会計の基礎知識

積立金とは?仕訳から税務まで、経営者が知るべ知識について解説

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積立金とは

会社の将来のために、利益を計画的に貯めておきたい。そう考えたとき、多くの経営者や経理担当者が「積立金」という言葉に行き着きます。しかし、その正確な意味や正しい会計処理、特に「仕訳」となると、途端に難しく感じられるのではないでしょうか。

積立金の管理は、単なる帳簿上の作業ではありません。それは、会社の財務的な未来を戦略的にコントロールするための強力な武器です。

積立金を正しく理解し活用することで、計画的な設備投資や研究開発が可能になり、不測の経済危機を乗り越える体力がつき、金融機関や投資家からの信頼という無形の資産を築くことさえできます。これらはすべて、会社の持続的な成長に不可欠な要素です。

この記事では、「積立金とは何か」という基本から、その種類、そして実務で最も重要な「仕訳」の方法までを、一つひとつ丁寧に解説します。

この記事を最後まで読めば、あなたは積立金の全体像を明確に理解し、自社の状況に合わせてどの積立金をどう設定し、どのように会計処理すればよいか、自信を持って判断できるようになるでしょう。

「法律や会計のルールは複雑で難しそう」という不安を感じるかもしれません。ご安心ください。この記事は、会計の専門家ではない経営者や実務担当者の方々を対象に書かれています。

専門用語はできるだけ避け、身近な例え話を交えながら、誰にでも理解できるよう、かみ砕いて説明を進めていきます。

一見すると専門的に見える積立金の世界も、基本のルールさえ押さえれば、決して難しいものではありません。この記事を通じて、あなたの会社をより強く、たくましく成長させるための知識を身につけていきましょう。

そもそも積立金とは?会社の「貯金箱」の仕組みを理解する

積立金の基本的な定義と役割

積立金とは、会社が生み出した利益のうち、配当などで社外に流出させずに、特定の目的や将来の備えのために社内に留保しておくお金のことを指します。会計上、この積立金は貸借対照表の「純資産の部」にある「株主資本」の中に表示されます。

ここが非常に重要なポイントで、積立金は費用や負債ではなく、会社自身が持つ資本の一部、つまり自己資本の一種なのです。

これを家庭の家計に例えてみましょう。会社の利益は、家庭における月々の給料のようなものです。株主への配当は、生活費や娯楽費などの支出にあたります。そして、支出を差し引いて普通預金口座に残ったお金が、会計でいう「繰越利益剰余金」です。

積立金を設けるというのは、この普通預金口座から「将来の車の購入のため」「万が一の病気に備えるため」といった目的別に、別の貯金箱(定期預金など)にお金を移す行為に似ています。お金の総額は変わりませんが、その一部を特定の目的のために確保し、安易に使ってしまわないように区別するのです。

引当金との決定的な違い

経理の実務において、「積立金」と非常によく似た言葉に「引当金」があります。どちらも将来の支出に備えるという点では共通していますが、その会計上の性質は全く異なります。この違いを理解することは、会社の財務状況を正しく把握する上で不可欠です。

引当金(ひきあてきん)は「負債」です。将来発生する可能性が非常に高い特定の費用や損失に備え、その原因が当期以前にある場合に、その金額を見積もって当期の費用として計上するものです。

例えば、従業員に支払うことがほぼ確定している来期のボーナスに備える「賞与引当金」や、将来の退職金支払いに備える「退職給付引当金」がこれにあたります。これらは、会社が将来支払うべき義務(債務)とみなされるため、貸借対照表では負債の部に計上されます。

一方、積立金(つみたてきん)は「純資産」の一部です。会社の利益が確定した後に、その利益の中から任意で積み立てるものです。利益を計算する過程で計上される引当金とは異なり、積立金は利益の使い道(処分)の一つとして扱われます。

そのため、利益を減少させることはなく、単に純資産の部の中で「繰越利益剰余金」から「〇〇積立金」へと勘定科目を振り替えるだけです。

この違いは、「義務」と「戦略」の違いと捉えることができます。引当金の計上は、会計ルールに基づき、将来の支払義務を財務諸表に正しく反映させるための「義務」です。会社に選択の余地はほとんどありません。

