株式会社を設立する際は、法務局での登記申請や、その他公的機関での手続きなどを行います。本記事では、会社設立の流れや必要書類についてわかりやすく解説します。
目次
会社設立のメリットとは?
ビジネスを始める時は、会社を立ち上げるか、個人事業主になるか、どちらかを選択します。会社を設立する方が手続きに時間や費用はかかりますが、会社設立には以下のメリットがあります。
社会的な信用が得られる
会社を設立する際は、会社として公的に認めてもらうための「登記」と呼ばれる手続きを行います。会社名や住所などの情報を法務局に届け出ることにより、申請した内容はインターネットなどで誰でも閲覧できるようになり、社会的な信用に繋がりやすくなります。
取引する相手として、個人事業主ではなく、より信用力の高い会社に頼みたいと考える人もいるでしょう。また、金融機関や他の会社からの資金調達を受けやすく、早期に事業を拡大しやすいメリットもあります。
節税効果が期待できる
個人事業主が支払う所得税は「累進課税」と呼ばれる仕組みが採用されています。累進課税は金額が大きくなるほど税率が上がる仕組みであり、最大で45%もの金額を所得税として納めなくてはいけません。
その一方で、法人税は資本金の金額などで税率が決まる仕組みとなっています。例として、資本金1億円以下の法人で、かつ所得が800万円以上の場合であれば、税率は23.20%です。稼ぎが高額であるほど、会社を設立することによる節税効果が見込めるでしょう。
参照:No.2260 所得税の税率|国税庁
No.5759 法人税の税率|国税庁
決算月を自分で決められる
個人事業主の事業年度は一律で1月1日〜12月31日と定められていますが、会社の場合は決算月を自由に設定できます。自社や税理士の繁忙期を避けて設定するといった対応も可能です。
有限責任となる
個人事業主は、事業上の責任を全て自分で負うこととなります。例えば、金融機関から融資を受けていたり、経営状況が悪化して税金を滞納していたりした場合も、個人として負債を追わなくてはなりません。このような仕組みを「無限責任」と呼びます。
一方で、会社は限られた負債を負う「有限責任」の仕組みが採用されています。責任は出資金の範囲内で負えばよく、代表者が全ての責任を負うこともありません。
会社設立の流れ
会社設立は以下の流れで行います。
①会社の基本事項を決定する
②会社の実印を用意する
③定款を作成する
④資本金の振込を行う
⑤登記申請を行う
会社設立で必要な手続きについて、流れに沿って見ていきましょう。
①会社の基本事項を決定する
会社の設立にあたって、まずは基本的な情報を決定しましょう。
・会社名
・所在地
・資本金
・設立日
・会計年度(事業年度)
・事業目的
・役員
これらの情報は定款や会社のホームページなどに記載することとなります。取引先や顧客、融資を受ける金融機関からの印象にも影響を与えることになるため、慎重に検討しましょう。
また、これらの情報は法人登記によって公的に登録することとなります。後から内容を変更する場合、改めて登記変更の手続きを行う必要がある上、手続き内容に応じた登録免許税を支払う必要もあります。何度も申請を行うことのないように注意しましょう。
②会社の実印を用意する
法務局に登記の申請を行う際は会社の実印が求められるため、社名の決定後に実印を作ります。また、登記の際は「印鑑届書」と呼ばれる書類も提出することになります。
設立登記をオンラインで行う時は、印鑑は用意しなくても構いません。しかし、使う場面がいつ来てもいいように、設立時に実印を作った方がいいでしょう。事業用の銀行口座を開設する際に使う銀行印と、書類に押印する角印も同じタイミングで用意することをおすすめします。
参照:印鑑(改印)届書|法務省
③定款を作成する
定款(ていかん)とは、会社の基本情報や規則についてまとめた書類です。定款に必ず記載しなくてはいけない「絶対的記載事項」として、最低限以下の情報を記載する必要があります。
・商号
・事業目的
・本店の所在地
・設立に際して出資される財産の価額またはその最低額
・発起人の氏名又は名称及び住所
これら5つの事項が記載されていないと、定款が無効となる点に注意しましょう。
定款はパソコンで作成して紙に印刷する方法と、電子認証と呼ばれる手続きを行う「電子定款」の2種類があります。紙に印刷する場合は4万円分の収入印紙が必要です。電子定款の場合には収入印紙代は不要ですが、電子証明書付きのマイナンバーカードやICカードリーダライタ、電子署名ソフトなどを揃えることになります。
参照:会社法 | e-Gov法令検索(27条)
④資本金の振込を行う
作成した定款が認証された後は、資本金の払い込みを行います。この時点では会社名義の銀行口座がないため、発起人の個人口座に資本金を入金することとなります。
資本金の下限は定められていないため、資本金を1円にして会社を設立することも可能です。ただし、資本金があまりに少ないと「信用できない会社かもしれない」と取引先に懸念されるリスクがあります。また、会社の経営状況が健全ではないと判断され、金融機関から融資を受けにくくなる可能性もあります。今後、会社として事業を拡大していきたいと考えるのであれば、ある程度の金額にしておくことをおすすめします。
⑤登記申請を行う
法務局で登記申請を行うための必要書類を準備します。標準的な株式会社が登記申請する場合、以下の書類が必要です。
・書類
・設立登記申請書
・登録免許税分の収入印紙
・定款
・発起人の同意書(発起人決定書、発起人会議事録)
・設立時代表取締役の就任承諾書
・監査役の就任承諾書
・発起人の印鑑証明書
・資本金の払い込みを証明する書面
・印鑑届書
・登記用紙と同一の用紙
登記申請後は、不備がなければ1週間~10日程度で登記が完了します。登録した所在地宛に法人番号指定通知書が届くので、店舗やオフィスなどの郵便受けを利用できる状態に準備しておきましょう。
会社の設立後に必要となる手続きは?
