
司法書士は、不動産登記や会社設立登記などの法務手続きを代理する法律専門職です。これらの業務を提供した後、報酬や経費をクライアントに請求する際に使用するのが「請求書」です。
請求書には提供したサービスの内容や金額を明記し、それに基づいてクライアントから支払いを受けます。請求書は正式な取引記録としての役割も果たし、会計処理や税務申告の際にも重要となる書類です。
適切な請求書を発行することは、迅速な入金とトラブル防止のために欠かせません。
本記事では、司法書士本人や事務スタッフ、事務所経営者の方に向けて、請求書の書き方と請求業務の効率化に役立つポイントを徹底解説します。
請求書に必ず記載すべき基本項目や、実際のフォーマット例に沿った詳細な記載方法(項目別の書き方)、司法書士ならではの注意点やよくあるミスとその対策など、盛りだくさんの内容です。
また、電子請求書の利便性やインボイス制度(適格請求書制度)への対応ポイントについても解説します。最後に、請求業務を大幅に効率化できるクラウド請求書発行ツール「INVOY(インボイ)」のメリットと簡単な使い方もご紹介します。
この記事を読めば、効率的で安心な請求書作成のコツがきっとつかめるはずです。
目次
司法書士の請求書を書く際のポイント・注意点
司法書士の請求書は、行政書士など他の士業の場合と共通する点も多いですが、特に立替経費や消費税、源泉徴収に関して独特の注意点があります。まずは、司法書士が請求書を作成する上で押さえておきたいポイントを見てみましょう。
報酬と実費(登録免許税など)を明確に分ける
司法書士業務では、不動産登記や商業登記の際に発生する登録免許税などの税金を依頼者に代わって立て替え払いするケースが多々あります。請求書を発行する際は、こうした実費(立替経費)と、司法書士自身の報酬をはっきり区別して記載することが重要です。
例えば、報酬額とは別に「登録免許税 ○○円」「証紙代 ○○円」といった項目を設け、実費として合計金額とは別枠で記載します。内訳を明確にしておけば、依頼者にも費用の構成が伝わりやすく、信頼性が高まります。
さらに、実費を報酬とまとめてしまうと、本来課税対象外であるはずの立替金にまで消費税が課税されてしまうリスクがあります。実際、消費税法上も「登録免許税等として受け取ったことが明らかな場合には課税の対象としない」旨が示されています。
つまり、請求書上で報酬と実費が区別されていないと、税務上は全体が報酬とみなされ、不要な消費税を納める事態になりかねません。余計な税負担を避けるためにも、必ず報酬額と立替経費は項目を分けて記載しましょう。
消費税を明示し、報酬額と区別する
司法書士の報酬には消費税(基本税率10%)が課されます。そのため、請求書には消費税額を明確に記載し、報酬の金額と区別しておくことが大切です。
請求額を税込金額で記載する場合でも、「(内消費税○○円)」のように税額を併記するか、あるいは税抜金額と消費税額を別々の行に分けて記載しましょう。税込か税抜かを明示しておくことで、依頼者側も金額を正しく認識でき、後々の誤解を防げます。
消費税額をはっきり分けて記載しておくことは、源泉徴収の計算上も重要です。
後述するように、法人クライアントが司法書士報酬を支払う場合、所得税の源泉徴収が必要となりますが、請求額の中で報酬部分と消費税部分が区別されていないと、支払側は合計金額(消費税分を含む)に対して源泉徴収額を計算してしまう恐れがあります。
本来、源泉徴収は報酬(税抜額)に対して行うものです。にもかかわらず、消費税込みの額に10.21%を乗じて天引きされてしまうと、本来より多い額が控除されてしまい、一時的とはいえ受け取る報酬が減ってしまいます。
短期的な資金繰りの悪化にも繋がりかねませんので、消費税額は必ず明示し、報酬額(税抜部分)と切り分けて記載しておきましょう。
なお、2023年10月に開始されたインボイス制度(適格請求書制度)に対応した請求書では、消費税額や適用税率を項目ごとに記載することが義務付けられています。
司法書士業務では軽減税率(8%)が適用されるケースは通常ありませんが、消費税を明示するという観点からも、今後は税込価格ではなく税抜+消費税額の表示に統一することが望ましいでしょう。
源泉徴収への対応(必要な場合と不要な場合)
