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交通費精算の方法とは?経費申請の基本から電子帳簿保存法対応まで解説

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交通費精算

日々の営業活動や出張で発生する交通費の立替。月末に溜まった領収書を整理し、精算書を作成する作業は、多くのビジネスパーソンにとって悩みの種ではないでしょうか。この面倒な交通費精算が、より迅速に、正確に、そして手間なく完了するなら、業務はどれほど快適になるでしょう。

立て替えた費用が速やかに手元に戻り、金銭的な負担から解放される未来は、決して遠い話ではありません。会社全体で見れば、経費処理のコストが削減され、従業員の満足度も向上します。

本記事を読めば、交通費精算の基本ルールから、法改正への対応、最新テクノロジーを活用した効率化まで、そのすべてを網羅的に理解できます。

経費精算の全体像を把握することで、自信を持って、迅速かつ正確に業務を遂行できるようになります。経理の知識に自信がない方や、自社のルールが複雑だと感じている方でも問題ありません。

本記事では、専門用語もわかりやすく解説し、誰にでも再現可能なステップで説明を進めます。交通費精算の本質を理解し、スマートな業務プロセスを職場に実装するための一歩を、ここから踏み出しましょう。

目次

交通費精算の基本|正しい流れとルールを理解する

交通費精算は、申請する従業員と処理する経理担当者の連携によって成り立っています。それぞれの立場での基本的な手順と、必ず押さえておくべきルールを確認していきましょう。

申請者(従業員)のステップバイステップ

従業員が交通費を申請する際の一般的な流れは、いくつかのステップに分けられます。

まず、業務で利用した交通機関の料金を、従業員が一時的に立て替えて支払います。この際、領収書が発行される場合は、後々の証憑となるため必ず受け取り、保管しておくことが重要です。

次に、会社の指定するフォーマットに従い、交通費精算書を作成します。一般的に、申請日、氏名・部署名、利用年月日、訪問先、利用した交通機関、出発地と到着地(経路)、金額(片道・往復の別)、そして利用目的といった項目を正確に記入する必要があります。

最後に、作成した交通費精算書を直属の上司に提出し、内容の確認と承認を得ます。承認後、領収書があれば添付して経理部門へ提出するというのが一連の流れです。会社によっては、紙の書類ではなく電子承認システム上でこれらの手続きが完結する場合もあります。

経理担当者のチェックポイント

経理担当者は、提出された書類を専門的な観点から確認し、処理を進めます。

初めに、申請内容が正当な業務活動に基づいているかを精査します。訪問先や目的が事業に関連しているか、選択された経路が不自然でなく、経済的合理性があるかなどをチェックします。特に、目的地までの経路が複数考えられる場合、原則として最も経済的な「最安経路」で申請されているかを確認する点は重要なポイントです。

内容に問題がなければ、会計ソフトにデータを入力し、適切な勘定科目で仕訳処理を行います。この仕訳が正確に行われることで、会社の経費が正しく帳簿に記録されます。

最終ステップとして、承認された金額を従業員に支払います。支払い方法は会社によって異なり、現金での手渡し、給与口座への振り込み、あるいは翌月の給与への上乗せといった方法が一般的です。

領収書がない場合の電車・バス代の精算方法

電車やバスなどの公共交通機関では、特に交通系ICカードを利用した場合、一回ごとの領収書を受け取るのは現実的ではありません。このような領収書がないケースでは、代替手段として「交通費精算書」や「出金伝票」を作成することで精算が認められています。

この対応が法的に認められる背景には、消費税法上のルールが存在します。具体的には、支払額が税込3万円未満の取引については、請求書や領収書の保存がなくても、必要な事項が記載された帳簿への記録があれば仕入税額控除が認められるという特例があるためです。

日常的な交通費の多くはこの範囲に収まるため、利用記録を詳細に記した精算書や伝票が、経費の証憑として有効になります。

ただし、注意すべき点があります。法律上は3万円未満なら領収書が不要でも、社内ルールで少額でも領収書の提出を義務付けている企業は少なくありません。これは、不正申請を防止するための内部統制の一環として機能します。

例えば、領収書の発行が容易な新幹線の利用などでは、金額にかかわらず提出を求めるのが一般的です。したがって、まずは自社の経費精算規程を必ず確認し、ルールを遵守することが重要です。

