領収書の基礎知識

寄附金に領収書は必要?正しい書き方と但し書き・テンプレート解説

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寄付金 領収書 書き方

寄附を受け取ったときに「領収書は発行すべきなのか?」「寄附金の領収書の書き方は?」「但し書きには何を書く?」など、悩む方も多いでしょう。

本記事では、「寄附金 領収書 書き方」や「寄附金 領収書 但し書き」といったポイントを中心に、寄附金領収書の必要性から正しい記載方法、テンプレート例、税控除との関係、さらにはよくある疑問への回答まで徹底解説します。

個人事業主やNPO法人担当者、企業の経理担当者など、寄附金に関わるすべての方に役立つ情報を網羅しています。

目次

寄附金に領収書は必要?求められる場面とは

まず結論から言えば、寄附金を受け取った場合には基本的に領収書(寄附金受領証)を発行することが望ましいです。領収書が必要とされる主な場面や理由は、以下のとおりです。

税務上の理由(個人寄附)

 個人が寄附を行った場合、確定申告で「寄附金控除」など税の優遇を受けるために領収書の提出が求められます。したがって、寄附者が個人の場合は寄附金の領収書がほぼ必須と言えます。

会計・経理上の理由(法人寄附)

法人(企業)が寄附を行った場合、経理処理上その支出を証明する書類が必要です。企業の経理担当者にとって、寄附金の領収書は会計帳簿の証憑(エビデンス)となります。法人税申告で提出はしませんが、社内で一定期間保存する義務があります。

信頼性・記録のため

寄附金を受領した団体側にとっても、領収書を発行して寄附者に渡すことは、お金を確かに受け取りましたという正式な証明になります。寄附者との信頼関係構築や感謝の意を示す意味でも領収書の発行は重要です。

例外的なケース

街頭募金やオンライン寄附など、場合によってはその場で領収書が発行されないケースもあります。しかし、必要な場合は後日でも発行を依頼できる団体が多いです(特に税控除証明が必要な場合)。

また、郵便振替や銀行振込で寄附をした場合は、振込票の控えや受領証が領収書の代わりになることもあります。

このように、寄附金の領収書は個人・法人を問わず「受領の証明」として重要です。寄附者から求められた場合はもちろん、そうでない場合でもできるだけ発行し、寄附者に渡すようにしましょう。

次章では、領収書が必要となる詳しい理由や、発行義務の有無について解説します。

領収書が必要な理由(税務上・会計上)と発行義務はある?

寄附金の領収書が重視される背景には、税務上・会計上の明確な理由があります。また、「法律で発行が義務付けられているのか?」という疑問についても整理しておきましょう。

税務上の理由(個人の場合)

 前述のとおり、個人が寄附をした場合には確定申告で寄附金控除(所得控除または税額控除)を受けられる制度があります。

例えば認定NPO法人や公益社団法人等へ寄附した場合、寄附金額から2,000円を差し引いた額を所得控除できたり、一定の場合はその40%相当額を所得税から直接控除する税額控除を選択できたりします。

ただし、これら税控除を受けるには原則として寄附金の領収書(寄附金受領証明書)を確定申告書に添付しなければなりません。領収書がないと税務署に寄附を証明できず、控除を受けられなくなるため、税務上必須と言えます。

税務上の理由(法人の場合)

一方、法人(企業)が行った寄附は、その種類や相手先によっては損金算入(経費扱い)が認められる場合があります。例えば、国や地方公共団体への寄附は全額が損金算入OK、その他の寄附も一定の限度枠内で損金算入可能です。

これらの税務処理を適正に行うには、寄附の事実を示す領収書が手元に必要です。法人の場合、確定申告書に領収書の添付提出義務はありませんが、税務調査などに備え社内で帳簿書類として保存義務(通常7年間)が課されています。

したがって、法人寄附でも領収書は重要な証拠資料となります。

発行義務はある?

