会計の基礎知識

受取利息の仕訳はこれで完璧!法人・個人事業主別の処理方法を解説

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受取利息 仕訳

受取利息の仕訳で、もう迷う必要はありません。この記事を読めば、預金利息や貸付金利息を正確に処理し、自信を持って決算を迎えられるようになります。

日々の記帳から決算整理まで、受取利息に関する会計処理は、企業の財務状況を正しく把握し、適切な税務申告を行うための基礎です。しかし、その処理方法は法人と個人事業主で大きく異なり、源泉徴収や消費税の扱いなど、注意すべき点が多く存在します。

法人と個人事業主では、会計処理の方法が根本的に異なります。本記事では、税務上のルールに基づいた具体的な仕訳例を多数用いて、明日からすぐに使える実践的な知識を提供します。

この記事を最後まで読めば、受取利息の会計処理に関する全体像を体系的に理解し、あらゆるケースに迷わず対応できるスキルが身につきます。

会計初心者の方でも理解できるよう、専門用語は一つひとつ丁寧に解説します。

総額主義と純額主義の選択、源泉徴収税額の計算、消費税の取り扱い、そして決算時に必要な未収利息の計上まで、あなたの疑問をすべて解消します。正しい知識を身につけ、経理業務の正確性と効率を飛躍的に向上させましょう。

受取利息の基本を理解する

仕訳の具体的な方法に入る前に、まずは「受取利息」という勘定科目の基本的な性質と、どのような場面で使われるのかを正確に理解することが重要です。この基礎知識が、後の応用的な処理を理解する上での土台となります。

受取利息とは?営業外収益としての位置づけ

受取利息とは、預貯金や貸付金、有価証券などから生じる利息収益を記録するための勘定科目です。会計上、企業の収益は「営業収益」と「営業外収益」に大別されます。

営業収益は、企業の本業、すなわち定款に定められた主たる事業活動から得られる収益を指します。例えば、製造業であれば製品の売上、小売業であれば商品の売上がこれにあたります。

一方、営業外収益は、企業の本業以外の活動から経常的に発生する収益です。受取利息は、企業の財務活動(余剰資金の運用など)から生じる収益であるため、原則としてこの営業外収益に分類されます。

損益計算書で受取利息を営業外収益として区分表示することにより、投資家や債権者などの利害関係者は、その企業が本業でどれだけの利益を上げているのか、そして財務活動でどれだけの収益を得ているのかを明確に区別して把握できます。

ただし、銀行や信用金庫といった金融機関にとっては、貸付による利息の受け取りが本業そのものです。そのため、金融機関では受取利息を「営業収益」として計上します。このように、勘定科目の分類は企業の事業内容によって変わる場合があることを覚えておきましょう。

利息が発生する主なケース

受取利息として処理される収益には、主に以下のようなものがあります。

預貯金利息は、普通預金、定期預金、通知預金など、金融機関への預け入れに対して支払われる利息です。これはほとんどすべての企業や個人事業主に関係する、最も一般的な受取利息と言えるでしょう。

また、取引先や子会社、従業員などにお金を貸し付けた際に、その対価として受け取る利息も受取利息に含まれます。これを貸付金利息と呼びます。

さらに、国債、地方債、社債といった債券を保有している場合に、その発行体から支払われる利子も有価証券利息として扱われます。会計処理上、これらの利息も受取利息勘定で処理することが一般的ですが、管理の明確化のために「有価証券利息」という別の勘定科目を設けて区別する企業もあります。

間違いやすい勘定科目との違い

経理実務では、受取利息と似た性質を持つ勘定科目との違いを正しく理解することが不可欠です。特に「受取配当金」との混同には注意が必要です。

受取利息は、お金を貸したことに対する対価、つまり利子です。その収益は、あらかじめ定められた利率と期間に基づいて計算されます。

それに対して受取配当金は、株式を保有していることに対する利益の分配です。企業の業績に応じて分配されるため、利益が出ていなければ配当がない場合もあり、収益額は保証されていません。