交通費精算の重要原則

日々の交通費精算をスムーズに行うためには、いくつかの普遍的な原則を理解しておく必要があります。これらの原則は、ミスや不正を防ぎ、経理担当者との円滑なコミュニケーションを助ける基盤となります。

最安・最短ルートが基本

交通費の精算は、目的地までの「最も経済的で合理的な経路」、つまり最安ルートで計算するのが大原則です。乗換案内サービスなどで検索して表示される一般的なルートであれば、通常は問題ありません。

ただし、業務上の正当な理由があれば、最安ルートでなくても認められる場合があります。例えば、「アポイントの時間に間に合わせるために、料金は高いが移動時間が短い新幹線を利用した」といったケースが考えられます。

このような場合は、なぜそのルートを選択したのか、具体的な理由を精算書に明記しておくことで、承認者や経理担当者の理解を得やすくなり、承認がスムーズに進みます。

定期券の区間控除は必須

会社から通勤手当として定期券代の支給を受けている場合、その定期券が利用できる区間(定期区間)と、業務での移動経路が重なる部分は交通費として申請できません。その重複区間分の運賃は、申請額から控除(差し引く)する必要があります。

この定期区間控除は、手計算では非常に間違いやすく、また意図的な不正申請の温床にもなりやすいポイントです。申請者も承認者も、このルールを正しく理解し、徹底することが求められます。

この手作業の煩雑さこそが、後述する経費精算システムの導入を検討する大きな動機の一つとなっています。システムを導入すれば、あらかじめ登録した定期区間情報に基づき、控除額を自動で計算してくれるため、ミスや不正を根本から防ぐことが可能になります。

「交通費」と「通勤手当」の決定的な違い

「交通費」と「通勤手当」は混同されがちですが、会計上も税務上も全く異なる性質のものです。この二つを明確に区別することが、正しい経費精算の第一歩です。

交通費とは、営業先への訪問など、業務上の移動にかかる実費を指します。これは経費精算の対象となり、会計上は一般的に「旅費交通費」として処理されます。会社に支払い義務があるかどうかは、就業規則などの社内規定によって定められます。

一方、通勤手当は、従業員の自宅と会社の往復(通勤)にかかる費用を補助するために支給される手当です。これは福利厚生の一環であり、法律で会社に支給義務が定められているわけではありません。通勤手当は、主に所得税の非課税限度額との関連で重要になります。

勘定科目の正しい選択

交通費精算で使われる勘定科目は、多くの場合「旅費交通費」です。しかし、重要なのは「何に乗ったか」という手段ではなく、「何のために費用を使ったか」という目的で判断するという点です。

例えば、業務のための出張や営業先への移動にかかる費用は「旅費交通費」に分類されます。しかし、同じ移動費用でも、取引先との会食場所へ向かうために利用したタクシー代は「交際費」として計上するのが適切です。また、社員旅行で利用した貸切バス代などは「福利厚生費」として処理されます。

勘定科目を誤って申請すると、経理部門での差し戻しや修正の手間が発生し、精算プロセス全体の遅延につながります。どの勘定科目に該当するか判断に迷う場合は、自己判断で進めずに、事前に経理担当者に確認することが賢明です。

知らないと損をする交通費と税金の知識

知らないと損をする交通費と税金の知識

交通費精算は、所得税などの税金と密接に関わっています。特に「通勤手当」と「出張旅費」に関する税務上のルールは、従業員の手取り額や会社の節税に直接影響するため、正しく理解しておくことが不可欠です。

通勤手当の非課税限度額を理解する

会社が従業員に支給する通勤手当は給与の一部と見なされますが、一定の金額までは所得税が課されない「非課税」として扱われます。この非課税となる上限額は、国税庁によって通勤手段ごとに細かく定められています。限度額を超えて支給された部分は、通常の給与と同じく課税対象となります。

具体的な非課税限度額は以下の通りです。

通勤方法条件非課税限度額(月額)
公共交通機関(電車・バス等)1か月の経済的かつ合理的な運賃150,000円
マイカー・自転車等片道の通勤距離が2km未満全額課税
片道の通勤距離が2km以上10km未満4,200円
片道の通勤距離が10km以上15km未満7,100円
片道の通勤距離が15km以上25km未満12,900円
片道の通勤距離が25km以上35km未満18,700円
片道の通勤距離が35km以上45km未満24,400円
片道の通勤距離が45km以上55km未満28,000円
片道の通勤距離が55km以上31,600円
公共交通機関とマイカー等の併用上記の合計額150,000円

