
2023年10月から「インボイス制度(適格請求書等保存方式)」が始まり、中小企業や個人事業主の皆様の中には、「紹介料」を支払う・受け取る際の処理方法に戸惑っている方も多いのではないでしょうか。
紹介料とはビジネス上の「紹介」に対する謝礼や手数料ですが、インボイス制度の導入により請求書の発行・保存方法や消費税の扱いが大きく変わりました。
本記事では、紹介料とは何かという基本から、インボイス制度との関係、適格請求書の発行要件や記載例、経費計上のポイント、源泉徴収や消費税など税務上の論点、さらにケース別の対応方法やリスク・注意点まで、経理担当者や事業者が押さえておくべき事項を徹底解説します。
日々の経理実務や経営判断にぜひお役立てください。
目次
1. 紹介料とは何か?どのような場面で発生するのか
紹介料(紹介手数料)とは、文字通り顧客やビジネスの機会を「紹介」したことに対する対価として支払われるお金です。
第三者の仲介によって新たな取引や契約が成立した場合に、紹介を行った人(紹介者)に感謝の意味も込めて支払われる謝礼金やコミッションのことを指します。ビジネスの世界では、以下のように様々な場面で紹介料が発生します。
人材紹介
採用したい企業が人材紹介会社や知人から候補者を紹介してもらい、実際に採用が決まった場合に支払う紹介料。一般に採用者の年収の○%という形で設定されることが多いです。
不動産の紹介・仲介
物件オーナーや購入希望者を不動産業者に紹介し、売買や賃貸契約が成立した際に支払う仲介手数料。宅地建物取引業法により手数料の上限が定められています。
業務委託先の紹介
ある企業が信頼できる下請け業者や協力会社を取引先から紹介してもらい、実際に契約・取引が成立した場合に支払う謝礼金。
新規顧客や取引先の紹介
既存の取引先や知人から自社のサービスを利用してくれる新規顧客を紹介してもらい、契約や注文に結びついた場合に支払われる報奨金。
社員による友人紹介
自社の従業員が友人や知人を自社に紹介し、その人が採用された場合に社員へ支払う紹介インセンティブ(この場合は通常「紹介ボーナス」として給与扱いになります)。
これらのケースでは、「紹介によって利益を得た側」(サービス提供者や採用企業など)が、「紹介という役務を提供した側」に対して一定の金銭を支払います。
紹介料は、単なる人づてのつながりでも大きなビジネスチャンスを生むことがあるため、円滑な取引関係構築の潤滑油となる重要な経費と言えます。
支払われるタイミングは業種や契約内容によって異なりますが、一般的には紹介による成果が確定した後(例えば人材紹介なら紹介した人材の入社日以降、不動産なら契約締結後など)に発生するのが通例です。
事前に取り決めた条件(例えば「契約が成立したら○万円支払う」「売上の○%を成功報酬とする」等)に従って金額が決まり、請求・支払いが行われます。
2. インボイス制度(適格請求書等保存方式)の概要と紹介料の関係性
インボイス制度(適格請求書等保存方式)は、2023年10月1日から日本で開始された新しい消費税の仕入税額控除制度です。
この制度では、仕入側(買い手)が消費税の仕入税額控除を受けるために、売り手が発行する「適格請求書(インボイス)」を保存することが求められます。
適格請求書を発行できるのは適格請求書発行事業者として税務署に登録した事業者に限られ、請求書には所定の項目(後述)を記載する必要があります。
インボイス制度導入前は、消費税の仕入税額控除に請求書の厳格な様式は求められておらず、帳簿と請求書等の保存で対応できました。しかし、制度導入後は請求書に取引ごとの適用税率や消費税額、発行事業者の登録番号などを明記した適格請求書を発行・受領しなければなりません。
このインボイス制度と紹介料の関係性について押さえておくべきポイントは以下の通りです。
紹介料は原則として消費税の課税対象です。紹介料の支払いはサービス(役務提供)に対する対価であり、提供者が課税事業者であれば通常10%の消費税が課されます。したがって、事業者間で紹介料をやり取りする場合、インボイス制度の対象取引となります。
適格請求書の保存が仕入税額控除の条件になります。例えば、自社が他社に支払った紹介料について、その相手先から適格請求書(インボイス)を受け取れば、自社はその紹介料に含まれる消費税を仕入税額控除(払いすぎた消費税の控除)できます。
しかし、適格請求書を受け取れない場合、原則としてその消費税相当額は控除できずコスト増となります。
適格請求書発行事業者でない相手への紹介料:もし紹介料の受取側(紹介者)がインボイス発行事業者に登録していない場合、その人は適格請求書を発行できません。この場合、紹介料の支払側は消費税の仕入税額控除を受けられなくなります。
ただし、制度開始から一定期間(経過措置期間)は例外が設けられており、2023年10月1日~2026年9月30日までの取引については本来控除できるはずだった消費税額の80%まで、さらに2026年10月1日~2029年9月30日までの取引については50%までを、例外的に仕入税額控除として認める措置があります(2029年10月以降は一切控除不可)。
これはインボイス未登録事業者(免税事業者等)との取引による影響を緩和するための暫定的な対応です。とはいえ、将来的には控除できなくなるため、取引先がインボイス未登録者だと自社の税負担が増えるリスクがある点に注意しましょう。
