
9月の季節の挨拶をスムーズに書けるようになれば、ビジネスメールで相手に好印象を与えられます。時候の挨拶は、相手への心遣いを示す日本の美しい文化です。適切な言葉を選ぶことで、丁寧で配慮のできる人物という印象につながります。
この記事を読めば、9月にふさわしい季節の挨拶を状況に応じて選び、ビジネスマナーに沿った文章を作成できるようになります。季節の挨拶の書き方に悩んだ経験のある方も、いくつかのポイントを押さえるだけで、誰でもすぐに実践できます。
目次
9月の季節の挨拶とは?ビジネスで使う理由と基本マナー
季節の挨拶とは、手紙やメールの冒頭に添える季節感あふれる挨拶文のことです。ビジネスシーンでは「時候の挨拶(じこうのあいさつ)」とも呼ばれ、「初秋の候、貴社ますますご清栄のこととお喜び申し上げます。」のように、季節を表す言葉から始めるのが特徴です。
古くから季節の移ろいを大切にしてきた、日本ならではの文化がビジネス文書にも反映されています。
季節の挨拶を用いる最大の理由は、相手への心遣いと礼節を示すためです。9月は夏から秋へと移り変わる時期であり、気候の変化が激しいことから、相手の体調や近況を気遣う表現を添えることで、温かい人柄が伝わり好印象につながります。
また、季節の話題を盛り込むことで、定型的なビジネスメールに温かみや趣が生まれます。丁寧な挨拶は、送り主が常識やマナーをわきまえた、信頼できる人物であるという印象を与える効果も期待できます。
ビジネスで季節の挨拶を使う際には、いくつかの基本マナーがあります。
まず、ポジティブな内容を心がけることが大切です。季節の挨拶では、明るい季節感や相手の繁栄、健康を願う言葉を選びます。残暑や秋雨といった天候に触れる場合でも、否定的な表現は避け、結びでは相手の健康を気遣う言葉で締めくくるのが一般的です。
次に、時期に合った表現を選ぶことが重要です。9月と一言でいっても、上旬、中旬、下旬では気候が異なります。その時期に応じた季節語を使い分ける必要があります。例えば、9月上旬であれば「残暑」、下旬には「秋冷(しゅうれい)」といった言葉を選ぶと、季節感がより的確に伝わります。
手紙の場合は「拝啓」「敬具」といった頭語・結語とセットで時候の挨拶を使います。メールの場合は頭語や結語を省略できますが、挨拶文は丁寧な敬語で始め、「平素は格別のご高配を賜り、厚く御礼申し上げます。」のような定型表現と組み合わせると、より改まった印象になります。
急ぎの用件で用いる「前略」は、時候の挨拶を省略するという意味合いを持つため、季節の挨拶を書き添える場合には使用しません。時候の挨拶を書く際は、「拝啓」から始めるのが正式なマナーです。
9月の季節の挨拶に盛り込みたい季節感と言葉
9月は、夏の名残と秋の訪れが混在する月です。そのため、季節の挨拶にも夏から秋への移ろいを表現する言葉を盛り込むと、季節感豊かな文章になります。具体的には、以下のようなキーワードが挙げられます。
残暑(ざんしょ)は、立秋(8月上旬)を過ぎてもなお残る暑さを指します。9月上旬はまだ暑い日が続くため、「残暑厳しき折」や「残暑が続いておりますが」といった表現で、相手の体調を気遣う言葉としてよく用いられます。
新涼(しんりょう)や初秋(しょしゅう)は、暑さが和らぎ、秋の涼しさを感じ始める頃を指す言葉です。9月中旬頃になると朝夕に涼しさを感じる日が増えるため、「新涼の候(しんりょうのこう)」や「初秋の候(しょしゅうのこう)」といった表現が使われます。「候(こう)」は季節を表す改まった言い回しで、格式のあるビジネス文書で頻繁に用いられます。
白露(はくろ)は、二十四節気の一つで、例年9月7日頃にあたります。草木に朝露が宿り始める時期であり、初秋の季語としても知られています。この時期の挨拶に「白露の候」と記すことで、9月らしい季節感を演出できます。
