
ビジネスシーンにおいて、経費精算や確定申告のためにAmazonの領収書が必要になる場面は頻繁にあります。その際に「どこから発行するのか」「PDFで保存するにはどうすればよいか」と迷い、操作に手間取った経験を持つ方も少なくないでしょう。忙しい業務の中で、このような事務作業による時間のロスは避けたいものです。
本記事では、パソコンやスマートフォンを使い、いつでも確実にAmazonの領収書をPDF形式で発行・保存するための具体的な手順を網羅的に解説します。単なる操作方法だけでなく、ビジネスパーソンとして避けては通れない法制度への対応についても詳しく掘り下げます。
特に、2023年10月から開始されたインボイス制度(適格請求書等保存方式)や、電子帳簿保存法といった最新のルールにどのように対応すればよいのか、そのすべてが明確になります。これらの制度を正しく理解し対応することは、適切な税務処理と円滑な事業運営に不可欠です。
専門的な知識は必要ありません。本記事では、画面の指示に沿って誰でも簡単に操作を再現できるよう、ステップバイステップで丁寧に解説を進めます。
Amazonでの購入では商品に領収書が同梱されず、自身でオンライン発行する必要があるという基本から、応用知識までを網羅しているため、これまで領収書の発行でつまずいていた方も安心して読み進めることができます。
この記事を通じて、皆様の事務作業を効率化し、経費精算や確定申告をスムーズに進められることを目指します。
目次
Amazon領収書をPDFで発行する基本手順
Amazonの領収書をPDFとして手元に保存する基本的な操作は、使用するデバイスによって手順が若干異なります。ここでは、多くの方が利用するパソコン(Windows/Mac)とスマートフォン(iPhone/Android)のそれぞれのケースに分けて、手順を詳しく解説します。
パソコン(Windows / Mac)での発行・保存方法
パソコンからの操作は、大きな画面で表示内容を確認しながら進められるため、最も確実で間違いの少ない方法です。以下の手順に沿って操作を進めてください。
- Amazon公式サイトにログイン
Google ChromeやSafariなどのウェブブラウザを起動し、Amazonの公式サイトを開きます。画面右上の「アカウント&リスト」から自身のアカウントにログインしてください。 - 注文履歴にアクセス
ログイン後、画面右上の「アカウント&リスト」にマウスカーソルを合わせるとメニューが表示されます。その中から「注文履歴」をクリックします。 - 該当の注文を選択し「領収書等」をクリック
注文履歴の一覧が表示されたら、領収書を発行したい商品の欄を探します。欄の右上にある「領収書等」というボタンをクリックすると、「領収書/購入明細書」という選択肢が現れます。 - 「領収書/購入明細書」を選択
表示された「領収書/購入明細書」のリンクをクリックします。すると、領収書のプレビュー画面が新しいタブまたはウィンドウで開きます。 - 印刷機能を使ってPDFとして保存
領収書のプレビュー画面が表示されたら、ページの上部にある「このページを印刷してご利用ください」というリンクをクリックしてください。
印刷ダイアログボックスが表示されたら、「送信先」または「プリンター」の項目を選択します。Windowsの場合は「Microsoft Print to PDF」、Macの場合は「PDFとして保存」を選択します。
最後に「保存」ボタンをクリックし、ファイル名と保存場所を指定すれば、領収書のPDF化は完了です。
スマートフォン(iPhone / Android)での発行・保存方法
スマートフォンからも領収書をPDFで保存できますが、一つ重要な注意点があります。それは、Amazonショッピングアプリからは領収書を発行できないという点です。必ずSafariやChromeといったウェブブラウザからAmazonの公式サイトにアクセスして操作を行ってください。
- ブラウザでAmazon公式サイトにログイン
スマートフォンのウェブブラウザを起動し、Amazonの公式サイトにアクセスします。デスクトップ版サイトと同様に、自身のアカウントでログインしてください。 - 注文履歴にアクセス
画面右上、または下部に表示されている人型のアイコンをタップし、アカウントサービスのメニューを開きます。メニューの中から「注文履歴」を選択します。 - 該当の注文を選択
領収書を発行したい商品をタップして、注文詳細ページを開きます。 - 「領収書/購入明細書の表示」をタップ
注文詳細ページを下にスクロールし、「注文内容を表示」をタップします。さらに表示される項目の中から「領収書/購入明細書の表示」というリンクをタップしてください。 - PDFとして保存
領収書のプレビュー画面が表示されたら、「このページを印刷してご利用ください」をタップします。ここからの操作は、お使いのスマートフォンのOSによって異なります。
iPhone (Safari) の場合
画面下部に表示される共有アイコン(四角から矢印が上に出ているマーク)をタップします。表示された共有メニューの中から「“ファイル”に保存」を選択し、任意の保存先を選んで「保存」をタップすれば完了です。