寄附金の領収書について、法律上「必ず発行しなければならない」という直接的な義務規定はありません(販売取引のような領収書発行義務は寄附には適用されません)。

しかし、上記のように税務上必要になるケースが多いため、事実上“発行が求められる”状況と言えます。

特に寄附金控除の対象となる団体(認定NPO法人や自治体など)は、寄附者から依頼されなくとも所定の様式で「寄附金受領証明書」を発行することが制度上求められています。

また都道府県や市区町村の条例で住民税控除の対象寄附に指定されている場合も、自治体が定める必要項目を記載した領収証の交付が求められます。

領収書発行が難しい場合

街頭募金や匿名寄附など、寄附者の情報を取得しない形の寄附では、その場で領収書を渡すことは通常ありません。このような場合でも、後日寄附者が申し出れば領収書(寄附金受領証明書)の発行に応じてくれる団体もあります。

発行に手間やコストがかかるため義務化はされていませんが、寄附者からの要望があれば可能な限り対応するのが望ましいでしょう。

以上より、寄附金の領収書発行は法律上の「義務」というより、税優遇を受けるため・会計処理のために実質的に必要となるものです。寄附を受け入れる団体側は、その重要性を理解し、適切に領収書を発行・管理する準備をしておくことが大切です。

個人寄附・法人寄附での領収書の違いとポイント

寄附金の領収書は基本的なフォーマットや記載事項は同じですが、寄附者が個人か法人かによって留意すべきポイントや扱いに違いがあります。以下に、個人寄附と法人寄附それぞれの領収書に関する違いと押さえておきたいポイントをまとめます。

宛名(寄附者名)の違い

領収書には寄附者の氏名(名称)を記載します。個人寄附の場合は寄附者本人の氏名をフルネームで記載し、「様」もしくは「殿」を付けます(一般的には「○○ ○○ 様」)。

法人からの寄附の場合は法人名(正式名称)を記載し、後ろに「御中」を付けるのが通例です(例:「○○株式会社 御中」)。宛名は寄附者を明確にする重要項目なので、省略や愛称ではなく正式名称を使用しましょう。

領収書の用途と提出先

個人寄附の場合、前述の通り確定申告時に税務署へ提出する書類となります。寄附した本人が税制優遇を受けるための証明書です。一方、法人寄附の場合は税務署への提出義務はなく、社内の証憑として保管する目的が主です。

経理担当者は決算や会計監査の際に提示できるよう、寄附金領収書をファイリングして保存します(税務調査でも確認される可能性があります)。

税務上の取扱いの違い

個人寄附は税法上「寄附金控除」(所得控除または税額控除)の対象となります。寄附先の種類によって控除内容が異なり、例えば認定NPO法人や公益法人等への寄附なら所得控除か税額控除のいずれか有利な方を選べます。

法人寄附は「寄附金(寄附金)としての損金算入」という形で経費計上が可能ですが、一般寄附金の場合は資本金や所得に応じた限度額内でしか経費にできません(特定公益増進法人等への寄附は別枠で損金算入枠が設けられています)。

いずれの場合も、領収書の記載内容から寄附の種類(控除対象か否か等)を判断することになります。個人ならその領収書が税額控除の対象寄附金か、法人ならそれが全額損金算入できる寄附か一般寄附金か、といった情報を読み取ります。

記載事項の追加(個人特有のケース)

個人寄附で税控除を受ける場合、領収書に寄附先団体の住所・名称だけでなく、場合によってはその団体が税優遇対象である旨を証明する文言や書類の添付が必要です。

例えば、学校法人が発行する寄附金領収書には「当法人は特定公益増進法人である」ことを示す証明書コピーを添付するよう求められています。

また、都道府県や市区町村に条例指定された寄附の場合、「〇〇県条例指定寄附金である」旨を領収書に記載するケースもあります。

法人寄附の場合は基本的な記載事項以外に特別な文言は不要ですが、寄附を受け取る側(特に公益法人等)は寄附番号や認定番号などを記録しておく場合があります。

受領タイミングと発行時期

個人・法人とも領収書の発行時期は寄附を受領したら速やかに行うのが原則です。ただし、運用上の違いとして、法人の場合は事業年度内にもらえれば決算に計上できますので、年度末までに発行されていれば問題ありません。

一方個人の場合はその年の確定申告(翌年3月)までに手元に領収書がないと控除に間に合わないため、寄附後遅くとも年内〜翌年1月頃までに受領できるよう、団体側も注意して発行します。

寄附者から発行依頼を受けたら遅滞なく発行し郵送するなど、時期に配慮しましょう。

以上のように、個人寄附と法人寄附では領収書の使われ方や着目点が異なるものの、基本的には記載項目自体は同じです。それぞれのケースで寄附者が何に領収書を使うのかを理解しておくと、より丁寧な対応ができるでしょう。

次に、寄附金領収書に必ず記載すべき基本的な書き方や項目を具体的に見ていきます。

寄附金領収書の正しい書き方【基本項目】

寄附金領収書の正しい書き方【基本項目

寄附金領収書を作成する際には、一般的な領収書と同様に以下の項目を漏れなく記載する必要があります。基本フォーマットを押さえつつ、それぞれの書き方や注意点を解説します。