非課税取引や対象外の場合:紹介料といっても、支払先が必ずしも課税事業者とは限りません。例えば「単発の好意による紹介」で紹介者が事業者ではない場合(事業としてではなく個人的に紹介しただけの友人等)、その謝礼は消費税法上は事業者間の取引ではないため消費税の課税対象にはなりません。
このようなケースではインボイスの発行も本来不要ですが、経理処理上はその支出が事業に関連することを証明するために何らかの書面(領収書など)を残すことが望ましいでしょう。
また、自社の従業員への紹介報奨金は給与扱いとなり消費税は非課税ですので、インボイスの対象外です(後述)。
まとめると、紹介料のやり取りをする際には相手先がインボイス発行事業者かどうかを確認することが重要です。インボイス発行事業者同士の取引であれば、適格請求書の授受によって消費税の処理がスムーズに行えます。
一方、相手がインボイス未登録の場合は、将来的に消費税分のコスト負担が増える可能性があるため、契約時に金額設定や取引条件をよく検討する必要があります。
3. 紹介料に関するインボイス発行の要件、記載例、実務上の注意点
紹介料の請求書を発行する場合でも、基本的な様式は通常の請求書と同じですが、インボイス制度対応として適格請求書の必要記載事項を漏れなく盛り込む必要があります。適格請求書発行事業者である紹介者(請求書発行側)は、請求書に以下の事項を記載しなければなりません。
- 発行者の正式名称および適格請求書発行事業者の登録番号
- 取引年月日(紹介が成立し手数料が発生した日付)
- 取引先(請求先)の正式名称および住所(※インボイスでは宛名が必須項目です)
- 取引内容の明細(「紹介料」であることが分かる品目名と具体的な内容説明)
- 税抜金額と適用税率ごとの消費税額(もしくは税込金額とその内訳)
- 税率ごとに区分した合計額(標準税率10%対象分と、もしあれば軽減税率8%対象分)
- 請求書の発行日および請求書番号(管理番号)
- 発行者の住所・氏名(または名称)および押印(任意)
- 支払期限および振込先口座情報(実務上の便宜のため)
上記の要件を満たした請求書を発行することで、受取手(支払側)は適格請求書の保存要件をクリアし、仕入税額控除を受けることができます。
特に「登録番号」と「消費税額の明示」はインボイス制度において重要なポイントです。記載漏れがあると相手先で経理処理ができず迷惑をかけるだけでなく、自社にも信用問題となりますので注意しましょう。
では、紹介料の請求書の記載例をテキストベースで示します。実際の請求書作成時の参考にしてください(適格請求書発行事業者として発行するケース)。
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請 求 書 (適格請求書)
請求書番号: INV-2025-001
発行日 : 2025年4月14日
登録番号 : T1234567890123
御 中 : 株式会社〇〇〇〇
差出人 : 株式会社△△△△
件 名 : 紹介手数料のご請求
下記のとおりご請求申し上げます。
内容 数量 単価 金額
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紹介手数料 1 ¥500,000 ¥500,000
(◯◯様のご紹介による契約成立謝礼)
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小計 ¥500,000
消費税(10%) ¥50,000
──────────────────────────
合計金額 ¥550,000
※上記金額は、適格請求書発行事業者である当社が提供した役務
(契約成立の仲介)に係る請求額です。
支払期日 : 2025年5月31日(当月末日)
振込口座 : ○○銀行 ○○支店 普通預金 1234567
受取人名 : カ)△△△△
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上記は一例ですが、品目欄に「紹介手数料(〇〇案件紹介)」のように具体的内容を明記し、備考などで補足説明を入れることで、受け取った側も何に対する支払いかを容易に理解できます。
また、消費税額と適用税率(この例では10%)を明示し、自社の登録番号も記載しています。振込先や支払期限は法定事項ではありませんが、ビジネスマナーとして記載しておくと親切です。
実務上の注意点: 紹介料の請求書を作成・発行する際には次のようなポイントにも注意しましょう。
計算方法と金額の根拠を明確に
紹介料が契約金額の○%と決まっている場合や、あらかじめ定額が合意されている場合、その算定方法を請求書上で簡潔に示すと親切です(例:「成約金額1,000万円の5%として」など)。
金額の根拠が明確だと、受け取る側も内容を確認しやすく、後日の誤解防止につながります。
複数の紹介案件をまとめない
複数の案件の紹介料をまとめて請求する場合、それぞれの案件ごとに明細行を分けて記載し、対象となる契約や人物が識別できるようにしましょう。一行に「紹介料一式」とまとめてしまうと、何の紹介料か不明瞭になりトラブルの元です。
タイミングの管理
冒頭でも触れた通り、紹介料の請求タイミングは業種によって異なります。請求のタイミングを事前に契約や合意で決めておき、それに沿って正しい取引日付で請求書を発行することが大切です。
例えば「契約成立時に半額、完了時に残額請求」など段階的な支払条件がある場合も、契約内容に従って漏れなく請求します。タイミングを誤ると相手先の予算や経理スケジュールに影響し、信頼関係を損ねかねません。