一方で、任意積立金の設定は、経営陣が株主の承認を得て行う「戦略的」な意思決定です。将来の工場建設や事業拡大といった目標達成のために、利益を計画的に確保する経営戦略の一環なのです。この二つを混同すると、会社の真の負債額や将来への投資余力を完全に見誤る危険性があります。

なぜ積立金が必要なのか?その2つの大きな目的

では、なぜ会社は積立金を設定するのでしょうか。その目的は大きく分けて2つあります。

一つ目は、債権者保護と財務基盤の強化です。会社法で定められている「法定準備金」は、主にこの目的のために存在します。会社が利益のすべてを配当として株主に分配してしまうと、会社の財産が過度に流出し、万が一経営が悪化した際に、取引先や金融機関といった債権者への支払いができなくなる恐れがあります。

そこで法律は、利益や資本の一部を強制的に会社内に留保させることで、会社の財産的基礎を維持し、債権者を保護しているのです。これは、会社の財務的なクッションを厚くし、健全性を高める役割を果たします。

二つ目は、戦略的な内部留保です。会社が任意で設定する「任意積立金」は、まさに経営戦略そのものです。特定の将来計画(例:大規模修繕、新規事業への投資)のために資金を明確に確保したり、目的を定めない「別途積立金」として、不測の事態や予期せぬチャンスに備えるためのフリーハンドな資金を確保したりできます。

利益を単なる「繰越利益剰余金」として置いておくと、配当の原資と見なされがちですが、「〇〇積立金」として目的を明示することで、その資金を保護し、計画的かつ規律ある長期的な財務運営を可能にするのです。

積立金の二大巨頭 「法定準備金」と「任意積立金」

積立金の二大巨頭 「法定準備金」と「任意積立金」

積立金は、その性質から大きく2種類に分類されます。会社法によって積立てが義務付けられている「法定準備金」と、会社の意思で自由に設定できる「任意積立金」です。それぞれの特徴を正確に理解しましょう。

会社法が定める義務 「法定準備金」

法定準備金とは、その名の通り、会社法によって積み立てることが義務付けられている準備金です。これは会社の財産的基礎を固め、債権者を保護することを主な目的としています。法定準備金には「利益準備金」と「資本準備金」の2種類があります。

利益準備金 配当との連動ルール

利益準備金は、会社が事業活動によって得た利益(利益剰余金)を源泉として積み立てられる法定準備金です。

その最大のルールは、剰余金の配当を行う場合、その配当額の10分の1を利益準備金として積み立てなければならないというものです。例えば、1,000万円の配当を行う場合、その10分の1である100万円を利益準備金として計上する必要があります。

ただし、この積立てには上限があります。利益準備金と次に説明する資本準備金の合計額が、資本金の額の4分の1に達するまでと定められています。この上限に達した後は、それ以上配当を行っても、新たに利益準備金を積み立てる法的な義務はなくなります。

資本準備金 資本取引から生まれる準備金

資本準備金は、会社の営業利益からではなく、主に株主からの出資金など、資本取引によって生じるお金を源泉とする法定準備金です。

具体的には、会社が新株を発行して資金調達をする際に、株主から払い込まれた金額のうち、2分の1を超えない額を資本金として計上せず、資本準備金とすることができます。例えば、株主から1,000万円の出資を受けた場合、全額を資本金とするのではなく、500万円を資本金、残りの500万円を資本準備金として計上することが可能です。これにより、資本金の額を抑えつつ、会社の財産を確保し、将来の財務戦略に柔軟性を持たせることができます。

これら法定準備金は、いわば会社の資本を保護する「鍵のかかった箱」のようなものです。利益準備金は利益から、資本準備金は出資金からとその源泉は異なりますが、どちらも会社の財産を維持するために法的に留保が義務付けられた資金であり、簡単に配当などで社外に流出させることはできません。

経営者にとっては、自由に使える資金が一部制限されることになりますが、その分、貸借対照表が強化され、金融機関などからの信用度向上につながるという大きなメリットがあります。

会社の意思で積み立てる戦略的資金 「任意積立金」

法定準備金が法律による「義務」であるのに対し、任意積立金は、会社が自らの経営判断に基づき、株主総会の決議を経て任意で積み立てるものです。法律による積立義務はなく、金額の上限なども特に定められていません。