ここで重要な注意点があります。この非課税制度はあくまで所得税に関するものです。健康保険や厚生年金などの社会保険料を計算する際の基準となる標準報酬月額には、非課税分を含めた通勤手当の全額が含まれます。この違いを理解していないと、社会保険料の計算を誤る可能性があるため、特に給与計算を担当する部署では注意が必要です。

出張旅費規程の作成と節税メリット

「出張旅費規程」とは、出張に関する交通費や宿泊費、日当などのルールを定めた社内規程のことです。この規程の作成は法的な義務ではありませんが、作成することで会社と従業員の双方に大きなメリットが生まれます。

最大のメリットは、その節税効果にあります。出張旅費規程を整備し、その中で「日当(出張手当)」の支給を定めると、この日当は従業員の給与ではなく、出張に伴う実費弁償(経費の補填)と見なされます。

その結果、従業員側では受け取った日当が所得税の課税対象外となり、会社側では支払った日当を経費(損金)として計上でき、法人税の節税につながります。

日当は、出張中の食事代や細かな雑費を補う目的で支給されるものであり、社会通念上、妥当な金額であれば経費として認められます。この仕組みは、たとえ社長一人の会社であっても活用できる有効な節税策です。また、規程で交通費や宿泊費の上限を明確にすることで、経費の無駄遣いを防ぎ、精算プロセスの公平性と透明性を高める効果も期待できます。

2024年以降の必須対応|電子帳簿保存法と交通費精算

2022年1月に改正された「電子帳簿保存法(電帳法)」により、経費精算のあり方が大きく変わりました。特に2024年1月からは電子取引で授受したデータの電子保存が完全義務化され、交通費精算もこの法律への対応が不可欠となっています。

なぜ交通費精算が電帳法の対象になるのか

電帳法で特に重要なのが「電子取引」に関するルールです。電子取引とは、請求書や領収書といった取引情報を電子データでやり取りすること全般を指します。この電子取引で受け取ったデータは、紙に印刷して保存するのではなく、受け取った電子データのまま保存しなければならないと義務付けられました。

交通費精算においては、Webサイトで予約した航空券や新幹線のPDF領収書、経費精算システムを通じて申請・承認されたデータ、そしてモバイルSuicaなどのアプリからダウンロードした利用履歴データなどが電子取引に該当します。これらのデータは、法律の要件を満たす形で電子的に保存する必要があります。

ICカード履歴の正しい保存方法

交通系ICカードの利用履歴は、その取得方法によって電帳法上の扱いが異なります。

モバイルSuica/PASMOの場合

スマートフォンアプリや会員サイトから利用履歴をダウンロードした場合、そのデータ(PDFやCSVなど)は「電子取引」に該当します。したがって、その電子データを後述する保存要件を満たした上で、データのまま保存する義務があります。

カード型のSuica/PASMOの場合

駅の券売機などで利用履歴を紙に印字した場合、その紙は「紙の書類」として扱われます。これをスキャンして電子データとして保存する場合は「スキャナ保存」のルールに従う必要があります。もちろん、従来通り紙のままファイリングして保存することも可能です。

この法改正は、ICカードと連携して利用履歴を自動で取得し、電帳法の要件に沿って保存できる経費精算システムの価値を飛躍的に高めました。法律への準拠というコンプライアンス上の課題が、テクノロジー導入の強力な推進力となっているのです。

電子領収書・経費精算システムのデータ保存要件

電子データを保存する際には、主に「真実性の確保」と「可視性の確保」という2つの要件を満たす必要があります。

真実性の確保とは、保存されたデータが改ざんされていないことを証明するための要件です。これには、訂正や削除の履歴が残るシステムを利用するか、タイムスタンプを付与するなどの措置が求められます。

一方、可視性の確保とは、税務調査などの際に、必要なデータをすぐに見つけ出せる状態にしておくための要件です。具体的には、「取引年月日」「取引金額」「取引先」の3項目で検索できる機能を備えることなどが求められます。これらの要件を自力で満たすのは非常に手間がかかるため、多くの企業では電帳法に対応した経費精算システムを導入し、コンプライアンスの負担を軽減しています。