Android (Chrome) の場合
印刷プレビュー画面が表示されます。画面上部の送信先が「PDF形式で保存」となっていることを確認し、PDFのダウンロードアイコンをタップします。ファイル名と保存先を選択して「保存」をタップすれば完了です。
領収書発行ができない場合の対処法
手順通りに進めても「領収書が発行できない」という状況に陥ることがあります。その多くは、いくつかの決まった原因によるものです。ここでは、よくあるトラブルとその解決策を具体的に解説します。
領収書発行ボタンが見つからない原因
注文履歴を確認しても「領収書等」のボタンが表示されない、というケースは最も多い問い合わせの一つです。その主な原因として、以下の点が考えられます。
商品が未発送の場合
Amazonのシステムでは、注文が完了した時点ではなく、商品が倉庫から発送されたタイミングで決済が確定します。そのため、領収書も商品の発送後に発行可能となる仕組みです。注文ステータスが「発送済み」になるまでしばらく待ってから、再度注文履歴を確認してください。
Amazonショッピングアプリを利用している場合
前述の通り、スマートフォンのAmazonショッピングアプリでは、領収書を発行する機能が提供されていません。アプリは購入体験に最適化されている一方で、経理関連の書類発行といった機能はウェブサイト版に集約されています。必ずSafariやChromeなどのブラウザ版に切り替えて操作してください。
上記を確認してもボタンが表示されない場合、ブラウザのキャッシュが古い情報を表示している可能性も考えられます。一度ブラウザのキャッシュをクリアしたり、シークレットモード(プライベートブラウジング)でアクセスしたりすることで解決する場合があります。また、稀にAmazonのシステム側の一時的な不具合も報告されているため、時間を置いて再試行するのも有効です。
支払い方法による発行可否の違い
領収書が発行できないもう一つの大きな理由が、選択した支払い方法です。Amazonが直接領収書を発行できるのは、Amazonが顧客から直接代金を受け取る取引に限られます。
- Amazonから領収書が発行できる支払い方法
- クレジットカード決済
- PayPay
- Amazonギフトカード
- 後払い (ペイディ)
一方で、コンビニ払いやATM払い、代金引換(代引き)の場合、顧客はAmazonではなく、コンビニエンスストアや配送業者といった第三者機関に代金を支払います。このため、法的な領収書(受取証書)は、代金を実際に受け取った機関が発行する義務を負います。
- Amazonから領収書が発行されない支払い方法
- コンビニ払い・ATM払い・ネットバンキング
Amazonの注文履歴からは「購入明細書」のみ発行可能です。経費精算には、コンビニのレジで受け取るレシート(受領書)や、銀行の利用明細票が正式な証明書類となります。 - 代金引換(代引き)
Amazonからは「購入明細書」が発行されます。正式な領収書は、配送業者が商品配達時に発行し、通常は外箱に貼付されています。
- コンビニ払い・ATM払い・ネットバンキング
これらの支払い方法を選択した場合は、Amazonのサイト上では領収書が発行できないことを理解し、支払先から受け取る書類を大切に保管する必要があります。
Amazonアプリとブラウザ版の役割の違い
多くのユーザーが混乱する「アプリでは領収書が発行できない」という仕様は、Amazonのプラットフォーム戦略の現れと解釈できます。それぞれの役割と設計思想を理解することで、この仕様にも納得がいくでしょう。
Amazonショッピングアプリは、「商品を探す」「選ぶ」「買う」「配送状況を確認する」といった一連の購買体験(ショッピングジャーニー)を、可能な限りスムーズで直感的にすることに特化して設計されています。ユーザーインターフェースはシンプルさが優先されます。
一方、ブラウザ版(ウェブサイト)は、購買機能に加えて、アカウント情報の詳細な管理、過去の全データの閲覧、そして経理や税務に関連する公式書類の発行など、Amazonが提供するすべての機能を利用できるフルバージョンのプラットフォームと位置づけられています。
つまり、Amazonはユーザーの目的を「買い物」と「アカウント管理・書類発行」に分け、それぞれに最適な環境を提供しているのです。この設計思想を理解すれば、「領収書のような会計書類は、管理機能が豊富なブラウザ版で操作する」というルールが明確になります。
ただし、インボイス制度に対応した「適格請求書」については、制度対応の重要性からアプリからもダウンロードが可能になっている場合があります。この点は混同しやすいため、「従来の領収書はブラウザ、インボイスはアプリでも取得できる場合がある」と覚えておくとよいでしょう。
経費精算と確定申告で押さえるべき重要知識

領収書をPDFで発行できたとしても、その書類が経費精算や確定申告の法的な要件を満たしていなければ意味がありません。ここでは、ビジネスで利用する上で特に重要な3つのポイントを解説します。
