請求書の書き方請求書の管理 適格請求書保存方式(インボイス制度)の書類の記載事項や消費税額の計算方法を解説! 最終更新日: 2023/01/21   公開日: 2022/06/14

適格請求書保存方式(インボイス制度)は2023年年10月1日から適用される仕入税額控除を受けるために新たに導入された制度です。インボイス制度適用後は、同制度の適用を受けるためには適格請求書の交付や保存を行わなければなりません。

本記事では、適格請求書とは何か解説した上で、正式な書き方や、制度が実施されることで変更になる点をご紹介します。インボイス制度について理解を深めていきましょう。

適格請求書とは?

適格請求書は、2023年10月1日から適格請求書保存方式(インボイス制度)という新しい制度が始まる際に必要となる所定の記載要件を満たしている請求書のことを指します。
そして適格請求書を発行できるのは、事前に申請・登録を行った適格請求書発行事業者に限られます。適格請求書発行事業者の登録を行うと登録番号が通知されます。従来の請求書との大きな違いはこの『登録番号』を請求書に記載する点です。

さらに、『発行者の名称』『取引年月日』『取引内容』『取引先の名称』『軽減税率対象である旨の表記』『適用税率ごとに区分した合計額』『適用税率』『適用税率ごとの消費税額の合計』を記載する必要があります。従来の請求書に左記の記載を追加するのみですので、インボイス制度の導入によって適格請求書の作成が大きな負担になるということはないでしょう。

インボイス制度とは?

インボイス制度は所定の記載要件を満たしている請求書(適格請求書)の交付を受け、その保存を行うことで消費税の仕入税額控除を受けられる制度です。

そのため、売り手側は、適格請求書発行事業者であれば、適格請求書の交付を求められた場合はそれに応じる必要があり、また買い手側も仕入税額控除を行う場合は、交付された適格請求書を保管しておく必要があります。

インボイス制度の目的は、請求書を交付・保存したうえで事業者ごとに正しく消費税を計算して納付することにあります。

もともとインボイス制度が採用されるようになった背景には、10%の消費税と、食品などに適用される軽減税率の8%が混在していることが関係しています。この2つの税率が運用されることになり、商品やサービス、取引の内容に対する税率を明確にする必要が出てきました。

このような2つの税率を区分して記載したインボイスを仕入税額控除の計算基礎とすることで、仕入税額控除制度の適正性、透明性を確保するためにインボイス制度が導入され、それぞれに適用される消費税率・消費税額を適格請求書に明記することになったのです。

コラム▼
インボイス制度とは?個人事業主にも発生するのか?対処法を解説

適格請求書の書き方

適格請求書には記載が必須となっている項目があります。

・適格請求書発行事業者の名称または氏名
・適格請求書発行事業者の登録番号
・取引年月日
・取引内容(軽減税率の対象品目であることを明記する)
・適用税率ごとに区分した対価の合計額
・適用税率
・適用税率ごとの消費税額の合計
・適格請求書を受領する事業者の名称または氏名

現行の区分記載請求書との記載内容の主な違いは次のとおりです。

・適格請求書発行事業者の登録番号を記載すること
・適用税率および税率ごとの消費税額を記載すること

現行の区分記載請求書等保存方式では、『適格請求書発行事業者の登録番号』『適用税率および税率ごとの消費税額』の記載はありませんでした。しかしインボイス制度が取り入れられる2023年10月1日からは以上の項目を追加で記載しなくてはなりません。

適格請求書の参考例

適格請求書の書き方の参考例をご紹介します。

    【現行】区分記載請求書【令和5年10月より】適格請求書
記載項目・発行者の氏名や名称
・取引年月日
・取引内容(軽減税率の対象品目であること)
・税率ごとに区分して合計した税込対価の額
・請求先の氏名や名称
・発行者の氏名や名称
・適格請求書発行事業者の登録番号
・取引年月日
・取引内容(軽減税率の対象品目であること)
・税率ごとに区分して合計した対価の額
・税率ごとの消費税額と適用税率
・請求先の氏名や名称
書き方
の例
〇〇〇株式会社御中
△△△商店
●年●月分請求 54,600円(税込)
●/2 品目A(※)5,000円
●/10 品目B 6,000円


