
減資の正しい仕訳を理解することは、あなたの会社が直面する財務上の課題を解決し、将来の大きな節税メリットを掴むための第一歩です。例えば、過去の赤字を帳簿上から消し去り、銀行融資を受けやすいクリーンな財務体質を手に入れることが可能です。
あるいは、資本金を1億円以下にすることで、中小企業向けの税制優遇を最大限に活用し、毎年数百万円単位の法人税を削減することもできます。この記事では、そのための具体的な会計処理と戦略的な知識を、余すところなく提供します。
本記事は、単なる借方・貸方の解説にとどまりません。会社法が定める厳格な法的手続きから、見落としがちな「みなし配当」といった複雑な税務リスク、そして最新の税制改正まで、減資を成功に導くためのロードマップを示します。
「債権者保護手続」や「株主総会特別決議」といった専門用語に、難しさを感じるかもしれません。しかし、心配は不要です。この記事では、複雑な手続きや会計処理を、具体的な仕訳例やスケジュール表を使い、一つひとつ丁寧に分解して解説します。
この記事を読み終える頃には、あなたも自信を持って減資のプロセス全体を理解し、自社の状況に合わせた最適な判断を下せるようになっているはずです。
目次
減資の基本 目的と2つの種類
減資とは、会社の資本金の額を法的な手続きに則って減少させることです。単に帳簿上の数字を動かすだけでなく、会社の財務戦略や税務戦略において重要な役割を果たします。減資を検討する際には、まずその目的と種類を正確に理解することが不可欠です。
減資を行う3つの主要な目的
会社が減資を行う背景には、主に3つの目的が存在します。
欠損金の補填
過去の事業年度に生じた赤字が累積すると、貸借対照表上では「繰越利益剰余金」がマイナスの状態、いわゆる「欠損金」として計上されます。この欠損金が多額になると、金融機関からの融資審査で不利になったり、取引先からの信用力が低下したりする可能性があります。
減資は、資本金を取り崩して欠損金の穴埋め(補填)を行い、財務諸表の見栄えを改善し、経営の立て直しを図る目的で実施されます。これにより、対外的な信用を回復し、新たな事業展開への足がかりとすることができます。
節税対策
日本の税法では、資本金の額が特定の基準、特に1億円を超えるか否かで、適用される税制が大きく異なります。資本金を1億円以下にすることで、法人税の軽減税率の適用や、交際費の損金算入枠の拡大、外形標準課税の対象外となるなど、様々な税制上の優遇措置(中小企業向け特例)を受けられるようになります。
これは、財務状況の改善だけでなく、将来の税負担を軽減するための積極的な戦略として行われます。継続的なコスト削減効果が期待できるため、多くの企業が戦略的に減資を選択しています。
株主への財産の払戻し
会社に事業規模に対して過大な資本金がある場合や、利益からの配当(利益配当)が難しい状況でも株主への還元を行いたい場合に、減資が選択されることがあります。
資本金を取り崩して剰余金に振り替え、それを原資として株主に払い戻しを行うのです。財産の払い戻しにより、株主との良好な関係を維持したり、投資家にとっての魅力を高めたりする効果が期待できます。
有償減資と無償減資の決定的な違い
減資は、会社財産が実際に外部へ流出するかどうかによって、「有償減資」と「無償減資」の2種類に大別されます。
無償減資
無償減資は、株主への払い戻しを伴わず、帳簿上の勘定科目を振り替えるだけの減資です。会社の資産は一切減少しないため、「形式的減資」とも呼ばれます。
主に、前述した「欠損金の補填」や「節税対策」を目的として行われます。無償減資を行っても、会社の純資産の総額は変動しないという特徴があります。
有償減資
有償減資は、減資の手続きと合わせて、株主に対して会社の財産(通常は現金)を払い戻す減資です。これにより、会社の資本金と同時に、現預金などの資産も実際に減少します。
事業規模の縮小に伴う資本の調整や、利益剰余金が不足している状況での株主への配当を目的として実施されます。
ここで一つ、実務上非常に重要な点を指摘しておく必要があります。現行の会社法には「有償減資」という言葉の明確な定義はありません。一般的に有償減資と呼ばれる取引は、法的には「①資本金を減少させて『その他資本剰余金』に振り替える手続き」と「②その『その他資本剰余金』を原資として株主に剰余金の配当を行う手続き」という、2つの独立した行為の組み合わせとして扱われます。
