注文書の基礎知識

発注書無料テンプレートの書き方から法律(下請法・インボイス)まで解説

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purchase order テンプレート

発注書の作成に、毎回時間をかけていませんか。取引のたびに発生する発注業務を効率化し、より重要な業務に集中したいと考えるのは当然のことです。

このページでは、すぐに使える高品質な発注書テンプレートを提供するだけでなく、ビジネスを加速させるための知識を網羅的に解説します。

この記事を読み終える頃には、単に発注書を作成できるだけでなく、取引上のリスクを正確に理解し、法的な要件を満たしたプロフェッショナルな文書を自信を持って発行できるようになるでしょう。発注書一枚で取引先からの信頼を高め、将来のトラブルを未然に防ぐことが可能になります。

「法律は難しそう」「専門用語が多くて不安」と感じる方もいるかもしれません。ご安心ください。この記事では、複雑な法律や制度を一つひとつ丁寧に、誰にでもわかる言葉で解説します。今日から正確で効率的な発注管理を実現しましょう。

目次

すぐに使える!用途別の発注書テンプレート集

ビジネスの現場では、状況に応じて最適なツールを選ぶことが成功の鍵です。発注書も例外ではありません。ここでは、多様なニーズに応えるため、機能性とデザイン性を兼ね備えたテンプレートを厳選しました。これらを活用することで、日々の業務が格段にスムーズになります。

シンプル・汎用テンプレート(Excel、Word、Googleドキュメント/スプレッドシート)

まず、どんな業種や取引でもすぐに使える、基本的なテンプレートです。数量と単価を入力するだけで合計金額が自動計算される機能が組み込まれているものが多く、手作業による計算ミスを防ぎます。

特にExcelやGoogleスプレッドシートのテンプレートは、関数を活用して消費税計算などを自動化できるため、日々の細かな発注業務に最適です。シンプルながらも、ビジネス文書として必要な項目はすべて網羅しており、初めて発注書を作成する方でも安心して利用できます。

業務内容に特化したテンプレート

取引の内容が特殊な場合や、特定の業界では、より専門的な項目が必要になります。それぞれの業務に最適化されたテンプレートを選ぶことで、認識の齟齬を防ぎ、円滑な取引を実現できます。

サービス業務向け発注書

業務委託やコンサルティングなど、形のないサービスを発注する際に役立ちます。このテンプレートには、具体的な業務の範囲、契約期間、成果物の定義、検収の基準といった項目が設けられています。

これにより、発注者と受注者の間で認識のズレが生じるのを防ぎ、プロジェクトを円滑に進行させるための土台を築きます。

一括発注書

同じ取引先から継続的に、あるいは定期的に商品を購入する場合に非常に便利なテンプレートです。一定期間における発注の総量や単価をあらかじめ取り決めておくことで、都度の発注プロセスを大幅に簡略化できます。

これにより、管理業務の負担が軽減され、割引交渉の材料としても活用できるため、コスト削減と効率化を同時に実現できます。

デザイン性を重視したテンプレート

発注書は、会社の顔ともいえる公式な文書です。デザインにこだわることで、企業のブランドイメージを伝え、取引先にプロフェッショナルな印象を与えることができます。

カラーテンプレート

コーポレートカラーに合わせた青や緑、信頼感を演出する黒、モダンな印象を与える赤など、多彩なカラーバリエーションがあります。デザイン性の高いテンプレートは、受け取った相手の注意を引き、他の書類との差別化を図る効果も期待できます。

レイアウトにこだわったテンプレート

情報を整理しやすく、視覚的にわかりやすいレイアウトを採用したテンプレートも人気です。ロゴを配置するスペースが確保されていたり、項目の配置が工夫されていたりすることで、洗練された印象を与えます。

これらのテンプレートは、単なる雛形ではありません。自社の業務フローやブランド戦略に合わせてカスタマイズすることで、強力なビジネスツールへと進化します。最初はシンプルなテンプレートから始め、事業の成長や取引の複雑化に合わせて、より機能的なテンプレートへと移行していくのが賢明な使い方です。

