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青色申告の基礎知識とメリット、白色申告との違いを初心者向けに解説!

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青色申告

確定申告には2種類あり、青色申告か白色申告を選べます。それぞれ税制面での優遇措置や申告時に必要な書類などに違いがあります。本記事では、青色申告の概要、白色申告との違い、青色申告のメリットや申告方法について解説します。

青色申告とは?

白色申告との主な違いは以下の通りです。

青色申告白色申告
内容「開業届」「青色申告承認申請書」を税務署に提出した人が行う申告方法青色申告の承認を受けていない人が行う申告方法
特徴・青色申告特別控除によって高い節税効果が得られる(記帳方法などの要件あり)
・青色事業専従者給与、赤字の繰越しなどの優遇が受けられる
・簡単に経理業務が行える
・事前の手続きが必要ない

参照:No.2070 青色申告制度|国税庁

青色申告制度の目的

青色申告制度は、当時多かった無申告や税金の過小申告を是正し、それに伴う更生や不服申し立てなどを減らす目的で導入された制度です。1950年当時、所得税と法人税に対してこの制度が導入されました。

参照:青色申告制度の意義と今後の在り方|国税庁

青色申告の対象者

個人事業主で事業所得や不動産所得、または山林所得のいずれかがあれば、青色申告の対象となります。事業所得があるライターやデザイナーなどで活躍するフリーランスも対象です。なお、サラリーマンは給与所得のため青色申告を行うことはできませんが、副業で事業所得、不動産所得、山林所得の3つのうちのいずれかの所得がある場合に限り、青色申告ができます。退職所得、土地などの譲渡所得、配当所得、預貯金などの利子所得、賞金品やギャンブルなどの一時所得は、青色申告の対象外です。

なお、65万円もしくは55万円の青色申告特別控除を受けるためには、後述する複式簿記によって経理業務を行う必要があります。

参照:No.2070 青色申告制度|国税庁

青色申告をする個人事業主は開業届を提出すべき?

開業届を提出しなくても税務上の罰則などはありませんが、青色申告承認申請書に開業日を記載する必要がありますので、開業届は提出したほうがよいです。さらに、屋号付きの銀行口座を開設するには開業届の控えが必要です。

開業届の提出は開業してから一ヶ月以内に手続きをします。万が一、遅れてしまっても罰則はありませんが、忘れないように早めの提出を心がけましょう。

提出先は、所轄の税務署です。なお、直接税務署窓口へ持参するほかに、郵送やe-Taxでの提出も可能です。どの方法で提出するにしても、控えを忘れずに取得しておきましょう。e-Taxでの提出では、「データを受け付けました」というメール文書を保管しておきましょう。

開業届と青色申告承認申請書は同時に提出することも可能です。その場合は開業届の「開業・廃業に伴う届出書の提出の有無」のうち該当する欄の「有」に印を入れ、青色申告承認申請書と一緒に提出しましょう。

参照:A1-5 個人事業の開業届出・廃業届出等手続|国税庁

青色申告のための準備

開業届や青色申告承認申請書以外にも、事業の状況などに応じて他の書類が必要になる可能性があります。提出する書類を事前にチェックしておきましょう。

書類の名前書類を提出する必要のある人
開業届新たに事業を開業する人
青色申告承認申請書青色申告の承認を受ける人
青色事業専従者給与に関する届出・変更届出書青色事業専従者に対して支払う給与を経費にしたい人
所得税・消費税の納税地の変更に関する届出書自宅以外に店舗やオフィスなどがあり、そちらの住所を納税地としたい人
給与支払事務所等の開設届出書従業員や青色事業専従者に対して給与を支払う人

参照:

A1-5 個人事業の開業届出・廃業届出等手続|国税庁
A1-8  所得税の青色申告承認申請手続|国税庁
A1-11 青色事業専従者給与に関する届出手続|国税庁
A1-6 所得税・消費税の納税地の異動又は変更に関する手続|国税庁
A2-7 給与支払事務所等の開設・移転・廃止の届出|国税庁

記帳の基本と注意点

記帳とは、日々発生するお金の動きを帳簿に記入することです。記帳の方法には主に「複式簿記」と「簡易簿記」の2つの方法があります。

複式簿記とは、借方・貸方といった簿記の正式なルールに基づいて記帳する方法です。65万円もしくは55万円の青色申告特別控除を受けるには、この方法で記帳する必要があります。

一方、簡易簿記とは、お小遣い帳のように日付・金額・内容を簡易的に記録する方法です。青色申告の承認を受けていても「あまり複雑な事務作業をしたくない」といった理由で簡易簿記によって記帳し、申告を行う事業者もいます。

青色申告の5つのメリット

青色申告の主なメリットは、以下の通りです。

・最大65万円の控除が受けられる
・赤字を3年間繰り越せる
・30万円未満の固定資産を経費に計上できる
・家族への給与を必要経費として計上でできる
・貸倒引当金を経費に計上できる

次項からそれぞれのメリットについて詳しく解説します。

青色申告の2つのデメリット

青色申告のデメリットは、以下の通りです。

・事前に申請が必要
・記帳に手間がかかる

次項からそれぞれのデメリットについて詳しく解説します。

青色申告特別控除の詳細

青色申告特別控除を控除額別にまとめると、以下のようになります。

65万円控除55万円控除10万円控除
・複式簿記で記帳する
・e-Taxによって申告する
・複式簿記で記帳する
・郵送や持ち込みによって書類を提出する
・簡易簿記で記帳する
・提出方法は問わない

65万円控除と10万円控除では、納める所得税額にかなり差が生じると考えられます。例えば、その年の売上高が1,100万円、必要経費が600万円程度であった場合、65万円控除を選択した方が10万円ほど節税できると見込まれます。

