個人事業を営む上で、備品の購入や商品の仕入れなど、日々の支払いをどうするかは大きな課題です。支払いに間に合うかどうか心配で、頭を悩ませている方も多いでしょう。資金繰りを改善するためには、経費の削減や資産の売却、融資による資金調達などの方法があります。今回は、個人事業主が利用できる具体的な資金繰りの方法について詳しく紹介します。
目次
個人事業主の資金練りとは
個人事業主の資金繰りとは、事業における収入や支出を把握し、資金を適切に調整することを指します。
事業を運営する上では、オフィスの家賃や光熱費・商品の仕入れなど、さまざまな支払いを行うことになります。それらの支払いが問題なく行えるよう、収支のバランスを見ながら過不足を調整することが、安定して事業を営むために重要とされています。
なお、資金繰りで指す「資金」とは、現金や銀行預金など、すぐに支払いに回せるお金を指します。
個人事業主が資金を調達する必要がある際のシチュエーション
開業前から開業後まで、個人事業主はさまざまな場面で資金を調達する可能性があります。資金調達を行う具体的なシチュエーションについて見ていきましょう。
開業する前
事業内容によっても異なりますが、個人事業主が開業するときはさまざまな設備や物品を購入する可能性があります。開業時に支払うものの例として以下のようなものが挙げられます。
・パソコン
・デスクや椅子
・文房具
・車
・オフィスや店舗にかかる初期費用
十分な自己資金があれば問題ありませんが、自己資金の額によっては、開業時に必要な資金を自ら調達することになるでしょう。
開業後に軌道に乗るまでの期間
開業してからすぐに事業が軌道に乗るとは限りません。しばらくの間は十分な利益が出ないことも想定し、数ヶ月分の生活費を用意しておくことが重要です。
また、開業直後は、商品やサービスを知ってもらうために広告費を多めにかけることがあります。チラシの作成やWeb広告の出稿など、さまざまな方法で事業を宣伝します。開業初期は、十分な資金を調達し、予算内に多めの広告費を組み込むことを検討すると良いでしょう。
事業の拡大
開業後、事業を拡大したり、新たな事業を始めたりする場合には、新たな資金調達が必要となる可能性があります。例えば、事業拡大のために商品数を増やすための仕入れに多くの資金が必要となるなど、さまざまなタイミングで資金が必要となるでしょう。
しっかりと資金計画を立て、必要なタイミングで適切な資金調達方法を選ぶことが重要です。
個人事業主の資金練り改善案
個人事業主が資金繰りを改善するためには、収支を見直したり、新たに資金を調達したりといった多様な方法が考えられます。具体的な改善案について見ていきましょう。
資産を売却する
自身の資産で使っていないものがあれば、売却して現金化します。以下のようなものがないかどうか考えてみましょう。
・車
・不動産
・売れ残っている在庫
・株や投資信託
車や不動産は売却することで資金を調達できるだけではなく、メンテナンスにかかる費用や自動車税・固定資産税といった今後の支出を削減できます。もし使っていないものがあれば、早めに売却を検討することで、今後の経費を削減できるかもしれません。
経費を削減する
以下をはじめとする経費を削減することで、収支のバランスが改善されることがあります。
・通信費
・家賃
・水道光熱費
・交通費
・消耗品費
・交際費
例えば、利用している通信会社の契約を見直し、より安く契約できるプランがないかどうか探してみるといった方法があります。現在オフィスや店舗として契約している賃貸の家賃が高ければ、少し安い家賃の場所がないか探してみます。また、取引先との打ち合わせはできるだけオンラインで済ませることで、交通費を削減するといった方法も考えられるでしょう。
これらの費用をいくら払っているのか確認し、削減できるところがあれば削減します。特に、通信費や家賃といった固定費は優先してチェックしたいポイントです。
日本政策金融公庫から借りる
日本政策金融公庫とは、中小企業・個人事業主などを支援することを目的とした政府出資の金融機関です。
日本政策金融公庫の融資は、一般の銀行と比べてやや低金利で借りられる点にメリットがあります。担保の有無などにより基準金利は以下のように異なります。
ケース | 基準利率 |
無担保で税務申告を2期終えている場合 | 2.20%~3.40% |
無担保で税務申告を2期終えていない場合 | 2.30%~3.50% |
有担保の場合 | 1.20%~3.00% |
このほかにも、事業主の年齢や経歴・事業内容などにより、上記よりも安い「特別利率」で融資を受けられるケースがあります。
日本政策金融公庫の融資は審査が比較的厳しい分、信頼性があります。日本政策金融公庫で融資を受けられた実績があれば、他の金融機関で融資を受ける際もプラスに捉えられる傾向にあります。
地方自治体の制度融資を利用する
都道府県や市町村といった各自治体は、中小企業や個人事業主向けの「制度融資」を設けています。
制度融資とは、利用者が地方自治体に申請をして承認されれば、信用保証協会の保証を得て、金融機関が融資を実行する仕組みです。地方自治体・信用保証協会・金融機関の3つが連携して融資を行うことで、より円滑に資金調達を行うことを目指します。
なお、融資の仕組みや対象者は各自治体によって異なるため、詳細は自分の住んでいる地方自治体のサイトなどをご確認ください。
参照:東京都中小企業制度融資
銀行融資を利用する
銀行融資は、一般的に低金利で提供されるため、資金調達の際に有利です。具体的な金利は個人の信用力や融資の内容により異なりますが、特に低いもので2%程度のプランを提供している銀行もあります。