合計 54,600円
(10%対象 33,000円)
(8%対象 21,600円)
※軽減税率8%対象商品
〇〇〇株式会社御中
△△△商店(T1234…)
●年●月分請求 54,600円(税込)
●/2 品目A(※)5,000円
●/10 品目B 6,000円


合計 54,600円
(10%対象 33,000円 消費税3,000円)
(8%対象 21,600円 消費税1,600円)
※軽減税率8%対象商品

このように現行の区分記載請求書と2023年10月からの適格請求書では、記載項目が異なります。

参考:インボイス制度の概要 | 国税庁

適格請求書を交付できない事業者(免税事業者)からの課税の仕入れについて

適格請求書を交付するには適格請求書発行事業者の申請・登録が必要ですが、適格請求書は「請求先が請求元に支払った消費税」を記載するものであるため、請求元が消費税の納税義務を免除されている免税事業者である場合には、適格請求書の交付を行えません。免税事業者が適格請求書を交付するには、「課税事業者選択届出書」を提出して課税事業者となり、消費税の納税義務を負う(免税事業者ではなくなる)必要があります。。

適格請求書を交付できない事業者(免税事業者)つまり、適格請求書発行事業者の登録を行っていない事業者から仕入れを行うと次のようなことが起きます。

条件:A社は適格請求書発行事業者、B社は免税事業者(適格請求書発行事業者ではない)

A社はB社の製品を税込11,000円(内消費税相当額1,000円)で仕入れて、売上が22,000円(内消費税2,000円)になった場合のA社の納付税額

【インボイス制度導入前】
売上税額(2,000円)ー仕入税額相当額(1,000円)=納付税額(1,000円)

【インボイス制度導入後】
売上税額(2,000円)ー仕入税額相当額(0円(※))=納付税額(2,000円)
 ※下記のとおり、経過措置があります

インボイス制度導入後は、適格請求書がなければ仕入税額控除ができないため、仕入税額が0円の扱いで計算されることになります。そのため免税事業者との取引がある場合は納付税額が大きくなってしまいます。ただし、下記の期間は一部の金額が控除されます
・令和5年10月1日から令和8年9月30日まで:1,000円×80%=800円
・令和8年10月1日から令和11年9月30日まで:1,000円×50%=500円

参考:インボイス制度が始まります!– 国税庁

消費税額の計算方法

消費税の計算方法については、次の3つの計算パターンを参考にしてみましょう。

組み合わせ売上税額        仕入税額        
<割り戻し計算>※原則
異なる税率ごとに区分したうえで課税標準額の合計にそれぞれの税率を掛けて計算する
<積上げ計算>※原則
適格請求書等に記載の消費税額を積み上げて計算算出する
<割り戻し計算>※原則
異なる税率ごとに区分したうえで課税標準額の合計にそれぞれの税率を掛けて計算する
<割り戻し計算>※特例
課税期間中に国内において行った課税仕入れにかかる支払対価の額を、異なる税率ごとに区分した金額の合計額にそれぞれの適用税率に基づき割り戻し、仕入税額を計算する
<積上げ計算>※特例
取引先へ交付した適格請求書等の写しを保管している場合には、これらの書類に記載した消費税額等を積み上げて売上税額を計算する
<積上げ計算>※原則
適格請求書等記載の消費税額等を積み上げて計算する

消費税額の計算の具体例

ここでは、①のパターンにおける具体例を見ていきます。まず、取引内容は次のとおりです。

・1,080円(税込)の商品を100個販売
・すべて軽減税率の対象(適用税率8%)
・インボイス制度にもとづいて請求書を100枚発行

【割り戻し計算】

1.軽減税率対象取引金額の合計(税込)108,000円
2.1の税抜き金額100,000円
3.消費税の課税標準額100,000円
※2の額の1,000円未満を切り捨てる
4.消費税額8,000円
※3の額に×8%