経費精算を劇的に効率化するテクノロジー

経費精算を劇的に効率化するテクノロジー

手作業による交通費精算は、時間と手間がかかるだけでなく、計算ミスや不正のリスクも伴います。こうした旧来の課題を解決するのが、交通費精算に特化したアプリケーションや経費精算システムです。

交通費精算アプリ・システムの導入メリット

経費精算システムを導入することで、企業は多岐にわたるメリットを享受できます。

第一に、業務効率が格段に向上します。従業員はスマートフォンでICカードを読み取ったり、受け取った領収書を撮影したりするだけで申請データが作成でき、手入力の煩わしさから解放されます。

第二に、人為的な計算ミスが削減されます。交通費の自動計算はもちろんのこと、特に間違いやすい定期区間控除もシステムが自動で行うため、精算の正確性が担保されます。

第三に、ペーパーレス化が推進されます。申請から承認、保管までの一連のワークフローがシステム上で完結するため、紙の書類を大幅に削減できます。これにより、書類の保管スペースや管理コストの削減にも直接的につながります。

そして第四に、コンプライアンスが強化されます。電子帳簿保存法に準拠したデータ保存が自動で行われるため、法対応に関する担当者の負担が大幅に軽減されます。

主要な経費精算システムの機能比較

経費精算システムを選ぶ際には、自社の課題解決に繋がる機能が搭載されているかを確認することが重要です。

  • ICカード・クレジットカード連携
    ICカードの利用履歴やカードの利用明細を自動で取り込み、申請データを作成する機能
  • 乗換案内サービス連携
    「駅すぱあと」や「Yahoo!路線情報」などと連携し、経路を検索するだけで運賃を自動で入力する機能
  • OCR(光学的文字認識)機能
    スマートフォンで撮影した領収書をAI-OCRが読み取り、日付や金額を自動でデータ化する機能
  • 会計ソフト連携
    承認された経費データを会計ソフトに自動で連携させ、仕訳作業を効率化する機能

市場には「マネーフォワード クラウド経費」「楽楽精算」「Concur Expense」「freee会計」など、多様な特徴を持つシステムが存在します。それぞれの強みを比較検討することが大切です。

自社に合ったシステムの選び方

最適なシステムは、企業の規模や解決したい課題によって異なります。いくつかの観点から自社に合ったシステムを選びましょう。

クラウド型かオンプレミス型か

現在の主流は、初期費用を抑えられ、インターネット環境があればどこからでも利用できるクラウド型(SaaS)です。特に中小企業を中心に広く普及しています。一方、自社のサーバーにシステムを構築するオンプレミス型は、カスタマイズの自由度が高い反面、導入・維持コストが高額になる傾向があります。

企業の規模と内部統制の要件

従業員数が多く、複雑な承認フローや厳格な内部統制が求められる大企業は、カスタマイズ性が高く多機能なシステム(例: Concur Expense)が適しています。

一方で、中小企業やスタートアップでは、基本的な機能が揃い、コストパフォーマンスに優れたシステム(例: マネーフォワード クラウド経費)が選ばれることが多いです。自社の課題(例: 交通費申請の手間を減らしたい、出張手配全体を効率化したい)を明確にし、それに合致した機能を持つシステムを選ぶことが成功の鍵となります。

会社の資産を守る|交通費の不正申請を防止する体制づくり

交通費精算における不正は、会社の資産を損なうだけでなく、従業員間の不公平感や職場全体のモラルの低下を招く深刻な問題です。不正を未然に防ぐためには、性善説に頼るのではなく、仕組みとして対策を講じることが重要です。

よくある不正の手口

交通費の不正申請には、いくつかの典型的な手口が存在します。

  • カラ出張・カラ出勤
    実際には行っていない出張や移動を申請する
  • 水増し請求
    実際にかかった費用よりも高い金額を申請する
  • 差額受給
    申請した高額なルートとは別の安いルートで移動し、差額を着服する
  • 二重申請
    同じ領収書や移動内容で、複数回にわたって申請する
  • 定期区間の未控除
    通勤で利用している定期区間を控除せずに申請する

