請求書の基礎知識

「ご請求書」は正しい敬語?意外と知らない請求書マナーを徹底解説

公開日:

ご請求書

ビジネス文書を作成する際、「ご請求書」と書くべきか「請求書」と書くべきか、迷った経験はありませんか。結論から言うと、「ご請求書」という表現は日本語の文法上は誤りではありません。

しかし、ビジネスシーンにおいては「請求書」と記載するのが一般的であり、無難な選択です。請求書は、取引先に代金の支払いをお願いするための重要な書類です。

そのため、丁寧な表現を心がけたいものですが、過度な敬語はかえって相手に違和感を与えてしまう可能性があります。

本記事では、なぜ「ご請求書」を避けた方が良いのか、その理由を敬語の基本ルールから解説します。あわせて、請求書を送付する際の適切な敬語表現やビジネスマナーについても、具体的な例文を交えながら詳しくご紹介します。

社内外を問わず使える正しい知識を身につけ、円滑なビジネスコミュニケーションを実現しましょう。

「ご請求書」という表現を使わない方が良い理由

なぜ、ビジネスシーンでは「ご請求書」という表現が推奨されないのでしょうか。その理由を、敬語の基本ルールと、言葉が与える印象から解説します。

敬語の基本:「お」と「ご」の役割

まず、敬語の接頭辞である「お」と「ご」の役割について理解を深めましょう。これらは名詞に付けることで、丁寧さや上品さを示す働きがあります。一般的に、後に続く言葉が大和言葉(訓読み)の場合は「お」を、漢語(音読み)の場合は「ご」を付けるのが原則です。

  • 「お」を付ける例:お知らせ、お手紙、お力添え
  • 「ご」を付ける例:ご連絡、ご報告、ご利用

このルールに従うと、「請求書(せいきゅうしょ)」は漢語のため、「ご請求書」という表現自体は、日本語として間違いではありません。

「ご請求書」が与える違和感の正体

ではなぜ、文法的に正しくても「ご請求書」はビジネス文書としてあまり使われないのでしょうか。

それは、敬語を向ける相手と、その行為の主体に理由があります。請求書を発行するという行為は、自社(自分)が相手に対して金銭を請求する、自分側の行為です。本来、自分側の行為をへりくだって表現する際には「謙譲語」を用いますが、「ご請求書」は丁寧語の一種であり、この場面で必ずしも必要とされる敬語ではありません。

丁寧さを意識するあまり、自社の行為である「請求」に「ご」を付けてしまうと、受け取る側によっては過剰な敬語だと感じられ、不自然な印象を与えかねません。もちろん、「御礼状」や「御挨拶」のように、慣習として定着している表現もあります。

しかし、請求書に関しては、シンプルに「請求書」と表記するのが、ビジネスにおける一般的で正式なマナーとされています。言葉遣いに厳しい取引先ほど、こうした細かな表現に違和感を抱く可能性があることも、念頭に置いておくと良いでしょう。

請求書の正しい表記と封筒マナー

請求書の正しい表記と封筒マナー

請求書のタイトルは「請求書」とシンプルに記載するのが適切です。ここでは、請求書を郵送する際の、封筒の書き方に関するビジネスマナーもあわせて確認しておきましょう。

封筒の表面には「請求書在中」と明記する

請求書を郵送する場合、封筒の表面に「請求書在中」と記載するのが一般的です。これにより、受け取った側は封筒を開封する前から、それが重要書類であることを一目で認識できます。

記載する際は、青色や黒色のスタンプ、もしくは手書きで問題ありませんが、より目立たせたい場合は赤字で記載することもあります。市販のスタンプを利用すると、毎回手書きする手間が省けて便利です。

ここでのポイントは、「御請求書在中」とは書かないことです。あくまで内容物を簡潔に示すための表記ですので、冗長な表現は避けましょう。

宛名の敬称:「御中」と「様」を正しく使い分ける

社外文書における宛名の敬称は、ビジネスマナーの基本です。間違いやすいポイントなので、しっかりと押さえておきましょう。

  • 御中:会社や部署など、組織宛てに送る場合に使用します。
    (例:株式会社〇〇 御中、〇〇株式会社 経理部 御中)
  • :特定の個人宛てに送る場合に使用します。
    (例:〇〇株式会社 経理部 部長 鈴木一郎 様)

注意点として、「御中」と「様」を併用することはできません。「株式会社〇〇 御中 鈴木一郎 様」という表記は誤りです。担当者名が分かっている場合は、「様」を使い、個人名まで記載するのが最も丁寧です。

請求書を丁寧に送る方法【ケース別解説】

請求書のタイトルはシンプルに「請求書」としますが、相手への敬意はメールの本文や送付状で示します。ここでは、メールと郵送、それぞれのケースで好印象を与える伝え方と例文をご紹介します。

メールで請求書を送付する場合

近年、請求書をPDF形式のファイルで送付するケースが増えています。メールで送る際の件名と本文のポイントを見ていきましょう。

件名

メールの件名は、受信者が一目で内容を把握できるよう、「何の用件か」と「誰からのメールか」が分かるように記載します。

  • (例1)【請求書送付のご案内】株式会社〇〇(自社名)
  • (例2)〇月分請求書送付の件(株式会社〇〇)
  • (例3)【株式会社〇〇】〇月分納品物のご請求書をお送りします

