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記帳代行の相場を完全ガイド!料金体系・選び方・注意点を解説

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記帳代行 相場

面倒な経理作業から解放され、事業成長に集中する。そのための「適正価格」が、この記事でわかります。

毎月の領収書整理や会計ソフト入力といった、時間のかかる記帳業務。

もし、この作業から解放され、その時間をすべて事業の成長、つまり売上を伸ばすための活動に集中できるとしたら、あなたのビジネスはどれほど加速するでしょうか。記帳代行サービスは、その未来を実現するための強力な一手です。

この記事を最後まで読めば、あなたは記帳代行の相場を正確に理解し、自社の規模や状況に最適な依頼先と、その適正な費用感を具体的に把握できます。もう「料金が高いのでは?」「どこに頼めばいいのかわからない」といった漠然とした不安に悩むことはありません。

「専門知識がないと、良い業者を選べないのでは?」と心配する必要はありません。

本記事では、料金シミュレーションや、専門家でなくても実践できる優良な依頼先を見極めるための具体的なチェックポイントを解説します。この手順に沿うだけで、誰でも安心して、コストパフォーマンスに優れたパートナーを見つけることが可能です。

記帳代行の料金相場は依頼先と仕訳数で決まる

記帳代行の「相場」は、単一の金額ではありません。料金は主に2つの要素、「誰に依頼するか(依頼先)」と「取引の量(仕訳数)」によって決まります。この2つの軸を理解することが、自社にとっての適正価格を知るための第一歩です。まずは、依頼先ごとの料金と特徴の全体像を把握しましょう。

記帳代行の料金相場 早見表

依頼先月額料金の目安1仕訳あたりの単価目安特徴
税理士事務所30,000円~50,000円100円~最も信頼性が高く、税務相談から決算申告まで一括依頼が可能
記帳代行会社10,000円~30,000円100円前後記帳業務に特化しているため効率的で、コストと専門性のバランスに優れる
フリーランス5,000円~15,000円50円~80円最も安価だが品質や対応のばらつきが大きく、依頼先の見極めが重要

この表が示すように、相場は依頼先の専門性や提供するサービスの範囲に応じて変動します。税理士は高品質なサービスと安心感を提供しますが費用は高めです。一方でフリーランスは最も安価ですが、品質管理は自己責任となります。記帳代行会社はその中間に位置し、多くの事業者にとってバランスの取れた選択肢となり得ます。

依頼先別の記帳代行の料金相場とメリット・デメリット

料金の背景には、それぞれの依頼先が提供する価値があります。なぜ価格差が生まれるのか、そのメリットとデメリットを深く理解することで、表面的な金額に惑わされずに最適なパートナーを選ぶことができます。

税理士事務所

税理士事務所への依頼は、単なる記帳作業のアウトソーシング以上の意味を持ちます。高品質かつ高信頼性を誇りますが、その分費用は高めになる傾向があります。

法人の場合で月額30,000円から50,000円程度、個人事業主で月額10,000円から30,000円程度が一般的な料金相場です。多くの場合、記帳代行は税務顧問契約の一部として提供されます。

税理士に依頼する大きなメリットは、ワンストップでの対応力にあります。記帳業務だけでなく、確定申告や年末調整、税務相談といった税理士の独占業務まで一括で依頼できます。これにより、経理・税務に関する窓口を一本化でき、非常に効率的です。

また、税の専門家として、法改正やインボイス制度などにも的確に対応した、品質の高い帳簿作成が期待でき、税務調査の際にも大きな安心材料となります。さらに、作成された財務諸表をもとに、具体的な節税対策や資金繰り改善など、経営に直結する戦略的なアドバイスを受けられる可能性もあります。

一方でデメリットとしては、やはり費用が高くなる点が挙げられます。高い専門性と幅広いサービス範囲ゆえに、3つの選択肢の中では最も費用が高くなる傾向があります。また、顧問契約は年単位が基本であり、契約期間の途中で解約することが難しい場合がある点も考慮すべきでしょう。

税理士に支払う高い費用は、単なるデータ入力作業への対価ではありません。それは、正確性への保険料であり、法的に保護された専門的な税務アドバイスへのアクセス料と考えるべきです。

特に、節税による効果を考慮すると、支払う顧問料を上回る経済的メリットが生まれることも少なくありません。コストを「経費」ではなく「投資」と捉えられるかどうかが、税理士を選ぶ上での重要な視点です。

