
中小企業の事務担当者や経理初心者の方に向けて、納品書3枚綴りの書き方を解説します。納品書は商品やサービスを納入した証拠として発行される重要な書類です。
特に3枚綴りの納品書の書き方を正しく理解しておくことで、取引先とのやり取りや社内管理がスムーズになります。
本記事では、3枚複写の納品書とは何か、その役割や記入ルール、実際の記入例、よくあるミスと対策、さらには手書きならではの注意点や業務効率化のポイントまで、丁寧に説明していきます。
目次
納品書3枚綴りとは何か?目的と概要
納品書3枚綴りとは、一度の記入で同じ内容の納品書が3枚複写される伝票のことです。通常、ノーカーボン紙(カーボンレスコピー用紙)で作られており、上の紙にボールペン等で記入すると下の紙にも筆圧で文字が転写されます。
一度に3部作成できるため、取引先(納品先)用、自社の控え用、作業用など複数の関係者向けに同内容の書類を用意する目的で使われます。
この3枚綴りの納品書を使用する主な目的は、「同じ内容の納品情報を関係者全員が共有・保管すること」にあります。商品を納入する際、納品する側と受け取る側の双方が納品内容を確認し、記録として残しておく必要があります。
3枚複写の納品書であれば、1回の記入で3部の納品書が作成できるため、記入漏れや内容相違が起こりにくく、手間も省けます。
また、複写式の納品書は社内管理にも役立ちます。例えば、営業部門・配送担当・経理部門など、それぞれが必要な形で納品情報を持てます。納品書3枚綴りは中小企業でも広く利用され、手書きでも扱いやすいよう工夫された伝票です。
経理初心者の方でもポイントを押さえれば難しくありません。次の章から、各枚の役割や具体的な書き方を見ていきましょう。
3枚綴り納品書の各枚の役割と保管方法
納品書3枚綴りは3部構成ですが、それぞれの枚数ごとに役割があります。一般的には以下のように使い分けられます。
1枚目(控え)
通常、自社(納品側)の控えとして保存するためのものです。記入後は社内に保管し、後日の照合や会計処理に活用します。
伝票に「控」「控え」と印字されていたり、用紙の色が他と異なったりする場合は、この1枚目が自社控え用であることを示しています。保管方法としては、日付順や伝票番号順にファイリングしたり、後述する請求書発行の際に参照したりします。
経理担当者はこの控えをもとに請求金額や売上計上の確認を行うことになりますので、紛失しないようファイルやバインダーで整理しましょう。
2枚目(取引先用)
納品先(相手先)に渡す用の納品書です。商品や工事などの納品物を受け取った相手に渡し、相手先で保存してもらいます。一般的に「納品書(お客様用)」などと書かれている場合もあります。
相手先はこの納品書を見て、納品物の内容・数量に間違いがないか確認し、自社の帳簿に記録します。
相手先用は納品時に商品と一緒に渡し、相手先での受領確認としてサインや受領印をもらうこともあります(特に受領印欄がある伝票では、相手先担当者にその場で捺印を依頼します)。
渡した後は相手先が保管するため、こちらには戻ってきません。そのため、自社としては「渡した」という事実を控えや作業用で確認できるようにしておきます。
3枚目(作業用)
作業用とは、社内の配送担当者や倉庫担当者など内部の作業に用いる伝票を指します。例えば倉庫でピッキング(商品取り揃え)を行う際の指示書代わりに使ったり、納品現場で受領印をもらった後に自社へ持ち帰り保管したりします。
会社によって呼び方や扱い方は異なりますが、「社内回覧用」「配送担当控え」などとして利用されることもあります。3枚目は文字通り3番目の用紙で、他の2枚と同じ内容が書かれています。
納品作業完了後、この3枚目も最終的には自社で保管します。1枚目の控えと合わせて保存することもあれば、配送完了の記録として別ファイルに綴る場合もあります。
受領印欄がある場合、3枚目に相手先の受領印をもらい社内に保存すれば、控えと併せて二重に記録が残る形になります。