会社の設立後もさまざまな手続きを行う必要があります。ここでは、代表的な手続きについて、手続きを行う場所ごとに紹介します。なお、必要な手続きは事業の状況などによって異なるため、詳しくは公的機関のホームページなどもあわせてご覧ください。
税務署へ必要書類を提出する
税務署に必ず提出する書類が「法人設立届出書」です。設立登記の日から2ヶ月以内に、所轄の税務署に提出します。また、事業の状況に応じて以下をはじめとする書類も提出しましょう。
・青色申告の承認申請書:青色申告を行う場合
・給与支払事務所等の開設届出:従業員の給与、役員の報酬を支払う場合
・源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書:源泉所得税の特例を受ける場合
参照:C1-4 内国普通法人等の設立の届出|国税庁
年金事務所へ必要書類を提出する
厚生年金保険や健康保険などの社会保険に入るためには、年金事務所や年金事務センターに申請を行います。従業員が社会保険に加入する場合はもちろん、1人会社の場合であっても社長が社会保険に加入するために手続きを行います。
・健康保険・厚生年金保険新規適用届
・健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届
・健康保険 被扶養者(異動)届
「健康保険 被扶養者(異動)届」に関しては、社会保険の被保険者に扶養者がいる場合に提出しましょう。
参照:事業所を設立し、健康保険・厚生年金保険の適用を受けようとするとき|日本年金機構
従業員を採用したとき|日本年金機構
家族を被扶養者にするとき、被扶養者となっている家族に異動があったとき、被扶養者の届出事項に変更があったとき|日本年金機構
役所へ必要書類を提出する
市町村役場に提出するのは、以下の書類です。
・法人設立届
・国保脱退に係る届け
法人を設立した旨の書類は税務署にも提出しましたが、都道府県税事務所や市町村役場にも提出する必要があります。なお、東京都23区の場合は区役所には提出しなくて構いません。
また、会社設立前に国民健康保険に入っていた場合、設立後は会社の健康保険に入るため、国民健康保険を脱退する手続きも行う必要があります。
各書類の名称や必要性は地域によっても異なるため、役所のホームページなどもあわせてご確認ください。
参照:事業を始めたとき・廃止したとき | 東京都主税局
国民健康保険の届出について|新宿区
会社設立に必要な費用はどれくらいか
株式会社を設立する際、20〜25万円程度の費用がかかります。費用の内訳は以下の通りです。
定款に貼る収入印紙代 | ・紙:4万円 ・電子定款:なし |
定款認証の手数料 | ・資本金が100万円未満:3万円 ・資本金が100万円以上、300万円未満:4万円 ・その他:5万円 |
謄本代 | 約2,000円 |
登録免許税 | 15万円~ |
9-4 定款認証 | 日本公証人連合会
No.7191 登録免許税の税額表|国税庁
会社の設立方法にはどんなものがある?
会社を設立する方法は、大まかに分けて4つあります。それぞれの特徴について解説します。
法務局で設立する
書面による申請、もしくは法務局のホームページからオンラインで登記申請を行う方法です。国が運営しているため、安定感を感じられる点にメリットがあります。その反面、ホームページの説明文や仕組みが理解しにくいケースがある点には注意しましょう。
また、申請用ソフトはWindowsのみ対応しており、Macの場合は仮想OSを使わないと使用できません。
参照:株式会社の設立の登記をしたい方(QRコード付き書面申請)|法務局
商業・法人登記申請手続|法務局
クラウドサービスで設立する
会計ソフトの会社などが提供しているクラウドの会社設立サービスを利用する方法です。民間の会社が運営しているため、わかりやすさや効率性を重視してサービスが構築されています。また、設立にかかる費用を抑えられる点もメリットと言えるでしょう。
同じ会社の会計ソフトを利用することで、会社設立にかかる費用や、会計ソフトにかかる費用が割引になるプランを提供しているところもあります。設立後の経理業務も見据えて利用するサービスを検討するといいでしょう。
マイナポータルを通じて設立する(法人設立ワンストップサービス)
会社を設立する際、以前はさまざまな書類を複数の機関に提出する必要がありました。この「法人設立ワンストップサービス」は、それらの手続きをオンラインでまとめて行うことを目的としたサービスです。
公的なサービスですが、質問に「はい」や「いいえ」で答えることで必要な申請を自動でピックアップできるなど、わかりやすさを重視して作られています。マイナポータルの機能の1つであるため、利用にはマイナンバーカードが必要です。
参照:サービストップ | 法人設立ワンストップサービス
専門家を通じて設立する
司法書士などの専門家に設立に関する業務を依頼する方法です。各士業によって依頼できる業務が異なるため、何を依頼したいのか考えた上で依頼することをおすすめします。また、会社を設立した後も、必要に応じて別の業務を依頼しやすい点も魅力的です。
コストがかかる点や、必要な業務を社内で完結できずに時間がかかりやすい点には注意が必要です。
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