タイトル(書類の名称)

領収書の上部には「領収書」または「寄附金領収書」「寄附金受領証明書」などとタイトルを記載します。シンプルに「領収書」とする団体もありますが、寄附金専用の様式で発行する場合は「寄附金領収書」あるいは「寄附金受領証明書」と明記すると親切です。

タイトルにより、この領収書が寄附に対するものであることが一目で分かります。

日付(受領日付)

実際に寄附金を受け取った日付を記載します。西暦でも和暦(令和◯年◯月◯日など)でも構いませんが、公的書類として通用するよう年号や月日の略記は避けましょう(「R5.4.7」ではなく「令和5年4月7日」など)。

この日付は個人の場合寄附金控除の適用年と直結しますし、法人の場合もどの会計年度の寄附かを示す重要な情報です。

宛名(寄附者の氏名・名称と敬称)

寄附金を支払った人(寄附者)の氏名または法人名を正式名称で記載します。個人なら「〇〇 △△ 様」、法人なら「〇〇株式会社 御中」といった形式です。宛名の書き方での注意点: 寄附者不明の場合でも「上様」や無記名は避けてください。

税務上、宛名のない領収書は寄附者が証明できず控除対象にできません。また、団体から一括で寄附金を集めて代表者名で寄附したような場合も、領収書の宛名は実際に寄附を行った人や団体名を明記する必要があります。

金額(寄附金額)

受領した寄附金の金額を記載します。金額はできるだけアラビア数字で明確に(例:「¥50,000」または「金 50,000 円」)。改ざん防止のため、金額の前に「¥」(または「金」)、末尾に「-」や「也」「※」を付けるのが一般的です。

例えば「¥100,000-」や「金50,000円也」のように記載します。また桁区切りのカンマも入れ、「100000」ではなく「100,000」とします。寄附金は消費税非課税のため、領収書に消費税額や税率の内訳を記載する必要はありません(物品やサービス購入の領収書とは異なります)。

但し書き(支払いの目的・名目)

領収書の金額欄の近く、または下部に「但し、〇〇として」などと書いて受け取ったお金の用途や名目を記載します。これを「但し書き」といいます。寄附金領収書の場合、通常は「寄附金として」と記載します(詳細は後述の「但し書きの書き方」セクションで解説)。

例えば、特定のプロジェクトや基金への寄附であれば「〇〇基金への寄附金として」など具体的に書くと良いでしょう。但し書きは空欄にしないことが大切です。

不適切な記載(例:寄附なのに「コンサルタント料として」など事実と異なるもの)は税務上問題となる可能性がありますので注意してください。

発行者情報(受領団体)

寄附金を受け取った側の団体名(名称)と所在地、代表者名を記載します。一般企業の領収書では社判を押して発行者名を明示しますが、寄附金領収書の場合も同様に、発行した団体の正式名称と住所を記載し、代表者名(理事長や会長など)を添えて押印するのが正式です。

近年では代表者印の押印を省略するケースもありますが、公的証明として使われることを考えると、団体の角印や代表印が押されていると受け取る側も安心です。認定NPO法人などの場合、領収書に認定番号や証明書番号を併記する欄を設けていることもあります。

収入印紙

領収金額が5万円以上の場合、通常は収入印紙が必要です(これは印紙税法で定められています)。しかし、寄附金領収書に関しては発行する団体の性質によって印紙税が非課税となるケースがあります。

たとえば、公益法人や認定NPO法人、学校法人など非営利型の法人が発行する領収書は課税文書に当たらず収入印紙が不要と扱われます。

この点については後の「よくある間違い・注意点」で詳しく説明します。いずれにせよ、5万円以上の寄附金領収書を発行する場合は印紙税の要否を確認し、必要な場合は所定額の収入印紙を貼付して発行者印で消印します。

以上が、寄附金領収書に記載すべき基本項目です。まとめると、「誰から」「いつ」「いくら」「何のために」「誰が受け取ったか」を明確に示すことがポイントです。これらが漏れていると証明書類として不備が生じるので注意してください。

次のセクションでは、特に質問の多い「但し書き」の書き方について、具体例を挙げながら解説します。また、その後には実際のテンプレート例をお見せしますので、自団体で領収書を作成する際の参考にしてください。