記帳代行会社

記帳代行を専門とする会社は、税理士とフリーランスの間に位置する、専門性とコストのバランスが取れた選択肢です。

料金相場は月額10,000円から30,000円程度、または1仕訳あたり100円前後が目安となります。

記帳代行会社を利用するメリットは、特化した業務効率性にあります。記帳業務に特化しているため、業務フローが最適化されており、効率的でスピーディーなサービス提供が期待できます。

また、税理士よりも安価でありながら、フリーランスに比べて組織的な品質管理やセキュリティ体制が整っているため、安心して依頼できる点も魅力です。企業のニーズに応じた多様なオプションサービスが用意されていることも多く、柔軟な対応が可能です。

しかし、サービス範囲が限定されるというデメリットも存在します。税理士が在籍または提携していない限り、税務相談や税務申告の代行は法律上できません。そのため、決算申告は別途、税理士に依頼する必要があります。

記帳代行会社の存在は、市場の明確なニーズを反映しています。例えば、取引量は多いものの税務的な論点は少ないため、日々の記帳を専門家に任せたいが、税理士の高い顧問料を払うほどではない、と考える企業に最適です。

また、フリーランス個人に任せるリスクは避けたいというニーズにも応えます。これは、特定の課題に対する「必要十分」なプロフェッショナルサービスを提供する、典型的な市場の分業化の形です。

フリーランス

個人で活動するフリーランスへの依頼は、コストを最優先する場合の選択肢となります。品質と信頼性の見極めが重要です。

料金相場は1仕訳あたり50円から80円程度と、最も安価に設定されています。

フリーランスに依頼する最大のメリットは、価格の安さです。予算が非常に限られているスタートアップや個人事業主にとって、この低コストは大きな魅力となるでしょう。

しかし、その安さの裏にはいくつかのデメリットが潜んでいます。まず、品質のばらつきが非常に大きい点が挙げられます。スキル、経験、信頼性、業務の正確性は個人差が激しく、質の高いサービスを受けられる保証はありません。

また、個人で活動しているため、急な病気や廃業などで業務が滞るリスクや、対応できる業務量に限界があるというキャパシティの問題もあります。さらに、法人ほどの強固な情報管理体制が期待できない場合があり、情報漏洩のリスクを慎重に評価する必要があります。

フリーランスを選ぶことは、コスト削減というリターンを追求する一方で、品質や継続性に関するリスクを自ら引き受ける戦略です。

低価格の裏には、本来サービス提供会社が担うべき品質管理やリスク管理を、依頼者自身が行うという「見えないコスト」が存在します。依頼する場合は、過去の実績やコミュニケーション能力などを徹底的に見極めるプロセスが不可欠です。

料金体系別の比較|仕訳単価制と月額固定制

料金体系別の比較|仕訳単価制と月額固定制

依頼先と合わせて理解すべきもう一つの軸が、料金の計算方法です。自社の取引量の特性に合わせて最適なプランを選ぶことで、無駄なコストを削減できます。

仕訳単価制(従量課金制)

仕訳単価制は、取引一件ごとに料金が発生する、シンプルで分かりやすい料金体系です。

具体的には、1つの取引記録(仕訳)あたり50円から100円といった単価で料金が計算されます。「仕訳数」は専門用語で難しく聞こえるかもしれませんが、実務上は「領収書の枚数+預金通帳の取引行数+クレジットカード明細の行数」の合計がおおよその目安となります。この計算方法を知っておけば、自社のコストを大まかに予測できます。

この料金体系は、起業したばかりで取引が少ない事業者や、月ごとに取引量の変動が大きい事業者に最適です。また、実際に行った作業分だけを支払いたいと考える合理的な事業者にも向いています。

このモデルは、経理の専門家でない事業主にとって「作業量に応じた支払い」という感覚が直感的で分かりやすく、公平に感じられるため人気があります。自社の通帳や領収書の束を見ればおおよそのコストが把握できるため、費用管理がしやすいという手軽さが、サービス利用のハードルを下げています。

月額固定制

月額固定制は、毎月決まった料金を支払う、予算管理がしやすい料金体系です。

「月額10,000円で100仕訳まで」のように、一定の仕訳数を含んだ月額料金が設定されています。この形式は、毎月の取引量が多く、かつ安定している事業者に適しています。また、経理コストを毎月固定し、予算計画を立てやすくしたいと考える事業者にも最適なプランです。