そもそも発注書とは?役割と法的効力をわかりやすく解説

発注書は、ビジネス取引において当たり前のように使われる書類ですが、その正確な役割や法的な位置づけを正しく理解しているでしょうか。このセクションでは、発注書の基本を改めて確認し、関連する書類との違いを明確にすることで、文書管理の精度を高めます。

発注書の役割と目的

発注書の最も重要な役割は、「発注者(購入する側)の意思を明確な形で記録に残すこと」です。口頭での注文は手軽ですが、「言った、言わない」といった認識のズレから、納品物の間違いや数量不足、金額の相違など、深刻なトラブルに発展する可能性があります。

発注書を作成し、商品名、数量、金額、納期といった取引の具体的な内容を書面で提示することで、発注者と受注者(販売する側)の双方が同じ情報を共有し、合意内容を確認できます。これにより、誤解や勘違いを防ぎ、スムーズで信頼性の高い取引を実現します。

「発注書」と「注文書」の違い

実務上、「発注書」と「注文書」という二つの言葉が使われますが、法的には両者に違いはなく、同じ役割を持つ書類として扱われます。

ただし、業界や企業によっては慣習的に使い分けがされています。一般的には、以下のような傾向があります。

  • 注文書
    製品や部品など、形のある「物品」を購入する際に使われることが多い。
  • 発注書
    システムの開発やデザイン制作、コンサルティングなど、形のない「サービス(役務)」を依頼する際に使われることが多い。

どちらの名称を使用しても法的な問題はありませんが、社内や特定の取引先との間では、どちらかの名称に統一しておくことで、混乱を避けることができます。

発注書の法的効力:契約はいつ成立するのか

特に重要な点は、発注書を発行しただけでは、原則として契約は成立しないという点です。

民法上、契約は「申込み」と、それに対する「承諾」が合致したときに成立します。発注書は、あくまで発注者側からの「この内容で購入したい」という一方的な「申込み」の意思表示に過ぎません。

契約が法的に有効となるのは、受注者がその「申込み」に対して「承諾」の意思を示した時点です。この承諾は、以下のような形で行われます。

  • 発注請書(注文請書)の交付
    受注者が発注書の内容を確認し、「この内容で請け負います」という意思表示として「発注請書」を発行した場合。「発注書」と「発注請書」が揃って初めて、法的に有効な契約が成立したと見なされます。
  • 基本契約書の存在
    事前に取引基本契約書を交わしており、その中で「発注書の発行をもって個別契約が成立する」といった条項が定められている場合。
  • 双方の署名・押印
    発注書に発注者と受注者の両方が署名または押印した場合。

発注書は契約成立に向けた重要なステップですが、それ単体では法的な拘束力を持たないのが原則です。この点を理解しておくことは、万が一のトラブル時に自社を守るために不可欠です。

取引の流れと各書類の役割

発注書がビジネスのどの段階で登場するのかを理解するために、一般的な取引の流れを他の書類と共に見ていきましょう。

書類名発行者受領者目的・タイミング
見積書受注者発注者発注を検討する段階で、価格や条件を提示する。
発注書発注者受注者見積内容に合意し、正式に購入・依頼の意思を伝える。(契約の申込み)
発注請書受注者発注者発注内容を承諾し、契約が成立したことを証明する。(契約の承諾)
納品書受注者発注者商品やサービスを納品した事実を報告する。
検収書発注者受注者納品物が発注内容と相違ないことを確認し、受け取ったことを証明する。
請求書受注者発注者納品・検収が完了した後、代金の支払いを正式に依頼する。
領収書受注者発注者代金を受け取った事実を証明する。

このように、発注書は契約の「申込み」という重要な役割を担っており、一連の取引書類の中で中心的な位置を占めています。

【基本の書き方】発注書の必須記載項目と作成時の注意点

正確な発注書は、円滑な取引の土台です。ここでは、誰が見ても内容が一目でわかる、完璧な発注書を作成するための必須項目と、作成時に押さえておくべきポイントを具体的に解説します。

