社会貢献活動を行うNPO法人は、どのような組織なのでしょうか。この記事は、NPO法人設立を検討している方に向け、NPO法人設立の要件から、手続きの流れ、費用、そしてメリットや注意点までわかりやすく解説します。
目次
NPO法人とは?
NPO(非営利組織)は、ボランティアや社会貢献をはじめ、生活協同組合、労働組合、学校法人など、広い範囲の組織を指します。そのうち、「営利を目的とせず、社会貢献をする団体」がNPO法人で、正式名称は「特定非営利活動法人」です。NPO法人は、環境保全や教育問題など、さまざまな分野で事業を通じて社会の課題解決を目指しています。
NPO活動では、法人格が必要ではありません。実際、法人格を持たずに任意団体として活動しているNPOが多く存在します。ただし、法人格を持つことで、NPOは法人名で取引ができ、団体への信頼性が向上することがメリットです。これにより、NPOはより組織的で信頼性のある形で市民に寄り添い、社会のニーズに効果的に応えています。
参照:特定非営利活動法人(NPO法人)制度の概要 | NPOホームページ
NPO法人設立の要件
NPO法人を立ち上げるには、まず関係する所轄庁に申請し、設立が承認される必要があります。認可を得た後、登記手続きを行うことで、法人として設立できます。NPO法人を設立するには、まず法的な要件を確認しましょう。 法人格を取得するためには、特定非営利活動促進法に基づき、以下の条件を満たす必要があります。
• 主たる目的は特定非営利活動であること • 営利を目的としないこと(※) • 社員の資格に不当な条件を課さないこと • 報酬を受ける役員が総数の3分の1以下であること • 宗教や政治活動(施策の提言や推進は含まない)を主目的としないこと • 公職者や政党の推薦や支持、反対を目的としないこと • 暴力団組織に統制されていないこと • 社員が10人以上いること |
※「営利を目的としない」とは、利益を得てはいけないという意味ではなく、団体の構成員に収益の分配や財産の還元などを目的としないことを指します。
参照:認証制度について | NPOホームページ
NPO法人設立の流れ
NPO法人を設立する際は、以下の手順に従いましょう。
1、所轄庁へ設立認証の申請
2.縦覧・審査・認証
3.法人設立登記の手続き
申請時には、設立要件が適切に満たされているかを確認しましょう。設立認証後は改めて法人設立登記手続きを行う必要がありますので、その点に留意してください。以下では、NPO法人の設立手順について詳しく説明します。
設立の流れ1.所轄庁へ設立認証の申請
まず所轄庁(都道府県・市区町村)に設立認証の申請を行います。所轄庁はNPO法人の認証権と監督権を有する行政機関であり、通常は主たる事務所の所在地を管轄する都道府県知事です。申請時には、以下の書類を申請書とともに所轄庁の担当窓口に提出しますので、書類は事前に準備しておきましょう。
(引用) 1.定款 2.役員名簿(役員の氏名及び住所又は居所並びに各役員についての報酬の有無を記載した名簿) 3.役員の就任承諾書及び誓約書の謄本 4.役員の住所又は居所を証する書面 5.社員のうち 10 人以上の氏名及び住所又は居所を示した書面 6.認証要件に適合することを確認したことを示す書面 7.設立趣旨書 8.設立についての意思の決定を証する議事録の謄本 9.設立当初の事業年度及び翌事業年度の事業計画書 10.設立当初の事業年度及び翌事業年度の活動予算書 |
設立の流れ2.縦覧・審査・認証
申請後、所轄庁は1ヶ月間にわたり、以下の項目について縦覧を行います。縦覧は、提出された書類を公開して市民が自由に閲覧できる状態です。
• 申請年月日 • NPO法人の名称 • 代表者氏名 • 主たる事務所の所在地 • 定款に記載された目的 |
申請受付から3ヶ月以内に所轄庁が審査し、認証または不認証の通知を申請者に送ります。ただし、その後も登記手続きが必要であり、「認証通知が来たら設立手続きが完了」とはならない点に留意してください。この段階は主に所轄庁が進行するため、申請者にとっては基本的には待機期間です。必要に応じて書類の修正が求められる場合があります。
設立の流れ3.法人設立登記手続き
認証通知を受けたら、2週間以内に法務局で法人設立登記の手続きを行います。認証通知があっても、登記手続きを経なければ設立が確定しません。
登記完了後は、所轄庁に設立登記完了届出書、登記事項証明書、財産目録などを提出します。なお、事務所と法務局の管轄区域が異なる場合、従たる事務所の所在地でも登記が必要ですので、注意しましょう。これらの手続きは、設立登記後2週間以内に済ませる必要があります。また、認証通知を受けてから6ヶ月以上にわたり登記手続きを行わない場合、認証が取り消されることがあります。そのため、通知を受けたら、できるだけ速やかに手続きを進めましょう。