各枚の保存期間についても触れておきましょう。納品書は商習慣上、最低でも5年程度は保管する企業が多いです(税務上は請求書や領収書ほど厳格な保管義務はありませんが、取引の証跡として保管が推奨されます)。
特に控え(自社用)は会計帳簿の証拠ともなるため、年度ごとにファイルして保存しましょう。相手先用は先方の管理になりますが、万一紛失やトラブルがあったときのために、自社内に控えと作業用をきちんと残しておくことが大切です。
以上が3枚綴り納品書の各用紙の役割です。ただし、会社によっては用紙の使い方が異なるケースもあります。例えば「1枚目をお客様用、2枚目を請求書控え、3枚目を社内控え」とする複写伝票も市販されています。
伝票自体に各紙の用途が印字されている場合はその指示に従って運用しましょう。次に、実際にこの3枚複写の納品書をどのように記入するか、手順を解説します。
3枚綴り納品書の記入ルールと流れ(手書きの場合)
3枚綴りの納品書を手書きで記入する際の基本的なルールと流れを説明します。複写式伝票は一度に複数枚に書き写されるため、通常の紙に書く場合と比べていくつか注意点やコツがあります。
以下の順序に沿って書いていけば、経理初心者の方でも漏れなく正確に記入できるでしょう。
(1) 伝票の準備とセット
まず、納品書3枚綴りの伝票を1組用意します。伝票が綴じられている場合(冊子タイプなど)は、ミシン目に沿って切り離すか、台紙ごと切り取って1セットを取り出します。単票でバラになっている場合は、そのまま3枚セットを揃えて使います。
大切なのは、3枚がずれないようにきちんと重ね合わせることです。ずれていると筆跡が正確に複写されず、下のコピーが読みにくくなります。
もし伝票がノーカーボン紙(カーボンレス)なら特別な炭紙は不要ですが、古い形式でカーボン紙を挟むタイプなら、1枚目と2枚目の間、および2枚目と3枚目の間にカーボン紙を挟みます(カーボン面を下向きにして、上の紙に筆圧で写るようにセット)。
最近はほとんどがカーボンレスなので挟む必要はありませんが、もしカーボン紙を使う場合は裏表の向きに注意してください。また、余計な転写を防ぐために、記入中の伝票の下に下敷きや厚紙を敷いて、さらにその下の未使用伝票に筆圧が移らないようにしましょう。
準備ができたら、ボールペンなど適切な筆記具を用意します。シャープペンシルや消えるボールペンは複写に向きません(字が薄かったり消えてしまったりするため)ので、濃くはっきり書ける油性ボールペンを使います。これで記入の準備は完了です。
(2) 日付・納品書番号・宛先の記入
はじめに伝票上部の基本情報を記入します。具体的には、発行日付、納品書番号、相手先(納品先)の情報、自社(納品元)の情報などです。
日付
納品書の発行日(納品日)を記入します。西暦や和暦は社内ルールに従いますが、一般的には「2025年4月22日」や「2025/04/22」のように書きます。手書き伝票では和暦を使う会社もあります(例:「令和○年○月○日」)。
日付は取引の基本情報なので、実際に納品した日付を正確に書きましょう。
納品書番号
伝票に通し番号欄がある場合は、自社の管理用の番号を記入します。あらかじめ伝票に印字されているケースもありますが、なければ自分で番号を付けます。例えば「No. 000123」のように記入します。
この番号は社内で納品書を管理するためのものです。同じ番号を複数の納品書に使わないよう注意しましょう。また、番号が社内の受注伝票や注文書とひも付いている場合もありますので、関連する番号を転記することもあります。
納品先(宛名)
納品書を渡す相手の会社名や担当部署名を書きます。正式名称を省略せず書くことが大切です。例えば「株式会社○○○○」という会社に納品するなら、「株式会社○○○○ 御中」のように記載します(企業宛の場合「御中」を付けるのがマナーです)。
取引先担当者名まで入れる場合は、「株式会社○○○○ ○○部 ○○様」と個人名には「様」を付けます。宛先を書くことで誰に対しての納品書かが明確になり、後で参照しやすくなります。
