
時候の挨拶を、いつも何となく選んでいませんか。その一文で、あなたのビジネス評価が左右されるかもしれません。心のこもった季節の言葉を添えるだけで、取引先や上司との関係はより円滑になり、あなたのプロフェッショナルな姿勢が際立ちます。
相手に「この人は仕事ができる」と感じさせる、そんな挨拶状を自在に書けるようになる未来を想像してみてください。この記事では、7月上旬に使える時候の挨拶を、フォーマルな「漢語調」からやわらかな「口語調」まで網羅的に解説します。
文例をただ並べるだけでなく、それぞれの言葉が持つニュアンスや正しい使用時期、さらにはビジネスシーンにおける重要性まで深く掘り下げています。本記事を読めば、あなたの書くメールや手紙は、間違いなく一段上のレベルに到達します。
時候の挨拶に自信がない方でも、心配はいりません。この記事の構成に沿って読み進めるだけで、誰でもTPOに合わせた最適な表現を選べるようになります。
基礎知識から具体的な文例、さらには避けるべきNG例まで、あなたの「知りたい」がすべてここにあります。今日から使える知識を身につけ、自信を持ってコミュニケーションを取りましょう。
目次
7月上旬の時候の挨拶をマスターする基礎知識
時候の挨拶を効果的に使うためには、まずその基本を理解することが不可欠です。単に文例を覚えるだけでなく、なぜそれを使うのか、どのような意味があるのかを知ることで、あなたの言葉はより深みを増します。
時候の挨拶とは?ビジネスにおける重要性
時候の挨拶とは、手紙やメールの冒頭で「拝啓」などの頭語に続けて書く、季節感を表す言葉です。これは単なる形式的なものではありません。本題に入る前のクッション言葉として、相手への配慮や気遣いを示す大切な役割を担っています。
ビジネスシーンにおいて、適切な時候の挨拶は、コミュニケーションを円滑にし、良好な人間関係を築くための潤滑油となります。相手の健康や会社の繁栄を気遣う一文があるだけで、丁寧で思慮深い人物であるという印象を与えられます。
逆に、季節外れの挨拶や不適切な表現は、相手に配慮が足りない、あるいは常識がないといったマイナスの印象を与えかねません。時候の挨拶一つで、あなたのプロフェッショナリズムが測られていると言っても過言ではないのです。
「漢語調」と「口語調」の正しい使い分け
時候の挨拶には、大きく分けて「漢語調」と「口語調」の二つのスタイルがあります。相手との関係性や文書のフォーマル度に応じて、正しく使い分けることが重要です。
漢語調
「~の候」や「~のみぎり」で結ばれる、格調高い表現です。漢語に由来する言葉が多く、簡潔で引き締まった印象を与えます。公的な文書、取引先への正式な手紙、目上の方への連絡、初めて連絡する相手など、礼儀を重んじる場面で使います。
例:「向暑の候」「盛夏の候」
口語調
「~な季節となりましたが」のように、話し言葉に近く、やわらかで親しみやすい表現です。すでに良好な関係が築けている取引先や同僚、親しい間柄の相手へのメールなどで使うと、温かみが伝わります。
例:「梅雨明けが待ち遠しいこの頃ですが、いかがお過ごしでしょうか。」
どちらを選ぶかは、相手への敬意の示し方に関わります。迷った場合は、よりフォーマルな漢語調を選んでおけば間違いありません。
7月上旬の季節感:梅雨明けと七夕、小暑を意識する
7月上旬の挨拶を選ぶ際には、この時期特有の季節感を表現することが大切です。主に三つのキーワードを意識すると、より的確な挨拶ができます。
梅雨明けは、7月上旬の多くの地域で意識される季節の変わり目です。続く長雨や、待ち遠しい梅雨明けをテーマにした表現は、この時期ならではの季節感を伝えます。
7月7日の七夕は、7月上旬を象徴する行事です。「七夕の候」や「星祭の候」といった言葉は、季節の風情を感じさせますが、7月7日を過ぎると使えない点に注意が必要です。
小暑は二十四節気の一つで、7月7日頃にあたります。「暑さが少しずつ強くなっていく頃」という意味を持ち、暦の上で本格的な夏が始まる目安とされます。この日から「暑中見舞い」を出し始めるのが一般的です。
一歩進んだ配慮:相手の地域の天候を考慮する
ここで一つ、あなたの評価をさらに高めるためのポイントがあります。それは、相手が住む地域の気候を考慮することです。例えば、「梅雨明けの候」という挨拶は非常に便利ですが、梅雨明けの時期は日本国内でも大きく異なります。
沖縄では6月下旬に梅雨が明ける一方、東北地方では7月下旬から8月上旬になることもあります。東京にいるあなたが7月上旬に「梅雨明けの候」という挨拶を東北地方の取引先に送ると、相手はまだ梅雨の真っ只中かもしれません。
このような状況では、配慮に欠ける印象を与えてしまう可能性があります。相手の地域の天候がわからない場合は、「向暑の候」のような、より一般的な表現を選ぶのが賢明です。このような細やかな配慮が、相手に「よく見てくれている」という信頼感を与えるのです。
