個人事業主として開業すると、1年間の所得に応じて確定申告を行う必要があります。本記事では、確定申告が必要な個人事業主の条件や、確定申告の具体的な流れについて、わかりやすく解説します。
目次
確定申告とは何か?
確定申告とは、1年間で発生した売上と費用をもとに年間の所得を計算し、それに対する税金を明らかにするために行う手続きを指します。1月1日~12月31日に発生した所得を、翌年の3月15日までに確定申告書に取りまとめて、税務署に提出する必要があります。
確定申告には、節税効果が高い青色申告と、帳簿の作成が簡単な白色申告の2種類があります。さらに青色申告の場合は、申告方法によって控除の金額が10万円・55万円・65万円と細分化されます。
参照:No.2070 青色申告制度 | 国税庁
個人事業主の確定申告が必要なケースとは?
個人事業主の場合、1年間の所得が48万円を超えると確定申告する必要があります。
所得税の金額を計算する上で、課税対象となる所得金額から差し引くことができる「基礎控除」と呼ばれる仕組みがあります。年間の所得が2,400万円以下であれば、年間の所得金額から差し引く控除額は48万円です。年間の所得が48万円以下の場合は課税対象となる所得が残らないため、確定申告をする必要はありません。
また、基礎控除以外にも社会保険料控除をはじめとするさまざまな控除があります。これらの控除を差し引いた結果、課税対象となる所得がなく、税金が発生しないために確定申告をする必要がないケースもあります。
参照:No.1199 基礎控除|国税庁
No.1100 所得控除のあらまし|国税庁
個人事業主の確定申告が不要なケースとは?
年間の所得が48万円以下の個人事業主は、確定申告の必要がありません。基礎控除額の48万円を差し引くことで、課税対象となる所得が残らないためです。
この年間の所得とは、個人事業主としての売上ではなく、売上から費用を差し引いた金額です。例えば、売上が100万円、経費が70万円の場合には、所得が30万円となるため確定申告は不要です。
なお、制度上確定申告が不要であっても、源泉徴収されて税金を多く支払いすぎている場合などは、確定申告をすることで払いすぎた税金が還付されることがあります。
青色申告と白色申告は何が違う?
確定申告は青色申告と白色申告のいずれかを選択して行います。
青色申告は、最大65万円の青色申告特別控除を適用することで、大きな節税効果が狙える申告方法です。その代わり、10万円の控除以外は借方・貸方といった簿記のルールに基づいて経理業務を行い、決算書を作成する必要があります。個人事業主としての売上が多いなど、本格的に事業を営んでいる方が採用する方法です。
青色申告をする場合、申告する年の3月15日までに「所得税の青色申告承認申請書」を税務署に提出する必要があります。この書類を提出しないと、自動的に白色申告での確定申告となります。
白色申告とは、節税効果が低い代わりに、帳簿の作成が簡単な申告方法です。簿記のルールを知らなくても、家計簿のような感覚で帳簿を作成することもできます。青色申告に比べて簡単に確定申告が行えるため、事業の規模が小さい方におすすめの方法です。
参照:No.2070 青色申告制度|国税庁
個人事業主が確定申告を実施する手順
本項では、個人事業主が確定申告をする手順を以下の3つのステップに分けて解説します。
・開業届、青色申告承認申請書の提出
・確定申告書の作成
・確定申告書の提出
開業届・青色申告承認申請書の提出
個人事業主として開業するためには「開業届(個人事業の開業届出・廃業届出等手続)」と呼ばれる書類を税務署に提出する必要があります。提出期限は開業した日から1ヶ月以内です。
青色申告を行う方は、申告をしようとする年の3月15日までに「所得税の青色申告承認申請手続」を提出します。提出先は開業届と同じ税務署であるため、同時に提出しても構いません。なお、その年の1月16日以降に新たに開業をした場合には、開業した日から2ヶ月以内に提出します。
どちらの種類も、国税庁のホームページでダウンロードできます。税務署が近くにあるという方は、税務署に直接行って書類を入手しても構いません。
参照:個人事業の開業届出・廃業届出等手続|国税庁
A1-9所得税の青色申告承認申請手続|国税庁
確定申告書の作成
確定申告書を作成するためには、まず日頃のお金の流れを把握するための領収書やレシート・請求書などの書類を集めます。会計ソフトなどで金額を集計して、売上や各費用がいくらであったのか把握しましょう。事業の規模が大きいと確定申告の期限前にまとめて行うのが大変なため、月に1回など定期的にこの作業を行うことをおすすめします。
1年が終わると、これまでに入力した情報を元に確定申告書を作成します。確定申告に対応した会計ソフトを使っている場合は、会計ソフトから自動的に出力することが可能です。
確定申告書の作成時は、受ける控除の種類などによっても必要な情報が異なります。必要な書類が揃っていないといった事態を避けるためにも、早めに作成するようにしましょう。
確定申告書の提出
確定申告書や必要な書類を揃えたあとは、以下のいずれかの方法によって税務署に提出します。
・e-Taxを利用する
・税務署に持参する
・税務署に郵送する
・税務署の時間外収受箱に投函する
税務署の開庁時間は、祝日を除く月曜日から金曜日の8時30分〜17時までです。それ以外の時間であっても、税務署の時間外収受箱に投函することも可能です。
また、65万円の青色申告特別控除を受けるためにはe-Taxを利用して提出することが要件として挙げられています。複式簿記によって帳簿を作成している場合でも、e-Tax以外の方法によって提出した場合は55万円の控除となる点に注意しましょう。
参照:【税務署の開庁時間】 | 国税庁
No.2072 青色申告特別控除 | 国税庁
関連リンク:確定申告のやり方を流れで解説!対象者や必要書類から納税までわかりやすくご紹介
個人事業主の確定申告に準備が必要な書類
個人事業主の確定申告では、青色申告・白色申告いずれも共通で確定申告書を作成し、提出します。その他の書類については、申告方法や事業の状況によって異なります。
本項では、確定申告に必要な書類を申告方法別に紹介します。
参照:確定申告書等の様式・手引き等(令和5年分の所得税及び復興特別所得税の確定申告分)|国税庁
関連リンク:確定申告に必要な書類とは?ケース別に準備する書類を分かりやすく解説!
