
大工として独立したばかりで、見積書の作成方法に悩んでいませんか? 見積書はお客様との信頼関係を築き、仕事を円滑に進めるために欠かせない重要書類です。しかし、何をどこまで書けば良いのか最初は戸惑うものです。
本記事では、見積書の基本的な構成や必須の記載項目を解説し、木工事・内装工事・リフォームなど大工仕事の種類別に見た見積書の書き方実例をご紹介します。
また、お客様に信頼される見積書作成のポイントやよくあるミスとその対策、さらに見積書作成に役立つツールやテンプレート、消費税・諸経費・値引きの扱い、法的・商習慣的な注意点についても詳しく解説します。初心者の大工さんでも今日から実践できる内容ですので、ぜひ参考にしてください。
目次
見積書の役割と重要性
見積書とは、正式契約を結ぶ前に工事内容と費用を事前に提示するための書類です。お客様(発注者)は見積書の内容をもとに依頼するか判断し、施工側も見積書に沿って準備を進めます。
大工仕事では、工事内容や規模によって費用が大きく変動するため、口頭の約束だけでは認識のズレが生じかねません。見積書を交わしておけば、お互いに工事内容と金額の共通認識を持つことができ、後々のトラブル防止につながります。
特にリフォームや注文住宅など高額な工事では、お客様は複数の業者から相見積もりを取るのが一般的です。その際、分かりやすく丁寧に作成された見積書は、お客様に安心感を与え、たとえ金額が多少高くても信頼できる業者だという印象を与えられます。見積書は単なる金額の提示ではなく、あなたのプロとしての姿勢や誠実さを示す名刺代わりとも言えるのです。
見積書の基本構成と必須記載項目
大工仕事の見積書は、一般的に「表紙」、「工事条件」、「内訳明細」の3つのパートで構成されます。それぞれに記載すべき必須項目と意味を押さえておきましょう。
表紙に記載する基本情報
見積書の表紙(冒頭部分)には、見積書全体の概要を示す情報を記載します。主な項目は次の通りです
タイトル
書類の題名です。通常は「御見積書」と大きく記載します。
見積書番号
見積書の通し番号です。後日の管理や識別のために付番します。
発行日(作成日)
見積書を作成・発行した日付です。この日付から見積の有効期限を計算することが多いです。
宛名
見積書を提出する相手(お客様)の名前や会社名です。個人の場合は「〇〇様」、法人の場合は正式名称に「御中」を付けます。
件名(見積案件名)
工事の名称や案件のタイトルです。例:「〇〇邸リビング改装工事見積書」「〇〇店舗内装工事見積書」など。
見積金額
今回提示する見積の合計金額です。後述の内訳部分の合計と一致する金額を明記します。消費税を含むか除くかもここで併記するのが親切です(例:「税込合計金額 ○○円」)。
発行者情報
見積書を作成したあなた(あなたの事業)の情報です。会社名(屋号)、住所、電話番号、担当者名などを記載します。個人事業主であれば自分の氏名を記載し、必要に応じて認印や社判を押印します。
表紙部分には上記のような基本情報をまとめます。例えば冒頭に「下記の通り御見積申し上げます。」といった挨拶文を入れることもあります。タイトルや宛名、金額などに誤りがないよう注意しましょう。 特に金額は改ざん防止のため、数字の後ろに「-」を入れる(例:¥1,000,000-)など工夫すると丁寧です。
工事条件(見積条件)に記載する項目
次に、見積書の「工事条件」欄には、その見積金額で工事を行うための前提条件や取引条件を記載します。これは工事に関する重要事項の確認リストで、お客様との認識合わせに欠かせません。主な項目は以下の通りです
工事場所
工事を行う現場の住所や名称です。特定の部屋や区画に限る場合はそれも明記します。
工事内容(工事概要)
どのような工事を行うのか簡潔にまとめます。工事の範囲や目的を示し、見積もり対象となる作業の概要を記載します。
工期(施工期間)
工事の着手予定日と完了予定日、または工期の長さ(何日間)を記載します。お客様の希望や都合に合わせて調整した内容を書きましょう。
支払い条件
代金の支払方法や時期について明記します。例:「完工後◯日以内に銀行振込」「着手時に〇〇円の前金、残額を引き渡し時に支払い」など。分割払いや手付金など取り決めがある場合は必ず記載します。