適格請求書の要件充足
登録番号や税額の記載漏れがないか必ずチェックしましょう。インボイス制度開始直後は記載漏れが発生しやすいため、社内でテンプレートを用意したりダブルチェック体制を整えると安心です。不明点があれば税理士や専門家に確認することも大切です。
以上を踏まえ、正確でわかりやすい請求書を発行することで、取引先にも喜ばれ、自社の信頼向上にもつながります。
4. 紹介料を支払う側・受け取る側での請求書対応方法とフォーマット
紹介料のやり取りでは、支払う側(紹介料を支払う企業)と受け取る側(紹介料を請求・受領する紹介者)の双方で適切な対応が必要です。それぞれの立場での請求書・書類対応のポイントと、実務上のフォーマットについて解説します。
支払う側(紹介料を支払う企業)の対応
紹介料を支払う企業側としては、まず相手から正式な請求書(または領収書)を受け取ることが基本です。前述のように相手先がインボイス発行事業者であれば、適格請求書を発行してもらいましょう。受け取った請求書の内容を確認し、以下の点に注意します。
必要項目の確認: 請求書に相手の登録番号、取引内容、消費税額、請求金額、発行日などが揃っているかチェックします。不備がある場合は修正を依頼します(仕入税額控除に影響するため)。
金額・消費税の整合
請求金額と事前の契約・合意内容が一致しているか、消費税の計算が正しいかを確認します。特に税込・税抜の認識違いがないか注意しましょう。
領収書の受領
紹介料を支払った際には、領収書の受領または社内での支払記録を残します。相手から請求書をもらって銀行振込で支払った場合、振込記録と請求書で支出事実を証明できます。
現金などで支払う場合は、相手に領収書を発行してもらうか、こちらで「領収書(受領書)」を用意して相手に署名・押印してもらう方法もあります。
領収書の書式一例: 「領収書 日付:2025年4月30日 金額:¥60,000 但し書き:紹介料として(〇〇案件謝礼) 受取人:紹介 太郎(署名)」。領収書には金額や日付、但し書き(何の代金か)を明記し、5万円以上の現金取引で受領書を発行する場合は収入印紙(200円)を貼付することも忘れずに。
インボイス未対応の場合の社内処理
相手がインボイス発行事業者でないために適格請求書が発行されなかったケースでは、支払側はその取引に対する消費税の仕入税額控除ができない(経過措置期間中は一部可能)ことを認識しておきます。
社内では、その紹介料支出について「仕入税額控除対象外」または「経過措置○%控除」等の区分をして経理処理を行いましょう。また、可能であれば相手に簡易な請求書や受領書でも良いので作成してもらい、取引内容と金額を証拠として残しておきます。
支払調書の作成
紹介料の支払先が個人であり、税務上源泉徴収の対象となった場合(後述)には、年末調整時に「支払調書」を作成し税務署へ提出する必要があります。支払った金額や源泉徴収額、相手の氏名・住所などを記載する公式な書類で、社内で忘れずに対応しましょう。
受け取る側(紹介者・請求書発行者)の対応
紹介料を受け取る側、つまり紹介サービスを提供して請求を行う立場の人(法人・個人事業主等)は、適切に請求書を発行し、代金を受領することが求められます。対応方法とフォーマットのポイントは次の通りです。
請求書の発行
紹介料を請求できる条件(契約で定めた条件や成功時期)が満たされたら、速やかに請求書を発行します。フォーマットは前項で示したような一般的な請求書形式で構いませんが、インボイス発行事業者であれば適格請求書の要件を満たした形式で発行します。
Word/Excelや会計ソフトのテンプレートを利用すると良いでしょう。請求書には自社(自分)の登録番号や住所氏名、銀行口座を忘れず記載し、PDFで送付する場合は改ざん防止策にも留意します。
インボイス未登録の場合の対応
もし自分が適格請求書発行事業者でない(免税事業者などでインボイスに未登録)場合でも、紹介料の請求自体は可能です。この場合、請求書には登録番号は記載せず、通常の項目(取引日、内容、金額、宛名など)を記載した簡易な請求書または支払依頼書を発行します。
消費税額の明記については、自身が消費税を預からない立場であれば請求額は税込金額(消費税相当額を含まない実質同額)として扱います。
例えば課税事業者なら「¥110,000(税抜¥100,000、消費税¥10,000)」と書くところ、免税事業者なら「¥100,000(非課税扱い)」と総額のみ記載する形です。取引先には「当方は適格請求書発行事業者ではありません」など一言伝えておくと親切でしょう。
書類の保存と領収書発行
請求書を発行したら、自身でもその控えを保存します(インボイス発行事業者であれば写しの保存が義務)。相手から代金を受領した際、相手から領収書の発行を求められた場合には対応します。
銀行振込の場合通常領収書は不要ですが、現金や手形で受け取った際は領収書を発行するケースもあります。
領収書には但し書きで「紹介料として」と明記し、必要に応じて収入印紙を貼ります(紹介料が事業に関する取引であれば印紙税の課税対象となるため、金額が5万円超なら200円の印紙を貼付)。
フォーマット例の活用
請求書・領収書とも、社内にフォーマットがない場合は市販のテンプレートやクラウドサービスを活用しましょう。特にインボイス制度対応のテンプレートであれば、登録番号欄や税込明細欄が用意されていて便利です。