発注書の必須記載項目

以下の項目を漏れなく記載することで、トラブルを未然に防ぎ、取引先に安心感を与えることができます。

  • タイトル
    書類の上部中央に「発注書」または「注文書」と、何の書類であるかが明確にわかるように大きく記載します。
  • 宛先
    書類の左上に、発注先(受注者)の正式名称を記載します。会社宛てには「御中」、部署宛てには「〇〇部 御中」、個人宛てには「様」を使うのがビジネスマナーです。
  • 発行者情報
    宛先の下、書類の右側に発注者(自社)の会社名、住所、電話番号、担当者名を記載します。問い合わせがあった際にスムーズに対応できるよう、正確に記載しましょう。
  • 発行日
    発注書を発行した日付を記載します。「いつ」の取引であるかを明確にするための重要な情報です。
  • 発注番号
    必須ではありませんが、記載することを強く推奨します。独自の管理番号(例:PO-202410-001)を振ることで、後から取引を特定したり、関連書類と紐づけたりするのが非常に容易になります。
  • 発注内容(明細)
    発注する商品やサービスの詳細を、表形式でわかりやすく記載します。品名・品番は省略せず正式名称を、数量は「1式」などの単位も明確にします。単価と、数量を掛け合わせた金額もそれぞれ記載します。
  • 合計金額
    明細の下に、税抜の小計、消費税額、そして最終的な支払金額である税込の合計金額を明確に分けて記載します。
  • 納期
    商品やサービスをいつまでに納品してほしいか、具体的な日付を記載します。
  • 納品場所
    納品先の住所を正確に記載します。自社のオフィス以外を指定する場合は特に注意が必要です。
  • 支払条件
    代金の支払い方法と期日を記載します。例として「月末締め、翌月末銀行振込」など、事前に取引先と合意した内容を明記します。
  • 備考
    その他、特記事項や連絡事項があれば記載します。例として「修正は2回までとします」「納品時は事前にご連絡ください」などが挙げられます。

作成時のよくある質問

押印は必要ですか?

法律上、発注書への押印は必須ではありません。しかし、日本のビジネス慣習では、会社の角印などを押印することが一般的です。

押印することで、その発注書が企業によって正式に承認された公式な文書であることを示し、信頼性を高める効果があります。特別な理由がない限り、押印しておくのが望ましいでしょう。

収入印紙は必要ですか?

通常、発注書に収入印紙を貼る必要はありません。収入印紙が必要となるのは、印紙税法で定められた「課税文書」、つまり契約の成立を証明する書類です。前述の通り、発注書単体は契約の「申込み」であり、契約書ではないため、課税文書には該当しません。

ただし、例外もあります。発注書に対して受注者が「発注請書」を発行せず、発注書自体に双方が署名・押印して契約を成立させる場合など、発注書が契約書としての役割を果たすケースでは、課税文書と見なされ収入印紙が必要になることがあります。

【重要】下請法が関わる取引で絶対に知るべきこと

すべての発注業務が同じルールで行われるわけではありません。特定の取引においては、「下請法(下請代金支払遅延等防止法)」という特別な法律が適用され、発注者(親事業者)に通常よりも厳しい義務が課せられます。この法律を知らないと、意図せず法を犯し、罰金などの重いペナルティを受ける可能性があります。

下請法とは何か?

下請法は、立場の弱い下請事業者を不当な取引から守るための法律です。資本金や取引内容によって、発注する側が「親事業者」、受注する側が「下請事業者」と定義された場合、親事業者には下請事業者の利益を不当に害する行為(代金の支払遅延、不当な減額など)が禁止されます。

どのような取引で適用されるのか?

下請法が適用されるかどうかは、「取引内容」と「両社の資本金」の組み合わせで決まります。例えば、物品の製造委託の場合、資本金3億円超の会社が資本金3億円以下の会社に発注すると、下請法が適用されます。自社と取引先の資本金を確認し、該当するかどうかを必ずチェックする必要があります。

発注書が「3条書面」という法的文書になる

下請法が適用される取引では、発注書は単なる業務書類ではなく、「3条書面」と呼ばれる、法律で交付が義務付けられた非常に重要な文書に変わります。この3条書面は、発注内容を明確にし、下請事業者を保護するためのもので、記載すべき項目が法律で厳格に定められています。