青色申告の場合
青色申告で必要な書類は以下の通りです。
・確定申告書
・青色申告決算書
・控除に関する書類(控除を行う場合)
・マイナンバーに関する書類
青色申告決算書とは、確定申告を青色申告で行うために必要な書類で、損益計算書や貸借対照表が含まれます。
また、2019年の4月1日以降に提出する申告書について、給与所得の源泉徴収票の添付が不要になりました。従って、本業の勤務先がある方や、アルバイトなどの副業をしている方であっても、確定申告時に源泉徴収票を提出する必要はありません。
参照:国税関係手続が簡素化されました|国税庁
白色申告の場合
白色申告で必要な書類は以下の通りです。
・確定申告書
・収支内訳書
・控除に関する書類(控除を行う場合)
・マイナンバーに関する書類
確定申告書は青色申告と同様のものを使います。収支内訳書とは、青色申告で言う青色申告決算書のような意味合いのある書類です。1年間の収支について、確定申告書よりも詳しく記載するために使います。
個人事業主が確定申告を実施する際の注意点
個人事業主の確定申告と言っても、個人の状況は人によってさまざまであり、作業を進めるうちに「こんな場合はどうするのだろう」と疑問を感じるケースも多くあります。ここでは、確定申告で疑問に感じやすいポイントや、その注意点について紹介します。
事業に関連する経費だけ計上する
経費として認められるのは事業に関する支出だけですが、個人事業主は事業とプライベートの支出を区別しにくい傾向があります。事業所得や雑所得では、必要経費として計上できるのは以下の支出であると定められています。
・収入を得るために使った費用
・その年に生じた販売費、一般管理費など
販売費とは商品の提供に関して生じる経費であり、広告宣伝費や商品の発送費などが例として挙げられます。それに対して一般管理費とは、事業を運営するために必要な家賃や水道光熱費、消耗品費などがあります。
個人事業主で自宅とオフィスを兼ねている場合、家事按分と呼ばれる方法を使うことによって家賃や水道光熱費などの金額の一部を計上できることがあります。
参照:No.2210 やさしい必要経費の知識|国税庁
給与所得がある場合は確定申告書に記入する
会社員が副業として個人事業を営んでいたり、個人事業主が副業でアルバイトをしていたりといったケースもあるでしょう。
給与所得を受け取っている個人事業主は、確定申告書にその年の給与所得について記載する必要があります。確定申告書の第一表の「収入金額等」の項目に給与所得を記入しましょう。
また、第二表には勤務先の名称や住所、収入金額・源泉所得税額を記入する欄があります。勤務先から受け取る源泉徴収票でそれらの情報を確認できますので、受領後は大切に保管するようにしましょう。
参照:確定申告書等の様式・手引き等(令和5年分の所得税及び復興特別所得税の確定申告分)|国税庁
確定申告は節税に効果的
確定申告には青色申告と白色申告の2種類の方法があり、青色申告では最大65万円の控除を受けることが可能です。適用される要件や必要書類は異なるため、自身の状況に応じて手続き・申告を行いましょう。
また、源泉徴収によって所得税を払いすぎている場合には、確定申告をすることで還付金を受け取れる可能性があります。確定申告の義務がなくても、還付金を受け取れる可能性があるという方は申告を行うといいでしょう。
Q&A
個人事業主の確定申告でよくある質問をQ&A形式で紹介します。
確定申告が必要な個人事業主は?
1月1日〜12月31日の1年間の所得が48万円を超えた場合、確定申告する必要があります。
青色申告と白色申告どちらがいい?
青色申告の方が控除できる金額が多く、節税効果を期待できます。複雑な経理業務をすることが難しいという場合や、事業の規模が小さいという場合は、白色申告でも構いません。
給与所得のある個人事業主はどうすればいい?
確定申告書に収入金額や源泉徴収額などの情報を記載します。勤務先から受け取った源泉徴収票を元に記入しましょう。
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個人事業主は確定申告を行うため、売上が生じた時や、事業に必要な物品などを購入した時などには、会計ソフトなどを使ってお金の動きを記録しておく必要があります。また、請求書や領収書といった書類を発行し、保管することも求められます。
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まとめ
1年間の取得が48万円を超えるなどの条件に該当した個人事業主は、翌年の3月15日までに確定申告書を税務署に提出する必要があります。
確定申告には2種類あり、選択する方法や控除の種類に応じて手続きの方法は異なりますが、経理業務を行って確定申告書を作成・提出するといった流れは同じです。確定申告の方法や仕組みについて理解することで、申告を適切に済ませましょう。
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