【積上げ計算】

1.軽減税率対象取引1,080円に含まれる消費税額80円
2.1の取引に関する適格請求書の発行枚数100枚
3.消費税額8,000円
※80円×100枚の計算   

仕入税額控除を受けることができる要件

もし仕入税額控除を受けられなくなってしまえば、納税する消費税額が今までよりも大きくなってしまう可能性があります。

仕入税額控除とは、納めるべき消費税を計算するにあたり、課税売上高の消費税額から課税仕入の消費税額を差し引ける仕組みのことです。前述した通り、仕入税額控除が適用されなくなれば、差し引ける額が0円になるため、納付税額は増えることになります。

しかし一定の要件を満たせば仕入税額控除を受けることができます。その要件について解説していきます。

一定の事項を記載した帳簿の保存

まず条件となるのは一定の事項を記載した帳簿を保存することです。課税仕入れの相手先、課税仕入れにおける年月日、内容、対価、適用税率ごとに区分した合計額、適用税率ごとの消費税額の合計を忘れずに入力し、課税仕入れが軽減税率取引に該当する場合はその旨もしっかりと記載します。
また、その際には適格請求書発行事業者の登録番号や請求書発行者である自身の氏名または名称も漏らさず記載します。

請求書等の証憑保存

受領した適格請求書等を保管することも要件の一つです。
もっとも後述のように保存義務が免除される場合や、適格簡易請求書(領収書と兼用されることが想定されています)の保管で足りる場合があります。

これらの要件を満たせば、課税売上高の消費税額から課税仕入の消費税額を差し引いて計算することが可能です。

請求書の保存義務が免除される場合(特例)

仕入税額控除を受けるためには、これまで解説してきたように、基本的に帳簿の保存と請求書等の証憑保存が必要になります。しかしこれには例外もあり、次の場合には請求書等の保存義務が免除されます。

①仕入金額が3万円未満の取引
②請求書等の交付を受けなかったことにつきやむを得ない理由(仕入元に発行義務がない、交付を請求しても交付されない等)がある
※帳簿にその理由と仕入先の住所又は所在地を記載する必要があります
③特定課税仕入れ
※特定課税仕入とは、国外事業者から、「電気通信利用」「芸能・スポーツ」等一定の役務提供を受ける場合をいいます。

適格請求書の保存は消費税法上、原則として必須なものになります。しかしながら、上述のように適格請求書の交付が難しい取引もあります。そういった場合においては適格請求書の保存義務はなくなり、帳簿への入力・保存のみで仕入税額控除が受けられるようになっています。

適格請求書の交付義務が免除される場合(特例)

次は、販売者の目線から適格請求書の交付義務が免除されるケースについて考えてみましょう。適格請求書発行事業者として申請・登録後は、必要に応じて適格請求書を交付しなければなりません。しかしこの義務は、仕入れる側から見て適格請求書の保存が不要なケースがあるように、販売側から見ても免除されることがあります。

適格請求書の交付義務がないとされるケースは、主に以下のような場合です。

・3万円未満のバスや鉄道などの公共交通機関による旅客の輸送
・3万円未満の自動販売機による取引

適格簡易請求書について

多くの取引先に対して、その度、適格請求書を交付していると手間が増えてしまいます。インボイス制度では適用税率と消費税額の細かい記載が必要なため、それだけ作業負担は少なからず増える可能性があります。

そのため一部の事業者に関しては、『適格簡易請求書』という、適格請求書を簡略化したものを交付することが認められており、仕入事業者もこれを保存すれば足ります。
適格簡易請求書の交付で足りる事業者は次のとおりです。

・小売業
・飲食店業
・写真業
・旅行業
・タクシー業
・駐車場業(不特定かつ多数の者に対するものに限ります。)・その他これらの事業に準ずる事業で不特定かつ多数の者に資産の譲渡等を行う事業