3条書面に必ず記載すべき12項目

通常の発注書項目に加えて、以下の内容をすべて記載しなければなりません。

  1. 親事業者および下請事業者の名称
  2. 委託した日(発注日)
  3. 給付の内容(委託する業務内容を明確に)
  4. 給付を受領する期日(納期)
  5. 給付を受領する場所(納品場所)
  6. 検査を完了する期日(納品物を検査する場合)
  7. 下請代金の額(具体的な金額、または算定方法)
  8. 下請代金の支払期日(納品物受領後、60日以内に設定)
  9. 手形を交付する場合の、手形の金額および満期
  10. 一括決済方式で支払う場合の、金融機関名や支払期日など
  11. 電子記録債権で支払う場合の、債権の額や満期日など
  12. 原材料などを有償支給する場合の、品名、数量、対価など

これらの項目に一つでも漏れがあると、法律違反となります。

発行のタイミング

3条書面は、発注後「直ちに」交付することが義務付けられています。口頭で発注した後に、書面をなかなか交付しない、といった行為は認められません。「すぐに」「即時に」交付しなければ、下請法違反と見なされます。

親事業者に禁止される11の行為

下請法では、親事業者が行ってはならない行為として、以下の11項目が定められています。

  • 受領拒否
  • 下請代金の支払遅延
  • 下請代金の減額
  • 返品
  • 買いたたき
  • 購入・利用強制
  • 報復措置
  • 有償支給原材料等の対価の早期決済
  • 割引困難な手形の交付
  • 不当な経済上の利益の提供要請
  • 不当な給付内容の変更・やり直し

これらの禁止行為は、たとえ下請事業者の「合意」があったとしても、その合意が実質的に強要されたものであれば違反となる可能性があります。

違反した場合の罰則

下請法に違反した場合、公正取引委員会による勧告や指導が行われるだけでなく、最大50万円の罰金が科される可能性があります。これは法人だけでなく、担当者個人も対象となる場合があります。

自社の取引が下請法に該当する可能性がある場合は、汎用的なテンプレートを使うのではなく、必ず上記の12項目を網羅した、下請法対応のフォーマットを使用してください。これは、リスク管理の観点から極めて重要です。

インボイス制度や電子帳簿保存法への対応方法

インボイス制度や電子帳簿保存法への対応方法

近年、経理業務を取り巻く環境は、インボイス制度や電子帳簿保存法の導入により大きく変化しました。これらの新しいルールが発注書にどのような影響を与えるのか、多くの事業者が不安を感じています。ここでは、それぞれの制度と発注書の関係を明確にし、具体的な対応方法を解説します。

インボイス制度と発注書の関係

2023年10月に開始されたインボイス制度(適格請求書等保存方式)は、発注書の書き方やフォーマットに直接的な影響を与えません。これまで使用してきた発注書のテンプレートを、インボイス制度を理由に変更する必要はありません。

なぜ影響がないのか?

インボイス制度は、消費税の「仕入税額控除」を正しく行うための仕組みです。仕入税額控除を受けるためには、取引の最終的な金額や消費税額、そして発行事業者の登録番号などが記載された「適格請求書(インボイス)」の保存が必要となります。

この「適格請求書」の役割を果たすのは、主に請求書や領収書、納品書といった、取引金額が確定した後に発行される書類です。一方、発注書は取引が確定する前の「申込み」段階の書類であり、支払いの証拠となるものではないため、インボイス制度の対象外となります。

推奨される対応(任意)

必須ではありませんが、業務をスムーズに進めるための工夫として、発注書のテンプレートに取引先(受注者)のインボイス登録番号(T+13桁の数字)を記載する欄を設けておくと便利です。これにより、後日受け取る請求書との照合が容易になり、経理処理の効率が向上します。

電子帳簿保存法と発注書の関係

インボイス制度よりも、発注書の管理に直接的かつ重大な影響を与えるのが、電子帳簿保存法です。特に2024年1月からの法改正により、電子データでやり取りした書類の保存方法に関するルールが厳格化されました。