しかし、銀行融資を受けるためには、決算書、事業計画書、資金繰り表など、さまざまな書類の提出が必要で、準備から実際に資金が振り込まれるまでに時間がかかることがあります。さらに、通常は担当者との面談があり、事業内容や資金の使用目的について説明する必要があります。
したがって、銀行融資を受ける際は、審査に備え、時間に余裕を持ってしっかりと準備することが重要です。
ビジネスローンを利用する
ビジネスローンとは、事業資金を調達するためのさまざまな融資を指します。銀行はもちろん、クレジットカード会社や消費者金融などが提供しており、審査内容や限度額などの仕組みは提供機関によって異なります。
ビジネスローンは審査に時間がかからないため、1週間程度と早めに資金を調達できることが一般的です。早いものだと即日お金が振り込まれるものもあります。
銀行の融資を受けるためには、原則として担保や保証人が必要ですが、ビジネスローンは無担保・保証人なしで申し込みができるものもあります。その反面、公的機関や銀行の融資と比べて金利は高くなります。
助成金や補助金の制度を利用する
国や地方自治体が定めている支援制度を利用して、資金繰りの改善を目指す方法です。店舗やオフィスが対象の地域内にあるなど、利用する制度によって条件が定められています。
例えば、東京都江東区の「江東区エネルギー価格高騰対策補助金」は、エネルギー関連費(水道光熱費・燃料費)が年間10万円以上かかっている事業者を対象に補助金を交付する制度です。近年は水道光熱費や燃料費が高騰していることから、さまざまな地域でこのような支援制度が設けられています。
自治体のホームページなどを確認し、自身の事業に適した制度がないかどうかチェックしてみましょう。制度の対象者であるかどうか自治体が確認するため、入金までに時間がかかります。早期に資金が振り込まれるわけではない点に注意が必要です。
売掛金の早期回収
資金繰りを改善する上では、売上は早く回収し、支払いはできるだけ遅らせることが有効です。したがって、売掛金はなるべく早期に回収することを目指します。期日までに取引先からの入金がなかった場合は、早めに連絡をして状況を確認するように心がけましょう。
また、既存の取引で売掛金の振り込みの期日が遅いものがあれば、期日を早めてもらえないかどうか交渉することも検討します。入金のタイミングが支払いのタイミングより早ければ、資金繰りは楽になるでしょう。
ファクタリング
ファクタリングとは、売掛債権をファクタリング会社に売却することで、債権を早期に現金化する方法です。ファクタリング会社に手数料を差し引かれるため、本来の売掛債権の額よりも手元に残る額が少なくなります。しかし、早めに資金を調達することで資金繰り改善のきっかけになる可能性があります。
ファクタリングは融資や借入ではないため、利息を気にしながら毎月返済する必要がありません。また、一般的には審査にかかる期間が短く、スピーディに資金を調達しやすい点が特徴と言えます。
クラウドファンディング
クラウドファンディングは「この取り組みを応援したい」と思う支援者を募り、出資してもらうためのサービスです。
支援した額に応じて商品やグッズなどのリターンがある購入型クラウドファンディングや、そのようなリターンが発生しない寄付型クラウドファンディングなど、複数の種類があります。どれが自分の事業に適しているかどうかを検討し、選択するといいでしょう。
クラウドファンディングに挑戦するためには、自らの活動を知ってもらうためにSNSなどで情報を発信することが一般的です。また、たくさんの人に支援してもらうために「この取り組みを応援したい」「ぜひ商品化してほしい」と思ってもらえるような内容であることも重要と言えるでしょう。
クレジットカードを利用する
クレジットカードは買い物をした後、1ヶ月程度でその代金が引き落とされます。支払いを後ろ倒しにすることで、手元にお金が残る期間が長くなり、各種支払いにそのお金を充てられるでしょう。支払いに余裕を持たせることで、資金繰りが改善する可能性があります。
高額の商品を購入する際は分割払いに設定し、支払いの負担を分散することもできます。分割払いは手数料はかかることが一般的であるため、支払うトータルの金額が増える点には注意しましょう。
クレジットカードの利用で貯まったポイントは、カードの付帯サービスの内容によっても異なりますが、次の請求額を減らしたり、欲しい商品と交換したりすることが可能です。
法人向けカードの決済なら「INVOYカード払い」
INVOYカード払いは、請求書の支払いを最大60日間後ろ倒しにできる事業者向けのサービスです。「資金繰りに頭を悩ませている」「事業拡大のために一時的に資金が必要になった」など、さまざまな悩みをお持ちの方にお使いいただけます。
まとめ
個人事業主が資金繰りを改善するためにはさまざまな方法があります。経費の削減や不良在庫の売却などで手元にある現金を増やすのは、地道ですが大切なことです。時間がなく一気に状況を改善させたいのであれば、融資やファクタリングなどの方法によって資金を調達することも検討しましょう。
また、クレジットカードを利用して支払いを先延ばしにする方法もあります。融資による資金調達よりも手軽に取り組めることが多いため、いざという時の選択肢として覚えておくことをおすすめします。
商品など仕入れにはクレジットカードが便利!メリットや注意点を…
ビジネスで商品を仕入れる際は、現金払いや銀行振込だけではなく、クレジットカードによって決済を行うケー…