まさに、会社の戦略的な意思を反映した「貯金箱」と言えるでしょう。任意積立金は、その目的の有無によって、さらにいくつかの種類に分けられます。

目的がある積立金(目的積立金)

これらは、将来の特定の支出に備えるために、その使い道をあらかじめ定めて積み立てるものです。具体的な例としては以下のようなものがあります。

修繕積立金
自社ビルや工場の定期的な大規模修繕に備えるための積立金です。

新築積立金
新しい社屋や工場の建設資金を計画的に貯めるための積立金です。

役員退職積立金
役員への退職慰労金の支払いに備えるための積立金です。

配当平均積立金
業績が良い年に多めに積み立てておき、業績が振るわない年でも安定した配当を維持するために使われる積立金です。

目的を定めない万能資金(別途積立金)

別途積立金は、上記のような特定の目的を定めずに積み立てる任意積立金です。これが、いわゆる会社の「内部留保」の中核をなすものであり、非常に戦略的な価値を持ちます。

別途積立金は、使途が限定されていないため、将来のM&A(企業の合併・買収)の原資、予期せぬ経営環境の変化に対応するための緊急資金、あるいは大きな損失が発生した際の補填など、株主総会の決議さえあれば、さまざまな用途に柔軟に活用できるという大きなメリットがあります。

税法上の特例を活用する積立金

これらは少し専門的になりますが、特定の税法上の優遇措置(課税の繰り延べなど)を受けるために設定される積立金もあります。

代表的なものが「圧縮積立金」で、例えば国から補助金をもらって固定資産を購入した場合などに、税負担を将来に繰り延べる目的で利用されます。これらの積立金は、税理士などの専門家と相談の上で活用を検討するのが一般的です。

法定準備金と任意積立金の比較

項目法定準備金任意積立金
根拠会社法株主総会決議
目的債権者保護、会社財産の維持経営戦略上の目的(将来の投資、リスク対応など)
意思決定法的義務任意
金額の制限あり(資本準備金と合わせて資本金の4分の1まで)原則として、なし

この表からもわかるように、法定準備金は「守り」の性格が強く、任意積立金は「攻め」と「守り」の両方の性格を持つ、経営の自由度を高めるためのツールという違いがあります。

実践編 もう迷わない!積立金の仕訳

実践編 もう迷わない!積立金の仕訳

積立金の概念を理解したら、次はいよいよ実務で最も重要な「仕訳」です。ここでは、具体的なケースを想定して、積立金を「積み立てる時」と「取り崩す時」の仕訳をパターン別に解説します。

任意積立金を「積み立てる」ときの仕訳

任意積立金を積み立てる行為は、会計上、純資産の部内での資金の移動として処理されます。具体的には、利益の蓄積である「繰越利益剰余金」勘定から、目的別の「〇〇積立金」勘定へと振り替えます。

【仕訳例1】別途積立金を積み立てる場合

株主総会で、繰越利益剰余金の中から100万円を、特に目的を定めない別途積立金として積み立てることを決議した。

借方科目借方金額貸方科目貸方金額
繰越利益剰余金1,000,000円別途積立金1,000,000円

この仕訳により、自由に使える利益(繰越利益剰余金)が100万円減少し、その分、会社の意思で留保された利益(別途積立金)が100万円増加します。会社の純資産の総額に変動はありません。

【仕訳例2】修繕積立金を積み立てる場合

将来の工場の大規模修繕に備えるため、繰越利益剰余金から50万円を修繕積立金として積み立てることを決議した。

借方科目借方金額貸方科目貸方金額
繰越利益剰余金500,000円修繕積立金500,000円

考え方は別途積立金と同じです。貸方の勘定科目が、確保したい資金の目的に応じた名称(この場合は「修繕積立金」)に変わるだけです。

任意積立金を「取り崩す」ときの仕訳

積み立てた目的が達成された(例:実際に修繕工事を行った)、あるいは目的が変更・消滅した場合には、積立金を取り崩します。この時の仕訳は、積立時と逆の仕訳を行い、一度「繰越利益剰余金」に資金を戻すのが基本です。

【仕訳例】新築積立金を取り崩す場合

新社屋の建設資金として積み立てていた新築積立金500万円を、計画実行のために取り崩すことを決議した。

借方科目借方金額貸方科目貸方金額
新築積立金5,000,000円繰越利益剰余金5,000,000円

ここで初心者が間違いやすいのは、「新築積立金を取り崩して現金で支払った」と考えて、貸方を「現金預金」としてしまうことです。しかし、会計上の正しい手順は2段階で考えます。