フォーマットは自由ですが、項目漏れがないことと見やすく整理されていることが大切です。
受け取る側としては、正確な請求書発行と迅速な入金確認が仕事の対価を確実に得るポイントです。もし相手企業から「請求書はいらないから領収書だけで良い」と言われた場合でも、基本的には請求書を発行する方が望ましいです。
請求書がなければ自社の売上記録も曖昧になりますし、特にインボイス制度開始後は取引相手も経費処理で困るためです。適切な請求書発行・受領により、双方の経理処理がスムーズに進むように心がけましょう。
5. 紹介料は経費として計上できるか?どんな要件を満たす必要があるか
紹介料は適切なビジネス目的に基づくものであれば、経費(損金)として計上することが可能です。つまり、自社の事業をスムーズに進めたり拡大したりするために支払われる紹介料であれば、税務上も原則として必要経費として認められます。
ただし、経費計上にあたってはいくつかの要件や注意点があります。誰に支払う紹介料かによって、経理上の処理科目や扱いも異なりますので、以下に整理します。
(1) 支払先が「紹介業者」など事業者の場合
人材紹介会社や不動産仲介会社、業務マッチング事業者など、紹介を業務として行っている法人・個人事業主に紹介料を支払う場合、これは明らかに事業サービスに対する対価です。
このケースでは、支払側はその金額を「支払手数料」という勘定科目で経費計上します。紹介料の請求書や契約書など取引の証憑をしっかり受け取り保管しておくことで、正当な経費として処理できます。
インボイス制度下では先述の通り、適格請求書の保存が仕入税額控除の前提となりますが、経費そのものは請求書さえあれば問題なく計上可能です。
なお、「支払手数料」という科目は銀行の振込手数料なども含め、外部に支払う各種手数料を幅広く処理する科目です。紹介料もこの中に含めて差し支えありません(全額が必要経費として認められます)。
(2) 支払先が取引先企業や知人などで、紹介を本業としていない場合
例えば、たまたま取引先の社長が別の顧客を紹介してくれた場合や、知人が顧客を連れてきて契約につながった場合など、紹介を業としていない相手への謝礼は、経理上「接待交際費」として処理するのが一般的です。
接待交際費とは、取引先や事業関係者との交際・慶弔・贈答などに使う費用の科目で、事業の円滑化のための支出を指します。
事業として紹介業を営んでいない相手への謝礼金(紹介料)はこれに該当し、税務上は交際費等の損金算入限度の適用対象となります(中小法人で一定額までは全額損金、超過分は50%損金、資本金1億超の大企業は原則損金不算入などの制限があります)。
ただし、このようなケースでも事前に紹介料支払いの契約を交わし、役務内容と金額を明確に定めている場合には、「支払手数料」科目で処理することも可能です。
その際は契約書や請求書といった証憑を必ず保存し、「単なる贈与ではなく業務委託に基づく支払い」であることを示せるようにしておきます。きちんと契約を締結していれば、税務調査の際にも交際費ではなく手数料として認められるケースがあります。
(3) 支払先が自社の従業員の場合
社員紹介制度などで自社社員に紹介報奨金を支払う場合、これは会計上「給与手当」として処理します。自社社員は取引先ではなく社内の人間ですので、たとえ人材紹介の成果に対する報奨であっても、それは給与の一部とみなされます。
経費としては人件費扱いで全額損金算入できますが、税務上は給与所得として源泉所得税の対象となります(賞与や手当と同様に所得税・住民税が課税され、社会保険の算定基礎にも含まれる場合があります)。
社内規定で紹介ボーナス制度を定め、支給額や条件を明確にしておくと運用がスムーズです。この支払いについては請求書は不要ですが、社内稟議書や支給記録などを残しておきましょう。
経費計上の要件として共通して言えるのは、「その支出が事業遂行上必要であり、かつ金額が妥当であること」「支払い事実と内容を裏付ける証拠があること」です。
紹介料の場合、証拠となるのは契約書、請求書、領収書、メールでのやり取り記録などです。口約束で多額の紹介料を支払った場合、後日税務署から「本当に事業に必要な支出だったのか?」と疑われるリスクがあります。
必ず書面で条件を取り決め、支払ったら領収書をもらうなどして、第三者にも説明できる状態にしておきましょう。
また、金額についても常識の範囲を超える高額な紹介料は要注意です。例えば「契約額の50%を紹介料として支払った」など極端なケースは、実質的に利益の分配や隠れたキックバックと見なされる恐れがあります。
業界標準や過去の事例を参考にし、相場に即した適正な金額で取り決めることが大切です。
最後に、経費計上できるからといって無制限に損金算入できるわけではない点も留意しましょう。
前述のように交際費には限度額がありますし、仮に不適切な支出(例えば法律に反するようなリベート等)が判明した場合は経費として認められない可能性もあります。正当なビジネス上の紹介に対する正当な報酬であることを意識して、健全な範囲で経費処理してください。
6. 紹介料にかかる税金:源泉徴収、消費税の取り扱い
紹介料に関連して考慮すべき税金として、所得税の源泉徴収と消費税の2つがあります。それぞれどのように取り扱うべきか解説します。
所得税の源泉徴収(源泉所得税)の扱い