納品元(発行者)
自社の情報です。多くの市販納品書には、あらかじめ自社の社名・住所・電話番号などを印刷しておける欄があります。印刷済みの場合は確認程度でOKですが、無地の場合や追加事項(担当者名や連絡先など)があれば記入します。
会社の角印(社判)を押す欄があれば、自社の社印を捺印します。社判が必要かどうかは会社ごとのルールですが、手書きの納品書では信頼性を高めるために社印を押すことが一般的です。
複写式の場合、上の紙に押せば下の紙にも多少印影が写りますが、くっきりさせたい場合は各枚に個別に押印すると確実です。
以上が上部の基本情報です。これらを記入したら、一度3枚全てにしっかり転写されているか確認しましょう。特に宛名や日付は下のコピーで見落としがないようにします。
(3) 品名・数量・単価など納品内容の記入
次に、納品書の明細部分、つまり納品した商品やサービスの詳細を記入します。伝票には表形式で「品名」「数量」「単価」「金額」「備考」等の欄が設けられているはずです(様式によって項目名は多少異なります)。以下の順で記入していきます。
品名(または内容)
納品した商品の名前や内容を記載します。商品コードがある場合は併記することもあります。手書きでは略称を使いたくなることもありますが、受け取る側が分かるよう正式名称や一般的な名称で書きましょう。
例:「ボールペン(モデルXYZ)」や「コピー用紙(A4)」など。複数の商品を納品した場合は行を分けてそれぞれ書きます。
行数が足りない場合は、別の納品書を追加するか、備考欄などに「他○点」などと記載することもあります(ただし極力一枚に収めるか、2枚目の伝票に続けて記入し、伝票番号を連番にする方法もあります)。
数量
それぞれの品目について納品した数量を記入します。単位(個、箱、セット、kgなど)も必要に応じて書きます。例:「10個」「5箱」「20m」など。数量を書くときは、桁を間違えないよう注意しましょう。
特に手書きだと「0」の数の書き間違いが起こりやすいので、一つ一つ確認します。
単価
単価欄があれば、品目1単位あたりの価格を記入します。例えば1個500円なら「¥500」などと書きます。納品書は本来「納品明細書」であり請求書ではないため、価格欄が無い形式もあります。その場合、金額は書かず品名と数量だけ記載します。
ただ、請求書を兼ねている納品書(複写式で2枚目が請求書になっているタイプなど)の場合や、自社内の控えとして金額も把握したい場合は単価・金額も書き込みます。基本的には取引先との取り決めに従い、価格記入の有無を判断してください。
金額
単価 × 数量の小計金額を記入します。手計算で算出し、記入ミスがないか電卓でも確認しましょう。特に複数行ある場合、合計金額の計算間違いが起こりやすいので注意です。金額を書くときは桁区切り(カンマ)を入れると見やすいです(例:5,000 や 12,345 など)。
日本円の場合「¥」や「円」を付けるかどうかは社内ルールによりますが、伝票に印字されている「円」マークに合わせて記入すれば問題ありません。
摘要・備考
明細の横か下部に備考欄がある場合、必要に応じて記入します。例えば「○月分まとめて納品」「注文番号1234に対応」など、取引先と取り決めた項目や伝えておきたい事項があれば書きます。特に何もなければ空欄でも構いません。
部分納品や後日残りを納品する場合は「※残品は後日納品予定」といった断り書きを入れておくと親切です。
以上、品名から金額まで明細をすべて埋めたら、計算ミスがないかもう一度確認します。3枚全てに数字がはっきり写っているかもここでチェックします。
金額の一部が下のコピーで読めないと、後で請求時に混乱する恐れがあります。筆圧が足りず薄い場合は、その箇所だけもう一度なぞるなどしてはっきり写すようにしましょう。
(4) 合計金額・消費税等の記入