秋分(しゅうぶん)は、9月23日頃の二十四節気です。この日を境に昼よりも夜が長くなり、秋が深まっていきます。秋分を過ぎる9月下旬には、秋の冷気を感じる頃合いを意味する「秋冷(しゅうれい)の候」といった挨拶が適しています。
長月(ながつき)は、9月の和風月名(旧暦の呼び名)で、「夜長月(よながつき)」が語源とされています。文章の中に「長月」という言葉を入れることで、趣のある季節感を表現できます。
中秋の名月(ちゅうしゅうのめいげつ)は、旧暦8月15日の月を指します。現代の暦では毎年日付が異なり、例えば2026年は9月25日、2027年は9月15日です。ビジネス文書で必ずしも触れる必要はありませんが、親しい間柄での手紙や社内報などでは、「中秋の名月の頃となりましたが」と話題にすることで風情が生まれます。
これらのキーワードを念頭に置くと、9月らしい挨拶文をスムーズに作成できます。大切なのは、その時期特有の季節感と、相手への気遣いを組み合わせることです。
9月の季節の挨拶例文集(上旬・中旬・下旬別)
9月の季節の挨拶は、時期によって適切な表現が少しずつ異なります。ここでは、9月の上旬、中旬、下旬、それぞれの時期に合った挨拶文の例を、フォーマルな漢語調の表現と、柔らかな口語調の表現の両方で紹介します。文書を送るタイミングに合わせて、使いやすいものを選んでご活用ください。
9月上旬の季節の挨拶(残暑が厳しい時期)
9月上旬(1日〜10日頃)は、暦の上では秋ですが、まだ暑さが残り真夏のような気候の日もあります。この時期は「残暑」や「台風」といった言葉が季節語となります。相手の健康を気遣い、夏の疲れをいたわる内容を盛り込むと良いでしょう。
漢語調のフォーマルな表現としては、「初秋の候、貴社ますますご清祥のこととお喜び申し上げます。」などがあります。「しょしゅうのこう」と読み、暦の上では秋になりましたが、という改まった表現です。
口語調の柔らかな表現としては、「残暑厳しい毎日ですが、皆様におかれましてはお変わりなくお過ごしでしょうか。」といった文章が使えます。厳しい残暑が続く中ですが、お元気でお過ごしですか、という気遣いを示すことができます。
フォーマルな文書では「○○の候」という漢語調で簡潔に季節を示し、その後に相手の繁栄や健康を喜ぶ文を続けるのが一般的です。一方、メールなどで少し親しみを込めたい場合は、口語調で「〜ですが、いかがお過ごしでしょうか」と問いかける形にすると、柔らかな印象になります。
また、9月上旬は台風シーズンでもあります。「台風一過」の話題を入れることも可能ですが、台風による被害が報道されている場合は、相手の状況に配慮し、この話題に触れるのは避けるのが無難です。文末に「夏の疲れが出やすい頃ですので、どうぞご自愛ください」といった一文を添えると、相手を気遣う気持ちがより深く伝わります。
9月中旬の季節の挨拶(初秋・新涼の時期)
9月中旬(11日〜20日頃)になると、猛暑も落ち着き始め、朝夕に秋の気配が感じられるようになります。「新涼(しんりょう)」は、秋になって初めて感じる涼しさを意味する言葉です。この時期は、秋の訪れを感じさせる表現を用いると良いでしょう。
改まった表現としては、「新涼の候、○○様におかれましてはますますご健勝のことと拝察申し上げます。」などが挙げられます。「しんりょうのこう」と読み、秋の涼しさを感じる季節になりましたが、という丁寧な挨拶です。
より柔らかな表現では、「朝夕はだいぶ涼しくなってまいりましたが、いかがお過ごしでしょうか。」のように、身近な気候の変化に触れると、共感が得やすくなります。
9月中旬は、二十四節気の「白露」や「秋分」にかかる時期でもあります。白露は草に露が降りる季節のことで、挨拶文では「白露の候」と記すことも可能です。ただし、漢語調の季語は相手や場面を選ぶため、ビジネスメールでは必ずしも難しい季語を使う必要はありません。「朝夕は涼しくなってまいりましたね」といった平易な言葉で季節感を表現しても、気持ちは十分に伝わります。