紹介料の支払い相手が個人である場合、所得税法上の「報酬・料金等」に該当し、支払う側が所得税を源泉徴収する義務が生じるケースがあります。一方、相手が法人(会社)の場合は通常、報酬に対する源泉徴収は不要です(法人への支払いは先方が自分で法人税申告するため)。
個人事業主やフリーランスへの紹介料
支払先が個人で、事業や副業として紹介料を受け取っている場合、その支払いは税法上「事業所得等に係る報酬」とみなされます。
具体的にはデザイン料やコンサル料などと同様、10.21%(復興特別所得税を含む)の源泉徴収税率を適用しなければなりません(1回の支払額が100万円を超える部分については20.42%の税率)。
例えば個人に対し50万円の紹介料を支払う場合、5,105円を源泉徴収して差し引き44万4,895円を支払い、翌月10日までにその5,105円を税務署に納付します。
注意:紹介料という名目でも、支払う内容が「継続的な業務委託報酬」や「講演料」に該当する場合などは源泉徴収が必要です。基本的には法人から個人へ業務に対する報酬を支払う場合は源泉徴収すると覚えておくと良いでしょう。
個人だが事業としてでなく、一時的な謝礼の場合
紹介者が個人で、その紹介行為が事業というより好意的な一時的行為と捉えられる場合、支払側が敢えて交際費扱いとし謝礼金として支払うケースがあります。この場合、法的には厳密な業務報酬ではないとの解釈もあり、源泉徴収を行わないこともあります。
しかし線引きは難しく、税務調査で指摘される可能性もゼロではありません。安全策を取るなら、個人への紹介料支払いは少額でも源泉徴収しておくほうが無難です。
従業員への紹介ボーナス
自社社員に支払う採用祝い金などの紹介料(紹介ボーナス)は、前述のとおり給与所得として扱われます。そのため給与からの源泉徴収(所得税・住民税)および社会保険料の控除を通常の給与と同様に行います。
社内の給与計算に含め、月々または賞与時にまとめて課税します。
源泉徴収を行った場合、支払側は源泉徴収税の納付を忘れないようにしましょう(翌月10日まで、または特例適用時は年2回など)。また、支払先の個人には年末までに支払調書を交付(または必要事項の通知)し、自身の確定申告で申告してもらう必要があります。
源泉徴収は本来受け取るべき金額から税金を天引きするため、事前に個人の相手に説明しておくと親切です(「規定により源泉税○○円を控除してお支払いします」など)。
万が一、源泉徴収すべき支払いで源泉徴収を失念すると、支払側が後日その税額を肩代わり納付しなければならず、ペナルティが科されることもあります。適用の有無を含め、慎重に判断してください。
消費税の取り扱い
消費税については、第2章でも触れましたが、改めて整理します。紹介料は基本的に課税取引(国内における事業者間のサービス提供)に該当します。
そのため、紹介料を受け取る側(紹介者側)は消費税の納税義務が生じ、支払う側(支払企業)は仕入税額控除の対象として扱うことになります。ただし、これは双方が課税事業者である場合です。
紹介料を受け取る側が課税事業者の場合
通常、紹介料には消費税(10%)が上乗せされます。例えば税抜100万円の紹介料なら消費税10万円を合わせた110万円を請求する形です。受け取る側(課税事業者)はこの10万円を預り金として後日消費税申告時に国へ納税します。
一方、支払う側は110万円を支払いますが、適格請求書の保存によりそのうち10万円を自社の消費税申告で控除できます。要するに、課税事業者同士であれば消費税部分は中立で、最終的な負担者は消費税の仕組み上、最終消費者か免税事業者になります。
紹介料を受け取る側が免税事業者(インボイス未登録者)の場合
この場合、消費税法上はその取引は消費税の課税対象外(不課税取引)となります。免税事業者はそもそも消費税を徴収・納税しない立場ですので、請求額も消費税込みではなく「税込=税抜同額」となります。
支払う側から見ると、請求額に形式上消費税が含まれていないため、仕入税額控除に計上すべき消費税額自体が存在しないことになります(実質的には消費税分控除できずコスト増となるのと同義です)。
ただし、前述の経過措置により2029年9月まではみなしで一定割合の仕入税額控除が認められていますが、それもゆくゆくはゼロになります。したがって、免税事業者への紹介料支払いは将来的に消費税コストとして内在化するといえます。
取引先が免税の場合、例えば「税込110万円(消費税10万円込み)」と約束していたなら、免税事業者からは110万円の請求(非課税扱い)となり、仕入税額控除はできません。結果、自社は110万円まるごと費用負担する形です(課税事業者から請求された場合と比べ10万円分負担増)。
紹介料を受け取る側が非事業者(純粋な個人等)の場合
この場合、法律上そもそも「事業として行われた取引」ではないため、消費税の課税そのものが発生しません。紹介者が消費税の納税義務を負わないので、請求額もシンプルに「○○円(非課税)」となります。
支払う側も仕入税額控除はありません(控除対象となる消費税がないため)。例えば友人に個人的謝礼として5万円払った場合、それは消費税とは無関係なお金です。このケースではインボイス制度は関与しませんが、社内処理としては交際費等で経費に落とすだけです。
以上を踏まえると、紹介料に係る消費税は「誰に支払うか」によって扱いが変わることがわかります。経理担当者としては、支払先が課税事業者か免税事業者か、法人か個人かを把握し、それに応じた処理(インボイスの保存・区分経理・仕入税額控除の可否判断)をする必要があります。