見積有効期限
この見積金額で契約可能な期限です。一般的には発行日から◯ヶ月以内などと定めます。材料価格の変動などもあるため、期限を切っておくことが重要です。
その他条件
工事を進める上での特記事項を記載します。例として「電気・水道は施主様ご提供」「工事期間中、日曜は作業休止」「産廃処分費を含む」など、あらかじめ合意しておくべき事項を明文化します。また、お客様から支給される材料や、適用する施工方法・仕様書がある場合もここに明記します。
これらの条件面の情報は、お客様との間で事前に取り決めておくべきポイントです。条件を曖昧にしたままにすると、後日の「聞いていない」「そちらで負担と言われた」等のトラブルにつながります。
見積の段階で想定される条件は具体的に書き出し、双方が納得した上で見積書を提出することが大切です。 小規模な工事の場合、これら条件を表紙部分に簡潔に盛り込むケースもあります。
内訳明細に記載する項目
見積書の中心となるのが「内訳明細」部分です。ここには工事費用の詳細な内訳を項目ごとに記載します。内訳明細は表形式でまとめるのが一般的で、以下のような項目欄を設けます
項目(工事項目)
何にかかる費用かを示す項目です。工事する部位や作業の名前、使用する主な材料名などを記載します。例:「基礎工事」「フローリング張替え」「木材(柱・梁)」「建具取り付け」など。
仕様・摘要
その項目の補足説明欄です。材料なら型番やサイズ、グレード、工法の概要などを記載します。例えば項目が「ドア交換」であれば、摘要欄に「木製ドア(指定品番〇〇)、金物・塗装込み」等のように詳細を補足します。
数量
該当する工事項目の数量です。使用する材料の数量や作業のボリュームを数値で記載します。例えば「10枚」「20m」「5日間」「2名」など項目に応じた数量を明示します。数量が特定しにくい場合は「一式」とするケースもあります。
単位
上記数量の単位です。「枚」「m³(立方メートル)」「㎡(平方メートル)」「式(=一式)」など適切な単位を付けます。
単価
数量1あたりの金額です。単位とセットで考え、例えば「¥5,000/㎡」「¥30,000/日」などの形式で記載します。一式の場合は単価欄は空欄か「¥○○/式」とします。
金額
その項目にかかる費用の合計金額です。(数量 × 単価)の計算結果を記載します。数量が「一式」の場合は見積担当者が算出した一式分の金額を直接書きます。
備考(任意)
必要に応じて補足事項や注記を付ける欄です。「○年保証対象」「○○費を含む」など、特記したいことがあれば記載します。
各明細行には上記の情報を記入し、見積もりの根拠を明確に示します。材料費、人工(人件費)、諸経費などをできるだけ細かく、わかりやすく書くほどお客様の信頼度は増します。複雑な工事では、項目が多岐にわたるため工事内容別にグループ化(階層化)することも有効です。たとえば「解体」「木工事」「仕上げ」といったカテゴリで見出し項目を作り、その中に個別の費用を列挙すれば、何にいくらかかるのか一目で把握できます。
内訳明細の末尾には小計・消費税額・合計金額を記載しましょう。小計は工事費用の総額(税抜き)、消費税額はその時点の税率に基づく額、合計金額は税込の総額です。合計金額は表紙に記載した見積金額と一致させます。値引きを行う場合は、内訳の最後に「値引き ▲○○円」とマイナスの金額を項目として入れ、差し引いた上で合計を算出します。
(小計 ○○円)
(消費税(10%) ○○円)
(合計金額 ○○円)
以上が見積書の基本構成と必須項目です。正確かつ漏れのない見積書を作成するために、これらの項目を一つひとつ丁寧に埋めていきましょう。
大工仕事における見積書の書き方実例(木工事・内装工事・リフォーム)
実際の大工仕事では、工事の種類によって見積書の内訳内容も変わってきます。ここでは木工事、内装工事、リフォーム工事の3つを例に、見積内訳の書き方や考え方を紹介します。具体的な項目例を挙げますので、自身の業務内容に照らし合わせて参考にしてください。
木工事の見積書作成例
「木工事」とは、木材を使った建築作業全般を指し、住宅の構造を作る大工工事や木造建築の骨組み工事などが該当します。木工事の見積では、材料費と人件費(手間賃)が大きな割合を占めます。以下に、木工事の一例として木造住宅の軸組工事を想定した内訳例を示します。