この違いは、単なる名称の問題だけではありません。特に消費税の取り扱いにおいて、両者には決定的な違いがあります。受取利息は消費税法上、「非課税取引」に分類されます。これは、預金や貸付といった金融取引が、本来消費税の課税対象となりうる「役務の提供」に該当しますが、社会政策的な配慮から特別に消費税を課さないこととされているためです。

一方、受取配当金は消費税法上、「不課税取引(課税対象外)」に分類されます。配当金は、サービスの対価ではなく、株主としての地位に基づいて受け取る利益の分配です。そのため、そもそも消費税の課税対象となる「取引」に該当しないとされています。

このように、両者は税法上の立ち位置が根本的に異なるため、会計上も厳密に区別して処理する必要があります。

法人における受取利息の仕訳方法

法人が受取利息を計上する際の仕訳方法は、会計の正確性と税務上のメリットに直結する重要なポイントです。原則的な方法を理解し、正しく実践することが求められます。

原則は「総額主義」!税額控除のメリットを活かす

法人が受取利息の仕訳を行う際には、「総額主義」と「純額主義」という2つの方法があります。

総額主義は、利息の総額(税引前)を「受取利息」として収益計上し、同時に源泉徴収された税額を「法人税等」や「仮払税金」などの勘定科目で費用または資産として計上する方法です。会計上の原則はこちらの方法です。

純額主義は、源泉徴収税額が差し引かれた後、実際に普通預金口座などに入金された手取り額のみを「受取利息」として収益計上する簡便的な方法です。

どちらの方法を選択するかは企業の任意ですが、強く推奨されるのは総額主義です。その理由は、源泉徴収された所得税の取り扱いにあります。金融機関が法人に利息を支払う際、所得税および復興特別所得税をあらかじめ天引き(源泉徴収)しています。

この源泉徴収された税金は、法人が納めるべき法人税の前払いという位置づけになります。決算時に年間の法人税額を計算した後、この前払い分を差し引くことができます。この仕組みを所得税額控除といいます。

総額主義で仕訳を行えば、源泉徴収された税額が「法人税等」などの勘定科目で明確に記録されるため、所得税額控除の適用を失念するリスクを大幅に減らすことができます。一方、純額主義ではこの記録が帳簿上に現れないため、控除の適用を忘れてしまい、結果的に税金を過大に納付してしまう可能性があります。

純額主義を採用した場合でも、法人税の申告書(別表)で別途調整すれば控除を受けることは可能ですが、手続きが煩雑になり、ミスの原因ともなりかねません。

したがって、仕訳の手間がわずかに増えることを差し引いても、税務上のメリットと会計の正確性を確保するために、総額主義を採用することが賢明な判断といえます。

項目総額主義純額主義
仕訳の手間やや手間がかかる簡単
会計上の正確性高い(収益の総額を正しく表示)低い(収益が過少に表示される)
所得税額控除の適用原則として可能原則として不可(別途、申告書での調整が必要)
推奨度◎(原則)△(例外的な利用に留めるべき)

具体例で見る仕訳パターン(総額主義)

それでは、総額主義に基づいた具体的な仕訳例を見ていきましょう。

【例】普通預金に利息が1,000円発生し、源泉徴収税15.315%(153円)が差し引かれ、差額の847円が口座に振り込まれた。

この場合、仕訳は以下のようになります。源泉徴収された税額は「法人税、住民税及び事業税」(または単に「法人税等」)や「仮払税金」といった勘定科目で処理します。

借方金額貸方金額
普通預金847円受取利息1,000円
法人税等153円

この仕訳により、以下の事実が帳簿に正しく記録されます。

  • 本来の収益である「受取利-息」が1,000円発生したこと。
  • そのうち153円が法人税の前払いとして納税されたこと。
  • 差額の847円が「普通預金」として会社に入金されたこと。

個人事業主における受取利息の仕訳方法

個人事業主における受取利息の仕訳方法

個人事業主の受取利息の仕訳は、法人とは全く異なる考え方に基づいています。この違いを理解しないまま法人の処理を真似てしまうと、誤った帳簿を作成することになるため、注意が必要です。