この法的な構成を理解しておくことは、後の手続きや会計処理を正確に行う上で極めて重要です。単純な一つの行為ではないため、それぞれの手続きで会社法上の要件を満たす必要があります。
特徴 | 無償減資 | 有償減資 |
目的 | 欠損金の補填、節税対策が主 | 株主への財産の払戻しが主 |
資金の動き | なし(社内の勘定振替のみ) | あり(会社の資産が株主へ流出) |
純資産の変動 | 変わらない | 減少する |
主な税務論点 | 住民税均等割への影響、中小企業税制の適用 | みなし配当の発生 |
【実践編】減資の仕訳をケース別に解説
減資の会計処理は、その目的によって仕訳の方法が異なります。しかし、どのケースにおいても共通する基本的な流れが存在します。ここでは、その基本フローから具体的なケース別の仕訳までを、分かりやすく解説します。
会計処理の基本フロー
減資の会計処理における大原則は、「資本金」勘定を直接、欠損の補填や株主への払戻しに充てることはできないという点です。会社法および会計ルール上、まず資本金を一度、株主資本内のより柔軟に扱える勘定科目である「その他資本剰余金」に振り替える必要があります。これがすべての減資仕訳の出発点となります。
例えば、1,000万円の資本金を減少させる場合、最初の仕訳は必ず以下のようになります。
借方 | 貸方 |
資本金 10,000,000 | その他資本剰余金 10,000,000 |
この仕訳により、資本金が減少し、同額のその他資本剰余金が生まれます。この後、このその他資本剰余金をどのように使うかで、仕訳が分岐していきます。
ケース1 無償減資(欠損填補)の仕訳
累積した赤字(繰越利益剰余金のマイナス)を解消するために無償減資を行う場合の仕訳です。これは2段階の処理で行われます。
- 資本金を「その他資本剰余金」に振り替える。
- 「その他資本剰余金」を取り崩し、「繰越利益剰余金」のマイナス残高を補填(相殺)する。
仕訳例:資本金を1,000万円減資し、800万円の欠損金(繰越利益剰余金のマイナス)を補填する場合
ステップ1:資本金の減少
まず、減少させる資本金1,000万円をその他資本剰余金に振り替えます。
借方 | 貸方 |
資本金 10,000,000 | その他資本剰余金 10,000,000 |
ステップ2:欠損金の補填
次に、生まれたその他資本剰余金のうち800万円を使って、繰越利益剰余金のマイナスをゼロにします。
借方 | 貸方 |
その他資本剰余金 8,000,000 | 繰越利益剰余金 8,000,000 |
この一連の処理の結果、資本金は1,000万円減少し、繰越利益剰余金のマイナスは解消されます。残った200万円は、その他資本剰余金として貸借対照表に残ります。
ケース2 無償減資(節税目的など)の仕訳
中小企業の税制優遇を受けるために資本金を1億円以下にするなど、欠損の補填を目的としない無償減資の場合、会計処理は非常にシンプルです。基本フローである「資本金」から「その他資本剰余金」への振替のみで完了します。
仕訳例:節税目的で資本金を2,000万円減資する場合
借方 | 貸方 |
資本金 20,000,000 | その他資本剰余金 20,000,000 |
この仕訳だけで、貸借対照表上の資本金の額が減少し、目的を達成できます。その他資本剰余金は、将来の配当原資や欠損填補に備えてそのまま保持されます。
ケース3 有償減資(株主への払戻し)の仕訳
株主へ財産を払い戻す有償減資も、2段階の処理が必要です。
- 資本金を「その他資本剰余金」に振り替える。
- 「その他資本剰余金」を原資として、株主へ現金を支払い、同時に税務上の「みなし配当」に対する源泉所得税を預かる。
仕訳例:資本金を1,000万円減資し、株主に全額を払い戻す場合(仮に源泉所得税が100万円発生)
ステップ1:資本金の減少
まず、払い戻しの原資とするために、資本金1,000万円をその他資本剰余金に振り替えます。
借方 | 貸方 |
資本金 10,000,000 | その他資本剰余金 10,000,000 |
ステップ2:株主への払戻し
次に、その他資本剰余金を取り崩して株主に支払います。この際、みなし配当に対する源泉徴収分を「預り金」として計上します。
