度メールを送るか、電話で連絡を取ります。メールの場合は件名に【再送】などと入れて前回のリマインドであることを示し、電話の場合は相手の状況を伺いながら、支払いの意思や予定を確認します。

度重なる催促にもかかわらず支払いがない悪質なケースでは、最終手段として内容証明郵便による督促状の送付を検討することもあります。

内容証明郵便は、いつ、どのような内容の文書を誰から誰宛に送付したかを郵便局が証明するもので、相手に心理的なプレッシャーを与え、支払いを促す効果が期待できます。また、法的手続きに進む際の証拠ともなり得ます。

請求書を出し忘れていたことに気づいた場合は、まずクライアントに連絡を取り、出し忘れていた旨を伝え謝罪した上で、速やかに請求書を発行・送付します。

トラブルは未然に防ぐのが最善ですが、発生してしまった場合に冷静かつ誠実に対応することが、プロフェッショナルとしての信頼を損なわないために不可欠です。

【応用編】海外クライアントへの請求と特殊ケース

国内のクライアントだけでなく、海外のクライアントと取引する機会のあるライターもいるでしょう。

また、追加料金の発生や分割払いなど、通常とは異なる請求が必要になるケースも考えられます。これらの特殊な状況における請求書の取り扱いについて解説します。

海外に居住するクライアントに対してライティングサービスを提供する場合、日本の消費税は原則として課税されません(国外取引)。そのため、請求書に消費税を含める必要はありません。

ただし、取引相手が海外企業の日本支店であるなど、役務の提供が国内で行われると判断される場合は、国内取引となり消費税が課税されるため注意が必要です。

請求書は、クライアントの希望に応じて英語で作成する必要があるかもしれません。

その際は、「INVOICE」と明記し、自社の名称・住所、クライアントの名称・住所、請求書発行日、請求書番号、提供したサービス内容、単価、数量、合計金額、支払い条件、支払い期日、振込先銀行情報(SWIFTコード、IBANコードなどが必要になる場合あり)などを記載します。

支払い通貨(例:USD、EUR)も明確に指定しましょう。海外からの送金は、国内取引に比べて手数料が高くなる場合があるため、手数料負担についても事前に取り決めておくことが重要です。

なお、海外からの収入も日本の所得税の課税対象となるため、確定申告を忘れずに行う必要があります。

業務の途中で仕様変更や追加作業が発生し、当初の見積もりを超える追加料金を請求する必要が生じることもあります。このような場合は、必ず事前にクライアントに連絡し、追加作業の内容と料金について合意を得ることが大前提です。

合意が得られたら、請求書には基本料金とは別に「追加作業費」などの項目を設け、内容と金額を明記します。どの作業に対する追加料金なのかが明確にわかるように記載することで、後のトラブルを防ぎます。

高額な案件などで、分割払いを希望される場合もあります。分割払いに応じる場合は、契約時に総額、支払回数、各回の支払金額、支払期日などを明確に定め、書面で合意しておくことが不可欠です。

請求書を発行する際は、各請求書に「〇回中〇回目のご請求」といった形で分割払いであることを明記し、今回の請求金額と残額(もし分かれば)を示すと親切です。

請求書が複数枚にわたる場合は、各ページに「1/2」「2/2」のようにページ番号を記載し、備考欄や送付状で総ページ数を伝えると、クライアントの見落としを防ぐのに役立ちます。

請求書番号に枝番を付ける(例:INV001-1、INV001-2)のも良い方法です。

これらの特殊なケースでは、通常以上にクライアントとの密なコミュニケーションと、事前の明確な合意形成がトラブルを避ける鍵となります。

不明な点や不安な点はそのままにせず、必ず事前に話し合い、双方納得の上で進めるようにしましょう。

まとめ

フリーランスのライターにとって、請求書は報酬を得るための単なる手続きではなく、自身の事業を円滑に進め、クライアントとの信頼関係を築くための重要なツールです。

本記事では、請求書の基本的な書き方から、2023年10月に開始されたインボイス制度への対応、ライター特有の源泉徴収の扱いや計算方法、さらには請求書作成ツールの活用法、トラブル対処法、海外取引や特殊ケースに至るまで、幅広く解説してきました。

特にインボイス制度は、免税事業者であったライターにとっては大きな変化であり、自身の事業戦略に関わる重要な判断が求められます。

課税事業者になるか否か、それぞれのメリット・デメリットを理解し、自身の状況に合わせて最適な道を選択することが肝要です。

また、源泉徴収についても、正しい知識を持つことで手取り額への影響を把握し、確定申告での適切な処理に繋げることができます。

請求書作成においては、必須項目を漏れなく記載することはもちろん、品目を具体的に記述したり、支払条件を明確にしたりといった細やかな配慮が、クライアントからの信頼を得て、スムーズな支払いへと繋がります。

請求書作成ソフトやテンプレートを賢く活用すれば、作業効率を上げ、ミスを減らすことも可能です。

この記事の投稿者:

hasegawa

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