構造材費(木材材料費)
「柱・梁・桁など構造用木材一式」- 木造軸組に使用する木材の費用です。寸法や材質ごとの単価を設定し、必要本数分の金額を計上します(例:柱〇本、梁〇本などの合計)。
金物・補強金具費
「接合金物一式」- 構造材を接合・補強するボルトや金具類の費用です。図面に基づき必要数量を拾い出して合計します。
合板・下地材費
「構造用合板(床・壁下地)〇〇㎡」- 床や壁の下地に使う合板やパネル類の材料費です。㎡単価×面積で算出します。
大工手間賃
「大工工事費 一式」- 木工事を施工する大工さんの人件費です。延べ人日数に日当を掛けて計算します(例:大工2名×10日=20人工など)。人件費は地域相場も参考に、1日あたり約¥20,000前後を目安に設定することが多いでしょう。
諸経費
「諸経費 一式」- 現場への運搬費、工具損料、通信費など雑多な費用をまとめたものです。木工事部分の小計に一定率(例:5~10%)を掛けて算出する場合もあります。
(小計 ○○円)
(消費税(10%) ○○円)
(合計金額 ○○円)
上記は一例ですが、木工事では構造材や下地材などの材料費が細目として並び、人件費は「○○工事一式」などとまとめられることが多いです。細かな部材も可能な範囲で記載し、「何にいくらかかるか」をお客様に示すことが信頼につながります。
また、木工事は施工中に追加補強などが発生しやすいため、その場合の対応(追加費用は別途見積もり等)についても事前に伝えておくと親切です。
内装工事の見積書作成例
内装工事では、部屋の仕上げや造作に関わる様々な作業が発生します。クロス(壁紙)貼り替え、床材張替え、塗装、造作家具の設置など、多岐にわたる内装仕上げの費用を明細化しましょう。店舗の内装リフォームを例に、主な内訳項目を挙げます。
内装仕上げ工事費
「内装仕上げ一式」- 天井・壁・床の仕上げ工事全体の費用です。必要に応じ、内訳として「クロス張替え〇㎡」「塗装〇㎡」「床フローリング張替え〇㎡」など具体的に列記します。各仕上げ材ごとに㎡単価×面積で金額を計算します。
造作工事費
「造作家具・建具工事費 一式」- カウンターや棚、間仕切り壁など大工作業による造作物の費用です。材工含めて一式で見積もることもありますが、可能なら「材料費(板材〇枚等)+取付工賃」で内訳化します。
設備機器取付費
「照明・設備取り付け一式」- 照明器具や換気扇等、内装に付随する設備の設置費です。電気工事業者や設備業者に支払う費用が発生する場合、その見積金額を計上します。
仮設工事費
「仮設養生・足場費 一式」- 内装工事中に必要な養生シートや簡易足場の設置、撤去費です。規模により金額を見積もります(例:養生一式〇円)。
運搬・廃棄処分費
「廃材処分・運搬費 一式」- 古い内装材の解体撤去と廃棄物処分、その運搬にかかる費用です。廃棄物量に応じて産業廃棄物処分費を積算し、トラック運搬費も含めます。
現場管理費
「現場管理費 一式」- 内装工事期間中の現場監督や管理にかかる費用です。工事全体の5~10%程度を目安に算出することがあります(大規模なら「一般管理費・現場管理費」と分けることも)。
(小計 ○○円)
(消費税(10%) ○○円)
(合計金額 ○○円)
内装工事の見積では、作業ごとの単価と数量を明確に示すことがポイントです。お客様は「壁紙を貼り替えるのに何㎡分、いくらかかるのか」といった点を知りたいので、できるだけ数量 × 単価の形で費用根拠を示すようにしましょう。また、専門用語は避け、例えば「PBボード張り」ではなく「石膏ボード下地張り」といった平易な表現にする、必要ならカッコ書きで説明を補足するなど、素人目にも分かりやすい記載を心がけます。
リフォーム工事の見積書作成例
リフォーム工事では、複数の部屋や工種にまたがることが多いため、見積もりを部位ごと・工事項目ごとに整理することが重要です。例えば、住宅の全面リフォームを行うケースを想定し、内訳の構成例を紹介します。
解体撤去工事費
既存設備や内装の解体撤去、および廃材処分にかかる費用です。対象となる部位(キッチン解体、浴室解体など)ごとに「○○解体撤去 ○式 ¥○○」といった形で記載します。