寄附金領収書の但し書きの書き方と例

但し書きとは、領収書において「何の代金として受け取ったお金か」を示すための欄です。寄附金領収書でも例外ではなく、受領したお金が寄附金であることを明示する文言を記載します。正しい但し書きの書き方と具体例を以下に紹介します。

基本の書き方

寄附金の場合、もっともシンプルで一般的な書き方は「寄附金として」です。領収書の金額欄の下や横に「但し、寄附金として受領しました」などと記載すれば、寄附金であることが一目瞭然です。

敬語表現を用いるなら「寄附金として確かに受領いたしました」などと全文を書くケースもありますが、フォーマット上は「但し、寄附金として」で十分です。

具体的な但し書き例

寄附の内容や目的に応じて、以下のような記載例が考えられます。

一般的な寄附: 「但し、寄附金として」

特定の基金・プロジェクトへの寄附: 例えば災害支援募金や施設建設募金などの場合、「但し、〇〇基金への寄附金として」「但し、△△事業への寄附金として」のように具体的な用途を入れると親切です。

社内募金など取りまとめ寄附: 会社や学校で集めた義援金を代表して寄附した場合などは、「但し、○○募金として」といった具合に募金の名称を書くこともあります(例:「社員有志一同による寄附金として」など)。

香典返し等の代替寄附: 個人で香典返しを辞退して寄附するケース等では、「但し、香典返しの代替寄附として」と書くことも考えられます。

但し書き記入時の注意点: 間違っても事実と異なる内容を書かないことです。例えば本当は寄附金で受領したのに、相手の希望で「コンサルティング料」と書くなどは絶対に避けましょう。

領収書の内容と実態が異なると、寄附者側も受領側も税務上不利益を被る可能性があります。また、「品代」「サービス代」など曖昧な表現は寄附金にはふさわしくありません。寄附であれば堂々と「寄附金」と記載するのが信頼性の面でも重要です。

迷った場合はシンプルに: 但し書きに何と書けばよいか迷う場合、基本に立ち返って「寄附金として」と書けば間違いありません。 寄附者から「〇〇用途に使ってほしい」という希望がある場合でも、「〇〇支援のための寄附金として」など寄附金であることを明示する言葉を入れておけば問題ないでしょう。

記載例: それでは実際に但し書きを含めた寄附金領収書の一例を示します。

但し、寄附金として

        上記のとおり寄附金を受領いたしました。

上記のように、「但し、寄附金として」の一文を入れ、その下に「上記のとおり寄附金を受領いたしました。」と続ける形式が一般的です。この例では敬体で書いていますが、フォーマルな書面として常体で「上記金額を受領しました。」とする団体もあります。

いずれにせよ、「寄附金」というキーワードを但し書きに含めることがポイントです。

以上、但し書きの書き方について解説しました。次に、実際の寄附金領収書のテンプレートやフォーマットを例示します。項目の配置や文例を確認して、自団体での書式作成にお役立てください。

寄附金領収書のテンプレート・フォーマット(例付き)

寄附金領収書の具体的なレイアウト例を示します。以下はA4縦で作成したシンプルな寄附金領収書のひな形です。

寄附金領収書

令和5年4月7日

東京都〇〇区〇〇町1-2-3  

山田 太郎 様

金 ¥100,000-

但し、寄附金として

上記のとおり寄附金を領収いたしました。

〇〇法人 △△団体  

代表理事 佐藤 花子 ㊞

<フォーマット説明> 上記の例では、タイトルとして「寄附金領収書」を明示し、日付、寄附者の住所・氏名(敬称付き)、金額(¥100,000-)を記載しています。

続けて但し書きに「寄附金として」と書き、本文で「上記のとおり寄附金を領収いたしました。」としています。最後に受領側の団体名と代表者名・押印を配置しました。領収書番号を管理している場合は、右上などに「No.○○」と記載すると良いでしょう。

また、収入印紙が必要な場合は所定の欄(例えば金額の右上あたり)に貼付します。

このテンプレートはあくまで一例ですが、寄附金領収書に必要な要素がすべて盛り込まれた基本形と言えます。自団体で発行する際は、団体名や住所・日付等を差し替えて使用できます。

特定の書式が決まっていない場合は、一般的な領収書のひな形を流用し、但し書きだけ「寄附金」に書き換えて使うことも可能です。

テンプレートの入手方法: 初めて寄附金領収書を作成する場合、上記のような書式をWordやExcelで自作するのがおすすめです。「領収書 テンプレート」で検索すると無料ダウンロードできるフォーマットも多数見つかります。

