所得控除とは、所得税を計算する際に使われる控除を指し、医療費控除や配偶者控除などがあります。本記事では、所得控除の意味や計算方法、給与所得控除との違いなどについてわかりやすく解説します。
目次
所得控除とは?
所得控除とは、所得税の金額を計算する際、所得から差し引いて課税対象となる金額を減らすものです。
所得税は所得の金額に応じて計算されますが、生活する環境や家計の状況は納税者によって異なります。そこで、個人的な事情にあわせて所得控除を行うことで納税者の負担を減らす役割があります。
所得控除には15種類があり、適用される条件や控除できる金額はそれぞれ異なります。
参照:No.1100 所得控除のあらまし|国税庁
基礎控除
基礎控除とは、所得税の金額を計算する際、総所得金額などから差し引くものです。控除できる金額は、納税者本人の合計所得金額によって決まります。例えば、合計所得金額が2,400万円以下の場合の控除額は48万円です。
参照:No.1199 基礎控除|国税庁
配偶者控除
所得税法上の控除対象配偶者を持つ場合に、配偶者控除が受けられます。控除対象配偶者となるためには、納税者本人と生計を一にしていることや、配偶者の年間の合計所得が48万円以下(給与のみの場合は給与収入が103万円以下)であることなどの条件があります。
参照:No.1191 配偶者控除|国税庁
配偶者特別控除
配偶者に41万円を超える所得があるために、前項で解説した配偶者控除が受けられない場合に、こちらの配偶者特別控除を受けられる可能性があります。配偶者特別控除を受けるためには、配偶者の年間の合計所得金額が48万円超133万円以下であるなどの条件があります。
参照:No.1195 配偶者特別控除|国税庁
扶養控除
所得税法上における控除対象扶養親族がいる場合には、扶養控除が受けられる可能性があります。控除額は扶養する家族の年齢や同居の有無などの状況によって異なります。
参照:No.1180 扶養控除|国税庁
医療費控除
納税者本人や、本人と生計を一にする配偶者・その他親族のために支払った医療費が一定額を超えると、医療費控除を受けられます。ただし、勤務先の年末調整では控除できないため、控除を受けるためには確定申告を行う必要があります。
参照:No.1120 医療費を支払ったとき(医療費控除)|国税庁
寄附金控除
国や地方公共団体、特定公益増進法人などに対して特定給付金を支払った場合は、寄付金控除を受けられます。控除される額は、原則として支払った金額から2,000円を引いた額です。多くの方が利用しているふるさと納税は、この寄附金控除を用いた節税方法です。
参照:No.1150 一定の寄附金を支払ったとき(寄附金控除)|国税庁
社会保険料控除
納税者本人や、生計を一にする配偶者・その他親族の社会保険料を支払った際、支払った金額についての所得控除を受けられます。対象となる社会保険料には、健康保険や国民年金・厚生年金の保険料などがあります。
参照:No.1130 社会保険料控除|国税庁
生命保険料控除
納税者が生命保険料や介護医療保険料、個人年金保険料を支払った際は、生命保険料控除が受けられます。控除額は、保険料として支払った金額を元に計算されます。勤務先のある方は、年末調整の際に情報を提示することで控除を受けられます。
参照:No.1140 生命保険料控除|国税庁
地震保険料控除
特定の損害保険契約のうち、地震等損害部分の保険料や掛け金を支払った際に受けられる制度です。地震保険料が50,000円以下の場合は支払った金額の全額を、50,000円超の場合は一律50,000円を控除額にできます。
参照:No.1145 地震保険料控除|国税庁
小規模企業共済等掛金控除
小規模企業共済法に規定された共済契約に基づいて掛け金などを支払った際に受けられる制度です。公的年金にプラスして老後のための資産形成を行う個人型確定拠出年金「iDeCo」などがこれに該当します。
参照:No.1135 小規模企業共済等掛金控除|国税庁
ひとり親控除