NPO法人設立の費用
NPO法人を設立する際、登記手続きや定款認証にかかる手数料は一切かかりません。また、資本金に厳格な規定がないため、実質的にはほぼ0円で設立が可能です。これに対して、株式会社の設立には15万円から20万円ほどの登記費用が必要ですが、NPO法人の場合はこれを抑えることができます。
必要な費用としては、法人の印鑑作成代金(約5,000円〜)、役員となる個人の住民票を請求する費用(1通あたり300円程)、手続きに関連する交通費や通信費などのみです。もちろん、設立手続きを専門家に依頼する場合は、その費用が必要ですが、一般的な会社の設立に比べると少額で設立できます。
助成金について
NPO法人に対する助成金は、その法人が活動する特定の分野に対して支給されるため、該当分野でなければ受給できません。例えば、福祉に関する助成金を得るには、医療や福祉に携わるNPO法人であることが必要です。ただし、助成金を提供する団体は特定の分野に限定されず、多岐にわたって募集を行っていることが少なくありません。そのため、専門的な助成金だけでなく、さまざまな分野で支援が可能です。
また、助成金は申請しても必ずしも受給できるわけではなく、助成金ごとに審査が行われます。審査を通れば初めて助成金が支給され、たとえば300万円の基金の場合、30万円ずつ10のNPO法人に支給される仕組みという仕組みです。
国だけでなく、都道府県、市町村、財団なども、NPO法人が受けられる助成金を募集しており、いろいろな支援の機会が存在しています。
参照:公益財団法人 助成財団センター
助成制度/助成制度一覧 | CANPAN
NPO法人設立のメリット
それでは、NPOを法人化させる際のメリットについて見ていきましょう。
社会的信頼性が高い
まず、NPO法人はその非営利性質が社会的に認められています。団体が活動を行う際には、事務所の賃貸やネット回線などの必要な設備に加え、行政や企業と契約する場面が生じることがあります。法人格を持つことの利点は、任意団体と比較して団体名義での契約が可能であり、団体名義で資産を所有できることです。助成金や行政の委託事業などでは、「法人格」が応募条件となることがよくあります。また、他の任意団体と比べて、地域での認知度や信頼性の高さも特徴です。団体として法的ルールに基づいて活動することが奨励され、広く一般に情報が公開されるため、参加者や会員の募集がしやすくなり、従業員も雇用しやすくなります。
税制の優遇がある
NPO法人には、税制面での利点が存在します。たとえば、収益事業を行わないNPO法人は法人住民税などが免除されるケースがあります。これに対して、任意団体の場合、活動や運営状況に応じて団体の所得が代表者個人の所得とみなされ、課税される可能性があるでしょう。さらに、認定NPO法人や特例認定NPO法人に認定されると、寄付者には所得税の優遇措置が適用されます。一部の自治体では、特定のNPO法人に寄付した人に対して住民税控除を受ける制度なども設けています。
参照:
特定非営利活動促進法により設立されたNPO法人の法人税法上の取扱い|国税庁
寄附に伴う税制上の優遇措置 | NPOホームページ
少額の費用で設立できる
NPO法人の設立には登録免許税が不要であり、法律上、最低資本金や出資金などの厳格な条件もありません。これにより、株式会社の設立と比較して格段に経済的な利点があります。経営者は大幅に負担を軽減でき、低コストで企業を設立し事業を開始することが可能です。法人印鑑や登記手続きに伴う最低限の通信費用などは発生しますが、少額費用で設立でき、事業をスタートできる点は、大きなメリットと言えるでしょう。
補助金や助成金など資金調達面で有利
NPO法人は、資金調達の手段として、補助金や助成金を利用することがあります。これらの資金は、NPOの支援を目的として、さまざまな形で提供されており、法人が設立された初期段階からでも利用できる場合があります。 具体的には、助成金は民間財団から、補助金は行政機関から支給される資金です。
また、NPO法人は高い認知度と社会的な信頼性を有しているため、資金調達面で優位にあるとされています。
NPO法人設立時の注意点
NPO法人設立のメリットをご紹介してきましたが、ここでは注意点も確認しておきましょう。
設立に時間がかかる