例えば、寄附金領収書専用の雛形を提供しているサイトもありますので、自社に合ったデザインのものを活用すると良いでしょう。ただし、公的に提出する文書であることを踏まえ、必要項目が漏れなく入っているか確認してください。

記載内容のカスタマイズ: 団体によっては、領収書にお礼の文章や団体のロゴマークを入れるケースもあります。

特に寄附者への感謝を伝えるため、別途お礼状を添えることも多いですが、領収書自体に簡単なお礼メッセージ(「このたびはご寄附ありがとうございます。ここに領収証をお送りします。」など)を含めることも可能です。

ただし、本質は金銭の受領証明ですので、メッセージを入れる場合も必要事項の記載スペースを圧迫しないよう注意しましょう。

領収書番号・管理: 複数の寄附者に対して領収書を発行する団体の場合、領収書番号を付与して管理することをおすすめします。

通し番号や発行年月日の組み合わせなどでユニークな番号を振っておけば、後で発行控えを照合する際に便利です。テンプレートに「No.____」の欄を作り、発行のたびに記入して管理台帳に控えを残すといった運用をすると良いでしょう。

以上のテンプレート例とポイントを参考に、自団体の事情に合わせた領収書フォーマットを準備してみてください。次章では、この寄附金領収書と深く関わる「寄附金控除(税制優遇)と領収書の関係」について解説します。

寄附金領収書が確定申告でどう役立つのか、押さえておきましょう。

寄附金控除と領収書の関係(確定申告時に必要なケース)

寄附金控除と領収書の関係(確定申告時に必要なケース)

寄附金領収書は、確定申告における「寄附金控除」と切っても切れない関係にあります。ここでは、寄附金控除の概要と、領収書が具体的にどのように使われるのかを説明します。個人で寄附をした方や、寄附者から問い合わせを受ける団体担当者の方は要チェックです。

寄附金控除とは(個人所得税・住民税)

 個人が一定の団体等に寄附をすると、その年の所得税や翌年度の住民税が軽減される制度です。所得税の寄附金控除(所得控除)は、一般的に「寄附金の合計額 - 2,000円」が所得から控除されます(この2,000円は自己負担のゾーンとなっています)。

例えば年間に5万円寄附した場合、2,000円を引いた48,000円が所得控除され、課税所得が減ることで税金が安くなります。

また、認定NPO法人や公益法人等への寄附の場合、所得控除の代わりに税額控除を選ぶこともでき、その場合は「(寄附金額 - 2,000円)の40%」を所得税額から直接差し引くことが可能です(税額控除のほうが税効果が大きいケースが多いです)。

一方、住民税についても自治体が条例で指定した寄附(金額から2,000円引いた額の一部)について税額控除が受けられます。有名な「ふるさと納税」も寄附金控除の一種で、自己負担2,000円を除いた寄附額が住民税などから控除される仕組みです。

確定申告時に領収書が必要

上記の寄附金控除(所得税・住民税)を受けるためには、確定申告書に寄附金の領収書を添付することが原則必要です。

国や自治体等への寄附、特定公益増進法人(学校法人等)や認定NPO法人への寄附、政治献金など、それぞれ控除対象となる寄附には領収書の提出が求められます。

確定申告書の「寄附金控除」欄に寄附金額等を記入した上で、寄附先ごとの領収書(寄附金受領証明書)を申告書にホチキス留めして税務署に提出します。

もし1年間で複数の団体に寄附をした場合は、それらすべての領収書をまとめて添付する必要があります(寄附先ごとに一枚ずつ領収書が発行されるのが通常です)。

ふるさと納税の場合

個人が行う寄附の中でも利用者が多いのが「ふるさと納税」です。ふるさと納税では、寄附した自治体から後日「寄附金受領証明書」(寄附金領収書に相当するもの)が郵送されてきます。

これを確定申告で提出することで寄附金控除(住民税減額等)を受けられます。ただし、ワンストップ特例制度を利用した場合は注意が必要です。

ワンストップ特例とは、確定申告をしなくても寄附先自治体が個人住民税の控除手続きをしてくれる制度です。この特例を利用するためには、各寄附先自治体に「寄附金税額控除に係る申告特例申請書」を寄附後すぐ提出します。

ワンストップ特例を適用した場合、確定申告自体が不要となるため、寄附金受領証明書を税務署に提出する必要もありません(控除は自動で反映されます)。

逆に、ワンストップ特例を使わずに自分で確定申告する場合や、6ヶ所を超える自治体に寄附した場合(特例適用外)は、必ず自治体発行の証明書を集めて確定申告書に添付しましょう。