品目ごとの金額欄の下部や伝票の所定欄に、合計金額を記入します。複数行ある場合は合計欄に全品目の総額を書きます。また、伝票によっては消費税額や税込金額を記入する欄が用意されています。
2019年以降の消費税率変更や軽減税率制度の導入に伴い、新しい納品書伝票には税額欄があるものもあります。項目例としては「小計」「消費税額」「合計(税込)」などです。
小計
品目合計(税抜金額の総計)を記入します。
消費税額
小計に対する消費税を計算し記入します。端数処理(切り捨て/切り上げ/四捨五入)は会社の会計規定に従います。
合計(税込)
小計+消費税の合計金額を記入します。
納品書は厳密には請求書ではありませんが、実務上納品書兼請求書のように扱われるケースもあります。その場合、ここで記入した合計金額がそのまま請求額になります。特に3枚複写で2枚目が「請求書」扱いの伝票では、正確に合計金額まで記載する必要があります。
伝票によっては「今回御請求額」などと明記されているでしょう。
なお、円未満の端数処理や消費税計算の方法は会社ごとに異なるため、相手先と取り決めた方法で記載します。インボイス制度(適格請求書)の対象であれば、自社の登録番号などを別途記載する必要もありますが、納品書の場合は請求書ほど厳密ではありません。
ただ、請求書を兼ねるなら登録番号や適用税率の表示も必要になります。経理初心者の方は、最初は先輩や上司の書き方例を参考にし、社内ルールに沿って合計欄を埋めるとよいでしょう。
(5) 受領印・署名欄の処理と伝票の受け渡し
納品書伝票の中には、相手先の受領印欄や、自社発行者の署名欄が設けられているものがあります。これらがある場合の処理について説明します。
自社発行者欄(担当者署名欄)
納品書の下部などに自社の担当者名を書く欄や、発行責任者の署名欄がある場合、そこに自分の名前を書きます。また社判とは別に担当者印(個人の認印など)を押印する欄があれば押します。
手書き納品書では必須ではありませんが、誰がこの納品書を作成したか明確にしておくことで、後日の問い合わせ対応がスムーズになります。
受領印欄
相手先にサインや印鑑をもらう欄です。品物を確かに受け取りました、という証拠として取引先に押印してもらうのが一般的です。受領印欄がある伝票の場合、納品時に相手担当者にお願いして社名印や担当印を押してもらいましょう。
3枚綴りの場合は、最低でも自社に戻す控えに印をもらうことをお勧めします。可能であれば相手先用の1枚にも同時に押印してもらうと、相手側の控えにも受領の証拠が残ります。
ノーカーボン紙であれば、最上紙に強めにハンコを押せば下の紙にも印影が映りますが、確実性を期すなら各枚に順番に押印してもらうとよいでしょう。
以上で納品書への記入は完了です。最後に、伝票の配布を行います。通常は、作成した納品書3枚のうち相手先用を商品とともに相手に渡し、自社控え(と作業用)は回収して社内に持ち帰ります。
もし3枚全てに受領印をもらっている場合は、相手先には受領印が押されたものを渡し、自社控えとしても受領印付きのものを確保できます。
受領印が相手先用に無い場合でも、お客様には納品内容を確認した控えが手元に残ることになるため、渡し忘れがないよう確実に手渡しましょう。
社内に持ち帰った伝票(控えと作業用)は、所定の部署へ回します。例えば経理部門へ控えを提出し、倉庫や営業部では作業用を参考に在庫引当や売上記録を更新する、といった流れです。
複写式伝票は文字が消えにくいとはいえ、長期間放置すると紙が劣化することもありますので、必要な情報は早めにシステムに入力したり、電子データ化したりしておくと安心です。
以上が手書きによる3枚綴り納品書の記入手順です。次に、実際にどのように書けば良いのか具体例をテキストで示します。
納品書3枚綴りの記入例(テキスト形式)
ここでは、架空の会社同士の取引を例に、納品書3枚綴りの書き方をテキストで示します。実際の伝票では表形式になっていますが、ここでは分かりやすいよう文字だけで配置します。
例えば、A社がB社に対してオフィス用品を納品したケースです。
