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スキャナ保存とは?改正電子帳簿保存法の要件から導入手順、システム比較まで解説

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スキャナ保存

「3年前のあの領収書、どこにやったかな…」と書類の山をかき分ける時間はもうおしまいです。請求書の処理や経費精算のために、わざわざ出社する日々から解放される未来を想像してみてください。

オフィスは紙の束から解放され、必要な情報は数秒で見つかる。そんな業務効率化の鍵を握るのが「スキャナ保存」制度です。

この記事は、電子帳簿保存法における「スキャナ保存」の全てを網羅した、あなたのための決定版ガイドです。複雑に思える法律の要件を一つひとつ丁寧に解きほぐし、明日からでも始められる具体的な導入ロードマップを提示します。

この記事を読み終える頃には、あなたの会社が自信を持ってペーパーレス化への第一歩を踏み出せるようになっているでしょう。

「法律は難しそう」「もし間違えて税務調査で指摘されたらどうしよう」「うちのような中小企業でも本当にできるのだろうか」。そんな不安を感じるかもしれません。

しかし、安心してください。近年の法改正で要件は大幅に緩和され、以前よりもずっと導入しやすくなりました。このガイドに沿って進めれば、あなたの会社でも必ず実現できます。

目次

スキャナ保存とは?基本を理解し、自社の立ち位置を知る

スキャナ保存の導入を検討する前に、まずはその基本的な定義と、法律全体の中での位置づけを正確に理解することが不可欠です。ここを曖昧にしたまま進めると、後々大きな混乱を招く可能性があります。

電子帳簿保存法におけるスキャナ保存の定義

スキャナ保存とは、電子帳簿保存法という法律で定められた制度の一つです。具体的には、取引先から受け取った紙の領収書や請求書、あるいは自社で作成した紙の書類の控えなどを、スキャナやスマートフォンで読み取って作成した画像データ(電子データ)として保存することを認める仕組みです。

この制度は、2005年(平成17年)の税制改正で創設されて以来、時代に合わせて何度も要件が緩和されてきました。その目的は、企業がペーパーレス化を進め、物理的な書類の保管コストを削減し、業務全体の効率を向上させることにあります。

正しくスキャナ保存を行えば、紙の原本を破棄できるため、オフィススペースの有効活用や書類管理の手間削減に直結します。

スキャナ保存は任意、電子取引のデータ保存は義務

ここで、多くの事業者が混乱する最も重要なポイントを解説します。それは、「スキャナ保存」と「電子取引のデータ保存」の違いです。

スキャナ保存は、あくまで「任意」の制度です。つまり、紙で受け取った書類をスキャンして電子データで保存するか、従来通り紙のまま保管し続けるかを選ぶことができます。「希望者のみ」が対応すればよい制度なのです。

一方で、「電子取引」のデータ保存は、2024年1月1日からすべての法人および個人事業主に対して「義務化」されています。電子取引とは、最初から電子データでやり取りされた取引情報を指します。例えば、メールに添付されたPDFの請求書、ウェブサイトからダウンロードした領収書、EDI取引(企業間電子データ交換)のデータなどがこれにあたります。

この違いを、簡単な例で考えてみましょう。

例えば、取引先があなたの会社に紙の請求書を持ってきた場合、あなたは、その紙の請求書をスキャンしてデータで保存(スキャナ保存)するか、そのままファイリングして紙で保管するかを選べます。

一方、取引先があなたの会社にPDFの請求書をメールで送ってきた場合は、電子取引に該当します。あなたはそのPDFファイルを、法律の要件に従ってデータとして保存しなければなりません。受け取ったPDFを印刷して紙で保存することは、原則として認められていません。

この区別を理解しないと、義務である電子取引のデータ保存を怠ってしまうリスクがあります。スキャナ保存を検討する大前提として、自社ではまず電子取引への対応が正しくできているかを確認することが重要です。

対象書類を分類する 重要書類と一般書類の違い

スキャナ保存の対象となる書類は、その性質によって「重要書類」と「一般書類」の2種類に分けられます。なぜなら、どちらに分類されるかによって、満たすべき保存要件が大きく異なるからです。

重要書類 (Important Documents)

資金や物の流れに直接的・連動的に関わる、証拠力が高い書類を指します。これらは企業の取引の根幹をなすため、より厳格な保存要件が課せられます。

具体的な例としては、契約書、領収書、請求書、納品書、送り状などがあります。

一般書類 (General Documents)