なぜ「受取利息」ではないのか?事業所得と利子所得の違い

個人事業主が事業用の銀行口座で受け取った利息は、一見すると事業に関連する収益のように思えます。しかし、日本の所得税法上、これは「事業所得」には含まれません。

個人の所得は、その性質に応じて10種類(事業所得、給与所得、不動産所得など)に分類されます。銀行預金の利息は、このうち「利子所得」に明確に区分されています。

そして、この利子所得には「源泉分離課税」という特別な課税方式が適用されます。これは、利息が支払われる時点で税金(所得税・復興特別所得税15.315%+住民税5%)が源泉徴収され、その時点で納税がすべて完了するという制度です。そのため、原則として確定申告で他の所得と合算する必要はありません。

事業の帳簿は「事業所得」を計算するために作成するものです。利子所得は事業所得とは全く別のカテゴリーで、かつ申告不要であるため、事業の収益勘定である「受取利息」を使って記帳することはできません。

「事業主借」と「事業主貸」を使うのが正解

では、どのように仕訳すればよいのでしょうか。事業用の口座に入金された利息は、「事業主個人のプライベートな収入が、事業用の資金に混じった」ものとして扱います。この事業とプライベートの間の資金移動を記録するために使用するのが「事業主勘定」です。

事業主借は、事業主がプライベートな資金を事業用の口座に入れた場合や、事業とは関係のない収入が事業用口座に入金された場合に使います。

事業主貸は、事業主が事業用の資金をプライベートな目的で引き出した場合や、事業とは関係のない支出(個人の税金など)を事業用口座から支払った場合に使います。

受取利息のケースでは、税引前の利息総額は、事業主個人のお金が事業に入ったものとみなし、「事業主借」で処理します。そして、源泉徴収された税金は、事業主個人の税金を事業用資金から支払ったものとみなし、「事業主貸」で処理します。

具体例で見る仕訳パターン

法人と同じ例で、個人事業主の場合の仕訳を見てみましょう。

【例】事業用の普通預金に利息が1,000円発生し、源泉徴収税20.315%(203円)が差し引かれ、差額の797円が口座に振り込まれた。

この場合の仕訳は以下の通りです。

借方金額貸方金額
普通預金797円事業主借1,000円
事業主貸203円

この仕訳は、「事業主が個人として得た1,000円の利息収入を事業用の資金として提供し(事業主借)、その際に発生した個人の税金203円を事業用資金から立て替えて支払った(事業主貸)」という資金の動きを表現しています。これにより、事業の損益には一切影響を与えずに、預金残高のズレを防ぐことができます。

事業用の貸付金利息は例外

ただし、一つ重要な例外があります。個人事業主が事業の一環としてお金を貸し付け、そこから利息を得た場合(例えば、従業員への貸付金など)、その利息は事業に付随して生じたものとみなされ、「事業所得」に含まれます。

この場合に限り、法人と同様に「受取利息」勘定を使って収益として計上します。友人への個人的な貸付から得た利息などは、事業とは関係のない「雑所得」となり、確定申告で別途処理する必要があるため、帳簿上は「事業主借」で処理します。

受取利息にまつわる3つの重要論点

受取利息にまつわる3つの重要論点

受取利息の仕訳を完璧にこなすためには、法人・個人事業主の基本的な違いに加え、税金計算や決算整理といった、より専門的な論点を理解しておく必要があります。

論点1:源泉徴収される税金の計算方法

受取利息は、支払われる際に必ず税金が源泉徴収されますが、その税率は法人と個人事業主で異なります。

対象国税 (所得税+復興特別所得税)地方税 (住民税利子割)合計税率備考
法人15.315%0%15.315%2016年1月1日以降、地方税の源泉徴収は廃止
個人事業主15.315%5%20.315%源泉分離課税

特筆すべきは、法人に対する地方税(住民税利子割)の源泉徴収が2016年1月1日以降廃止された点です。これを知っておくと、過去の帳簿を確認する際などに混乱を防げます。

実務では、銀行から送られてくる利息計算書に税引前の利息額と源泉徴収税額が明記されていることが多いですが、もし手取り額しかわからない場合は、逆算して税引前利息を計算する必要があります。計算式は以下の通りです。

税引前利息 = 税引後利息 ÷ (1 – 税率)