納品書 No. 000123 発行日: 2025年4月22日
納品先: B株式会社 購買部 御中
納品元: A株式会社
〒123-4567 東京都千代田区〇〇1-2-3
TEL:03-xxxx-xxxx 担当:山田太郎
品名 数量 単価 金額
———————————————
コピー用紙 A4 5箱 ¥1,200 ¥6,000
ボールペン 黒 10本 ¥100 ¥1,000
クリップ(大) 3箱 ¥300 ¥900
———————————————
小計 ¥7,900
消費税(10%) ¥790
合計金額(税込) ¥8,690
備考:ご注文番号1234の品を納品いたしました。
受領印:________
記入例の解説: 上記の例では、納品書番号・日付、双方の会社情報、納品した品目と数量、金額、そして合計金額まで記載しています。備考欄には相手からの注文番号を記載しました。
また、一番下に受領印欄を設け、納品先に押印をもらう想定です。実際の伝票用紙では、社名や住所は予め印刷しておき、担当者名だけ手書きするケースも多いでしょう。品名や数量は相手先にも伝わるよう略さず書きました。
例えば「コピー用紙 A4」は何を指すか明確ですし、「ボールペン 黒」は色まで示しています。
このように具体的に書けば、納品先が見ても内容をすぐ理解できる納品書となります。金額欄は端数なく計算されていますが、もし端数処理があればその処理方法に従います。消費税率も適用当時のものを明記しました。
受領印欄は、納品時にB株式会社の担当者に押してもらうためのスペースです。実際の3枚綴り伝票でも、1枚目・3枚目など社内控えに受領印が残るようにしておくと安心です。
納品書でよくあるミスとその対策
経理初心者が納品書3枚綴りを書いていて陥りやすいミスと、その防止策についてまとめます。複写式の納品書は便利な反面、いくつか注意点を怠るとミスにつながります。以下に代表的な例を挙げます。
ミス1: 下のコピーが読めない(筆圧不足)
症状: 1枚目ははっきり読めるが、2枚目・3枚目の字が薄くて読めない。特に漢字や数字の画数が多い箇所が判別しづらい。
原因: ボールペンの筆圧が足りない、またはペン先が細すぎて複写に向かない。記入時に下敷きを入れ忘れて、筆圧が分散した可能性も。
対策: 適度な筆圧で書くことが肝心です。力強く、しかし文字が潰れない程度の力でペンを走らせましょう。特に数字や「¥」マークなどは線が細いと読みにくいため、太めのペンを使うのも手です。
記入後は必ず3枚目まで確認し、薄い箇所があれば上からなぞって補強します。下敷き(ボール紙)は必ず使用し、書いているセット以外の伝票に筆圧が移らないようにすることも大切です。
ミス2: 複写のズレ(位置ずれによる読みにくさ)
症状: 1枚目では枠内にきちんと書いたはずが、2枚目以降では枠からはみ出した位置に文字が写っている。行と行がずれて見える。
原因: 用紙を重ねる際にズレたまま書き始めてしまった。書いている途中で用紙が滑った。クリップなどで固定していなかった。
対策: 記入前に3枚の用紙が完全に重なり合っているかを確認しましょう。伝票の左上や角をきちんと揃えてから書き始めます。記入中にズレていないか気になったら途中で確認し、必要なら一旦ペンを止めて用紙を揃え直します。
冊子綴りの場合はミシン目からきれいに切り離し、平らな場所で書くとズレにくくなります。どうしてもズレる場合、紙をテープやクリップで仮留めして書く方法も有効です。
ミス3: 金額計算の誤り
症状: 書き終えて相手に渡した後で、「合計金額が間違っていた」「消費税の計算を誤った」と気づく。または相手から指摘される。
原因: 手計算ミス、電卓の打ち間違い、端数処理の失念。複写とは直接関係ありませんが、手書きで焦って計算するとミスしやすい部分です。
対策: 再計算の徹底です。できれば計算は2回以上行い、別の人にもチェックしてもらうと安心です。特に税込金額は内税・外税の区別や端数処理ルールを社内で統一しておきましょう。