【文例集】そのまま使える!7月上旬の時候の挨拶
ここでは、ビジネスシーンですぐに使える7月上旬の時候の挨拶を、漢語調と口語調に分けてご紹介します。結びの言葉も合わせて活用し、完成度の高いメールや手紙を作成しましょう。
フォーマルな「漢語調」の文例
改まった場面で使う漢語調の挨拶は、言葉の選び方が重要です。以下の表を参考に、状況に最も適した表現を選んでください。
時候の挨拶 | 読み方 | 意味・ニュアンス | 使用時期の目安 |
向暑の候 | こうしょのこう | 「暑さに向かう季節となりました」という意味。夏の始まりを告げる汎用性の高い表現。 | 6月下旬~7月上旬 |
長雨の候 | ながあめのこう | 「長雨が続く季節ですが」という意味。梅雨が明けていない時期に使うのが適切。 | 梅雨期間中(~7月中旬頃) |
七夕の候 | たなばたのこう | 「七夕の季節となりました」という意味。季節の風物詩に触れる優雅な表現。 | 7月1日~7月7日まで |
星祭の候 | ほしまつりのこう | 「七夕の候」と同じ意味。こちらも7月7日まで使用可能。 | 7月1日~7月7日まで |
小暑の候 | しょうしょのこう | 「暦の上で小暑を迎えました」という意味。本格的な暑さの到来を告げる表現。 | 7月7日頃~7月22日頃 |
盛夏の候 | せいかのこう | 「夏の盛りの季節となりました」という意味。梅雨明け後、本格的な夏に使います。 | 7月上旬~8月上旬(立秋前) |
やわらかな「口語調」の文例
親しい間柄の相手には、口語調の挨拶で季節感を伝えると、より心が通うコミュニケーションができます。状況に合わせて使い分けましょう。
梅雨明けを待つ表現
梅雨明けが待ち遠しいこの頃ですが、皆様お変わりなくお過ごしでしょうか。
長かった梅雨もようやく明けようとしています。お元気でいらっしゃいますか。
雨の合間に見える晴れ間が嬉しい季節となりました。お元気でお過ごしください。
七夕に触れる表現
色とりどりの七夕飾りを目にする頃となりました。お元気でご活躍のことと存じます。
七夕の短冊が風に揺れる頃、いかがお過ごしでしょうか。
今年の短冊には何をお願いされましたか。願いが叶うといいですね。
夏の訪れを感じる表現
蝉の鳴き声に夏の到来を感じさせられるこのごろですが、皆様お変わりありませんでしょうか。
向日葵が日毎に背を伸ばすこの頃、〇〇様におかれましては、ますますご健勝のことと存じます。
夏の日盛りに木陰の恋しい季節となりましたが、いかがお過ごしでしょうか。
空の青がひときわ眩しい季節となりました。皆様お障りなくお過ごしのことと存じます。
相手を気遣う「結びの言葉」
時候の挨拶で始めた手紙やメールは、結びも季節感のある言葉で締めくくるのがマナーです。相手の健康や繁栄を祈る言葉を添えましょう。
相手の健康を気遣う言葉
暑さ厳しき折、くれぐれもご自愛くださいませ。
梅雨明けの暑さもひとしおでございます。夏風邪など召されませぬようご自愛ください。
これからが暑さの本番です。皆様どうぞご自愛くださいませ。
猛暑のみぎり、体調を崩されませんようご留意ください。
相手の繁栄を祈る言葉
貴社のますますのご発展を心より祈念しております。
末筆ながら、一層のご隆盛を衷心よりお祈り申し上げます。
〇〇様のより一層のご活躍を祈念いたします。
梅雨明けの盛夏の折、貴社のさらなるご活躍をお祈り致します。
今後の関係をお願いする言葉
暑熱耐え難い時節ではございますが、今後ともお引き立てのほどよろしくお願い申し上げます。
今後ともご指導ご鞭撻のほどよろしくお願い申し上げます。
引き続きご高配を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。
【実践編】シーン別に見る時候の挨拶
知識と文例を学んだら、次はいよいよ実践です。ここでは、ビジネスの様々なシーンでどのように時候の挨拶を組み立てるか、具体的な例文を交えて解説します。
ビジネスメール・手紙の基本構成
フォーマルなビジネス文書は、基本的に以下の流れで構成されます。この型を覚えておくと、どんな場面でも迷わず書けるようになります。
- 頭語
- 時候の挨拶
- 相手の安否や繁栄を喜ぶ言葉
- 日頃の感謝
- 主文
- 結びの挨拶
- 結語
- 後付け(日付、署名、宛名)
例文:取引先へのメール
件名
【株式会社〇〇】新商品のご案内
本文
株式会社△△
営業部 部長 〇〇 〇〇様
拝啓
向暑の候、貴社におかれましてはますますご清栄のこととお慶び申し上げます。
平素は格別のご愛顧を賜り、心より御礼申し上げます。