司法書士が受け取る報酬は、その支払い側が源泉徴収を行う対象となります(所得税法第204条)。具体的には、支払者が法人または源泉徴収義務のある個人事業主(給与支払がある事業者)の場合、支払額から所得税が天引き(源泉徴収)されます。
司法書士報酬の源泉徴収税率は原則10.21%ですが、他の士業と異なり計算時に1万円の控除枠があります。計算式は次のとおりです。
源泉徴収税額 = (司法書士への報酬金額 - 10,000円) × 10.21%
例えば報酬額が50,000円の場合、(50,000円-10,000円)×10.21%=4,084円が源泉徴収され、司法書士の手取りは45,916円となります。報酬額が1万円以下であれば控除枠内のため源泉徴収は発生しません。
源泉徴収額の計算は依頼者側で行われますが、上記のように少し特殊な計算ルールのため、請求書上に源泉徴収額を記載しておくと親切です。
たとえば、請求金額欄の近くに「(うち所得税預かり分○○円)」などと明記しておけば、依頼者はその金額を差し引いて支払えばよいことが一目で分かります。計算ミスによる過大控除を防ぐことにもつながるでしょう。
なお、源泉徴収が不要となるケースもあります。支払者が会社などの法人ではなく、給与支払を行っていない個人事業主や単なる個人(例えば一般の個人依頼者が相続手続きの報酬を支払う場合)であれば、源泉徴収義務はありません。
また、司法書士側が法人(司法書士法人)の場合も、報酬の支払先が法人となるため源泉徴収の対象外です。自分の事務所の形態や依頼者の種別によって、源泉徴収の要否が変わる点に注意しましょう。
請求書に必ず記載すべき項目
請求書を作成する際には、基本的な情報を漏れなく盛り込む必要があります。これは司法書士に限らず共通ですが、特に以下の項目は必ず記載すべき事項です。
- 件名(「請求書」のタイトル)
- 宛先(依頼者の名称・住所 など)
- 請求日(請求書の発行日)
- 請求内容の明細(業務内容・金額 など)
- 消費税額・適用税率
- 合計請求金額
- 支払期限
- 支払方法(振込先口座情報 など)
- 請求者情報(事務所名・住所・連絡先 など)
- 請求書番号
- 特記事項(任意)
以上の項目が一目で分かるようにレイアウトすることで、請求先に対してわかりやすく丁寧な請求書となります。それでは、これらの項目を項目別にどのように記載すればよいか、具体的に見ていきましょう。
【項目別】司法書士の請求書の書き方
1. 請求書の宛先
まず、請求書を受け取る相手先の情報を正確に記載します。一般的には依頼者(発注者)の会社名や団体名、部署名、担当者名などを宛名として記載します。
例えば法人クライアントであれば「〇〇株式会社 △△部 ご担当者様」のように部署名と担当者名を含めるか、「〇〇株式会社 御中」といった形式で会社名のみ記載します(担当者名まで明記するかは取引先の慣例によります)。
個人のお客様であれば「〇〇様」と氏名を記載します。
宛先の名前や表記は、事前に依頼者から指定がないか確認することが重要です。稀に、依頼者とは異なる会社名や部署名を宛先とするよう求められるケースもあります(例:支払い業務をグループ会社で集約している場合など)。
請求書をスムーズに処理してもらうためにも、正式名称に誤りがないか、株式会社と有限会社の別や法人格の有無、個人名の漢字表記なども含めて正確に記載しましょう。
2. 請求内容の明細
請求書の本文には、今回請求対象となる業務の内容と金額を明細形式で記載します。司法書士の場合、具体的に行った手続きやサービスを品目として挙げ、それに対応する料金を示します。
例えば、不動産登記の依頼であれば「不動産登記申請代行(所在地:〇〇)」のように案件を特定できる内容を記載し、その報酬額を設定します。
相続や商業登記など複数の手続きをまとめて請け負った場合は、手続きごとに行を分けて品目と金額を記載すると良いでしょう。
明細には、品目(サービスの内容)、数量、単価、金額などの要素を含めるのが一般的です。数量は業務の件数や時間などを表し、例えば「1件」「2件」や「○時間」といった単位で記載します。
単価は1件あたりの料金や時間単価を示し、数量と単価から金額(小計)を計算します。例えば、1件あたりの報酬が50,000円で2件分であれば、単価50,000円×数量2件=金額100,000円と明記します。
料金設定が事前の見積や契約に基づくものであれば、その金額通りに記載します。