資金や物の流れに直接的には関係しない書類を指します。重要書類に比べて、保存要件が一部緩和されています。

具体的な例としては、見積書、注文書、検収書などがあります。

なお、貸借対照表や損益計算書といった決算関係書類や、仕訳帳・総勘定元帳などの国税関係帳簿は、スキャナ保存の対象外なので注意が必要です。

この書類分類を正しく行うことが、コンプライアンスを遵守したスキャナ保存運用の第一歩となります。

なぜ今なのか?スキャナ保存のメリット・デメリットを徹底分析

なぜ今なのか?スキャナ保存のメリット・デメリットを徹底分析

法改正により導入のハードルが下がった今、多くの企業がスキャナ保存に注目しています。しかし、導入に踏み切る前に、そのメリットとデメリットを客観的に評価し、自社にとって本当に価値があるのかを見極めることが重要です。

業務が変わる!スキャナ保存がもたらす4つの大きなメリット

スキャナ保存を導入することで、企業は単なるペーパーレス化以上の、多岐にわたる恩恵を受けることができます。

コストとスペースの劇的な削減

最も直接的で分かりやすいメリットは、物理的なコストとスペースの削減です。紙の書類を保管するためには、ファイルやキャビネットといった備品代、そして何よりも保管場所としてのオフィススペースや倉庫の賃料が必要です。

スキャナ保存によってこれらの紙書類を廃棄できれば、保管コストは劇的に削減されます。空いたスペースをより生産的な用途に活用することも可能になるでしょう。

圧倒的な業務効率の向上

「あの取引の請求書はどこだっけ?」とキャビネットを探し回る時間は、企業の生産性を大きく損なっています。スキャナ保存を導入し、書類をデータ化すれば、検索機能を使って必要な情報を一瞬で見つけ出すことができます。

これにより、経理部門の月次・年次決算業務、監査法人や税務調査への対応、部署内での情報共有などが格段にスピードアップします。

テレワークと多様な働き方の推進

従来の紙ベースの業務では、請求書や領収書の処理のために経理担当者が出社を余儀なくされるケースが多くありました。スキャナ保存によって書類がデータ化され、クラウドシステムなどで管理されれば、場所を選ばずに業務を遂行できます。

これは、テレワークやリモートワークといった柔軟な働き方を推進し、従業員のワークライフバランス向上や、多様な人材の確保にも繋がります。

ガバナンスとセキュリティの強化

紙の書類は、紛失、盗難、不正な改ざん、災害による消失といったリスクに常に晒されています。

一方、適切なシステムを導入してスキャナ保存を行えば、アクセス制限や操作履歴(ログ)の管理、確実なバックアップといった機能により、セキュリティレベルを大幅に向上させることが可能です。誰がいつデータにアクセスし、何をしたのかを追跡できるため、内部統制の強化にも貢献します。

導入前に知るべき現実的な課題とデメリット

多くのメリットがある一方で、スキャナ保存の導入には現実的な課題も存在します。これらを事前に認識し、対策を講じることが成功の鍵です。

初期導入と運用コストの発生

スキャナ保存を始めるには、一定の投資が必要です。高性能なスキャナや複合機、そして電子帳簿保存法の要件を満たす文書管理システムや会計ソフトの導入には、初期費用がかかります。

また、クラウドサービスを利用する場合は、月額の利用料といったランニングコストも発生します。費用はシステムの機能によって様々で、初期費用が数万円から30万円程度、月額費用が数千円から数万円程度が目安となります。

スキャン作業そのものの手間

特に導入初期には、過去の紙書類を電子化する作業や、日々発生する書類をスキャンする作業に、相応の時間と労力が必要となります。

この作業負荷を誰が担うのか、業務フローの中にどう組み込むのかを事前に計画しておかなければ、現場の負担が増大し、導入が頓挫する原因にもなりかねません。

全社的なルール整備と社員教育の必要性

単にシステムを導入するだけでは、スキャナ保存は成功しません。どの書類を対象にするのか、誰がどのような手順でスキャンや確認を行うのか、原本はいつ廃棄するのか、といった詳細な社内ルール(運用規程)を策定し、全社に周知徹底する必要があります。

また、関係する従業員全員が新しいシステムや業務フローを正しく理解し、運用できるよう、十分なトレーニングを行うことも不可欠です。

デジタルデータ特有のセキュリティリスク

データ化は多くのメリットをもたらす反面、サイバー攻撃による情報漏洩やデータの改ざん、システム障害によるデータ消失といったデジタル特有のリスクも生じます。

これらのリスクに対応するため、信頼性の高いシステムを選定し、アクセス管理の徹底、定期的なバックアップ、ウイルス対策といった包括的なセキュリティ対策を講じなければなりません。