借方 | 貸方 |
その他資本剰余金 10,000,000 | 現金預金 9,000,000 |
預り金 1,000,000 |
この処理により、会社の資産である現金預金が実際に900万円減少し、100万円の納税義務が発生します。
会計処理と税務処理の重要な相違点
ここで注意すべきは、会計上の仕訳と税務上の取扱いの違いです。特に無償減資による欠損填補の場合、会計上は上記のような明確な仕訳が発生しますが、法人税の計算上は、株主資本内での振替に過ぎず、株主への払戻しもないため「何もなかったもの」として扱われ、原則として所得に影響を与えません。これを「税務上は仕訳なし」と表現することもあります。
一方で有償減資は、会計上は単純な剰余金の分配ですが、税務上は「資本の払戻し」と「みなし配当」という二つの要素に分解して課税関係を判断します。会計担当者は、この会計と税務の「ズレ」を正確に認識し、法人税申告書で適切な調整を行う必要があります。
減資を成功させるための法的手続きとスケジュール

減資は、単に社内で会計処理を行えば完了するものではありません。会社の根幹である資本金を変更するため、株主や債権者といった利害関係者に大きな影響を与えます。そのため、会社法には厳格な手続きが定められており、これを遵守することが絶対条件です。
会社法が定める4つの必須ステップ
減資を適法に行うためには、以下の4つのステップを順番に踏む必要があります。
株主総会の特別決議
減資を行うには、原則として株主総会の「特別決議」が必要です。特別決議は、議決権の過半数を有する株主が出席し、出席した株主の議決権の3分の2以上の賛成を要する、普通決議よりも可決要件が厳しい決議です。
この総会では、以下の事項を決定する必要があります。
- 減少する資本金の額
- 減少する資本金の額の全部または一部を準備金とする場合は、その旨と金額
- 減資の効力発生日
債権者保護手続
資本金は、会社の信用の基礎であり、債権者にとっては債権を回収するための担保のような役割を果たします。そのため、資本金を減少させることは債権者の利益を害する可能性があるとされ、債権者保護手続きが義務付けられています。
具体的には、以下の2つの対応が必要です。
- 官報公告
政府が発行する官報に、減資する旨と、債権者が異議を述べることができる期間(1ヶ月以上)を設けることを掲載します。 - 個別催告
会社が把握している個々の債権者に対して、書面で同様の内容を通知します。
債権者はこの期間内に異議を述べることができ、異議を述べた債権者に対しては、会社は弁済や担保の提供などの対応を取る必要があります。
効力発生
減資の効力は、株主総会で定めた「効力発生日」に生じます。ただし、その日までに債権者保護手続きが完了していることが前提となります。もし手続きが遅れた場合、効力は発生しません。
登記申請
減資の効力が発生した日から2週間以内に、管轄の法務局へ資本金の額の変更登記を申請しなければなりません。この登記には、登録免許税として一律3万円が必要です。
スケジュール例
これらの法的手続きには、相応の時間が必要です。特に、債権者保護手続きにおける1ヶ月間の異議申述期間は短縮できません。また、官報への公告掲載も、申し込みから実際に掲載されるまでには1~2週間程度かかります。
これらの期間を考慮すると、減資の効力発生日から逆算して、少なくとも2ヶ月前には準備を開始するのが一般的です。特に年度末までに減資を完了させて税務上のメリットを享受したい場合などは、余裕を持ったスケジュール管理が極めて重要になります。
以下に、標準的なスケジュール例を示します。
時期 | 手続き内容 | 備考 |
効力発生日の2ヶ月前 | 取締役会にて減資内容の決定、株主総会の招集決定。官報公告の申込手続きを開始。 | 司法書士などの専門家への相談を開始するのに最適な時期です。 |
効力発生日の1.5ヶ月前 | 官報に減資公告が掲載される。把握している全債権者へ個別に催告書を発送する。 | ここから最低1ヶ月の債権者異議申述期間がスタートします。 |
効力発生日の約1ヶ月前 | 株主総会を招集・開催し、減資に関する特別決議を行う。 | 招集通知は、公開会社の場合、会日の2週間前までに発送が必要です。 |
効力発生日 | 債権者保護手続きが完了していることを確認し、減資の効力が発生する。 | この日から会計帳簿上の資本金が減少します。 |