万一記入後に誤りに気づいた場合、二重線で訂正し訂正印を押す方法もありますが、相手先控えも含め訂正が及ぶため、できれば新たに伝票を書き直す方が確実です。
書き直した場合は古い伝票に「作成ミスにより破棄」とメモして社内保存するかシュレッダーにかけ、間違った伝票が紛れないようにします。
ミス4: 受領印のもらい忘れ
症状: 後日になって「相手から納品書にサインもらってない!」と気づく。特に納品先で伝票だけ渡して印をもらわず帰社した場合に起こる。
原因: 納品時の忙しさや、担当者不在でそのままになってしまったなど。新人のうちは受領印をもらう習慣を忘れがちです。
対策: 納品時のチェックリストを作り、受領印は必ずもらう項目としておきましょう。例えば納品物の引き渡し、納品書の説明、受領印の依頼、という手順を自分の中でルーティン化します。
もし先方担当者が不在で印をもらえなかった場合は、後日郵送で受領サインをもらう・メール等で受領確認をもらうなど、何らかの形で証跡を残すようにします。受領印欄が無い伝票でも、氏名の横にサインをもらうなどしておくと安心です。
社内にも「印未済」のままファイルしないよう、上司に報告して対応策を仰ぐなど慎重に対処しましょう。
ミス5: 伝票の渡し間違い・保管ミス
症状: 本来相手に渡すべき用紙を間違って自社に持ち帰ってしまった、または控えを渡してしまい社内に残っていない。あるいは社内で控えを紛失した。
原因: 3枚の区別をつけずに配布した、色やラベルの認識違い。保管段階でファイルせず机に放置して紛失。
対策: 伝票の枚ごとの役割を明確に認識しましょう。伝票に色違いや「控」「御客様用」等の表示がある場合、それを頼りに正しい相手に渡します。
もし表示がない場合でも、事前に「一番上を○○用、二番目を○○用…」と自社ルールを決めておき、その通りに配布します。配布後すぐに自社控えをファイルに綴じるか所定の箱に入れる習慣をつけ、持ち帰り忘れや紛失を防止します。
特に外出先で記入した場合、会社に戻る前に控え類をカバンにしまい忘れないよう注意しましょう。
以上のように、納品書3枚綴りでは複写ゆえの特有のミスも起こり得ますが、事前に気をつければ防げるものばかりです。
大事なのは、「書いたつもり」で終わらせず、複写結果を確認するクセをつけること、そして基本的な事項(計算・印など)をリスト化して漏れをなくすことです。慣れないうちは一つひとつ確認しながら丁寧に進め、徐々にスムーズに書けるようにしていきましょう。
手書きで納品書を書く際に気をつけるポイント(筆圧・カーボンなど)
手書きで複写式の納品書を書く場合、筆記用具の使い方や用紙の取り扱いで留意すべきことがあります。ここでは筆圧やカーボン紙等、物理的なポイントに絞って解説します。
筆圧と筆記具の選択
前述した通り、筆圧は複写の生命線です。適切な筆圧とは、下の3枚目まで読める濃さが出る力加減です。強く押しすぎると上の紙が破れたり文字が潰れたりするので注意しましょう。
理想的には、硬めの下敷きの上で、少しペン先が紙に食い込む程度の力で書くと綺麗に写ります。筆記具は油性ボールペンが最適です。0.5mm~1.0mm程度のボール径で、自分が書きやすい太さを選びます。
万年筆やゲルインクペンはインクが紙に染み込みすぎたり乾きにくかったりするため不向きです。また、鉛筆やシャープペンは線が細く薄くなるので複写には適しません。消えやすいフリクションペンも論外です。
ボールペンで書くとどうしても力が要るので、指が痛くなることもあります。長時間連続で何枚も書く場合は、途中で指を休めるか持ちやすいペングリップを使うなど工夫しましょう。
カーボン紙の取り扱い
最近の納品書はノーカーボン(感圧紙)が主流ですが、もしカーボン紙を使うタイプの場合、その扱いにも注意が必要です。カーボン紙は黒(または青)い面がインク代わりで、筆圧でその顔料が下の紙に付着して複写されます。