また、業務日や期間を明示したほうが親切な場合は、品目名や特記事項の中で「〇年〇月〇日実施」や「期間:〇月〇日~〇月〇日」などと記載すると、どの案件に対する請求かが依頼者にもより明確になります。
なお、前述のとおり登録免許税など実費部分は報酬とは別の行に分けて記載しましょう。例えば明細の最後に「(実費)登録免許税 ○○円」や「郵送料 ○○円」といった形で項目を追加し、実費合計がひと目で分かるようにします。
こうすることで、報酬額と実費の区別が明確になり、依頼者にも費用内訳が伝わりやすくなります。
3. 消費税の表示
請求書には消費税額を忘れずに表示します。税抜き価格で明細を記載した場合は、明細欄の小計の下に「消費税(10%): ○○円」のように消費税額を別行で明記し、最後に税込合計金額を示します。
仮に明細金額がすべて税込価格で書かれている場合でも、「(うち消費税○○円)」と注記するなどして、内訳として消費税額がいくらかをはっきり示すようにしましょう。消費税額が明示されていれば、依頼者側も税額を含めた支払い金額を正確に認識できます。
なお、軽減税率(8%)対象の商品やサービスを扱う業種では、税率ごとに消費税額を分けて記載する必要があります。司法書士業務において軽減税率が適用されるケースは基本的にありませんので、通常は標準税率10%のみを記載すれば問題ありません。
仮に異なる税率の商品等を併せて請求する特殊な場合でも、税率ごとに課税対象額と消費税額を区分して表示すれば、適格請求書制度の要件も満たせます。
4. 発行日
請求書の発行日(請求日ともいいます)は、その請求書を発行した日付を指します。請求書の上部に「発行日:〇年〇月〇日」のように記載します。注意したいのは、必ずしも「発行日=業務完了日」や「発行日=印刷した日」ではない場合があることです。
多くの企業間取引では月末締め・翌月払いなどの慣行があるため、依頼者から締日(請求日)が指定されている場合は、その締日の日付を発行日として記載します。
例えば「毎月末日付で請求書を発行」と取り決めている場合、実際の作成日が翌月であっても、発行日は当該月の末日とします。
発行日は請求書ごとの基準日となる重要な情報です。請求書番号と合わせて「いつの請求書か」を特定する鍵になりますし、支払期限を設定する際の起算日にもなります。
西暦表記でも和暦表記でも構いませんが、依頼者側の経理処理で混乱がないよう統一した形式で記載しましょう。また、取引先から特に指定がない限りは、西暦で記載するのが一般的です。
5. 支払期限
支払期限(支払期日)は、依頼者に代金を支払ってもらう期限を指します。請求書には「支払期限:〇年〇月〇日」あるいは「支払期日:○○日(請求日から◯日以内)」などの形で明記します。
支払期限は事前の契約や取引条件で取り決めている場合が多いですが、特に定めがない場合でも請求書に明示しておくことが望ましいです。明確な期日を示すことで、依頼者に支払いの予定を立ててもらいやすくなり、入金遅延の防止につながります。
取引先が企業の場合、下請代金支払遅延等防止法の指針では「代金受領日から60日以内」に支払うことが望ましいとされています。
そのため、仮に特段の取り決めがなくとも、請求日からあまり長すぎない(一般的には30日~60日程度までの)支払期限を設定するのが適切です。例えば「請求書発行の翌月末日まで」などのように定めるケースが多く見られます。
個人のお客様相手であれば、「請求書到着後○週間以内」や具体的な日付を指定するなど、支払いの目安を示しておきましょう。
毎回支払期限を記載しておけば、依頼者側も支払管理がしやすくなり、ビジネスマナーとしても親切です。万が一支払いが遅れた場合の督促の際にも、「請求書記載の期日を過ぎていますが…」と切り出すことができ、トラブル防止に役立ちます。
6. 発行者情報
請求書を発行する側であるあなた(司法書士)の情報も忘れずに記載します。
一般的には、請求書の末尾やヘッダー部分に、事務所名や司法書士の氏名、所属会(司法書士会)や登録番号(必要に応じて)、住所、連絡先電話番号、メールアドレスなどをまとめて記載します。
要は、受け取った相手が「誰からの請求書か」をひと目で確認でき、必要があれば連絡が取れるようにしておくことが目的です。