さて、このたび弊社では、かねてより開発を進めておりました新商品「〇〇」を、8月1日より発売する運びとなりました。
(主文)
ご多忙中とは存じますが、ぜひ一度お目通しいただけますと幸いです。
梅雨明け後には厳しい暑さとなりますので、健康には十分にご留意なされ、さらにご活躍されますことを祈念申し上げます。
敬具
令和〇年7月〇日
株式会社〇〇
営業部 〇〇 〇〇
例文:社内(上司・目上)への報告
件名
〇〇プロジェクト進捗のご報告(〇〇部 〇〇)
本文
〇〇部長
お疲れ様です。
〇〇部の〇〇です。
蝉の鳴き声に夏の到来を感じさせられるこのごろですが、〇〇部長におかれましては、ますますご健勝のことと存じます。
さて、ご指示いただいておりました〇〇プロジェクトの進捗状況について、下記の通りご報告いたします。
(主文)
引き続き、プロジェクトの成功に向けて尽力いたします。
これから本格的な猛暑がやってまいりますので、部長も体調を崩されませんようご留意ください。
以上、よろしくお願い申し上げます。
〇〇部 〇〇 〇〇
請求書・領収書の送付状など事務的な文書の場合
事務的な文書であっても、時候の挨拶を一言添えるだけで、無機質なやり取りに温かみが生まれます。
例文:請求書の送付状
拝啓
小暑の候、貴社ますますご繁栄のこととお慶び申し上げます。
平素は格別のお引き立てを賜り、厚く御礼申し上げます。
さて、早速ではございますが、下記の通り請求書をお送りいたしますので、ご査収のほどよろしくお願い申し上げます。
敬具
7月の挨拶で注意すべき点と関連知識
最後に、7月の挨拶を使う上で特に注意したい点や、関連する知識をまとめます。これらを理解することで、よくある失敗を防ぎ、より洗練されたコミュニケーションが可能になります。
やってはいけないNG例と避けるべき表現
良かれと思って使った表現が、かえって失礼にあたることもあります。以下の点に注意しましょう。
最も多い失敗例は、時期のミスマッチです。「七夕の候」を7月8日以降に使う、「梅雨明けの候」を梅雨が明けていない地域に送る、といったミスは避けましょう。
また、天候との不一致にも注意が必要です。記録的な冷夏の年に「猛暑の候」を使うと、相手に違和感を与えます。実際の気候に合わせて「例年にない冷夏でございますが」といった表現に切り替える柔軟さも大切です。
親しい間柄で使うような「仕事終わりのビールが毎日楽しみでなりません」といった個人的な感想は、フォーマルなビジネスメールでは不適切です。相手との関係性を慎重に見極めましょう。
「暑中見舞い」との違いと正しい時期
時候の挨拶と混同されやすいのが「暑中見舞い」です。両者は目的も形式も異なります。時候の挨拶は、あくまでビジネス文書の「前置き」です。一方、暑中見舞いは、暑い時期に相手の健康を気遣うこと自体を目的とした独立した挨拶状です。
暑中見舞いを送る時期には、明確な決まりがあります。それは、二十四節気の「小暑」(7月7日頃)から「立秋」(8月7日頃)の前日までです。
ここで重要なのは、実際の気温よりも暦が基準になるという点です。たとえ7月上旬に猛暑日が続いても、小暑より前に送るものは「梅雨見舞い」となり、暑中見舞いとは区別されます。また、立秋を一日でも過ぎて届けば、それは「残暑見舞い」となります。
この厳格なルールは、日本の伝統的な礼儀作法が、自然の感覚よりも古くからの「型」を重んじる文化に基づいていることを示しています。この原則を理解することが、日本のビジネスマナーを深く知る上での鍵となります。
まとめ
この記事では、7月上旬の時候の挨拶について、その基本から実践までを詳しく解説しました。最後に、重要なポイントを再確認しましょう。
相手と状況に応じて「漢語調」と「口語調」を使い分けることが大切です。フォーマルな場面では格調高い漢語調を、親しい相手にはやわらかな口語調を選び、TPOに合わせたコミュニケーションを心がけましょう。
7月上旬は「梅雨」「七夕」「小暑」の季節感を大切にしましょう。この時期ならではのキーワードを盛り込むことで、挨拶が生き生きとし、相手に季節の移ろいを的確に伝えることができます。
相手の地域の天候を考慮に入れると、より丁寧な印象になります。画一的な挨拶ではなく、相手の状況を想像する一歩進んだ配慮が、あなたの信頼性を高め、良好な関係を築く礎となります。
「暑中見舞い」は暦に基づいて送る必要があります。暑中見舞いの時期は、体感温度ではなく小暑から立秋前日という暦で決まります。このルールを正しく理解し、適切な時期に送ることが大切です。
時候の挨拶は、あなたの人間性とビジネススキルを映し出す鏡です。この記事で得た知識を武器に、自信を持って、心遣いの伝わるコミュニケーションを実践してください。
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