このように記載することで、他のメールに埋もれることなく、相手に重要な連絡であることを伝えられます。

本文の例文

メール本文は、丁寧な挨拶から始め、請求書を送付した旨を明確に伝えます。相手に確認と処理をお願いする、依頼の形を取るのが基本です。

件名:【請求書送付のご案内】株式会社〇〇

株式会社△△

経理部 □□様

平素は格別のお引き立てを賜り、厚く御礼申し上げます。

株式会社〇〇の佐藤です。

添付ファイルにて、〇月分のご請求書をお送りいたします。
お手数ではございますが、ご査収くださいますようお願い申し上げます。

なお、本メールと行き違いでお支払い済みの場合は、何卒ご容赦ください。
ご不明な点がございましたら、お気軽にお問い合わせください。

今後とも、何卒よろしくお願い申し上げます。


株式会社〇〇 営業部 佐藤 一郎 住所:〒XXX-XXXX 東京都〇〇区… TEL:XX-XXXX-XXXX Email:sato.ichiro@XXXX.co.jp

このように、「ご請求書」という言葉を使わなくても、「ご請求書をお送りいたします」「ご査収ください」といった表現で、十分に丁寧な依頼が可能です。

郵送で請求書を送付する場合

請求書の原本を郵送する際は、「送付状(添え状)」を同封するのがビジネスマナーです。送付状は、挨拶とともに送付物の内容を伝える役割を果たします。

送付状の例文

送付状は、一般的なビジネスレターの形式に沿って作成します。

頭語(拝啓など)と結語(敬具など)を使い、丁寧な文章を心がけましょう。

2025年6月17日

株式会社△△

経理部 □□様

株式会社〇〇

営業部 佐藤 一郎

(自社住所・連絡先)

請求書送付のご案内

拝啓

時下ますますご清栄のこととお喜び申し上げます。平素は格別のご愛顧を賜り、心より御礼申し上げます。

さて、下記の書類を同封いたしました。
誠に恐れ入りますが、ご査収の上、ご対応いただけますようお願い申し上げます。

敬具

  1. 請求書 1通

以上

請求書だけを送るのではなく、このような送付状を一枚添えるだけで、相手に与える印象は格段に良くなります。郵送の際は、ぜひ送付状を活用しましょう。

請求書送付時に注意したい敬語表現

請求書送付時に注意したい敬語表現

最後に、請求書を送る場面で間違いやすい敬語表現を2つご紹介します。丁寧なつもりが、かえって失礼な印象を与えてしまうこともあるため、正しい使い方を覚えておきましょう。

間違いやすい表現①:「ご請求させていただきます」

「料金をご請求させていただきます」という表現をよく見かけますが、これは過剰な敬語表現にあたります。「させていただく」は、相手の許可を得て何かを行う際に使う謙譲語です。自社が請求するという行為は、相手の許可を必要とするものではありません。

そのため、この場面で「させていただく」を使うのは不適切とされています。この場合は、「請求いたします」や、より丁寧に伝えたい場合は「ご請求申し上げます」とするのが正解です。シンプルでスマートな表現を心がけましょう。

間違いやすい表現②:「ご査収願います」

請求書を送る際によく使われる「ご査収」という言葉ですが、「ご査収願います」という表現には注意が必要です。「願います」という言葉は、丁寧な命令形と受け取られる可能性があり、相手によっては失礼だと感じることがあります。

より丁寧で適切な表現は、「ご査収ください」です。さらに敬意を示したい場合は、「ご査収くださいますようお願い申し上げます」や「ご査収のほど、よろしくお願い申し上げます」といったクッション言葉を挟むと、非常に丁寧な依頼表現になります。

ビジネスシーンでは、「ご査収ください」または「ご査収のほど、よろしくお願いいたします」を使うのが一般的です。

まとめ:正しい敬語とビジネスマナーで信頼関係を築く

「ご請求書」という表現は、文法上の誤りではありません。

しかし、ビジネスシーンでは「請求書」とシンプルに表記するのが一般的であり、正式なマナーです。過度な敬語は、かえって相手に不自然な印象を与えてしまう可能性があることを覚えておきましょう。

取引先への敬意は、請求書のタイトルではなく、メールの本文や送付状で示すのがスマートな方法です。「請求書を送付いたします」「ご査収くださいますようお願い申し上げます」といった適切な敬語を用いることで、丁寧かつ正確に要件を伝えることができます。

日頃何気なく使っている言葉遣いも、一度立ち止まって見直してみることで、ビジネスコミュニケーションの質は向上します。正しいマナーで作成・送付された請求書は、企業の信頼性を高め、円滑な取引関係の構築に必ず役立つでしょう。

この記事の投稿者:

hasegawa

請求書の基礎知識の関連記事

請求書の基礎知識の一覧を見る

\1分でかんたんに請求書を作成する/
いますぐ無料登録