なお、紹介料のような役務は国内取引であれば10%課税ですが、仮に紹介サービスの提供が国外で行われた場合などは「輸出免税」や「不課税」扱いになる可能性もあります(特殊なケース)。
大半の読者の皆様には当てはまらないと思いますが、国際取引に絡む紹介料の場合は専門家に確認してください。
最後に補足として、印紙税について触れておきます。紹介料の授受に際し、5万円以上の金銭の受領書を発行する場合には印紙税が課税されます。
具体的には領収書や受取書に収入印紙を貼付する義務が発生します(取引が法人間の営業取引である場合)。紹介料の金額が大きい場合、領収書に200円またはそれ以上の印紙を貼り消印するのを失念しないよう注意しましょう。
ただし、請求書(※代金受領の証憑ではない)には基本的に印紙税はかかりません。また、紹介料が非事業者への支払いである場合は「営業に関しない受取書」として印紙税非課税となるケースもあります。この点も覚えておくと良いでしょう。
7. ケース別:個人への紹介料、法人への紹介料、インボイス未登録者からの紹介料
紹介料に関する実務対応や税務処理は、支払先の属性によって異なります。ここでは、「個人に紹介料を支払う場合」「法人に紹介料を支払う場合」そして「インボイス未登録事業者からの紹介料を受け取る(または支払う)場合」のケース別にポイントをまとめます。
個人への紹介料を支払う場合
紹介料の支払先が個人(自然人)であるケースです。これは、紹介者が会社組織ではなくフリーランスや副業の個人、あるいは単なる知人である場合に該当します。
経理処理と科目
前述したように、紹介を業務として行っている個人事業主への支払いであれば「支払手数料」として処理します。そうでない個人への謝礼の場合は「接待交際費」扱いが一般的です。どちらにせよ事前に契約などで明確化していれば手数料科目で落としやすくなります。
請求書・領収書の授受
個人であってもビジネスとして紹介を行っている人なら、請求書を発行してくるでしょう(適格請求書発行事業者であればインボイス)。
一方、ビジネス慣れしていない知人等だと請求書を出してこないこともあります。その場合でも、こちらから領収書フォーマットを用意し署名をもらうなどして、金銭の受け渡し記録を残すようにしましょう。
宛名や金額、日付、趣旨(〇〇紹介謝礼)を記載した簡単な書面で構いません。これがないと、後で経費の証明ができなくなる恐れがあります。
源泉徴収
個人への支払いは源泉徴収が必要になる場合が多いです。特に相手が継続的に紹介業務をしている個人事業主なら源泉徴収は必須と考えましょう(支払金額の10.21%を天引き)。
一度きりの紹介であっても、法的には「雑所得的な報酬」に該当し源泉徴収要と判断される場合があります。
実務上は、支払う金額が比較的大きい場合(例:数十万円以上)や、契約書を交わして正式な業務委託と位置付けた場合には源泉徴収するケースが多いです。少額で交際費的に処理するなら源泉しないこともありますが、判断に迷えば税理士に相談するのが安全です。
消費税
相手の個人が課税事業者(適格請求書発行事業者)かどうかで変わります。個人事業主でも年商1,000万円以下なら免税事業者の場合があります。インボイス登録の有無を確認し、登録していれば請求書に登録番号が記載されているはずなので仕入税額控除OKです。
未登録ならその請求書(あるいは受領書)は適格ではないので、消費税は控除不可となります(経過措置で一部控除は前述)。個人=免税事業者とは限らない点に注意しましょう。最近はフリーランスでもインボイス登録する方が増えています。
留意点
個人への支払いでは、後日のトラブル防止に特に気を配る必要があります。口頭の約束だけだと「聞いていない」「こんなはずでは」という食い違いが起こりがちです。
契約書まではいかなくとも、メールや文書で「○○を紹介してくれたら××円を支払う」旨を事前確認しておきましょう。
また、社外の個人に多額の謝礼を支払うと、場合によっては贈収賄や利益供与と誤解されないかも検討してください(例えば相手が取引先企業の従業員個人だと、その会社との関係で問題になることがあります)。健全な範囲で透明性を保つことが大切です。
法人への紹介料を支払う場合
紹介者が法人(会社組織)であるケースです。人材紹介会社、不動産仲介会社、コンサル会社などが典型例ですが、事業目的が紹介業でない会社がたまたま顧客を紹介してくれる場合も含みます。
経理処理と科目
支払先が法人であれば、その会社にとっては事業収入になります。支払う側の仕訳科目は、多くの場合「支払手数料」です。紹介業を本業とする会社ならもちろん手数料ですし、一時的な紹介でも契約次第では手数料科目で処理できます。
もし純粋な好意の紹介に対する謝礼を法人に支払う場合は、交際費的なニュアンスもありますが、法人間で交際費というのはやや特殊です(受け取る法人側では雑収入的に計上するでしょう)。
基本的には法人に支払う以上ビジネス取引と考えて手数料科目を使うのが自然です。
請求書の受領
法人が相手であれば、通常は先方から請求書が発行されてきます。しかも現在はインボイス制度がありますから、ほとんどの取引企業は適格請求書発行事業者として登録済みでしょう。
請求書に登録番号や消費税額が記載された適格請求書として受領し、正しく保存してください。法人相手の場合、いい加減なメモ書きで済まされることはまずなく、正式な請求書が届くはずです。万一請求書が来ないようなことがあれば督促しましょう。