例えば、法人の口座に84,685円の利息が振り込まれた場合、税引前の利息は 84,685 ÷ (1 – 0.15315) = 100,000円 と計算できます。

論点2:消費税の取り扱いは「非課税」

前述の通り、受取利息は消費税の「非課税取引」に該当します。これは、仕訳の際に消費税区分を「非課税売上」として処理することを意味します。

この「非課税」という扱いは、単に受取利息自体に消費税がかからないというだけでなく、会社の消費税納税額全体に影響を及ぼす可能性があるため、非常に重要です。事業者が納める消費税額は、大まかに「預かった消費税(売上にかかる消費税)」から「支払った消費税(仕入にかかる消費税)」を差し引いて計算します。

しかし、この「支払った消費税」を全額差し引けるかどうかは、「課税売上割合」という指標によって決まります。課税売上割合の計算式は以下の通りです。

課税売上割合 = 課税売上高 ÷ (課税売上高 + 非課税売上高)

この計算式の分母に、非課税売上である受取利息が含まれます。つまり、受取利息の金額が大きくなると、分母が膨らんで課税売上割合が低下します。課税売上割合が95%未満になると、支払った消費税の一部しか控除できなくなる可能性があり、結果として消費税の納税額が増加することにつながります。特に、多額の現預金を保有し、受取利息が多く発生する企業は、この点に留意が必要です。

論点3:決算時に必須の「未収利息」の計上

会計の大原則の一つに「発生主義」があります。これは、収益や費用を現金の受け渡し時点ではなく、それらが発生した時点で認識するという考え方です。受取利息もこの原則に従う必要があります。

例えば、3月決算の法人が、利払いが年1回9月末に行われる1年定期預金に加入しているとします。決算日である3月31日時点では、まだ利息は入金されていません。しかし、10月1日から3月31日までの6ヶ月分の利息は、期間の経過とともにすでに発生しています。

この、当期に帰属するもののまだ受け取っていない利息を、決算整理仕訳によって資産と収益に計上する必要があります。この時に使う勘定科目が「未収利息」または「未収収益」です。

【例】決算にあたり、当期に発生した貸付金の利息50,000円が未収であることが判明した。

決算整理仕訳

借方金額貸方金額
未収収益50,000円受取利息50,000円

この仕訳により、当期の収益を正しく期間対応させることができます。そして、翌期の期首には、この仕訳を反対にする「再振替仕訳」を行います。これは、翌期に実際に利息が入金された際に、収益を二重計上してしまうのを防ぐための処理です。

翌期首の再振替仕訳

借方金額貸方金額
受取利息50,000円未収収益50,000円

ただし、重要性の乏しい普通預金の利息など、毎年継続的に発生し、金額も少額なものについては、実務上の簡便性から未収計上を省略することも認められています。

まとめ

本記事では、受取利息の仕訳について、基本的な考え方から法人・個人事業主別の具体的な処理方法、さらには税務上の重要論点までを網羅的に解説しました。最後に、必ず押さえておくべき重要なポイントを再確認します。

法人と個人事業主の根本的な違いを理解する

法人の受取利息は「受取利息」勘定で収益計上しますが、個人事業主の場合は所得税法上の「利子所得」にあたるため、事業の損益に含めず「事業主借」と「事業主貸」で処理します。この違いが最も重要なポイントです。

法人は「総額主義」で仕訳する

法人は、税引前の利息総額と源泉徴収税額を分けて記帳する「総額主義」を原則とします。これにより、法人税の前払いである源泉所得税の「所得税額控除」を確実に受けることができ、節税につながります。

税金のルールを正しく適用する

受取利息には源泉徴収が行われますが、その税率は法人(15.315%)と個人事業主(20.315%)で異なります。また、消費税の課税区分は「非課税」であり、この処理が会社の消費税納税額に影響を与える可能性があることも覚えておきましょう。

決算時には「未収利息」の計上を忘れない

発生主義の原則に基づき、決算日時点でまだ入金されていないものの、当期に帰属する利息は「未収収益」として資産計上する必要があります。これにより、期間損益計算の正確性が担保されます。

これらのポイントを確実に実行することで、あなたの会社の経理処理はより正確かつ適正なものになります。日々の業務にぜひお役立てください。

この記事の投稿者:

hasegawa

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