まず、①目的のために確保していた積立金(新築積立金)の指定を解除し、再び自由に使える利益(繰越利益剰余金)に戻します。上記の仕訳はこの①のプロセスを表現しています。

そして、②その繰越利益剰余金を原資として、実際に建設業者へ支払いを行う(借方:建物/貸方:現金預金)という別の取引が発生します。積立金はあくまで利益の「区分」であり、特定の現金そのものではないため、このように段階を踏んで処理することで、会計上の透明性が保たれるのです。

利益準備金を「積み立てる」ときの仕訳

法定準備金である利益準備金の積立ては、剰余金の配当と同時に行われます。

【仕訳例】配当と同時に利益準備金を積み立てる場合

株主総会で、剰余金から株主へ1,000万円の配当を行うことを決議した。会社法に基づき、その10分の1にあたる100万円を利益準備金として積み立てる。

借方科目借方金額貸方科目貸方金額
その他利益剰余金(または繰越利益剰余金)11,000,000円未払配当金10,000,000円
利益準備金1,000,000円

この仕訳を分解すると、まず株主に対して1,000万円の配当を支払う義務(未払配当金という負債)が発生します。同時に、法定のルールに従い100万円を利益準備金として積み立てます。その合計額である1,100万円が、利益の蓄積である「その他利益剰余金」から減少するという構成になっています。

経営者必見 積立金と法人税申告の関係

積立金は会社の財務戦略上、非常に有効なツールですが、税金との関係を正しく理解しておくことが極めて重要です。特に、任意積立金が税務上どう扱われるかを知らないと、思わぬ誤解を招く可能性があります。

原則 任意積立金の積立ては損金にならない

ここで最も重要なルールは、任意積立金を積み立てる行為は、法人税の計算上、経費(損金)として認められないということです。これを「損金不算入」といいます。

なぜなら、任意積立金の積立ては、税金を支払った後の利益(税引後利益)の使い道を決める社内的な手続きに過ぎないからです。売上を上げるために直接かかった費用ではないため、税金の計算対象となる所得を減らす効果は一切ありません。

この点を理解していないと、「将来のために利益を積み立てたのだから、その分、今年の税金が安くなるはずだ」という大きな勘違いをしてしまいます。税務の観点から見れば、任意積立金の積立ては、その時点では税額に影響を与えないニュートラルな行為です。税金への影響は、その利益が将来、配当などの形で分配される時点で初めて発生します。

別表四と別表五(一)での調整

会計上は繰越利益剰余金から任意積立金へ振り替えるだけの簡単な仕訳ですが、この内容は法人税の申告書できちんと報告されます。具体的には、「別表四(所得の金額の計算に関する明細書)」と「別表五(一)(利益積立金額の計算に関する明細書)」という書類で調整が行われます。

ごく簡単に役割を説明すると、別表四は会計上の利益と税務上の所得のズレを調整する書類、別表五(一)は税務上の利益剰余金(利益積立金額)の期首から期末までの変動を管理する書類です。

任意積立金の積立ては、会計上の利益には影響しませんが、純資産の構成内容が変わるため、その変動が別表五(一)に記録されます。また、この変動は別表四の「留保」という項目を通じて、両方の書類が連動する仕組みになっています。

ここでは詳細な書き方には立ち入りませんが、「会計上の処理と税務上の処理は連動しており、申告書でその内容を正しく示す必要がある」という点だけ、しっかりと覚えておいてください。

特殊ケースの理解を深める 保険積立金とマンション修繕積立金

これまで説明してきた「積立金」とは少し毛色の違う特殊なケースも存在します。これらを区別して理解することで、より知識が深まり、実務での混乱を避けることができます。

資産計上される「保険積立金」の会計処理

まず注意すべきは、「保険積立金」です。この勘定科目は、これまで見てきた純資産の部の積立金とは全く異なり、貸借対照表の「資産の部」に計上される項目です。

これは、法人が契約する生命保険のうち、養老保険や終身保険のような貯蓄性のある保険商品に関連して使われます。

支払う保険料には、万が一の保障のための「掛け捨て部分(費用)」と、将来満期金や解約返戻金として戻ってくる「貯蓄部分(資産)」が含まれています。この貯蓄部分の金額を資産として計上する際に用いる勘定科目が「保険積立金」なのです。