NPO法人の設立手続きには、最低でも3か月以上が必要です。申請書類を整え、所轄庁に提出した後、所轄庁は1ヶ月間の「縦覧」を行い、市民が申請を点検する機会を提供します。縦覧終了後、2か月以内に行われる所轄庁による審査で、認定されたら法務局へ登記申請します。書類作成から登記完了まで、全体で4ヶ月程度を見ておきましょう。
社員が10人以上必要
NPO法人を設立するには、社員や役員の人員要件があるため、一定のハードルが存在します。数人のグループでNPO活動を始めることは可能ですが、NPO法人としての認証を受けるには、社員は最低でも10人以上必要です。ここでの「社員」は、通常の企業の従業員とは異なり、会員であり議決権を持つ個人を指します。また、3名以上の理事と1名以上の監事を置くことが必要です。
活動分野が限定されている
NPO法人として承認を受けるためには、以下の20の非営利活動のいずれかを実施する必要があります。
(引用) 法に掲げられている特定非営利活動は、以下のとおりです。 別表(法第2条関係) 一 保健、医療又は福祉の増進を図る活動 二 社会教育の推進を図る活動 三 まちづくりの推進を図る活動 四 観光の振興を図る活動 五 農山漁村又は中山間地域の振興を図る活動 六 学術、文化、芸術又はスポーツの振興を図る活動 七 環境の保全を図る活動 八 災害救援活動 九 地域安全活動 十 人権の擁護又は平和の推進を図る活動 十一 国際協力の活動 十二 男女共同参画社会の形成の促進を図る活動 十三 子どもの健全育成を図る活動 十四 情報化社会の発展を図る活動 十五 科学技術の振興を図る活動 十六 経済活動の活性化を図る活動 十七 職業能力の開発又は雇用機会の拡充を支援する活動 十八 消費者の保護を図る活動 十九 前各号に掲げる活動を行う団体の運営又は活動に関する連絡、助言又は援助の活動 二十 前各号に掲げる活動に準ずる活動として都道府県又は指定都市の条例で定める活動 |
設立時には、定款や設立趣旨書を提出し、「主たる活動内容」を具体的に記載します。この記述が20の規定活動に該当しない場合、NPO法人の設立は認められません。つまり、NPO法人を設立する際には、活動分野が特定の範囲に限定されるというデメリットが生じます。
たとえば、自然災害に対する救援支援活動や、子供の健全な成長を促進するための子供食堂の運営などが該当します。なお、これらの活動内容は、設立時に明確に定款に記載されなければなりません。
また、活動内容を変更する場合は、その都度認証手続きが必要となります。社会に貢献する事業であっても、法律上の制約があるため、NPO法人の設立に際しては、業種について十分な注意が必要です。
情報公開が必要
NPO法人は、他の非営利組織と比較して、報告書や提出書類の手続きが複雑になります。毎年、事業報告書や活動計算書を都道府県庁や市役所などの所轄機関に提出しなければなりません。さらに、財産目録や役員名簿、社員名簿などの情報を公開する義務があるため、組織内の透明性を維持し、外部からも信頼される運営体制を確立することが求められます。
独特な税務処理が必要
NPO法人が営利事業を行う場合、一般の企業会計とは異なり、収益事業とその他の事業を分けた会計が必要です。利益が生じれば、法人税や法人住民税が発生する場合もあります。一部の場合は免除制度が適用されますが、これには追加の申請手続きが必要です。非営利組織が収益事業を行う場合は、このように特有の対応が求められることに留意してください。
経理業務を楽にするならINVOY
NPO法人の設立は費用を抑えられますが、所轄庁への設立認証申請には、定款や役員の住民票、議事録の謄本、事業計画書、活動予算書など複数の書類の準備が必要です。会社設立時や設立後の経理業務の負担を軽減するためには、ぜひINVOYをご利用ください。INVOYを利用することで、経理業務の効率が大幅に向上します。最新の法令に対応しているため、安心してご利用いただけます。INVOYは簡単な登録手続きで即座にご利用いただけますので、ぜひご検討ください。
▼無料会員登録はこちら
まとめ
NPO法人の設立には、株式会社よりも低い設立費用、税制上の優遇、社会的信用の向上など多くのメリットがあります。NPO法人は登記手続きや定款認証には費用がかからないため、基本的には数千円から数万円の範囲で設立が可能です。
ただし、設立には時間がかかり、業種に制約があったり、10人以上の社員が必要であったり、情報公開が求められるなど、いくつかのデメリットも存在します。そのため、NPO法人の設立を検討する際には、デメリットもしっかり把握し、登記の流れを理解し、手続きをスムーズに進めましょう。
請求書が2枚にわたる場合の正しい書き方を徹底解説
「請求書が2枚にわたる場合、どうやって書けばいいのだろう…」「ページが分かれると見栄えが悪くなるので…