ルールを制する者が業務を制す!スキャナ保存の要件完全ガイド

ルールを制する者が業務を制す!スキャナ保存の要件完全ガイド

スキャナ保存を成功させるためには、法律で定められた要件を正しく理解し、遵守することが絶対条件です。要件は複雑に見えますが、ポイントを押さえれば決して難しいものではありません。ここでは、最新の規制緩和の内容も踏まえ、その全体像を分かりやすく解説します。

これだけは押さえるべき!スキャナ保存の必須要件

スキャナ保存の要件は、前述の通り「重要書類」と「一般書類」で異なります。以下の表で、その違いを明確に比較しながら確認しましょう。この表は、自社の運用ルールを策定する際のチェックリストとして活用できます。

要件重要書類一般書類
入力期間の制限以下のいずれか
・早期入力方式
書類受領後、速やか(おおむね7営業日以内)に入力
・業務処理サイクル方式
業務サイクル(最長2か月)経過後、速やか(おおむね7営業日以内)に入力
適時入力 (任意のタイミングで入力可能)
解像度200dpi相当以上200dpi相当以上
カラー画像24ビットカラー(約1677万色)以上が必須グレースケール(白黒階調)での保存も可
タイムスタンプ原則として必要 (ただし、訂正・削除履歴が残るシステム等を利用する場合は不要)原則として必要 (ただし、訂正・削除履歴が残るシステム等を利用する場合は不要)
ヴァージョン管理必須 (訂正または削除の事実・内容を確認できること)必須 (訂正または削除の事実・内容を確認できること)
帳簿との相互関連性必須 (スキャンデータと関連する帳簿の記録を相互に確認できること)不要
見読可能装置14インチ以上のカラーディスプレイ
・プリンタ等が必要
グレースケールで保存する場合は、カラー対応のディスプレイ・プリンタは不要
検索機能以下の項目で検索できること
・取引年月日その他の日付
・取引金額
・取引先
以下の項目で検索できること
・取引年月日その他の日付
・取引金額
・取引先

2024年改正のポイント なぜ始めやすくなったのか

2024年1月1日以降に適用される税制改正(令和5年度改正)により、スキャナ保存の要件はさらに緩和され、事業者の事務負担が大幅に軽減されました。これにより、これまで導入をためらっていた企業にとっても、スキャナ保存がより現実的な選択肢となっています。

解像度・階調・大きさ情報の保存が不要に

以前は、スキャンした画像データと共に、その画像の解像度(dpi)や階調(ビットカラー)、書類の大きさ(A4など)といった情報を「メタデータ」として保存する必要がありました。今回の改正で、このメタデータの保存義務が廃止されました。

ただし、注意が必要なのは、スキャンする際の解像度(200dpi以上)やカラー(重要書類の場合)といった要件自体がなくなったわけではないという点です。あくまで、その設定情報をデータとして保持する必要がなくなった、という事務負担の軽減です。

入力者等情報の確認が不要に

スキャン作業を行った担当者や、その監督者の情報を確認できるようにしておくという要件も、今回の改正で廃止されました。これにより、誰がスキャンしたかを記録・管理する手間がなくなり、特に複数人で作業を分担している場合の管理コストが削減されます。

帳簿との相互関連性の確保が重要書類に限定

これは非常に大きな変更点です。従来は、スキャンしたすべての書類について、関連する会計帳簿の記録と相互に紐づけができるようにしておく必要がありました。

改正により、この相互関連性の確保が求められるのは「重要書類」のみに限定されました。見積書や注文書といった「一般書類」についてはこの要件が不要になったため、経理部門の負担が大幅に軽減されます。

これらの規制緩和は、政府が企業のデジタルトランスフォーメーションを後押ししようとする明確な意思の表れです。しかし、この変化は単なる手続きの簡素化以上の意味を持ちます。

かつての法律は、不正を防ぐために「こうしなさい」という具体的な手順(適正事務処理要件など)を細かく規定する、いわば「指示管理型」のアプローチでした。

しかし、相次ぐ改正でこれらの細かい手順に関する要件が廃止される一方で、不正が発覚した場合のペナルティ(重加算税の加重措置)は強化されています。

これは、政府の方針が「細かい手順の管理」から、「データが本物であること(真実性)と、いつでも確認できること(可視性)という原則を守りなさい。その方法は柔軟に選んでよいが、もし不正をすれば厳しい罰則を科す」という「原則主義型」へと移行していることを示唆しています。