電子申告(e-Tax)の場合

最近は確定申告をe-Tax(電子申告)で行う方も増えています。電子申告では、寄附金領収書等の紙の添付書類を提出省略することができます。

具体的には、e-Taxの画面上で寄附金の受領日や金額、寄附先の名称などを入力することで、領収書の提出を省略できる仕組みです。

ただし、省略した場合でも領収書自体は自宅で5年間保管する義務があります。税務署から後日提出を求められる可能性もゼロではないため、電子申告でデータ送信のみ行った場合でも、寄附金領収書はきちんと手元に保存しておきましょう。

また、e-Taxを利用しても紙の領収書をPDF添付することも可能です。控除漏れやデータ入力ミスを防ぐために、あえて電子申告でも領収書画像を添付する人もいます。

法人寄附と税務申告

企業が寄附した場合、前述の通り確定申告書に領収書を付ける必要はありません。しかし、社内で7年程度保管する義務がありますので、経理担当者は捨てずに保存してください。

寄附金が損金算入できる範囲かどうか判断するために、税理士や税務調査でも領収書を確認する場合があります。

特に同じ寄附でも、「広告宣伝費扱い(領収書の但し書きに協賛金など)にして全額経費計上したい」というケースも考えられますが、税務上は領収書の記載どおりに扱われます。

不適切な但し書き変更は認められませんので、経理処理する際も領収書の内容と整合した科目で計上することが大切です。

以上が寄附金控除と領収書の関係です。要点をまとめると、「個人は確定申告で領収書を提出(または保管)、法人は社内保存」という形になります。寄附金領収書は税の優遇措置を享受するうえで欠かせない書類ですので、寄附者も受領側も適切に取り扱いましょう。

では次に、寄附金領収書に関して陥りやすいミスや注意すべきポイントをいくつか紹介します。収入印紙の貼付や電子領収書の扱い、領収書の再発行可否など、意外と見落としがちな点をチェックしてください。

寄附金領収書に関するよくある間違い・注意点

寄附金領収書を発行・受領する際に、誤りやすいポイントや気を付けたい事項を以下にまとめました。せっかく発行した領収書が無効扱いになったり、思わぬトラブルにならないよう、事前に確認しておきましょう。

収入印紙の貼付要否

一般に領収書(金銭の受取書)には、受領金額が5万円以上であれば所定の収入印紙を貼る必要があります。しかし、寄附金領収書では印紙を貼らなくても良いケースが多いことを知っておきましょう。

具体的には、公益法人(公益社団法人・公益財団法人)や学校法人、認定NPO法人など非営利型の団体が発行する領収書は、印紙税法上「非課税文書」と扱われます。

また、法人格のない非営利団体(例えば町内会やボランティア団体)が発行する場合も非課税です。したがって、多くの寄附金領収書では金額が5万円を超えていても収入印紙は貼付されていなくても正常です。

発行側としては、領収書余白に「(印紙税法別表第1第17号文書により印紙不要)」と一言注記しておくと、受け取った側も安心でしょう。

一方、営利企業が寄附金を受け取り領収書を発行する場合(あまり一般的ではありませんが、例えば企業が代理で募金を集めて後日まとめて寄附するようなケース)には、その企業発行の領収書は課税文書に該当し印紙が必要になる可能性があります。

このように印紙税の取扱いは発行主体によりますので、受領側・発行側双方で「この領収書には印紙が要るのか?」を確認し、正しく処理しましょう。

宛名に「上様」を使わない

領収書の宛名を「上様」とする習慣が一部ありますが、寄附金領収書では避けてください。寄附金控除の適用を受けるには領収書に寄附者本人の氏名・住所が記載されている必要があります。「上様」では誰の寄附か証明できず、税務署が認めてくれない可能性が高いです。

もし寄附者名が不明確な場合でも、団体側で確認をとって必ず実際の寄附者名を記入しましょう。法人寄附でも同様で、「上様」では会社経費としても証拠不十分です。要するに、宛名欄は空欄や上様ではなく実名を入れるのが鉄則です。

補足: どうしても寄附者名を書くのを嫌がる場合(匿名寄附を希望するなど)は、領収書自体を発行しないか、もしくは内部管理用の受領証にとどめ、税控除は放棄することになるでしょう。