ひとり親控除はひとり親の納税者が受けられる控除で、2020年度分の所得税から適用されました。控除を受けるためには、事実上の婚姻関係と考えられる相手がいないことや、合計の所得金額が500万円以下であることなどの条件があります。
参照:No.1171 ひとり親控除|国税庁
寡婦控除
納税者本人が寡婦である場合に受けられる控除です。寡婦とは、夫と離婚もしくは死別した後に再婚しない独身の女性を言います。前項で解説したひとり親に該当した場合は、寡婦控除の対象にはなりません。
参照:No.1170 寡婦控除|国税庁
勤労学生控除
勤務している学生で、合計所得金額が75万円以下である場合は、勤労学生控除が受けられます。勤労に基づく所得以外の所得は10万円以下である必要があります。控除額は一律27万円です。
参照:No.1175 勤労学生控除|国税庁
障害者控除
納税者本人もしくは同一生計配偶者・扶養親族が所得税法における障害者に当てはまると、障害者控除を受けられます。障害の度合いや同居の有無によって27万円・40万円・75万円のいずれかが控除されます。
参照:No.1160 障害者控除|国税庁
雑損控除
災害や盗難・横領によって損害を受けた際は、雑損控除が受けられます。雑損控除の対象となる資産には一定の条件があり、別荘や1つあたり30万円を超える貴金属や骨董など、生活に通常必要のない資産は除外されます。
参照:No.1110 災害や盗難などで資産に損害を受けたとき(雑損控除)|国税庁
給与所得控除とは?所得控除との違いは?
給与所得控除とは、勤務先から給与などをもらう給与所得者が受けられる制度です。給与などの収入金額に応じて、給与所得控除額が決定されます。
その一方で、所得控除は納税者の個人的な事情などを元に控除額が決定されるものであるという違いがあります。
給与所得者の場合、勤務先からの給与から先に給与所得控除が適用され、残りの金額が所得控除対象となります。給与所得控除と所得控除は名前が出ていますが、別物であるという点を覚えておきましょう。
なお、給与所得控除を受けられるのは勤務先などから給与をもらう給与所得者であり、フリーランスとして働いている人や、経営者などはこの制度を利用することはできません。
参照:No.1410 給与所得控除|国税庁
給与所得控除の計算方法
給与所得は、元の金額から給与所得控除額を差し引いた金額です。計算式に表すと以下のようになります。
給与所得 = 給与収入 ‐ 給与所得控除額 |
上記の「給与所得控除額」は、以下の表に記載された式で計算できます。
給与などの収入金額 | 給与所得控除額 |
〜1,625,000円 | 550,000円 |
1,625,001円〜1,800,000円 | 収入金額 × 40% – 100,000円 |
1,800,001円〜3,600,000円 | 収入金額 × 30% + 80,000円 |
3,600,001円〜6,600,000円 | 収入金額 × 20% + 440,000円 |
6,600,001円〜8,500,000円 | 収入金額 × 10% + 1,100,000円 |
8,500,001円〜 | 1,950,000円(上限) |
表の左の「給与などの収入金額」は、勤務先からもらう源泉徴収票の「支払金額」の項目で確認できます。
例えば、給与収入の合計額が500万円の場合は、給与所得控除を以下のように計算します。
5,000,000円 × 20% + 440,000円 = 1,440,000円 |
給与所得額は、以下のように給与収入から給与控除額を差し引くことで計算できます。
5,000,000円 – 1,440,000円 = 3,560,000円 |
なお、収入金額が660万円以上である場合には、以下の表に当てはめることで簡単に計算できます。
給与等の収入金額 | 給与所得の金額 |
6,600,000円以上 8,500,000円未満 | 収入金額 × 90% – 1,100,000円 |
8,500,000円以上 | 収入金額 – 1,950,000円 |
関連リンク:実は知らない?源泉徴収票の見方とは 税金や控除の計算式を徹底解説!