個人事務所の場合は「司法書士 〇〇 △△(氏名)」のように自分の氏名を明記します。司法書士法人であれば法人名と代表者名を記載します。事務所の住所や電話番号は名刺や事務所案内と同じ内容を記載するとよいでしょう。
書類上の体裁として、紙の請求書であれば職印(司法書士の角印など)を押印することもありますが、電子請求書の場合は押印がなくても法的に有効です(必要に応じてPDFに電子印影を載せることもあります)。
発行者情報は請求書のヘッダー(上部)にレターヘッド形式で記載しても、フッター(下部)に記載しても構いません。自社の請求書フォーマットに合わせて見やすい位置に配置しましょう。
特に決まりはありませんが、宛先や件名と混同しないよう、レイアウト上の工夫(フォントを太字にする、枠で囲む等)をすると見栄えが良くなります。
7. 振込先
依頼者に銀行振込で支払ってもらう場合は、振込先の口座情報を明記します。請求書の下部などに「振込先」欄を設け、以下のような情報を記載します。
- 銀行名(金融機関名)
- 支店名(支店コード)
- 口座種別(普通・当座 等)
- 口座番号
- 口座名義(カナ)
これらを正確に記載することで、依頼者が振込手続きをスムーズに行えます。特に口座名義は、司法書士本人の名前と事務所名が異なる場合など混乱しやすいポイントですので、通帳記載のカナ名義を正確に記しましょう。
振込手数料の負担についても触れておくと親切です。一般的には「振込手数料は依頼者様にご負担願います」あるいは「振込手数料はご送金者様のご負担でお願いいたします」といった注意書きを添えます。
こうすることで、手数料負担の認識違いによるトラブルを防げます。
昨今では、銀行振込以外にもクレジットカード払いなどの決済手段を用意する事業者も増えています。もし依頼者にとって便利な支払い方法を提供できる場合は、その旨を請求書に記載して案内すると良いでしょう。
ただし、代表的な方法である銀行振込の情報は必ず記載し、漏れによる支払い遅延が起きないようにしてください。
8. 特記事項
請求書の「特記事項」欄には、上記までの項目に当てはまらない特別な条件や伝達事項がある場合に記載します。基本的に必須ではありませんが、ケースによっては書いておくべき重要な情報を補足する役割を果たします。以下は特記事項に記載し得る内容の例です。
着手金や前払金の処理
既に着手金○○円を受領済みで残金のみ請求する場合は「※着手金○○円は受領済み。残額として△△円を請求いたします」などと記載。
分割払いの場合
分割払いの合意がある場合は「※本請求は第1回分(全○回のうち)」など支払回数や今回分である旨を記載。
契約上の特約
支払い遅延時の違約金や遅延損害金の利率が契約で定められている場合、「※支払期日を過ぎた場合は年○%の遅延損害金を別途請求させていただく場合があります」のような注意書きを記載。
案件特有の情報
記載に社内管理番号や事件番号がある場合(例えば依頼者から指定された発注番号や契約番号など)、「貴社発注番号: ○○○」のように記載しておけば、依頼者側でもどの案件の請求か照合しやすくなります。
その他伝達事項
「領収書が必要な場合はお申し付けください」「ご不明な点は上記連絡先までお問い合わせください」など、依頼者へのメッセージや注意喚起を記載することもあります。
特記事項は状況に応じて自由に書ける欄ですが、記載しすぎると請求書全体が読みにくくなる恐れもあります。本当に必要な事項のみを簡潔に記すように心がけましょう。特に無ければ特記事項欄自体を削除するか、「特記事項:なし」とするなどして体裁を整えます。
9. 請求書番号
各請求書には請求書番号を付与しておくと便利です。請求書番号とは、その請求書を一意に識別するための社内管理用の番号で、英数字や年月を組み合わせて付番することが多いです。
例えば、「No.2023-001」「2023-10-0005」のように年度や月+通し番号で管理すれば、次の請求書を作成する際にも番号の重複を防げます。
請求書番号は、請求書の右上など目立つ位置に記載します。番号を振っておくことで、後日入金確認や未収リストの管理が容易になります。
依頼者から問い合わせを受けた際にも、「請求書No.○○について」と番号を伝えれば双方の認識が一致しやすく、複数の請求書を発行している場合でも混乱を避けられます。