青色申告の申請方法

青色申告承認申請書は主に以下のいずれかの方法で提出します。

・税務署に直接持ち込む
・税務署に郵送する
・e-Taxで提出する

青色申告を利用するには、決められた期間内に青色申告承認申請書を提出することが必要です。期限内に手続きをしないと、白色申告しか利用できないため注意しましょう。

届け出の期限は2パターンあります。

1.申告をする年の3月15日まで
2.その年の1月16日以後に新規開業し場合は、その事業開始日から2ヶ月以内 ※開業が1月1日~1月15日に開業した場合の提出期限は3月15日

なお、すでに事業を開始し、今年の収入から青色申告へ切り替えする場合も、その年の3月15日までに提出します。

上記の提出期間を過ぎると、適用を受けたい年には受けられず、その翌年からの適用になります。これから開業をする人は、開業届の提出と併せて青色申告の承認申請書も提出しておくことをおすすめします。

なお、青色申告承認申請書を提出しても「承認しました」といった通知が送られてくるわけではありません。しかし申請すれば基本的に承認されているものと考えていいでしょう。

青色申告で提出する書類

青色申告では主に「確定申告書」と「青色申告決算書」の2つの書類を提出します。

確定申告書には第一表と第二表があり、どちらの作成も必要です。第一表は、青色申告決算書を参照して記入します。収入や所得などの必要事項を順番に記入すると、所得税額が自動的に算出されます。第二表は、第一表の金額の内訳や詳細を記入します。

青色申告決算書は、日々の帳簿付けを決算書形式で記入する書類で、損益計算書や貸借対照表など4枚の書類で構成されています。なお、10万円控除の場合は貸借対照表は不要です。

確定申告書と青色申告決算書は、国税庁のホームページからダウンロードしたり、税務署で直接入手したりする方法があります。また、青色申告に対応した会計ソフトを利用していれば、入力した情報を元に出力することも可能です。

所得税額を求める

収入金額から必要経費を差し引き、所得金額を求めます。個人事業主であれば、通信費や交通費などの経費を除いた額が所得金額となります。青色申告の承認を受けていれば、特別控除の金額(65万円(55万円)または10万円)の控除もここでできます。

つぎに、控除が認められている金額を差し引きます。具体的には、医療費控除、社会保険料控除、扶養控除などです。個人事業主の方は、該当する項目を個々に記入します。サラリーマンは、源泉徴収票の所得控除の合計額を転記するだけです。

課税される所得金額に所得税の税率をかけて所得税額を計算します。所得税率は、所得に応じて、5%から45%まで7段階あります。

所得税額は以下の式によって計算します。

課税所得金額 × 税率 – 控除額 = 所得税額

最終的な所得税額を求める

所得税額から、さらに税額控除が認められているものを引いて、最終的な所得税額を計算します。主な税額控除は、配当控除と外国税額控除です。配当控除は、配当所得金額の10%または5%の金額を控除するものです。この所得税額が基準所得税額となります。

この基準所得税額に2.1%を掛けて復興特別所得税額を計算します。復興特別所得税は、納税義務がある人すべてが支払うもので、確定申告の際に所得税と併せて復興特別所得税も申告・納税します。

復興特別所得税は以下の式によって計算します。

所得税額 × 0.021 = 復興特別所得税

2024年(令和5年分)の青色申告で気を付けたい変更点は?

令和5年分の所得税の確定申告の期間は、2024年2月16日〜3月15日です。今回は、新たに始まったインボイス制度への対応や、マイナポータルとの連携範囲の拡大などが主な変更点として挙げられています。

インボイス制度については、青色申告決算書の「売上(収入)金額の明細」「仕入金額の明細」の項目に、インボイス制度の登録番号を記載する欄が設けられるなどの変更がありました。

また、マイナポータルとe-Taxを連携することで申告書に情報が自動的に入力される仕組みがありますが、今回は以下の項目が新たに自動入力に対応しています。

・給与所得の源泉徴収票
・国民年金基金掛金
・iDeCo・小規模企業共済掛金 

参照:マイナポータル連携で自動入力!|令和5年分 確定申告特集

青色申告に関する最新の法改正

インボイス制度に登録した適格請求書発行事業者は、1年間の課税売上高が1,000万円を超えていなくても消費税の申告と納税をする必要があります。消費税の納付額を売上税額の2割に減額する「2割特例」を適用したい方は、その旨を申告書に記載することで制度を適用できます。

参照:2割特例用 消費税及び地方消費税の 確定申告の手引き

青色申告のよくある質問と回答

Q:青色申告の申請期限は?

A:新たに青色申告の申請をする場合は、青色申告をしようとする年の3月15日までに「青色申告承認申請書」を税務署に提出します。また、新規で開業した場合は、業務を開始した日から2か月以内と定められています。

Q:青色申告の記帳方法は?

A:青色申告では、複式簿記によって記帳を行うことで最終的に貸借対照表や損益計算書を作成します。なお、10万円の控除額でも構わないという方は、簡易簿記で記帳することも認められています。

参照:No.2070 青色申告制度|国税庁

まとめ

青色申告は日々の取引を記載した会計帳簿に基づいて確定申告をする制度です。青色申告は白色申告と異なり、事前の届出が必要であること、記帳方法、確定申告書類などに違いがあり、手間がかかりますが、白色申告にはない節税効果が得られます。青色申告で提出する書類は、確定申告書と青色申告決算書です。確定申告書作成の流れを把握して、期限内にスムーズに申告を行いましょう。

また、青色申告申告書は開業届がすでに提出してあることを前提とした書類です。事前に開業届を提出するか、もしくは開業届・青色申告申告書を一緒に提出するようにしましょう。

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この記事の投稿者:

nakashima

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