宛名と但し書きの取り扱い
日本の商習慣において、領収書の「宛名」と「但し書き」は重要な記載項目です。Amazonが発行する領収書の仕様を正しく理解しておきましょう。
宛名
Amazonが発行する領収書の宛名欄は、基本的に空欄の状態で発行されます。これは、利用者が手書きで会社名などを記入することを想定しているためです。会社の経費精算規定で宛名が必須の場合は、PDFを印刷した後に手書きで正式名称を記入するか、PDF編集ソフトで追記する必要があります。個人事業主の確定申告においては、取引の事実が他の情報(注文履歴やクレジットカード明細など)と照合できれば、宛名がなくても問題ないとされる場合が多いです。
但し書き
但し書きは、何に対する支払いかを示す項目です。Amazonの領収書では、この欄には購入した具体的な商品名が自動で記載されます。利用者自身が「お品代として」などのように任意の内容に変更することはできません。これは取引内容の透明性を確保する上でむしろ望ましい仕様であり、税務調査などの際にも客観的な証拠として認められやすくなります。
インボイス制度への対応と適格請求書の入手方法
2023年10月1日に開始されたインボイス制度は、消費税の仕入税額控除を受けるために不可欠な制度です。事業者(法人・個人事業主)がAmazonでの購入費用を経費として計上し、支払った消費税分の控除を受けるには、「適格請求書」(インボイス)を入手し、保存する必要があります。
Amazonで適格請求書を入手する手順は以下の通りです。
- 販売元を確認する
まず、購入したい商品の販売元が「適格請求書発行事業者」であるかを確認することが重要です。Amazon自身(アマゾンジャパン合同会社)が販売・発送する商品は対応していますが、Amazonマーケットプレイスに出品している第三者の販売者の場合は、その出品者が登録事業者でなければ適格請求書は発行されません。 - 「適格請求書」をダウンロードする
注文履歴から、通常の領収書とは別に「請求書」または「明細書/適格請求書」といった項目を選択してダウンロードします。 - 記載内容を確認する
ダウンロードした書類に「適格請求書」と明記されていること、そして発行事業者であるAmazonまたは出品者の登録番号(T + 13桁の数字)が記載されていることを必ず確認してください。この2点が記載されていない書類は、インボイスとして認められません。
電子帳簿保存法とPDFデータの保管義務
Amazonからダウンロードした領収書のPDFデータは、電子帳簿保存法という法律によってその取り扱いが定められています。この法律を正しく理解しておくことは、コンプライアンスの観点から非常に重要です。
この法律の核心は、「電子的に受け取った取引書類(電子取引データ)は、電子データのまま保存しなければならない」という点です。つまり、Amazonのサイトからダウンロードした領収書PDFは、印刷して紙でファイリングするだけでは不十分であり、元のPDFファイル自体を所定の要件に従って保存しておく義務があります。
データを保存する際には、税務調査などで要求された際に速やかに提示できるよう、可視性を確保する必要があります。具体的には、以下の要件を満たす必要があります。
- 検索機能の確保
「取引年月日」「取引金額」「取引先」の3つの項目で検索できるようにしておく必要があります。ファイル名を「2024-08-15_Amazon_事務用品_15000.pdf」のようにルール化して命名する、または専用の会計システムにインポートするなどの対策が求められます。 - 真実性の確保
保存したデータが改ざんされていないことを証明する必要があります。タイムスタンプを付与する、訂正や削除の履歴が残るシステムを利用する、または訂正削除に関する事務処理規程を定めて運用するなどの措置が必要です。
単にPDFを手に入れるだけでなく、その後の管理方法まで法律で規定されている点を理解しておくことが、現代のビジネスパーソンにとって不可欠な知識となっています。
大量の領収書を効率的に管理する方法
個人事業主やフリーランスの方が確定申告の時期に直面するのが、「大量の領収書を一枚ずつダウンロードするのが非常に面倒」という問題です。Amazonの標準機能では一括ダウンロードができないため、取引件数が多いと作業が煩雑になります。
Chrome拡張機能による一括ダウンロード
この問題を解決する強力なツールが、Google Chromeの「拡張機能」です。拡張機能とは、ブラウザに新しい機能を追加するための小規模なプログラムを指します。
Amazonの領収書管理に特化した拡張機能として、「アマゾン注文履歴フィルタ」などが広く知られています。これらの拡張機能をChromeウェブストアからインストールすると、Amazonの注文履歴ページに新しい操作パネルが追加され、以下のような操作が可能になります。
- 特定の期間(年や月)で注文を絞り込む
- 絞り込んだ注文の領収書をすべて一括で表示・印刷する
- 注文データをCSVファイルとしてダウンロードし、会計ソフトに取り込む