なお、請求書管理ソフトやクラウドサービスを利用すれば、請求書番号は自動採番されるため番号重複や飛び番号の心配もなくなります。手作業で管理している場合も、必ず一件ごとにユニークな番号を付けて管理する習慣をつけましょう。
10. 適格請求書(インボイス制度)に必要な項目
2023年10月から開始されたインボイス制度(適格請求書制度)により、適格請求書発行事業者(消費税課税事業者として登録を受けた事業者)が発行する請求書には、従来の項目に加えて以下の情報を記載することが求められます。
登録番号
税務署から交付された適格請求書発行事業者の登録番号(Tから始まる13桁の番号)を、請求書上部などに記載。
税率ごとの金額と税額
消費税の税率が複数ある場合、税率ごとに区分した合計金額(税抜または税込)および適用税率を表示し、それぞれに対応する消費税額を明記。標準税率10%と軽減税率8%の商品が混在する場合は、それぞれ小計と税額を分けて記載します。
軽減税率対象である旨
軽減税率(8%)が適用されている明細については、その旨(例:「※」印や注記で軽減税率対象であること)を明示。
もっとも、司法書士の提供するサービスは原則として標準税率10%のみですので、実務上は登録番号の記載が最大の変更点となります。登録番号は発行者情報の近くや請求書番号の近くに「登録番号:Txxxxxxxxxxxxx」のように記載します。
これにより、受領した側(依頼者)は仕入税額控除を受けるために必要な情報が揃うことになります。
もし司法書士事務所が免税事業者(適格請求書発行事業者の登録未済)である場合、請求書に登録番号を記載することはできません。この場合、請求書自体は発行できますが、依頼者(法人等)はその請求書では消費税の仕入税額控除が受けられない点に注意が必要です。
免税事業者である旨を特記事項などに記載するケースもあります(例:「当事務所は適格請求書発行事業者ではありません」)。今後法人クライアントとの取引が多い場合は、適格請求書発行事業者として登録することも検討すると良いでしょう。
インボイス制度対応の請求書を一から自作するのは手間ですが、後述するクラウド請求書サービスなどを利用すれば、初期設定で登録番号等を入力しておくだけで以降自動的に請求書に反映されるため安心です。
よくあるミスとその対策
請求書発行では、注意していても思わぬミスが起きることがあります。ここでは、ありがちなミスとその対策を確認しましょう。
ミス例1: 請求書の重要項目の記載漏れ
請求書に本来記載すべき基本情報が抜けてしまうミスです。
例えば、支払期限を入れ忘れたために依頼者の支払が遅れてしまった、振込先口座の情報が記載されておらず入金が滞った、請求書番号を付け忘れて後から管理しづらくなった、発行日の記載がなく相手に不審がられた、といった事例があります。
特に少人数の事務所で一から手作りの請求書を運用していると、忙しい月末などにこうした記載漏れが起こりがちです。
対策: テンプレートやチェックリストを活用して、請求書のひな型に基本項目を漏れなく盛り込んでおきましょう。本記事で挙げた必須項目がすべて入ったフォーマットを用意し、それを基に請求書を作成すれば記載漏れの心配が減ります。
クラウド請求書サービスを使えば必須項目は初期設定で網羅されていますし、発行担当者自身でダブルチェックする習慣をつけることも大切です。
ミス例2: 金額の計算ミス・入力ミス
請求金額の算出に誤りがあるケースも見受けられます。手作業で合計金額を計算していると、桁を間違えたり消費税の端数処理を誤ったりしてしまうことがあります。
また、金額の転記ミス(例えば見積書から請求書に金額を写す際に誤入力してしまう等)もヒューマンエラーとして起こり得ます。金額ミスは信頼性を損なうだけでなく、再発行の手間や入金額相違のトラブルに直結します。
対策: 計算はできるだけ自動化し、入力内容は送付前によく確認することが重要です。
Excelで作成する場合は合計や消費税を自動計算する式を組んでおく、もしくは専用ソフトやクラウドサービスであれば入力するだけで自動計算・桁チェックが行われます。
また、必ず第三者または自分自身でダブルチェックし、金額に不整合がないか確認してから送付する習慣を徹底しましょう。
ミス例3: 請求書様式の不備(法改正への未対応)
請求書の様式自体が最新の要件を満たしていないケースも考えられます。