挟む順序を間違えると何も写らなかったり、汚れたりします。正しい使い方は、カーボン面を下に向けて上の紙との間に挟むことです。例えば1枚目と2枚目の間に1枚、2枚目と3枚目の間に1枚、計2枚のカーボン紙が必要です。
書き終わったらカーボン紙は外して、手や他の紙を汚さないようにすぐ保管しましょう。うっかりカーボン紙を入れ忘れて書いてしまうと、当然ですが下の用紙は空白のままです。
このミスは書いている途中では気付きにくいので、書き始める前に必ずカーボン紙を挟んだか確認します。ノーカーボン用紙の場合はこうした手間は省けますが、逆に経年で複写文字が薄くなることもあるので、保存状態(高温多湿を避ける等)に気をつけましょう。
文字の書き方と配置: 手書きですと、どうしても文字が揃わず見づらくなりがちです。枠線に沿ってまっすぐ書くことを意識しましょう。定規を当てて書く必要はありませんが、伝票の印刷罫線をガイドにして丁寧に書くと、複写でもブレが少なく綺麗に見えます。
また、一文字一文字をはっきりと書くことで、複写された文字も判読しやすくなります。特に数字の「1」と「7」、「0」と「6」などは手書きだと紛らわしい時があるので、はっきり区別できるよう書き分けます(「7」に横線を引くなど自分なりの工夫もOKです)。
カーボン紙使用時は、書いている途中で紙をずらすと字が二重になってしまうので、動かないよう注意してください。
用紙の取り扱い(保管と劣化防止)
複写式伝票は直射日光や湿気に弱いものがあります。手書きでせっかく書いても、保管中に文字が薄くなったり、紙同士が貼り付いたりすると困ります。例えばノーカーボン紙は長期間紫外線に当たると発色が薄れる場合があります。
また、カーボン紙を挟んだまま重ねて保管すると、あとで取り出したとき手や書類が真っ黒になることもあります。書き終えた伝票はすぐにカーボン紙を抜き取り、伝票だけを重ねて保管します。
高温になる車内などに長時間放置しないようにし、できればファイルに入れて棚にしまうなど環境を整えましょう。筆圧でミシン目部分が弱くなっていることもあるので、取り扱い時にうっかり破れてしまわないよう丁寧に扱います。
訂正や書き直しのコツ
手書きゆえに書き間違いも起こり得ます。その際の対処ですが、複写用紙では修正テープは使わない方が無難です(下の紙に転写されないですし、剥がれやすいため)。
軽微な誤字で相手先控えに影響がない場合、二重線で取り消して横に正しい内容を書き、訂正印を訂正箇所付近に押します。3枚とも同じ箇所を訂正し、それぞれに印を押すのを忘れずに。
ただ、金額など重要部分のミスや大きな書き間違いの場合は、伝票全体を書き直す方が確実です。新しい3枚綴りを用意して最初から書き直し、古いものは破棄します。このとき、伝票番号の採番をどうするか社内ルールを確認しましょう。
同じ番号で書き直すのか、破棄したものは欠番扱いにするのか決めておくと混乱を防げます。
以上が、手書きで納品書3枚綴りを書く際に留意すべきポイントです。丁寧な筆記と的確な用紙管理ができれば、手書きでも十分に実務に耐える納品書が作成できます。
最初は時間がかかっても、慣れればスムーズに書けるようになりますので、一つひとつのコツを押さえていきましょう。
3枚綴り納品書を活用した業務効率化のポイント
最後に、納品書3枚綴りを業務効率化につなげる活用方法や工夫について紹介します。手書きで納品書を書いている中小企業でも、ちょっとした改善で作業時間短縮やミス削減が期待できます。
会社情報や定型文のプレ印刷
毎回手書きしている内容のうち、不変の情報(社名・住所・電話番号・FAX番号・メールアドレス等)や定型の挨拶文などは、あらかじめ伝票に印刷してあるものを利用すると便利です。
市販の納品書伝票でも、社判を押す欄だけでなく社名や所在地を印刷できるよう注文できる場合があります(印刷伝票の発注)。社名スタンプを押すよりも見栄えが良く、毎回書く手間も省けます。
また、「いつもありがとうございます」「ご不明点がございましたらご連絡ください」などの定型メッセージを予め印刷しておく会社もあります。これにより、一言添える手間を減らせます。