夏から秋への変わり目である中旬は、暑さが和らいできたことへの安堵感や、深まっていく秋への期待感を盛り込みつつ、相手の体調を気遣う文章にすると好印象です。
9月下旬の季節の挨拶(秋本番・夜長の時期)
9月下旬(21日〜30日頃)になると、秋分を過ぎて夜の時間が長くなり、本格的な秋の訪れを感じます。気温も下がる日が増え、朝晩は肌寒さを覚えることもあるでしょう。「秋冷(しゅうれい)」や「爽秋(そうしゅう)」といった言葉が、この時期の季節の挨拶に適しています。
フォーマルな表現では、「秋冷の候、貴社におかれましてはますますご隆盛のこととお喜び申し上げます。」のように書きます。「しゅうれいのこう」と読み、秋の冷気を感じる季節になりましたが、という改まった挨拶です。
カジュアルな表現では、「爽やかな秋晴れの日が続いておりますが、皆様お健やかにお過ごしでしょうか。」といった文章が考えられます。爽やかな秋の様子に触れることで、明るい印象を与えます。
9月下旬は「秋雨(あきさめ)」が続くこともありますが、挨拶文で触れる際は暗い印象にならないよう注意が必要です。「秋雨が続いておりますが」とするよりも、晴れ間や爽やかさに言及した方が前向きな印象になります。
また、旧暦由来ではありますが、「中秋の名月」が9月下旬に巡ってくる年もあります。相手との関係性によっては、「中秋の名月も近づいてまいりましたが」と話題にすると、風情が感じられます。この時期は朝晩が冷え込むため、「朝晩冷え込む日が増えてまいりました。どうぞご自愛ください。」という一文を添えるなど、相手の健康への気遣いを忘れないようにすることも大切です。
9月の手紙を締めくくる結びの挨拶
季節の挨拶は、文章の冒頭だけでなく結びの言葉にも取り入れると、文章全体が引き締まり、より丁寧な印象を与えます。ビジネス文書では、締めの挨拶で改めて相手の健康や発展を祈る表現を入れるのが一般的です。9月ならではの結びの挨拶例をいくつか紹介します。
例えば、「9月とはいえ残暑厳しき折、くれぐれもご自愛のほどお願い申し上げます。」という結びは、まだ残る暑さの中で相手の体を気遣う丁寧な表現です。
また、「実りの秋を迎え、貴社の更なるご発展を心よりお祈り申し上げます。」という文章は、豊かな秋の季節になぞらえて、相手企業の繁栄を祈る気持ちを伝えることができます。
結びの挨拶は、「残暑厳しき折」や「季節の変わり目ですので」といった季節に関連した表現に、「ご自愛ください」や「お祈り申し上げます」といった相手を気遣う言葉を組み合わせるのが基本です。
ビジネスメールでは、最後に「何卒よろしくお願いいたします。」と依頼の言葉で終えることも多いですが、その直前にこうした季節の結びの言葉を一文加えるだけで、文章の印象は格段に丁寧になります。結びの挨拶も冒頭の時候の挨拶と同様に、相手や場面に応じて表現を選ぶことが大切です。
まとめ
9月の季節の挨拶は、夏から秋への移ろいを的確に捉え、相手への気遣いを示すための重要なビジネスマナーです。上旬、中旬、下旬、それぞれの季節感に合った言葉を選び、相手の健康や繁栄を祈る文言と組み合わせることで、細やかな心配りができる人物という好印象を与えられます。
ビジネスメールや手紙において季節の挨拶を効果的に取り入れることは、文章全体を丁寧にし、結果として相手との信頼関係の構築につながります。
この記事で紹介した例文やポイントを参考に、ぜひ実際のビジネスシーンで9月の季節の挨拶をご活用ください。最初は少し形式的に感じるかもしれませんが、実践を重ねるうちに自然と身についていきます。季節の挨拶を上手に使いこなし、ビジネスコミュニケーションをより円滑なものにしていきましょう。
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