例えば、インボイス制度開始後も適格請求書発行事業者であるにもかかわらず登録番号を記載し忘れてしまった、逆に免税事業者なのに旧来通り「消費税○○円」と記載してしまい取引先に余計な混乱を与えてしまった、といった事例です。
また、昔から使っているExcelのテンプレートを更新せずに使い回していて、必要項目が漏れている場合も注意が必要です。
対策: 法改正や制度変更に合わせて請求書フォーマットを見直すことが大切です。インボイス制度に対応したフォーマットに更新する、源泉徴収額の表示が必要であれば項目を追加するなど、都度アップデートを怠らないようにしましょう。
クラウド請求書サービスを利用していれば、制度変更時にも自動で様式がアップデートされるため安心です。「気付いたらフォーマットが古かった」という事態を避けるためにも、常に最新の情報にアンテナを張り、請求書テンプレートを適宜メンテナンスしてください。
電子請求書の利便性と法的対応
請求書の発行方法は、従来の紙ベースから電子請求書(デジタルデータによる請求書)へと移行が進んでいます。電子請求書には多くの利点があり、また近年の法改正にも対応しやすいというメリットがあります。
この章では、電子請求書の便利さと法的な観点から押さえておきたいポイントを解説します。
請求書を電子化するメリット
電子請求書とは、PDFなどデータ形式で作成・送付する請求書のことです。電子メールに添付して送信したり、クラウド上で共有リンクを送ったりすることで相手に届けます。電子請求書には以下のようなメリットがあります。
送付の迅速化とコスト削減
郵送と比べて、送付にかかる時間が格段に短縮されます。メール送信すれば数秒で相手に届き、遠方の依頼者でも即日請求が可能です。封筒や切手代、印刷費用も不要になるため、経費削減にもつながります。
収入印紙代の節約
電子請求書は紙の文書ではないため、収入印紙を貼る必要がありません。高額の請求でも印紙税がかからず、その分コスト削減できます。
管理の効率化
紙の請求書はファイリングや保管場所の確保が必要ですが、電子データであればパソコンやクラウド上で検索しやすく保管できます。
過去の請求書を探す際も、フォルダやシステム内でキーワード検索すればすぐに見つかり、過去データの参照や集計も容易です。紛失リスクも紙に比べて低減します。
リモートワーク・在宅時にも対応
クラウド上で請求書を管理していれば、事務所に出向かなくても自宅や出先から請求書を作成・送付できます。複数スタッフで共有して閲覧・編集できるため、テレワーク環境下でも業務を止めずに済みます。
電子帳簿保存法への対応
電子請求書の普及に伴い、電子データで請求書をやりとり・保存する場合のルールを定めた法律が電子帳簿保存法です。
2022年の法改正(猶予期間を経て2024年完全施行)により、電子メールやクラウドで受け渡した請求書・領収書データは電子データのまま適切に保存することが義務化されました。
具体的には、「取引年月日・金額・取引先で検索できるようにする」「タイムスタンプを付与するか、改ざん防止措置を講じて保存する」といった要件を満たす必要があります。
紙で受領した請求書をスキャンして保存する場合や、紙のまま保存する場合にも細かな要件がありますが、電子的に授受したデータについては紙に印刷しての保存では認められなくなりました。
つまり、司法書士事務所でメール等により請求書を受け取った場合、データのまま一定の形式で保存しなければならず、これを怠ると税務上のペナルティを受ける可能性があります。
こうした要件への対応には、クラウド請求書サービスの利用が有効です。クラウドサービス上で請求書を発行・保存しておけば、自動的に日付や金額で検索できるようになっていたり、タイムスタンプが付与され改ざんできない形で保管されたりします。
自社でシステムを構築しなくても、サービスを使うだけで電子帳簿保存法の要件をクリアできるため、結果として法令遵守と業務効率化を同時に実現できます。
インボイス制度への対応
適格請求書(インボイス)制度については前述のとおりです。電子請求書であっても紙の請求書であっても、発行事業者であれば登録番号や適用税率など所定の記載事項を満たす必要があります。
電子請求書の場合、テンプレートに登録番号等を設定しておけば漏れなく記載できますし、一度入力しておけば毎回自動で表示されるため手間もありません。