事業者にとっては、運用の自由度が高まる一方で、信頼できるシステムを選び、自社の責任でデータの完全性を担保するという、より戦略的な判断が求められるようになったのです。「簡単になった」ことと「重要でなくなった」ことは同義ではないと理解することが肝要です。

タイムスタンプ、バージョン管理、検索機能の深掘り解説

要件の中でも特に重要な3つの機能について、さらに詳しく見ていきましょう。

タイムスタンプ

タイムスタンプとは、電子データがある特定の時刻に存在し、それ以降改ざんされていないことを証明する「電子的な時刻証明」です。

しかし、多くの事業者が誤解しがちな点として、タイムスタンプは必ずしも必須ではありません。もし導入するシステムが、データの訂正・削除の履歴をすべて記録・確認できる機能を持っているか、あるいはそもそも訂正・削除ができない仕組みになっている場合、そのシステムのログ機能がタイムスタンプの代わりとなり、別途タイムスタンプを付与する必要はなくなります。

ヴァージョン管理

これは、データの「真実性の確保」における中核的な要件です。システム上でスキャンデータの訂正や削除が行われた場合に、その操作が行われる前のデータも保存され、「いつ、誰が、何を」変更したのかという履歴がすべて確認できる状態を指します。

この機能により、万が一の入力ミスも正しく修正でき、不正な改ざんを抑止することができます。

検索機能

税務調査などで特定の書類の提示を求められた際に、迅速に対応できるようにするための要件です。法律では、以下の3つの検索条件が定められています。

  • 取引年月日、取引金額、取引先を条件として検索できること
  • 日付または金額の範囲を指定して検索できること
  • 2つ以上の任意の項目を組み合わせて検索できること

ただし、ここにも重要な緩和措置があります。税務職員からデータのダウンロードを求められた際に、その要求に応じて一括でデータを提供できるようにしていれば、上記2と3の複雑な検索機能を備える必要はありません。

多くのクラウドシステムはこのダウンロード機能に対応しており、多くの中小企業にとっては大きな負担軽減となります。

導入で失敗しないための実践ロードマップ

スキャナ保存の導入は、計画的に進めることで失敗のリスクを大幅に減らすことができます。ここでは、具体的な5つのステップに分けて、実践的なロードマップを提示します。

ステップ1 対象書類の選定と社内ルールの策定

最初からすべての書類を電子化しようとすると、業務量が膨大になり、現場が混乱してしまいます。成功の秘訣はスモールスタートです。まずは、領収書や請求書など、発生頻度が高く、電子化のメリットを実感しやすい書類から始めることをお勧めします。

次に、スキャナ保存の運用方法を定めた「スキャナ保存規程」を作成します。この規程の整備は、単なる形式的なものではありません。

特に重要書類について、入力期間が最長「2か月+おおむね7営業日」まで延長される「業務処理サイクル方式」を採用するためには、この規程の策定と備え付けが必須条件となります。規程のサンプルは国税庁のウェブサイトで公開されているため、それを参考に自社の実情に合わせてカスタマイズすると良いでしょう。

ステップ2 機器の準備(スキャナ・スマホ)

スキャナ保存に使用する機器は、法律の要件を満たしている必要があります。

スキャナ・複合機

解像度200dpi以上、階調は24ビットカラー(重要書類の場合)という要件を満たす必要があります。現在オフィスで一般的に使用されている複合機の多くは、このスペックを十分に満たしているため、新たに高価な機器を購入する必要がないケースも多いでしょう。

スマートフォン

スマートフォンのカメラもスキャナとして利用可能です。ただし、その場合は画像が約388万画素以上であることが一つの目安となります。

近年のスマートフォンの多くはこの基準をクリアしていますが、撮影時には書類全体が収まり、影や歪み、ピンボケがない鮮明な画像を撮影するよう注意が必要です。

ステップ3 システムの選定と比較

スキャナ保存の要件を自力で管理するのは非常に困難です。そのため、要件に対応したシステムの導入が事実上必須となります。システムを選ぶ際には、以下のポイントを比較検討しましょう。

JIIMA認証の重要性

システム選定における最も重要な指標の一つが「JIIMA認証」です。これは、公益社団法人日本文書情報マネジメント協会(JIIMA)が、市販のソフトウェアやサービスが電子帳簿保存法の法的要件を満たしていることを審査・認証する制度です。