これらの機能を活用することで、確定申告前の面倒な書類準備作業を劇的に効率化できます。手作業で1時間かかっていた作業が、数回のクリックで完了することもあります。多くの取引をAmazonで行う事業者にとって、導入を検討する価値は非常に高いと言えるでしょう。ただし、拡張機能はAmazon公式のものではないため、提供元が信頼できるかを確認し、自己責任で利用することが重要です。
特殊な注文における領収書発行

物理的な商品以外にも、Amazonではさまざまなデジタルコンテンツやサービスが提供されています。ここでは、そうした特殊なケースでの領収書発行について解説します。
Kindle本などデジタルコンテンツの領収書
Kindle本やKindle Unlimitedの月額料金、Prime Videoのレンタル料金など、デジタルコンテンツの購入についても領収書の発行は可能です。
多くの場合、通常の商品の注文履歴から同様の手順で発行できます。ただし、Kindle UnlimitedやAmazon Primeのようなサブスクリプション(定額制サービス)の場合は、「アカウントサービス」内の「メンバーシップおよび購読」といった専用ページから支払い履歴を確認し、そこから領収書を発行する流れになることがあります。
Amazonマーケットプレイス商品の領収書
Amazonのサイトには、Amazon自身が販売する商品と、第三者の販売者(個人や企業)が出品する「マーケットプレイス商品」が混在しています。
マーケットプレイス商品を購入した場合、法的な取引の当事者は購入者と出品者になります。そのため、領収書や適格請求書を発行する責任は、Amazonではなく出品者自身にあります。Amazonのシステムは、あくまでその発行手続きを仲介しているに過ぎません。
インボイス制度への対応状況も出品者によって異なるため、経費での購入を検討している場合は、事前に商品ページの「販売元」情報を確認することが重要です。出品者名をクリックして表示されるプロフィールページで、適格請求書発行事業者であるかを確認し、信頼できる出品者から購入することを推奨します。
個人事業主・法人向けAmazonビジネスの活用
もしあなたが個人事業主や法人として頻繁に事業用の備品などをAmazonで購入するのであれば、「Amazonビジネス」アカウントの利用を強く推奨します。
Amazonビジネスは、法人および個人事業主向けの購買専用プラットフォームで、無料で登録できます。通常のAmazonアカウントとは別に事業用アカウントを持つことで、経費精算や購買管理を効率化する多くのメリットを享受できます。
- 適格請求書の一元管理
注文履歴から簡単に適格請求書をダウンロードでき、インボイス制度にスムーズに対応できます。 - インボイス対応商品の絞り込み機能
検索結果を「適格請求書発行対象」の商品のみに絞り込めるため、安心して経費購入ができます。 - 請求書払い
会社の経理サイクルに合わせて、月末締め翌月払いなどの後払い(掛け払い)が可能になり、キャッシュフローの改善に繋がります。 - 法人価格・数量割引
一部の商品が通常のアカウントよりも安価な法人価格で購入できたり、大量購入による数量割引が適用されたりします。 - 購買管理機能
複数のユーザーでアカウントを共有し、部署ごとや個人ごとに購入権限を設定したり、承認フローを設けたりすることができ、購買プロセスの統制が図れます。
プライベートの買い物と事業用の経費を明確に分離できるため、経理処理のミスを防ぎ、確定申告の負担を大幅に軽減できることが最大の利点です。
まとめ
最後に、Amazonの領収書をPDFで正しく、そして効率的に扱うための最も重要なポイントを再確認します。
- 領収書発行は「ブラウザ」から
スマートフォンを利用する場合でも、アプリではなく必ずSafariやChromeなどのウェブブラウザを使いましょう。 - 発行タイミングは「発送後」
注文直後ではなく、商品が発送されてから領収書が発行可能になります。 - ビジネス利用なら「適格請求書」
経費精算や確定申告で仕入税額控除を受けるには、通常の領収書ではなくインボイス制度に対応した「適格請求書」を入手することが必須です。 - 保管は「PDFファイルのまま」
電子帳簿保存法に基づき、ダウンロードしたPDFデータは印刷物だけでなく、ファイルそのものを要件に従ってデジタルデータとして保管する義務があります。 - 大量の処理は「Chrome拡張機能」で効率化
確定申告などで多数の領収書が必要な場合は、一括ダウンロードツールなどを活用して事務作業の時間を節約しましょう。 - 事業用途なら「Amazonビジネス」が最適解
頻繁に事業用の備品などを購入する場合は、経理処理を根本から効率化できるAmazonビジネスへの切り替えを検討することが賢明です。
これらのポイントを押さえることで、Amazonの領収書発行に関するあらゆる悩みを解決し、皆様のビジネスがよりスムーズに進展するための一助となれば幸いです。
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