源泉徴収
法人への支払いでは、原則として源泉徴収は不要です。税法上、源泉徴収が課されるのは弁護士・税理士報酬など一部の専門職への支払いか、個人への報酬です。法人に対する紹介料支払いはこれらに該当しません。
したがって、請求金額をそのまま全額支払えばOKです。ただし、紹介料とは別に成功報酬として役員個人に支払うなどイレギュラーなケースがあれば別途検討が必要です(基本的には避けましょう)。
消費税
相手法人が課税事業者であれば、請求額に消費税が含まれます。上でも述べたように適格請求書を受け取っていれば仕入税額控除可能です。相手が万一免税事業者(売上規模が小さい法人など)の場合、適格請求書は来ません。
その場合は個人の免税事業者と同様の扱いになりますが、法人で敢えて免税を選択しているところは少ないでしょう(新設法人で二年間免税などはありえます)。取引開始時にインボイス登録の有無を確認しておくと安心です。
留意点
法人間の契約では、契約書を交わすことが多いです。特にまとまった金額の紹介料が発生する場合、事前に業務委託契約や業務提携契約を結んでおくとお互い安心でしょう。そこに報酬額や支払条件、守秘義務、成果基準などを盛り込んでおけば、後々の紛争防止になります。
また、不動産や人材などライセンス制の業界では、無許可の仲介行為にならないように注意が必要です(例えば不動産の売買契約で、宅建業の免許がない会社が介在して報酬を受け取るのは法律上問題となりえます)。
正規の手続きで行うようにしましょう。最後に、法人への支払いであっても相手が取引先企業の場合、その企業内での処理(会社の収益になる)なのか個人へのキックバックになっていないかなど、公正さにも配慮が必要です。
インボイス未登録者からの紹介料(免税事業者との取引)
こちらは少し視点を変えて、インボイス未登録者(免税事業者)から紹介を受けた場合や、逆に自社がインボイス未登録で紹介料を請求する場合のケースです。
2023年のインボイス制度開始以降、中小の個人事業主や小規模法人の中には免税事業者のままのところもあります。このような取引では、消費税の処理を中心に通常と異なる点があります。
免税事業者(未登録事業者)に紹介料を支払う場合
免税事業者は適格請求書を発行できないため、支払側は適格請求書を受け取れません。したがって本来であれば仕入税額控除はできず、その取引に含まれるであろう消費税相当額は控除不能となります。
前述の通り経過措置期間中は80%/50%の仕入税額控除が残されていますが、いずれゼロになります。
支払企業にとっては将来的なコスト増要因なので、取引条件の見直しを検討することもあります。例えば「相手がインボイス未登録なら支払う報酬額を税抜ベースで値下げ交渉する」ケースも散見されます。
実際、インボイス制度開始に伴い「免税事業者には今後紹介料は支払えない」と通知する大企業もあったほどです。
中小企業同士ではそこまで強硬なことは少ないでしょうが、自社が支払う側なら可能なら相手にインボイス登録を促す、もしくは金額を税込総額で据え置く代わりに税負担分を調整するといった対応策が考えられます。
免税事業者(未登録事業者)として紹介料を受け取る場合
自分が紹介者でインボイス未登録であるケースです。取引先からすると、自社が未登録だと仕入税額控除ができないため、取引敬遠や報酬減額の対象になるリスクがあります。フリーランスの方などは、この点に留意してビジネス上不利にならないか検討しましょう。
必要に応じてインボイス発行事業者の登録を検討するのも一案です(課税事業者になるということなので年間売上1,000万円以下でも消費税申告義務が生じますが、その分報酬を上乗せ交渉しやすくなる利点もあります)。
逆に免税のまま行くのであれば、請求書には「当方適格請求書発行事業者ではないため、消費税相当額の控除はできません」等注記しておくと親切です。
また取引先から報酬額について相談されたら、誠意を持って応じる姿勢も大切です(自社にとっては痛手でも、長期的な関係維持を考えましょう)。
書類対応
支払う側は、未登録者との取引でも帳簿と請求書(適格ではないが)や経費精算書などの保存が必要です。インボイスではない請求書にも、できれば取引内容や金額を詳細に書いてもらいましょう。受け取る側(未登録者側)も、通常の請求書発行は行います。
適格請求書と違って書式自由とはいえ、基本項目(誰にいつ何の対価としていくら請求するか)は網羅してください。金額は税込総額表示が原則ですが、免税事業者の場合「消費税額等:0円(免税事業者のため)」といった注記を入れる例もあります。
まとめると、インボイス未登録者との紹介料のやり取りでは、消費税分の扱いに注意が必要です。支払側は控除できない分コスト増となり、受取側は取引先からの見え方に影響が出ます。この問題はインボイス制度導入に伴う過渡的な悩みですが、少なくとも2029年以降は完全実施となるため、今のうちから取引先と方針を話し合っておくのも良いでしょう。
最終的には「信頼できる相手に正当な報酬を支払う」という根本は変わりませんので、透明性を確保しつつ双方にメリットのある形を探ってください。
8. 紹介料支払いのリスクや注意点(契約書、証拠保存など)
最後に、紹介料を支払う際に気を付けておきたいリスクや注意点についてまとめます。ここまで述べた内容と一部重複しますが、特に重要な事項を再確認しましょう。
契約書の締結と条件明示