JIIMA認証を取得しているシステムを導入すれば、企業側で複雑な法的要件を一つひとつ確認する手間が省け、安心して運用を開始できます。

選定ポイント

JIIMA認証の有無に加え、以下の点も考慮して、自社に最適なシステムを選びましょう。

  • 既存の会計ソフトや基幹システムとの連携は可能か
  • 操作画面は直感的で、誰でも使いやすいか
  • セキュリティ対策(アクセス制限、暗号化など)は万全か
  • 導入時や法改正時のサポート体制は充実しているか

主要スキャナ保存対応システム比較

市場には多くの対応システムが存在しますが、ここでは代表的な3つのサービスを比較します。自社の規模やニーズに合ったシステムを選ぶ際の参考にしてください。

システム名特徴料金体系JIIMA認証こんな企業におすすめ
invox電子帳簿保存高精度なAI-OCRと、必要に応じてオペレーターによるデータ化も選択可能。多様な取り込み方法(メール、クラウド連携等)に対応し、圧倒的な低価格を実現。初期費用0円、月額1,980円(税抜)から。電子取引、スキャナ保存コストを最優先し、まずは手軽にスキャナ保存を始めたい中小企業や個人事業主。
バクラク電子帳簿保存シンプルで直感的な操作画面が特徴。高精度なAI-OCRが標準搭載されており、インボイス制度にも対応。無料で始められるプランも用意されている。無料プランあり。有料プランは月額9,800円(税抜)から。電子取引、スキャナ保存システム操作に不慣れな従業員が多いなど、とにかく簡単な操作性を重視する企業。
楽々クラウド電子帳簿保存サービス幅広い帳票に対応。承認ワークフロー機能や詳細な権限設定など、内部統制を強化する機能が充実。中堅・大企業での導入実績が豊富。ユーザーレビューでは低価格帯の言及もあるが、文書管理全体では高機能・高価格帯の傾向。個別見積もりが必要。電子取引、スキャナ保存厳格な文書管理フローや内部統制の構築を目的とする中堅〜大企業。

ステップ4 日々の業務フローの実行

システムとルールが整ったら、いよいよ日々の運用を開始します。基本的な業務フローは以下の通りです。

書類の受領

取引先から紙の請求書や領収書を受け取ります。

スキャン

社内規程で定められた担当者が、規定の設定(解像度、カラーなど)で書類をスキャンします。

システムへのアップロード

スキャンした画像データを、定められた入力期間内(例:早期入力方式なら約7営業日以内)にシステムへアップロードします。

データ入力

システムのOCR機能などを活用し、検索要件である「取引年月日」「取引金額」「取引先」を入力・確認します。

保存処理の完了

システムが自動でタイムスタンプを付与するか、訂正・削除履歴が残る形でデータが確定保存されます。

原本の廃棄

画像データの鮮明さや入力内容に誤りがないことを確認した後、紙の原本を廃棄します。

ステップ5 データの保管と管理

電子化したデータは、法律で定められた期間、適切に保管・管理する必要があります。

安全な保管場所

データは、自社のサーバーや信頼性の高いクラウドストレージなど、セキュリティが確保された場所に保管します。

バックアップ

システム障害や誤操作によるデータ消失を防ぐため、定期的にデータのバックアップを取得することが極めて重要です。

保存期間

法人の場合、原則としてその事業年度の確定申告書の提出期限の翌日から7年間の保存が義務付けられています。個人事業主の場合は、申告内容によって5年または7年間となります。

導入後の成功を確実にするための運用術と注意点

スキャナ保存は、導入して終わりではありません。継続的にルールを遵守し、業務に定着させていくための「運用」こそが、その成否を分けます。ここでは、導入後によくある課題とその対策、そしてコンプライアンスを維持するための日々の習慣について解説します。

よくある失敗例と、それを乗り越えるための対策

導入後に直面しがちな3つの典型的な失敗例と、その具体的な解決策を見ていきましょう。

課題1 入力期限を過ぎてしまう

経費精算の申請が遅れ、受領から2か月以上経過した領収書が提出されるケースは後を絶ちません。この場合、その領収書はスキャナ保存の要件を満たさないため、電子データとして保存することはできず、紙の原本を保管し続ける必要があります。

対策としては、まずは社内規程で定められた提出期限を従業員に徹底的に周知することが基本です。加えて、システムにリマインダー機能があれば活用し、期限が近づいていることを自動で通知する仕組みを構築すると効果的です。定期的に未処理の書類がないかを経理部門でチェックする体制も有効です。