○○工事費(部位・工種別の工事費)
リフォーム内容に応じてセクションを分けます。例:「キッチン設備工事一式」「浴室リフォーム工事一式」「リビング内装工事一式」など。その下に、それぞれの細かい作業や材料を明細行として列挙します。
例:「キッチン設備工事」の内訳としてシステムキッチン本体費、組立据付費、給排水工事費、電気工事費などを個別に計上します。同様に「リビング内装工事」ではフローリング張替え、壁・天井クロス張替え、ドア交換などをそれぞれ数量×単価で記載します。
諸経費
リフォーム全体に関わる共通経費です。産廃処理費や現場管理費、設計費用など、個別内訳に含めていない費用をここにまとめます。
値引き(任意)
もしサービスとして値引きを提供する場合は、ここに「値引き ○○円」とマイナスで記載し、総額から差し引きます。
リフォーム見積書ではこのように階層構造でまとめると、お客様も各部分の費用配分を理解しやすくなります。一方、「一式」の表記が多くなりすぎると何を含んでいるのか不明瞭になるため、主要な設備や工事はできるだけ具体的な名称と金額を記載しましょう。
また、リフォームでは着工後に追加工事が発生する可能性も高いため、見積書の備考欄などで「記載のない工事・仕様変更は別途お見積り」と断りを入れておくと、後日の追加請求もスムーズになります。
お客様に信頼される見積書作成のポイント
見積書の内容が適切でも、その見せ方や作成プロセスによってお客様の感じ方は大きく変わります。信頼される見積書を作成するためのポイントを押さえておきましょう。
明瞭で分かりやすい内訳
前述の通り、可能な限り細かく費用を内訳化し、専門用語は噛み砕いて説明します。「一式」のみの記載は避け、「何の費用か分からない」と思われる箇所を残さないようにしましょう。
お客様が見積書を読んで疑問を抱きそうな点(例えば工事範囲や材料グレード)は、摘要や備考でフォローします。
適正な金額設定
極端に高すぎたり安すぎたりする見積金額は不信感のもとです。相場とかけ離れた価格にならないよう注意しましょう。安く見せようとして必要な工事を省略したり、後で追加請求を前提に安価な見積を出すのは厳禁です。
最初から適正価格で正直に提示することが信頼につながります。
体裁と誤字脱字のチェック
見積書はビジネス文書です。レイアウトが乱れていたり、誤字脱字や計算ミスがあると、それだけでプロとしての信用を損ねます。提出前に必ず金額の計算チェックと日本語の見直しを行いましょう。特に金額の桁違いミスは致命的です。
Excelなどで自動計算させる、同僚にダブルチェックしてもらうなどしてミスを防止します。
提出スピードと対応
見積依頼を受けてから迅速に見積書を提出することも信頼感を高めます。特に相見積もりの場合、スピーディーな対応は「仕事への意欲」として評価されることがあります。
また、メールで送る際にも添え状の文章を添える、直接手渡しできる場合は口頭で補足説明するなど、丁寧な対応を心がけましょう。
よくあるミスとその対策
見積書作成で初心者が陥りがちなミスと、その防止策について解説します。失敗例を事前に知って、ミスゼロの見積書作成を目指しましょう。
計算ミス・金額の誤り
見積書で最も致命的なミスです。手計算や入力ミスで金額を間違えると、契約後に赤字になったりトラブルのもとになります。対策:Excelなどで自動計算式を活用し、人為的な計算ミスを減らします。作成後は必ず合計金額や税額の整合性をチェックし、念のため他人にも確認してもらうと安心です。
項目の漏れ
必要な工事項目を見積もりに入れ忘れてしまい、後から「その分請求できない」「サービス工事になってしまった」などの事態が起こることがあります。対策:工事内容を洗い出す際に、工程ごとに漏れがないかチェックリストを使って確認します。
過去の類似工事の見積書を参考にすると抜け漏れ防止に有効です。
誤記(宛名・日付・数量など)
お客様の名前を間違えたり、日付を前年のまま直していない、数量単位を誤る等のケアレスミスも信用に関わります。対策:入力したらすぐに印刷せず、一度時間を置いてから内容を読み返す習慣をつけましょう。
宛名や日付はテンプレート流用時に特に注意し、最新の情報に更新すること。
曖昧な表現・不足情報