電子取引データの電子保存義務

法改正による最大の変更点は、「電子取引で受け取った、または送付した書類は、電子データのまま保存しなければならない」という義務化です。

具体的には、取引先からPDF形式の発注書がメールに添付されて送られてきた場合や、自社が作成したPDFの発注書をメールで取引先に送付した場合などが該当します。これらの場合、受け取った、または送付したPDFファイルを、紙に印刷して保存することは認められません。

電子データの保存要件

電子データを保存する際には、主に以下の二つの要件を満たす必要があります。

  • 真実性の確保
    データが改ざんされていないことを証明するための措置。例えば、訂正や削除の履歴が残るシステムを利用する、タイムスタンプを付与する、などの方法があります。
  • 可視性の確保
    税務調査などで必要になった際に、データをすぐに見やすく表示できる状態にしておくこと。特に「日付・金額・取引先」で検索できる機能の確保が求められます。ファイル名を「20241025_株式会社〇〇_150000.pdf」のようにルール化するなどの対策が必要です。

紙で受け取った発注書の取り扱い

取引先から紙で発注書を受け取った場合は、これまで通り紙のままファイリングして保存して問題ありません。これをスキャナで読み取って電子データとして保存すること(スキャナ保存)も認められていますが、これは義務ではなく、あくまで選択肢の一つです。

事業者は、インボイス制度に関する過度な心配は不要ですが、電子帳簿保存法の新しいルールには確実に対応しなければなりません。自社の発注書のやり取りが電子か紙かを確認し、電子取引に該当する場合は、速やかに電子保存の体制を整えることが急務です。

業務を効率化する発注書の電子化と管理術

業務を効率化する発注書の電子化と管理術

紙ベースの発注書管理は、多くの時間とコストを浪費します。書類の印刷、封入、郵送、そしてファイリングと保管といった作業から解放され、より生産的な業務に時間を活用することが可能です。ここでは、発注書を電子化するメリットと、法律で定められた正しい管理・保存方法について解説します。

発注書を電子化する圧倒的なメリット

発注業務をデジタル化することで、企業は多くの恩恵を受けることができます。

  • コストの大幅な削減
    紙代、インク代、郵送費、そして書類を保管するためのキャビネットや倉庫スペースといった物理的なコストが不要になります。
  • 業務スピードの向上
    作成した発注書はメールやシステムを通じて瞬時に相手に届きます。郵送にかかる数日のタイムラグがなくなり、取引全体のスピードが向上します。
  • ヒューマンエラーの削減と業務効率化
    システムを使えば、過去のデータを引用して新しい発注書を簡単に作成でき、手入力によるミスを防ぎます。また、キーワード検索で必要な書類を瞬時に見つけ出せます。
  • セキュリティの強化
    紙の書類は紛失や盗難、破損のリスクが伴います。電子データであれば、アクセス制限やパスワードで不正な閲覧を防ぎ、クラウド上にバックアップを取ることで、災害時でもデータを安全に保護できます。
  • 多様な働き方への対応
    発注データがクラウド上にあれば、オフィス以外の場所からでも発注書の作成、送付、承認が可能です。これにより、テレワークやリモートワークを円滑に推進できます。

法律で定められた発注書の保存期間

発注書は、取引の証拠となる重要な「証憑(しょうひょう)書類」であり、法律で一定期間の保存が義務付けられています。

法人の場合

原則として、事業年度の確定申告書の提出期限の翌日から7年間の保存が必要です。ただし、青色申告法人で欠損金(赤字)が生じた事業年度については、10年間の保存が義務付けられています。

個人事業主の場合

発注書を含む取引書類は、原則として5年間の保存が必要です。ただし、帳簿や決算関係書類は7年間保存する必要があるため、管理をシンプルにするためにすべての書類を7年間保存しておくと安心です。

下請法が適用される場合

下請法では、取引に関する記録(3条書面など)を2年間保存することが義務付けられています。しかし、税法上の保存期間(7年または10年)の方が長いため、常に長い方の期間に合わせて保存するのが安全です。期間が過ぎたからといって2年で破棄してしまうと、税法違反となる可能性があるため注意が必要です。