【仕訳例1】保険料を支払った場合

貯蓄性のある保険に加入し、年間保険料10万円を普通預金から支払った。このうち8万円が貯蓄部分(資産)、2万円が保障部分(費用)である。

借方科目借方金額貸方科目貸方金額
保険積立金80,000円普通預金100,000円
支払保険料20,000円

このように、支払った保険料を資産(保険積立金)と費用(支払保険料)に分けて処理します。

【仕訳例2】満期保険金を受け取った場合

保険が満期を迎え、満期保険金500万円が普通預金に入金された。この時点で、帳簿上の保険積立金の残高は480万円だった。

借方科目借方金額貸方科目貸方金額
普通預金5,000,000円保険積立金4,800,000円
雑収入200,000円

受け取った保険金額と、これまで資産として積み上げてきた保険積立金額との差額は、「雑収入」(受け取った額が多い場合)または「雑損失」(受け取った額が少ない場合)として処理します。

(参考) マンション管理組合における修繕積立金

最後に、参考情報としてマンションの「修繕積立金」に触れておきます。この言葉は非常に身近なため、会社の積立金と混同しやすいですが、会計や税務のルールは全く異なるため注意が必要です。このトピックを取り上げる目的は、皆さんが実生活で触れる概念との違いを明確にし、誤った知識の適用を防ぐためです。

会社が自社の建物のために設定する「修繕積立金」と、マンションの区分所有者として支払う「修繕積立金」は、立場も処理も異なります。

支払う側(会社の立場)の場合、会社が事業用(事務所や賃貸用)に所有するマンションの修繕積立金を毎月支払うのであれば、これは一定の要件を満たせば、経費(勘定科目は「修繕費」など)として計上できます。

一方、受け取る側(管理組合の立場)では、マンションの管理組合は、区分所有者から集めた修繕積立金を収入(「修繕積立金収入」)として会計処理します。そして、この資金は日常の管理費とは明確に区分して経理(特別会計)することが義務付けられています。このように、同じ「修繕積立金」という言葉でも、誰がどのような立場で関わるかによって、会計上の扱いは全く変わるのです。

まとめ 積立金を活用して会社の未来を描く

今回は、複雑に見える「積立金」の世界を、その基本概念から種類、具体的な仕訳、そして税務上の注意点まで、網羅的に解説しました。最後に、会社の未来を力強く描くために、絶対に押さえておくべき要点を再確認しましょう。

  • 積立金は利益の処分であり「純資産」
    積立金は、税引後の利益の使い道の一つであり、貸借対照表の純資産の部に計上されます。将来の支出に備えるという点で似ている「引当金」が負債であるのとは、根本的に性質が異なります。
  • 「法定」と「任意」の違いを理解する
    利益準備金や資本準備金といった「法定準備金」は、会社の財務基盤を固め、債権者を保護するための法律上の義務です。一方、別途積立金などの「任意積立金」は、経営者が会社の将来を見据えて設定する戦略的なツールです。
  • 仕訳の基本パターンを覚える
    任意積立金を積み立てる時は「借方:繰越利益剰余金/貸方:〇〇積立金」、取り崩す時はその逆仕訳で「借方:〇〇積立金/貸方:繰越利益剰余金」と覚えておけば、基本は万全です。
  • 税務上の鉄則:積立ては損金にならない
    任意積立金を積み立てても、その期の法人税が安くなることはありません(損金不算入)。これは、税金を支払った後の利益の社内的な移動だからです。この点を誤解しないようにしましょう。
  • 戦略的活用の重要性
    正しく管理された任意積立金は、規律ある資金計画を可能にし、経営上のリスクを吸収し、未来の成長への投資を後押しする、非常に強力な経営ツールです。積立金を使いこなすことは、会社の運命の舵をより確かに握ることに他なりません。

積立金の知識は、単なる経理担当者の専門知識ではありません。会社の財務体質を強化し、持続的な成長を実現するための、すべての経営者が持つべき経営の知恵です。この記事が、あなたの会社の明るい未来を築くための一助となれば幸いです。

この記事の投稿者:

hasegawa

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