効力発生日から2週間以内 | 管轄の法務局へ資本金の額の変更登記を申請する。 | 期限を過ぎると過料の対象となるため注意が必要です。 |
このスケジュールからわかるように、減資は思い立ってすぐにできるものではありません。法的な要件がプロセス全体の日程を規定するため、事前の計画が成功の鍵を握ります。
減資に関する税務の重要ポイント

減資は、会計や法務だけでなく、税務面でも非常に重要な論点を含んでいます。特に有償減資における「みなし配当」と、資本金1億円以下になることによる「税制メリット」は、減資を検討する上で必ず理解しておくべき二大テーマです。
有償減資で発生する「みなし配当」
有償減資によって株主が会社から金銭を受け取った場合、税務上、その全額が単純な「出資金の返還」とは見なされません。会社の内部に利益の蓄積(利益剰余金)がある場合、その払戻し額の一部は実質的な利益の分配、すなわち配当であると見なされます。これが「みなし配当」です。
みなし配当に該当する部分は、株主にとって配当所得となり、所得税の課税対象となります。そして、金銭を支払う会社側には、このみなし配当に対して所得税を源泉徴収し、国に納付する義務が生じます。
みなし配当の額は、以下の計算式で算出されます。
みなし配当額 = 交付された金銭等の額 – 払戻しに対応する資本金等の額
ここで「払戻しに対応する資本金等の額」は、さらに以下のように計算されます。
払戻し直前の資本金等の額 × (今回の払戻し対象の株式数 / 発行済株式総数)
具体例
- 払戻し直前の資本金等の額:1億円
- 発行済株式総数:1,000株
- 株主Aが保有する100株を対象に、2,000万円の払戻し(有償減資)を実施
- 払戻しに対応する資本金等の額を計算
1億円 × (100株 / 1,000株) = 1,000万円
この1,000万円が、税務上の「出資の返還」部分です。 - みなし配当額を計算
2,000万円(交付額)- 1,000万円(資本の返還分)= 1,000万円
この1,000万円が「みなし配当」となり、会社はこれに対して源泉徴収を行う必要があります。
この計算は複雑であり、誤ると追徴課税のリスクがあるため、必ず税理士などの専門家に相談することが推奨されます。
資本金1億円の壁と中小企業の税制メリット
減資の戦略的な目的として最も大きいのが、資本金を1億円以下にすることで得られる税制上のメリットです。日本の税法では、資本金1億円以下の法人は「中小法人」と位置づけられ、大企業にはない数多くの優遇措置が用意されています。
以下に、その代表的なメリットをまとめます。
優遇措置 | 内容 | 資本金1億円超の法人 | 資本金1億円以下の法人 |
法人税の軽減税率 | 年間所得800万円以下の部分に適用される税率 | 23.2% | 15% |
交際費の損金算入 | 経費として認められる交際費の上限 | 接待飲食費の50%まで | 年間800万円まで全額 |
欠損金の繰越控除 | 過去の赤字を当期の黒字と相殺できる割合 | 所得金額の50%まで | 所得金額の100%まで |
少額減価償却資産の特例 | 30万円未満の資産を一括で経費計上できる制度 | 適用なし | 年間合計300万円まで適用あり |
外形標準課税 | 赤字でも課税される地方税(法人事業税の一部) | 適用あり | 適用なし |
これらのメリットは、企業のキャッシュフローに直接的な影響を与えます。特に、赤字でも負担が発生する外形標準課税の適用がなくなる点は、多くの企業にとって減資を検討する大きな動機となっています。
ただし、この外形標準課税については注意が必要です。近年、大企業が節税目的で形式的に減資を行うケースが増えたため、税制改正によってこの「抜け道」が塞がれつつあります。2025年4月1日以降に開始する事業年度からは、新しいルールが適用されます。
新しいルールでは、たとえ減資して資本金が1億円以下になったとしても、前事業年度に外形標準課税の対象であり、かつ「資本金と資本剰余金の合計額」が10億円を超える場合には、引き続き外形標準課税の対象となります。さらに、大企業の100%子会社についても、資本金が1億円以下でも一定の要件を満たす場合には対象となる改正が予定されています。