このように、電子請求書の活用は業務効率だけでなく法令対応の面でも大きなメリットがあります。次章では、これらの電子請求書発行を簡単に実現できるクラウドサービス「INVOY」について、その特徴と活用方法を紹介します。
請求業務を効率化するクラウドツール「INVOY」の活用
ここまで請求書作成のポイントや電子化のメリットを説明してきましたが、実際にそれらを実現するには適切なツールの導入が効果的です。司法書士の請求業務を強力にサポートしてくれるサービスとして、INVOY(インボイ)というクラウド請求書発行ツールがあります。
INVOYとは: INVOYは、請求書の作成・発行から送付、さらには受領・管理までをクラウド上で一括管理できるサービスです。基本機能はすべて無料で利用でき、小規模事務所から大企業まで幅広く導入されています。
Webブラウザからアクセスして利用できるため、特別なソフトのインストールも不要です。
INVOYの主なメリット
必要項目が揃ったテンプレート
司法書士業務に必要な項目(宛名、内訳、消費税欄、振込先 など)があらかじめ含まれた請求書テンプレートが用意されています。自分でひな型を作る手間なく、案内に従って入力するだけで漏れのない請求書が完成します。
自動計算・自動入力によるミス削減
金額や消費税の計算は自動化され、源泉徴収額の控除計算も簡単に行えます。一度登録した自社情報(住所や登録番号等)や取引先情報は次回から自動入力されるため、転記ミスも防げます。
インボイス制度・電子帳簿保存法に対応
自社の適格請求書発行事業者の登録番号を設定しておけば、発行する全ての請求書に自動で番号が表示されます。消費税額や適用税率の表示にも対応しており、法令要件を満たすフォーマットで安心です。
また、発行した請求書データはクラウド上に保存され、検索・保存要件もサービス側でクリアしているため電子帳簿保存法にも自然と対応できます。
メール送信・決済機能
作成した請求書はPDFでダウンロードできるほか、システムから直接メール送信することも可能です。
メール送付した請求書にはクレジットカードでの支払いリンク(任意)を付与できるため、依頼者は銀行に行かずにオンライン決済を行うこともできます(カード決済機能も無料で利用可能。決済手数料は取引額の3%)。
これにより、依頼者にとっても支払い手段の選択肢が広がり、入金サイクルの短縮が期待できます。
入金管理とリマインド
発行した請求書ごとに入金状況を管理でき、未入金のものにはワンクリックで督促メールを送る機能もあります。未収金の防止に役立ち、入金チェックの手間を大幅に削減できます。
INVOYの使い方(導入方法)
利用開始も簡単です。まずINVOYの公式サイトから無料ユーザー登録を行い、自社(事務所)の基本情報やロゴマークなどを設定します。
あとは、請求書作成画面で取引先(依頼者)情報と請求内容を入力すれば、消費税や合計金額が自動計算された請求書が画面上に表示されます。
入力内容に問題がなければ、そのまま相手先へメール送信することができます(もちろんPDFをダウンロードしてメール添付や印刷送付も可能です)。
発行後の請求書データはINVOY上に保存され、ダッシュボードで未入金のものを確認したり、過去の請求書を検索したりといった管理も自由自在です。
導入のおすすめ: INVOYは現在、基本利用料0円で提供されており、少人数の司法書士事務所でも導入しやすくなっています。煩雑になりがちな請求業務をクラウド化することで、業務効率と正確性が飛躍的に向上します。
これまでExcelや手書きで請求書を作成していた方も、INVOYを使えば驚くほど簡単にプロフェッショナルな請求書が作成できるでしょう。請求業務に割いていた時間を削減し、その分を本来の業務(登記やお客様対応)に充てることができます。
請求書の適切な作成と管理は、事務所の信頼性向上やキャッシュフロー健全化に直結します。ぜひこの機会にINVOYのようなクラウドツールを活用して、請求業務の効率化とトラブル防止を実現してください。
そうすることで、司法書士業務に一層専念でき、事務所経営の面でも大きなメリットを得られるはずです。
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家庭教師として活躍されている皆さん、確定申告について不安や疑問を抱えていませんか? 「自分は申告が必…