特に定期区間の未控除は、意図的でない場合も多いですが、最も発生しやすい不正の一つとして注意が必要です。

不正を防ぐための具体的な対策

不正を効果的に防止するためには、ルール、証憑、システム、監査といった多角的なアプローチが求められます。

明確なルールの設定と周知徹底

最も基本的な対策は、交通費に関する社内ルール(経費精算規程や出張旅費規程)を明確に定め、全従業員に周知徹底することです。利用可能な交通手段、上限金額、申請方法、そして不正が発覚した場合の罰則などを明記します。ルールが曖昧であることが、不正の温床となることを認識すべきです。

証憑書類の提出義務化

金額の大小にかかわらず、領収書やICカードの利用履歴など、客観的な証拠となる書類の提出を義務化します。また、定期券のコピーを年に一度提出させることも、申請されている住所や通勤経路の正当性を確認する上で有効な手段です。

システムによる統制

経費精算システムを導入することは、非常に効果的な不正防止策となります。システムには、重複申請を検知するアラート機能、最安経路の自動表示機能、定期区間の自動控除機能などが備わっており、人為的なミスや意図的な不正が入り込む余地を大幅に減らすことができます。

定期的な監査の実施

申請された経費精算の内容を定期的に監査し、その事実を社内に公表することも重要です。特定の部署や個人を対象にランダムサンプリングで詳細なチェックを行うなど、「会社はしっかりと見ている」という意識を醸成することが、不正に対する強力な抑止力となります。

フリーランス・個人事業主における交通費の経費計上

フリーランスや個人事業主も、事業活動に関連する交通費は経費として計上できます。ただし、会社員とは異なる、特有の注意点が存在します。

業務とプライベートの切り分け(家事按分)

フリーランスや個人事業主の場合、経費として認められるのは事業に直接関連する移動のみです。プライベートな移動と業務上の移動が混在する場合は、両者を明確に区別し、事業に関連する部分だけを経費として計上しなければなりません。

特に、自家用車を業務と私用の両方で使っている場合は、その費用を合理的な基準で分ける「家事按分」という作業が必要です。例えば、年間の総走行距離のうち、事業で利用した距離の割合を算出し、その割合に応じてガソリン代や駐車場代、自動車税などを按分して経費に計上します。

請求書への記載方法と源泉徴収の注意点

フリーランスがクライアントに交通費を請求する方法は、税務上の扱いに大きな影響を与えます。

報酬に含めて請求する場合

交通費を明確に区別せず、業務委託料などの「報酬」に合算して請求すると、その合計額全体が源泉徴収の対象となる可能性があります。クライアントが源泉徴収義務者である場合、報酬から所得税が天引きされるため、結果的に手取り額が減少してしまいます。

立替金として別途請求する場合

契約書であらかじめ「交通費は実費精算」と取り決め、請求書で報酬とは別に「立替金」として交通費を明記し、領収書を添付して請求する方法が一般的です。この場合、交通費はクライアントから預かったお金を立て替えただけと見なされ、報酬には含まれません。

そのため、源泉徴-収の対象外となり、立て替えた交通費を全額そのまま受け取ることができます。どちらの方法を取るかは、後のトラブルを避けるためにも、クライアントとの契約時に明確にしておくことが極めて重要です。

まとめ 

交通費精算は、単なる事務作業ではありません。企業のコンプライアンス、コスト管理、そして従業員の生産性に直結する重要な業務プロセスです。

まず、公平で透明性の高い交通費精算の第一歩は、出張旅費規程などの明確な社内ルールを整備し、全従業員に周知することです。これがすべての土台となります。

次に、2024年から本格化した電子帳簿保存法への対応は、もはや避けて通れません。ICカード履歴や電子領収書の正しい保存方法を理解し、組織として実践していく必要があります。

また、手作業の限界を超える精度、効率、コンプライアンスを同時に実現するためには、経費精算システムの導入が最も効果的で現実的な解決策と言えるでしょう。

最後に、通勤手当の非課税制度や日当の節税効果など、税務に関する正しい知識は、従業員と会社双方に経済的な利益をもたらします。面倒で複雑に思える交通費精算も、その仕組みを正しく理解し、適切なツールを活用することで、驚くほどスマートで円滑な業務に変えることが可能です。この記事があなたの会社の業務改善の一助となれば幸いです。

この記事の投稿者:

hasegawa

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