課題2 画質が悪く、文字が読めない

スマートフォンで急いで撮影したため、画像がピンボケしていたり、影が映り込んで金額が読めなかったりするケースです。これは、保存要件の一つである「整然とした形式及び明瞭な状態」を満たしておらず、不備となります。

対策として、このような不備のあるデータは認められないため、原本を元に再スキャンするしかありません。原本を廃棄する前に、上長や経理担当者が画質をチェックするフローを業務に組み込むことが重要です。

また、撮影時の注意点(明るい場所で、真上から、影が入らないように等)をまとめた簡単なマニュアルを作成し、全従業員に配布することも有効な対策です。

課題3 紙と電子データが混在し、管理が煩雑化

「請求書はスキャナ保存するが、納品書は紙で保管する」といった中途半端な運用をしてしまい、かえって管理が複雑になるケースです。ある取引の関連書類を確認するために、システムとファイルキャビネットの両方を探さなければならず、業務効率が低下します。

対策は、導入計画の段階で、スキャナ保存の対象とする書類の範囲を明確に定義し、例外を極力作らないことが重要です。理想は、スキャナ保存データ(紙由来)と電子取引データ(デジタル由来)の両方を一元的に管理できるシステムを導入することです。これにより、検索性が統一され、管理の煩雑さを根本から解消できます。

コンプライアンスを維持するための日々の習慣

安定した運用を続けるためには、以下の3つの習慣を組織に取り入れることをお勧めします。

定期的な自己監査

四半期に一度など、定期的に運用状況をチェックする機会を設けましょう。ランダムに抽出したデータが要件通りに保存されているか、検索機能は正しく動作するか、入力期限は守られているかなどを確認し、問題があれば速やかに改善策を講じます。

法改正情報のキャッチアップ

電子帳簿保存法は、今後も改正される可能性があります。担当者を決め、国税庁のウェブサイトなどを定期的に確認し、最新の法令やガイドラインの変更点を把握する体制を整えましょう。法改正に合わせて、社内規程や業務フローを見直すことが重要です。

証跡管理の徹底

導入したシステムが、誰がいつ、どのような操作を行ったかのログ(証跡)を確実に記録していることを確認しましょう。この証跡は、税務調査の際に正しく運用していることを示す重要な証拠となります。

税務調査で慌てないための準備

税務調査が入った際、担当官は特定の取引に関する書類(契約書、請求書、領収書など)の提示を求めます。その際、スキャナ保存しているデータについては、以下の対応が求められます。

迅速なデータ検索と提示

求められた書類を、システムの検索機能を使って速やかに探し出し、ディスプレイの画面上に明瞭な状態で表示できなければなりません。

データのダウンロード提供

担当官から要求があった場合には、電子データを指定された形式でダウンロードし、提出できる状態にしておく必要があります。

調査で慌てないためには、日頃からシステムの操作に習熟し、実際に様々な条件で検索を試してみるなど、予行演習をしておくと良いでしょう。また、システムの操作マニュアルや、自社で定めたスキャナ保存規程といった関連書類も、いつでも提示できるよう整理しておくことが求められます。

まとめ

本記事では、2024年最新の情報を基に、スキャナ保存制度の全体像を解説しました。最後に、成功に向けた重要なポイントを再確認しましょう。

スキャナ保存は「任意」ですが、電子取引のデータ保存は「義務」です。まずは自社の義務である電子取引への対応ができているかを確認することが最優先です。

2024年の要件緩和により、導入のハードルは大きく下がりました。これまで二の足を踏んでいた企業にとって、今はペーパーレス化を始める絶好の機会です。

成功の鍵は、JIIMA認証システムを選び、明確な社内ルールを策定・遵守することにあります。信頼できるツールと、それを正しく使うための規律が、コンプライアンスと業務効率の両立を実現します。

スモールスタートで始め、徐々に対象を拡大していくのが現実的なアプローチです。一度にすべてを変えようとせず、まずは効果を実感しやすい書類から着手し、成功体験を積み重ねていきましょう。

スキャナ保存の導入は、単なる法対応やコスト削減の手段ではありません。それは、非効率な紙文化から脱却し、生産性を高め、従業員がより創造的な仕事に集中できる環境を整えるための戦略的な投資です。

この記事をきっかけに、あなたの会社がより強く、よりしなやかな組織へと進化するための一歩を踏み出すことを心から願っています。

この記事の投稿者:

hasegawa

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