パートにおける「103万円の壁」について
配偶者の扶養に入っている主婦の方などにとって、基準として考えたいのが103万円の壁です。
年間の収入が103万円以下の主婦の場合、所得税がかかりません。総所得金額から差し引くことのできる基礎控除が48万円、給与所得控除が55万円であり、控除額の枠を出ないためです。この場合であれば、納税者である夫に配偶者控除が適用され、税金を安くすることが可能です。
103万円を超えれば、超えた金額に応じた所得税が発生することとなります。年収が120万円のケースであれば、超過した17万円に対して所得税が発生します。
所得税の計算は1年を区切りとして行われるため、103万円の壁を越えたくない方は、1月から12月の1年間を対象として計算します。なお、住民税における基礎控除は自治体によって基準が異なるため、この限りではないことに注意が必要です。
参照:No.1199 基礎控除|国税庁
No.1410 給与所得控除|国税庁
No.1191 配偶者控除|国税庁
特定支出控除とは?
勤務するために必要な支払いが生じる際、一般的には会社の経費によって支払いを行うため、給与所得者は自ら負担する必要がありません。しかし、転勤や資格取得などの理由により、給与所得者が業務に関連する費用を自己負担する場合があります。
特別支出控除は、自己負担した費用の合計額が「特定支出控除額の適用判定の基準となる金額」を超える際に、給与所得控除後の所得金額からさらに差し引くことのできる制度です。
特別支出控除を受けるためには、給与所得者が自ら確定申告を行う必要があります。また、対象となる支払いの明細書や勤務先からの証明書、および金額を証明する書類などが必要です。
参照:No.1415 給与所得者の特定支出控除|国税庁
特定支出の項目
特定支出の対象となるのは、以下の7項目です。
項目 | 内容 |
通勤費 | 通勤に必要な支出 |
職務上の旅費 | 通勤する場所を離れて職務を遂行するために必要な支出 |
転居費 | 転勤に伴う転居のために必要な支出 |
研修費 | 技術や知識を得ることを目的に研修を受ける際の支出 |
資格取得費 | 資格を取得するための支出 |
帰宅旅費 | 単身赴任などの場合に、勤務地または居所と自宅の間の旅行に必要な支出 |
勤務必要経費 図書費 | 職務に関連する書籍などを購入するための支出 |
勤務必要経費 衣服費 | 勤務場所で着用が必要な衣服を購入するための支出 |
勤務必要経費 交際費等 | 得意先や仕入先などに対する接待・供応・贈答などのための支出 |
前述した通り、特定支出控除を受けるためには確定申告書に給与の支払者(勤務先)の証明書を添付する必要があります。従って、対象となるのは7つの項目のうち給与の支払者が証明したものに限られます。
なお、研修費もしくは資格取得費のうち教育訓練に係る部分に関しては、キャリアコンサルタントの証明によって控除を受けることも可能です。
参照:No.1415 給与所得者の特定支出控除|国税庁
特定支出控除の計算例
特定支出控除を受けられるのは、その年の給与所得控除額の2分の1の金額です。
例として、年収が1,000万円、特定支出が300万円の場合で考えてみましょう。本記事でも紹介した表から給与所得控除は195万円と判断し、以下のように特定支出控除を計算します。
3,000,000円 -(1,950,000円 × 1/2)= 2,025,000円 |
このケースでは、確定申告を行うことで202万5,000円の特別支出控除を受けられることがわかりました。
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まとめ
所得控除は、課税対象となる所得を減らすことで所得税を減額する制度です。家族の扶養や医療費の支払いといった個人的な事情を考慮することで、不公平感をなくし、納税者の負担を減らす目的があります。
所得控除は年末調整で行いますが、確定申告をしないと受けられないものもあります。できるだけ多くの所得控除を受けられるよう、自分が該当するものを改めてチェックしてみてはいかがでしょうか。
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