見積書の説明が不足していると、お客様は「どこまでやってくれるのか」が分からず不安になります。例えば「床工事一式」だけでは、下地処理や廃材処分が含まれるのか不明です。対策:必ず範囲や内容を具体的に書き、「○○費用を含む」「○○は別途」など注記を入れます。
不明点が残らない文章かどうか、自分がお客様の立場で読み返して確認しましょう。
「一式」の多用
前述の通り、何でも「一式」で済ませてしまうと明細として不親切です。対策:まとめられる項目でも、可能な限り分解して記載します。一式とする場合も、その内訳概要を摘要に書くなどしてフォローします。
有効期限の記載漏れ
見積書に有効期限がないと、半年後や一年後に「この金額でやってほしい」と言われる可能性もゼロではありません。対策:必ず見積書には有効期限を明記します。一般的な工事なら「発行後3ヶ月間有効」などとします。期限を過ぎたら再度お見積りする旨を説明しましょう。
押印・署名忘れ
紙の見積書で社印や署名が無いと、公的な書類としての信頼性に欠けます。対策:提出前に署名・押印を確認するチェックリストを用意します。電子データで提出する場合も、PDF上に電子印影を載せるか、メール本文に担当者名を記載するなどして誰が発行したかわかるようにします。
提出方法の誤り
日本の法律上、見積書は「信書」に該当するため、郵送または手渡しで送付する必要があります。宅配便のメール便など信書NGの方法で送ると違法となる可能性があります。対策:遠方で直接渡せない場合は郵便(レターパックや簡易書留など)を利用しましょう。
電子メールでPDF送付する場合は法的には問題ありませんが、お客様の希望に沿う形で提出します。
以上の点に注意し、作成した見積書は落ち着いて再点検することが重要です。一度提出してしまうと訂正は手間がかかるため、出す前に万全を期しましょう。
見積書作成に役立つツールやテンプレート
初心者の大工さんが見積書を作成する際、便利なツールやテンプレートを活用すると効率よく正確に仕上げられます。いくつか代表的な方法をご紹介します。
Excel・Wordのテンプレート
Microsoft ExcelやWordには、見積書のひな形となるテンプレートが多数用意されています。インターネット上でも「見積書 テンプレート 無料」などで検索すると、工事業向けの様式がダウンロード可能です。
これらを利用すれば、項目を埋めるだけで形式の整った見積書が作成できます。Excelなら計算式も設定できるため、金額集計や消費税計算のミスも防げます。
見積書作成ソフト・アプリ
建設業向けの見積専用ソフトやアプリも存在します。例えば、積算に特化したソフトや、クラウド型の見積・請求管理サービス(例:マネーフォワードやfreeeなどのクラウドサービス)を活用すると、過去のデータから項目を再利用したり、自動で書式整形された見積書PDFを出力できたりします。
初心者でも入力フォームに沿って情報を入れるだけでプロ品質の見積書を作れるのが利点です。
業界団体や国交省のひな形
建設業界には国土交通省が提示する標準様式や、業界団体が配布する見積書フォーマットがあります。特に公共工事や大規模工事に携わる場合、そうしたひな形に沿って作成すると漏れがありません。
小規模な大工仕事であっても、プロの書式を参考にして自社用にカスタマイズすることで信頼性の高い見積書が作成できます。
スマートフォンアプリ
最近ではスマホやタブレットで使える見積書作成アプリも登場しています。現場で寸法を測りながらその場で見積入力し、後でPCと同期して仕上げるといった使い方も可能です。外出先でもすぐ見積作成・送信ができるため、機会損失を減らせます。
ツールを使う際は、自分の業務規模や頻度に合ったものを選ぶことが大切です。テンプレートやソフトは正確性と効率アップに貢献しますが、最終的な金額設定や条件記載はあなた自身の判断になります。ツールを頼りすぎず、内容のチェックは必ず人の目で行うようにしましょう。
消費税や諸経費、値引きの扱い
見積書を作成する上で悩みやすい消費税・諸経費・値引きの表示方法について整理します。正しい処理でお客様に誤解を与えないようにしましょう。
消費税の記載方法