電子領収書(デジタル領収書)の扱い

昨今、紙ではなくPDFやメールで領収書を発行する団体も増えてきました。寄附金領収書も電子データで発行・送付されるケースがあります。電子領収書でも法的に有効であり、確定申告にも問題なく使用できます。

寄附者側は受け取ったPDFを自宅でプリントアウトし、それを紙の領収書と同様に提出すれば控除が受けられます。電子データには発行者の押印が省略されていることもありますが、税務署は必要事項が満たされていれば受理します。

ただし、電子データのまま保存する場合(特に法人の経理で電子保存する場合)は、国税関係帳簿書類の電子保存に関する法律(電子帳簿保存法)の要件を満たす必要があります。実務的には、法人でもプリントアウトして紙で保存すれば従来通りで問題ありません。いずれにせよ、電子だからといって領収書としての効力が落ちることはないので、安心してご利用ください。

寄附金以外の支払いとの混同

領収書の但し書きの記載によっては、寄附金とそれ以外の支払いを混同してしまう恐れがあります。例えば、会費や協賛金と寄附金は似ていますが会計処理や税務扱いが異なります。

領収書を発行する際は、寄附金はあくまで寄附金として記載し、会費であれば「会費として」、物品購入なら「代金として」など正確に用途を分けて記載しましょう。

特に法人の場合、寄附金は一部しか損金算入できないのに対して、広告費(協賛金等)は全額経費になるからと領収書の名目を書き換えてもらおうとすることがあります。

しかし、これは明確な不正行為となりますので応じてはいけません。寄附を受ける側も、寄附なのかサービス提供の対価なのかを曖昧にせず、領収書の但し書きで正しく区別することが大事です。

また、寄附金には消費税がかからないため、仮に領収書に「税込〇〇円」等と書いてしまうと矛盾が生じます。寄附以外の支払いと混同しないよう、項目や文言には細心の注意を払いましょう。

領収書の再発行について

寄附金領収書を紛失した場合に再発行してもらえるかという問題があります。基本的に領収書は再発行しないという方針の団体が多いです。

理由は、二重発行すると不正利用されるリスクがあるためです(同じ寄附に対して2枚領収書があると、2倍寄附したように見せかけることも理論上可能になってしまいます)。

そのため、「再発行はできかねますので大切に保管してください」と領収書に注意書きを入れている団体もあります。万が一紛失してしまった場合は、まず寄附先の団体に事情を説明して相談しましょう。

団体によっては、「再発行」ではなく「○月○日付〇〇様寄附金受領証明再交付」のような形で証明書を出してくれる場合もあります。

ただし時間がかかったり、場合によっては対応してもらえないこともあります。また、税務署的には原本が望ましいため、コピーでは認められないことが多いです。最初にもらった領収書は失くさないよう厳重に保管するのが大前提となります。

その他の注意点

領収書の記載内容はボールペンやタイプ印字で消えないように書きましょう。感熱紙のレシート用紙などは時間とともに文字が消えてしまうため、寄附金領収書には不向きです。耐久性のある用紙・印字方式で発行し、長期間保存に耐えるように配慮します。

また、郵送で領収書を送る場合は、宛先住所・氏名を間違えないよう注意してください(特に寄附者が法人の場合、部署名や担当者名が漏れると届かないことがあります)。細かな点ですが、丁寧に対応することで寄附者の信頼にも繋がります。

以上、寄附金領収書に関する注意点を挙げました。これらを踏まえて発行・管理すれば、領収書で困る事態はほとんど避けられるでしょう。では最後に、寄附金領収書について皆さんが疑問に思いやすい点をQ&A形式で補足してみます。

寄附金領収書に関するQ&A

Q1. 寄附をしたら必ず領収書をもらわないといけませんか?


A1. 基本的には受け取っておくことをおすすめします。 税金の控除を受ける予定がない場合でも、記録として手元に残しておくと安心です。特に確定申告で寄附金控除を受ける可能性があるなら領収書は必須と言えます。

ただし街頭募金やネット募金など、その場ですぐ領収書が発行されないケースもあります。その場合でも後日領収書を発行してもらうことは可能です。募金の案内に「領収証が必要な方はお申し出ください」と書かれていることもあります。

控除を受けない場合は絶対に必要というわけではありませんが、寄附の証明や団体からの感謝の印としてもらっておく方が良いでしょう。

Q2. 寄附金の領収書を確定申告書に添付し忘れたらどうなりますか?