複写式伝票の選び方
業務効率化の第一歩は、適切な伝票を選ぶことです。納品書の複写枚数は必要最小限にしましょう。本当に3枚必要か、2枚で足りるのか、あるいは4枚必要かは業態によって違います。
不要なコピーがあると管理の手間だけ増えますし、逆に足りないと別途コピーを取る羽目になります。例えば、社内控えと取引先用の2枚複写にして、受領確認は社内控えで行う運用にすれば2枚で済むこともあります。
逆に、請求書付きの納品書伝票を使えば、納品時にそのまま請求書も発行できるため、後日の請求書作成を簡略化できます。また受領書付きの納品書であれば、受領書を切り離して相手に渡し、残りを控えにすることで確実に証明を残せます。
自社のフローに合った伝票を選ぶことで、二度手間を防ぎましょう。
連続伝票や電算対応伝票の活用
手書きではなく、プリンタで印字できる複写伝票も市販されています。ドットプリンタ(インパクトプリンタ)や専用伝票発行機にセットし、システムからデータを印刷する方法です。
これなら手で書く必要がなく、大量の納品書発行業務がある場合に大幅な効率化となります。中小企業でも、請求書発行ソフトなどから納品書を印刷するケースが増えています。
ただし専用プリンタが必要だったり、伝票サイズを合わせる必要があるため初期準備は必要です。頻繁に納品書を発行する業態であれば、検討する価値があります。
連続帳票(ドットプリンタ用のつながった伝票)なら、一度に数十枚分を印刷でき、人手によるミスも減らせます。手書きにこだわらず、業務量に応じて機械化も取り入れましょう。
テンプレートの活用と記入漏れ防止
手書きであっても、テンプレートやチェックリストを活用することで効率と正確性が向上します。
例えば、納品書を書く前に必要事項を整理する「納品書記入チェックシート」を作成し、「日付記入OK、番号OK、宛先OK…」と確認項目を作っておけば、書き漏らしを防ぎつつスピーディーに書けます。
また、よく出る商品が決まっているなら品名のリストを用意しておき、正しい表記を写すだけにすれば書き間違いが減ります。社判も、毎回押すのではなく最初から印影を印刷した伝票を使えば押印の手間が省けます(もっとも、正式な印鑑でないと困る場合は別途押す必要があります)。
小さな工夫の積み重ねですが、これらを実践することでトータルの作業時間を短縮でき、余裕を持って内容確認に時間を充てることができます。
ファイリングと情報共有の効率化
3枚綴りの納品書は、各部署が情報を共有するためのツールでもあります。
効率的なファイリングで、後から探しやすくすることも業務効率化の一環です。例えば、控えの納品書にはすべて受注番号や案件名をメモしておくと、後日参照する際に「あの案件の納品書はどれか」がすぐ分かります。
ファイルも年月別・得意先別など見やすい分類を心がけます。また、納品書の情報をエクセル管理表や会計ソフトに即座に入力しておけば、紙を探さなくてもデータ検索で内容を確認できます。
紙の伝票は原本保存しつつ、社内ではクラウド上で情報共有する、といったハイブリッド運用も有効です。手書き伝票だからといって属人的に抱え込まず、誰でも閲覧・確認できる仕組みを作ることで、担当者が不在でも対応できる強い業務フローが作れるでしょう。
以上、納品書3枚綴りの書き方から活用方法まで幅広く説明しました。経理初心者や事務担当の方でも、本記事の内容を押さえれば納品書を正しく書き、管理することができるはずです。
最初は難しく感じるかもしれませんが、ポイントを理解して実践するうちに必ず慣れてきます。納品書は取引の信頼を支える大切な書類です。正確かつ効率的に扱えるようになれば、あなたの事務作業のスキルアップにも直結します。
ぜひ「納品書3枚綴りの書き方」をマスターして、日々の業務に役立ててください。
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