現在、日本の消費税率は10%(一部軽減税率8%)です。見積金額を提示する際、税込価格で示すか税抜価格+消費税額で示すかを決める必要があります。工事取引では、内訳は税抜き、小計・消費税・税込合計を分けて記載する形式が一般的です。
そのほうがお客様も税額を認識しやすくなります。「見積金額には消費税○%(○○円)を含みます」と明記するか、前述のように合計欄とは別に消費税額欄を設けましょう。
なお、見積書に消費税額を記載すること自体は法律上の義務ではありませんが、誤解防止のため明示することが望ましいです。
諸経費の扱い
諸経費とは、直接工事にかかる費用以外の間接費用です。現場への交通費や通信費、事務管理費、雑材費などが含まれます。見積書では、各明細に上乗せする形ではなく「諸経費」としてひとまとめに計上することが多いです。
計算方法は、工事規模に応じて全体の○%としたり、あらかじめ定額を設定したり様々です。
例えば小さなリフォームなら一律5万円、工事費の合計に対して10%を諸経費として加算、などの方法があります。諸経費の内訳を聞かれることもありますので、「○○費・○○費等の諸経費」と注記しておくと親切です。
また、諸経費とは別に「現場管理費(現場運営にかかる人件費)」や「一般管理費(会社運営の固定費)」を計上するケースもあります。これらも広い意味では諸経費の一部ですが、見積書上は項目を分けて記載したほうが透明性が上がります。
値引きの表示
競争入札やリピーターサービスなどで値引きを行う場合、その扱いも明確に示しましょう。見積書上では、基本的に値引き前の金額をすべて記載した上で、最後に「値引き」項目でマイナス表示をします。
例えば合計100万円のところ5万円値引きするなら、「値引き ▲50,000円」と明記し、差し引き後の税込合計を95万円と書きます。こうすることでお客様もどれだけサービスしてもらったかが一目で分かり、納得感につながります。
値引きを内訳の単価に組み込んでしまうと、お客様にはそのことが伝わらないばかりか、「他社と金額比較がしにくい」と感じさせる場合もありますので注意しましょう。
なお、値引きのしすぎは自社の利益圧迫になります。安易に大幅値下げせず、お互い納得できる適切な範囲で検討してください。
法的・商習慣的な注意点
最後に、見積書に関わる法律上および商習慣上の注意点を押さえておきましょう。正しい知識を持っていれば、よりプロフェッショナルな対応が可能になります。
建設業法と見積書の位置づけ
建設業法では工事ごとに適正な見積りと契約書面の取り交わしが求められます。見積書そのものは契約ではなく提案段階の書類ですが、一度提示した金額は信義上尊重すべきです。正式発注があればその内容で契約成立するため、見積記載事項には責任を持ちましょう。
提出時のマナー
見積書提出時には挨拶文を添えた送付状を付けると丁寧です。宛名や件名を整え、未記入欄には横線を引くなど改ざん防止にも気を配りましょう。
データ提出の場合
PDF化やパスワード設定などで改ざん防止策を取り、お客様に分かりやすいファイル名・メール文で送付します。
見積変更への対応
修正依頼があれば速やかに対応し、改訂版の見積書を作成します。見積番号や日付も忘れず更新し、最新版が一目で分かるよう管理しましょう。
以上、見積書に関する総合的なガイドを述べてきました。最初は大変に感じるかもしれませんが、ひな形を活用しながら数をこなすことで次第にコツが掴めてきます。
まとめ
見積書は、大工さんにとって仕事の成否を左右しかねない重要なツールです。正確で分かりやすい見積書を作成すれば、お客様の安心感・信頼感が高まり、契約獲得につながります。本記事で解説したように、基本構成と必須項目をしっかり押さえ、工事内容に応じた適切な内訳を示しましょう。
そして、丁寧な対応やミス防止の工夫を凝らして、プロフェッショナルな姿勢をアピールしてください。
初心者のうちは手探りかもしれませんが、テンプレートやソフトも活用しつつ、一件一件着実に経験を積んでいきましょう。正しい見積書作成スキルは、あなたの大工仕事の信用と仕事の幅を大きく広げてくれるはずです。ぜひこのガイドを参考に、実務に役立てていただければ幸いです。
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