A2. 確定申告時に寄附金控除を申請したのに領収書の添付を忘れると、原則として控除が認められません。申告書を税務署に提出してしばらくすると、不足書類について問い合わせや指摘を受ける可能性があります。

期限内であれば速やかに領収書を提出しなおすことで対応できる場合もありますが、放置するとその寄附についての税控除は却下されてしまいます。提出後に気づいた場合は、できるだけ早く税務署に連絡し、領収書を追加提出してください。

また、申告期限後に領収書が見つかった場合でも、5年以内であれば更生の請求や還付申告により控除を受け直せる可能性があります。いずれにせよ、申告時に領収書を添付し忘れないよう十分注意しましょう。

Q3. ふるさと納税の領収書(寄附金受領証明書)はどう扱えばいいですか?


A3. ふるさと納税では寄附先の自治体ごとに「寄附金受領証明書」が発行されます。ワンストップ特例制度を利用した場合は、それぞれの自治体に申請書を出していれば確定申告不要なので領収書を提出する必要はありません。

しかし、ワンストップ特例を使わない場合(自分で確定申告する場合)や、6件以上の自治体に寄附して特例が使えない場合は、自治体から届いたすべての受領証明書を確定申告書に添付してください。

自治体ごとに封書で証明書が送られてきますので、なくさず保管し、申告書と一緒に税務署へ提出します。また、ふるさと納税では寄附のお礼品を受け取るケースがありますが、お礼品の有無に関係なく証明書の扱いは同じです(お礼品の金額は税控除額には影響しません)。

Q4. メールやPDFで受け取った寄附金受領証明書でも税控除に使えますか?


A4. はい、電子的に受け取った領収書でも問題なく使えます。 最近は寄附金の領収証明書をメール添付のPDFで送付する団体もありますが、内容が正式なものであれば紙の領収書と同等に扱われます。

確定申告を紙で行う場合は、そのPDFファイルを印刷して他の領収書と同じように添付すれば大丈夫です。電子申告の場合は、紙の原本提出自体が省略可能なので、データ入力のみで控除を受けることもできます。

ただし、電子データの場合も5年間の保存義務がありますので、メールを削除せずファイルを保管するか、プリントアウトして保存しておきましょう。要は、領収書に必要な情報(寄附者氏名、寄附先、金額、日付等)がきちんと記載されていれば形式は問わないということです。

Q5. 法人が寄附した場合、受け取った領収書に収入印紙が貼ってなかったのですが大丈夫でしょうか?

A5. 多くの場合、問題ありません。 前述のように、公益法人や認定NPO法人などが発行する寄附金領収書は印紙税が非課税文書となるため、5万円を超える金額でも収入印紙は貼られていません。これは法律に則った処理なのでご安心ください。

仮に印紙が必要なケースで貼り忘れていたとしても、それは発行側の責任であり、寄附をした側(受領者側)がペナルティを受けることは通常ありません。ただ、経理処理で気になるようでしたら念のため発行元の団体に問い合わせると良いでしょう。

「寄附金領収書には印紙は不要と認識しております」と説明があるはずです。基本的に、寄附金領収書=印紙無しが普通ですのでご心配なく。

以上、寄附金領収書にまつわる疑問についてQ&A形式で回答しました。この他にも「領収書の宛名を間違えてしまったらどうする?

(二重線で訂正し印をもらうのがベター)」や「法人寄附で受け取った領収書は何年間保存すべき?(7年間保管しましょう)」など細かなQ&Aはありますが、重要なポイントは押さえられたかと思います。

寄附金領収書は、寄附者にとっても受領団体にとっても大切な公式書類です。正しい書き方で作成し、適切に発行・保存することで、寄附金控除の手続きもスムーズになり信頼性も高まります。本記事の内容を参考に、ぜひ実務に役立ててください。

まとめ

一見難しそうに思える寄附金領収書の発行ですが、実は基本のポイントさえ押さえればとてもシンプルです。

寄附者の氏名と住所、寄附金額や受領日付、寄附先となる団体の名称と住所など必要事項を記載するだけ​で、一般的な領収書と同じ要領でスムーズに発行できます。難しい専門用語や特別なフォーマットも必要ないので、心配はいりませんよ。

ここまでの説明を通して、「これなら自分でも書けそう」「次から迷わずに発行できそう」と感じていただけたなら幸いです。寄附金領収書の発行は決して難しいものではありません。

ぜひ今回の記事でご紹介したポイントを参考に、次回からは自信を持って発行してみてくださいね。

この記事の投稿者:

nakashima

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