紹介料に関するトラブルを避ける第一のポイントは、事前に書面で条件を取り決めておくことです。どんな成果に対していくら支払うのか、支払時期はいつか、支払方法はどうするか、場合によっては成果が不十分な場合の減額やキャンセルポリシーなども決めておくと安心です。
契約書まではいかなくとも、少なくともメール等で合意事項を書面化し、双方で認識を揃えておきましょう。これにより、「聞いていない」「こんなはずではなかった」といった後日の紛争を防げます。
また、契約書には秘密保持条項や再紹介の禁止(勝手に第三者に情報を横流ししない)なども盛り込めるため、ビジネス上のリスクヘッジにもつながります。
証拠書類の保存
紹介料の支出・受取に関する証憑類(しょうひょうるい)は必ず保存してください。具体的には、請求書、領収書、契約書、支払記録(振込明細や小切手控え)、メールのやり取りなどです。
税務調査では「その経費は本当に必要だったのか」「実在する支払いか」を確認されますので、これらの資料がないと最悪経費否認のリスクがあります。
インボイス制度下では適格請求書や帳簿の保存期間は原則7年間(電子帳簿等保存ならデータで保存)となっています。紙でも電子でも、決められた期間きちんと保管し、すぐ提示できる状態にしておきましょう。
適法性・社内規定のチェック
紹介料の支払いが法令や業界ルールに抵触しないか事前に確認することも大切です。例えば、公務員や官公庁職員に対して何らかの斡旋料を支払うことは贈賄に該当する可能性がありますし、一部業界(金融、医療、建築など)では不適切なリベート提供が規制されている場合があります。
また、自社の社内規定で「紹介料支払いには所定の承認が必要」等の取り決めがあれば、そのフローを踏む必要があります。特に大きな金額を動かす際には社内の法務・コンプライアンス部門にも相談し、クリアにしておきましょう。
金額や成果に関する認識合わせ
紹介料は成果報酬型の支払いであるケースが多く、成果の定義をはっきりさせておかなければなりません。
例えば「契約成立」を成果とする場合、契約書にサインした時点なのか、実際に取引金額が支払われた時点なのか、あるいは一定期間経過(クーリングオフ期間終了など)後なのかを決めておく必要があります。
人材紹介でも「○ヶ月以上勤務が続いたら」支払うなど条件を付すことがあります。こうした支払条件が満たされたかどうかの確認を双方でしっかり行い、満たされたら速やかに請求・支払いするという信頼関係を築きましょう。
条件に満たない場合の不支給や一部返金条項なども契約に明記できるとベターです。
過剰な紹介料のリスク
一般的な相場を大きく逸脱する紹介料設定は、税務上もビジネス上もリスクです。税務署は、経費として計上された金額が常識とかけ離れていると「本当にその価値のサービスだったのか?」と疑いを持ちます。
また、相手にとっても過大な報酬は「何か裏があるのでは」と不信を抱かせかねません。相場感を調べ、適正水準で契約しましょう。万一高額になる理由があるなら、契約書や見積書に根拠を明記し、説明できるようにしておくべきです。
支払い報告と社内チェック
特に社内の人間が絡む紹介制度では、公平性と透明性を保つことが重要です。従業員への紹介ボーナスは社内規定を整備し、全社員に周知します。
また、役員や従業員の親族等に紹介料を支払う場合(関連当事者取引)は、社内承認を厳格化し、あとでオーナーへの利益移転と見られないように注意します。誰にいくら支払ったかを社内で管理し、必要に応じて株主や監査役にも報告できるようにしておきます。
支払後のフォロー
紹介料を支払ったからそれで終わり、ではなく、その紹介がもたらした結果をフォローし、活かすことも大切です。例えば紹介で得た顧客との取引が順調か、人材が定着しているかなどを確認し、紹介者にも簡単に報告すると良いでしょう。
これは経理というより経営上の話ですが、丁寧なフォローが次の紹介や信頼関係構築につながります。反対に、紹介された相手に問題があった場合も紹介者にフィードバックし、今後の参考にします。
ビジネスは人の縁で広がるものですから、紹介料を単なるお金のやり取りではなく、関係を強化する投資と捉える姿勢が重要です。
以上、紹介料に関するリスクと注意点を挙げましたが、総じて言えるのは「契約と記録と信頼」が肝心だということです。
契約で条件を定め、記録(エビデンス)を残し、互いの信頼を損なわないよう公正に対応する――これらを守っていれば、紹介料の支払いは企業活動の円滑油として非常に有用に機能します。適切なルール整備のもとで紹介制度を活用し、ビジネスの発展に役立ててください。
おわりに: 紹介料とインボイス制度について、基本から実務まで詳しく解説してきました。経理担当者や事業主にとって、制度変更に対応しながら日々の取引を正しく処理していくのは大変ですが、本記事の内容がお役に立てば幸いです。
ポイントを整理すると、「紹介料は正しく扱えば有益な経費であり、インボイス制度下では適格請求書の対応が重要」「税務上のルール(経費区分・源泉・消費税)を守りつつ、契約と証拠でリスク管理する」ことが大切です。
ぜひ自社のケースに照らし、円滑な紹介料のやり取りと適切な経理処理を実践してください。今後も制度改正や実務上のノウハウがアップデートされる可能性がありますので、最新情報に注意しつつ、健全なビジネス慣行を築いていきましょう。
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