適格簡易請求書では、交付を受ける者の氏名または名称を省略できます。また、消費税部分についても『適用される税率』『適用される税率ごとの消費税額』のどちらかを記載すればよいことになっています。そのため、国税庁の資料でも領収書と兼用されることが想定されています。

領収書とレシートについて

領収書やレシートは、適格簡易請求書(簡易インボイス)として扱うことが可能となる場合が多いと考えられます。領収書やレシートは、主に適格簡易請求書の交付が認められている事業者の中で頻繁に使用されるためです。具体的にはスーパーやコンビニ、レストラン、タクシーなどが挙げられます。

また、レシートはレジで機械的に発行されるため、手書きの領収書よりも不正を疑われることが少なく、信頼性が高いと言えるでしょう。

領収書とレシートは電子データとして保存できる

請求書や領収書(レシート)は、電子データとして保存しておくことも可能です。従来のように紙で保存するのも問題ありませんが、電子データでも仕入税額控除の適用対象になります。

保存方法は写真として撮影しデータに起こす、もしくはスキャニングしてデータにするなどの方法が挙げられます。電子データは場所を取らないため、数多くの領収書・レシートを保管する際には安心です。

なお、このように適格請求書の記載内容を電子データで保存し、仕入税額控除を受けられるようにすることを『電子インボイス』といいます。電子インボイスは電子帳簿保存法で定められた措置を講じる必要があります。

電子帳簿保存法についての詳しい記事はコチラ▼
電子帳簿保存法とは?改正後の対象書類や適用要件を解説!

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適格請求書に関するよくある質問

Q.適格請求書に登録番号の記載は必須ですか?

A.適格請求書・適格簡易請求書ともに、発行事業者の氏名・名称および登録番号の記載は必須です。

なお、INVOYではあらかじめ登録番号を設定いただくことで、請求書や領収書の作成時は自動的に登録番号が記載されます。

Q.適格請求書の記載要件は何ですか?

A.区分記載請求書等保存方式の記載事項に加え、以下の3つが追加されます。

・適格請求書発行事業者の登録番号
・課税資産の譲渡等の税抜価額または、税込価額を税率ごとに区分して合計した金額及び適
用税率
・税率ごとに区分した消費税額等

参考:4 適格請求書の記載事項

INVOYは事前に登録番号を設定しておけば、あとは分かりやすいフォーマットに各種情報を入力するだけで簡単に適格請求書の作成が可能です。

Q.適格請求書の発行義務はどのような場合に生じますか?

A.適格請求書発行事業者は、国内における課税資産の譲渡等を行った際、課税事業者の相手方から求められた場合に適格請求書を発行のうえ交付する義務があります。ただし3万円未満の公共交通機関による旅客の運送や郵便切手類の実を対価とする郵便サービスなど、一部のケースに限り発行の義務は免除されます。

Q.適格請求書発行事業者の登録はどのタイミングにするべきですか?

A.2023年10月1日のインボイス制度開始時にすぐ対応したい場合、同年3月31日までに税務署へ登録申請書を提出する必要があります。

ただし年度末は確定申告で税務署が混雑しやすく、業務も多忙になりやすいため1月中に手続きを済ませておくとスムーズです。

Q.適格請求書のメリットは何ですか?

A.適格請求書を発行することで、課税事業者との取引を継続しやすくなるというメリットがあります。取引先の課税事業者は適格請求書を発行できる事業者と取引すれば仕入税額控除が適用され、税負担を抑えられるからです。

まとめ

インボイス制度(適格請求書等保存方式)は、2023年10月1日から始まる、商取引において消費税納税に大きく関わってくる新たな制度です。請求書発行や経理の業務を進める際には、インボイス制度の知識を付けることが重要です。

企業によっては、インボイス制度によって仕入税額控除が受けられなくなり、納める税が高くなる可能性も考えられます。適格請求書交付によって何が変わるのかを理解したうえで、適切に請求書発行・消費税納税を行っていきましょう。

この記事の投稿者:

shimohigoshiyuta

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