発注書の電子化は、単なるペーパーレス化以上の価値をもたらします。業務プロセス全体を最適化し、企業の競争力を高めるための戦略的な一手です。その運用は、必ず法律に基づいた正しい保存期間の管理とセットで行う必要があります。

もしもの時の対応法:発注書の訂正とキャンセル

細心の注意を払っていても、取引では予期せぬ変更やミスが発生することがあります。金額を間違えてしまったり、発注自体をキャンセルする必要が出てきたりした場合、どのように対応すればよいのでしょうか。ここでは、トラブルを避け、信頼関係を損なわないための正しい対処法を解説します。

発注書を訂正する方法

発行した発注書に誤りが見つかった場合、その訂正方法には原則があります。軽微なミスで紙の書類の場合は、二重線と訂正印で対応することもありますが、文書の改ざんを疑われるリスクを避けるため、再発行が最も確実な方法です。

金額の間違いなど重要な項目に誤りがあった場合や、電子データで発行した場合は、一度発行した発注書を無効とし、新しい発注書を再発行するのが基本です。再発行する際には、以下の点に注意してください。

まず、電話やメールで取引先に連絡し、発注書に誤りがあったことを伝え、謝罪します。その上で古い発注書を破棄してもらうよう依頼します。新しい発注書には、以前とは異なる発注番号を振り、「再発行」と明記すると、どちらが正しい書類か一目瞭然となり、混乱を防げます。

発注をキャンセルする方法

発注のキャンセルは、訂正よりも慎重な対応が求められるデリケートな問題です。キャンセルの可否は、契約が成立しているかどうかで決まります。

受注者が「発注請書」を発行するなど、明確な承諾の意思表示をする前であれば、発注はまだ「申込み」の段階であるため、原則として取り消すことができます。

しかし、契約が成立した後は、一方的な都合でキャンセルすることは原則としてできません。もしキャンセルを強行した場合、受注者がすでに被った損害について、賠償を請求される可能性があります。キャンセルが必要な場合は、まず取引先に誠実に事情を説明し、合意の上で解約手続きを進める必要があります。

下請法が適用される取引の場合

下請法が適用される取引では、ルールが非常に厳しくなります。親事業者は、下請事業者に責任がないにもかかわらず、一方的に発注を取り消したり、納品物の受領を拒否したりすることは、法律で固く禁じられています。

例えば、「自社の顧客からキャンセルされたから」という理由は、下請事業者には責任がないため、正当なキャンセル理由にはなりません。下請法が適用される取引での安易なキャンセルは、法律違反となり、厳しいペナルティの対象となることを肝に銘じておく必要があります。

どのような状況であれ、ミスや変更が発生した際は、迅速かつ誠実なコミュニケーションが最も重要です。速やかに相手に連絡を取り、丁寧に対応することで、信頼関係の悪化を最小限に食い止めることができます。

まとめ

発注書は、単に商品やサービスを注文するための書類ではありません。それは、取引の明確な意思表示であり、将来のトラブルを防ぐための重要な盾であり、そして取引先との信頼関係を築くためのコミュニケーションツールです。

この記事では、すぐに使えるテンプレートの提供から、その一枚の書類に込められた法的な意味合いまで、発注書に関するすべてを網羅的に解説しました。最後に、重要なポイントを再確認しましょう。

  • 発注書は明確な記録
    口約束のリスクを避け、取引内容を正確に記録するために不可欠です。
  • テンプレートの賢い活用
    自社の業務内容に合ったテンプレートを選ぶことで、日々の業務は格段に効率化されます。
  • 法的知識は必須
    特に、取引相手によっては下請法が適用され、発注書が法的な義務を伴う重要書類に変わることを忘れてはいけません。
  • 新制度への対応
    インボイス制度は発注書に直接影響しませんが、電子帳簿保存法は電子データの保存方法を規定しており、確実な対応が求められます。
  • 電子化の推進
    コスト削減、業務効率化、セキュリティ強化の観点から、発注業務の電子化はもはや避けて通れない流れです。

この記事で得た知識を武器に、もう発注業務に迷うことはありません。自信を持って、正確でプロフェッショナルな発注管理を実践し、ビジネスをさらに前進させてください。

この記事の投稿者:

hasegawa

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