このように、税制は常に変化しています。減資を検討する際は、目先のメリットだけでなく、最新の税制改正の内容を正確に把握し、長期的な視点で判断することが不可欠です。
減資のメリットと注意すべきデメリット
減資は多くのメリットをもたらす可能性がある一方で、無視できないデメリットも存在します。戦略的な意思決定のためには、両者を天秤にかけ、自社の状況を客観的に評価することが重要です。
減資がもたらす主要なメリット
これまで見てきたように、減資のメリットは非常に明確です。
財務体質の健全化
無償減資によって繰越欠損金を一掃することで、貸借対照表がクリーンになります。これにより、金融機関や取引先からの信用評価が改善され、資金調達がしやすくなる効果が期待できます。
税負担の軽減
資本金を1億円以下にすることで、法人税の軽減税率や交際費の損金算入枠拡大など、中小企業向けの税制優遇をフルに活用でき、大幅な節税につながります。
資本効率の向上
自己資本利益率(ROE)などの経営指標は、自己資本を分母として計算されます。減資によって自己資本を圧縮することで、利益額が同じでもROEの数値が改善し、資本効率の良い経営をしていると評価されることがあります。
信用力低下というデメリットへの対策
減資の最大のデメリットは、外部からの信用力が低下するリスクです。資本金の額は、会社の規模や体力を示す分かりやすい指標の一つとして、多くの取引先や金融機関に認識されています。そのため、資本金を減少させると、「経営状況が悪化しているのではないか」「会社が縮小しているのではないか」といったネガティブな印象を与えかねません。
しかし、このデメリットは対策が可能です。重要なのは、積極的な情報開示とコミュニケーションです。無償減資によって財務諸表上の見た目は改善される一方で、資本金の額が減るという事実は、外部の利害関係者にとって矛盾したシグナルに映る可能性があります。この認識のギャップを埋めることが、信用力低下を防ぐ鍵となります。
減資を行う際には、その目的を主要な取引先や金融機関に対して事前に丁寧に説明することが有効です。「過去の一時的な要因で発生した欠損金を整理し、今後の成長に向けた健全な財務基盤を構築するための戦略的な判断である」といったように、減資が後ろ向きな理由ではなく、前向きな経営判断であることを明確に伝えるのです。
実際の事業活動が好調であれば、その事実と合わせて説明することで、多くの場合は理解を得られます。
減資は単なる財務上の手続きではなく、ステークホルダー・マネジメントの一環と捉えるべきです。外部からの認識を適切に管理することで、デメリットを最小限に抑えつつ、メリットを最大限に享受することが可能になります。
まとめ
本記事では、減資の仕訳を中心に、その目的、種類、法的手続き、そして税務上の重要論点までを網羅的に解説しました。減資は単なる会計処理ではなく、欠損填補、節税、株主還元といった明確な目的を持つ戦略的な経営手法です。
無償減資は資産の流出を伴わない帳簿上の手続きであり、有償減資は株主への財産払戻しを伴う実質的な手続きです。この両者の違いを理解することが、適切な判断の第一歩となります。減資の仕訳は、まず「資本金」を「その他資本剰余金」に振り替えるのが基本であり、その後の目的によって処理が異なります。
法的な側面では、会社法が定める株主総会特別決議や債権者保護手続きは必須であり、完了までには最低でも2ヶ月程度の期間を見込む必要があります。また、税務面では、有償減資における「みなし配当」の源泉徴収義務と、資本金1億円以下になることによる中小企業向けの税制優遇が重要なポイントです。
ただし、外形標準課税のように、税制改正によって優遇措置が制限される動きもあるため、常に最新の情報を確認することが不可欠です。
減資は、正しく実行すれば会社の財務体質を強化し、経営の自由度を高める強力なツールとなり得ます。しかし、その手続きや税務は複雑であり、一つ間違えると予期せぬ不利益を被る可能性もあります。
本記事で得た知識を基に、自社の状況を分析し、減資が本当に最適な選択肢であるかをご検討ください。そして、実行を決断された際には、必ず税理士や司法書士といった専門家と連携し、法務・税務の両面から万全の体制で臨むことを強くお勧めします。
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