事業が成長し取引量が増えてくると、一件一件の仕訳を数えてコストを計算するのは煩雑になります。経営者の関心は、取引単位のコスト管理から、予測可能な月次運営コストの管理へと移行します。

月額固定制は、このようなニーズに応え、財務計画をシンプルにする価値を提供します。これは、サービス提供者との関係がより安定的、継続的になった段階で選ばれることが多い料金体系です。

料金シミュレーション|事業規模別の年間費用

ここまでの情報を基に、具体的な事業モデルごとの年間費用をシミュレーションしてみましょう。これにより、自社の状況に近い費用感をより現実的に掴むことができます。

事業規模別・依頼先別 記帳代行の年間費用シミュレーション

事業モデル月間仕訳数の目安フリーランス記帳代行会社税理士事務所
個人事業主 (フリーランス・小規模店舗)50仕訳月額: 3,500円
年間: 42,000円
月額: 9,000円
年間: 108,000円
月額: 15,000円
年間: 180,000円
小規模法人 (従業員〜5名)150仕訳月額: 10,500円
年間: 126,000円
月額: 15,000円
年間: 180,000円
月額: 30,000円
年間: 360,000円
成長期の中小法人 (従業員〜20名)300仕訳月額: 21,000円
年間: 252,000円
月額: 25,000円
年間: 300,000円
月額: 40,000円
年間: 480,000円

注意点|決算申告料を含めた「年間総コスト」での比較

このシミュレーションを見る際に、非常に重要な点があります。フリーランスや記帳代行会社に依頼した場合、上記の費用に加えて、年度末に別途「決算申告料」が発生します。この料金は、税理士に依頼する必要があり、法人の場合で15万円から25万円程度が相場です。

一方で、税理士事務所の月額顧問料には、この決算申告料が含まれている場合が多いです。例えば、上記の小規模法人の例で比較してみましょう。記帳代行会社に依頼した場合、年間の記帳代行料180,000円に決算申告料200,000円を加えると、年間総コストは380,000円となります。対して、税理士事務所の場合は年間総コストが360,000円です。

このように、月額料金だけを見ると税理士事務所が高く見えますが、年間で支払う総額(トータルコスト)で比較すると、税理士事務所の方がかえって割安になるケースがあるのです。依頼先を検討する際は、必ずこの「年間総コスト」の視点を持つことが、賢い選択に繋がります。

依頼前に知るべき記帳代行のサービス内容

「記帳代行を頼む」と言っても、そのサービス範囲は業者によって様々です。どこまでが基本サービスで、何が別料金なのかを正確に理解しておくことが、契約後の「こんなはずではなかった」というミスマッチを防ぎます。

基本的なサービス範囲

一般的に、「記帳代行」の基本サービスには、会計ソフトへの入力作業が含まれます。これは預かった領収書、請求書、通帳コピーなどの資料を基に、会計ソフトへ取引データを入力する業務です。

また、月次などの単位で、貸借対照表(B/S)や損益計算書(P/L)といった試算表を作成し、報告する業務も基本サービスに含まれます。さらに、総勘定元帳や仕訳帳など、税務申告の根拠となる法定帳簿の作成も行います。

典型的な業務フローは、依頼者が必要書類(領収書や通帳コピーなど)を郵送やデータで送付し、代行業者がそれを基に会計処理を行い、完成した試算表などのレポートを納品するという流れになります。

「経理代行」との違い

「記帳代行」と混同されやすい言葉に「経理代行」があります。この2つの最大の違いは業務範囲です。記帳代行は、経理代行という大きな枠組みの中の一部と理解してください。

通常の記帳代行には含まれず、経理代行に含まれる業務としては、請求書の発行や取引先への支払業務(振込代行)が挙げられます。また、従業員の給与計算や、売掛金・買掛金の管理(入金確認や支払期日の管理)なども経理代行の範疇です。

もしあなたが、経理業務を「丸ごと(丸投げ)」お願いしたいと考えているなら、記帳代行サービスだけでは不十分です。その場合は、より広範な業務をカバーする「経理代行」サービスを検討するか、記帳代行に後述のオプションを追加する必要があります。

あると便利なオプションサービス

多くの記帳代行業者では、基本サービスに加えて様々なオプションが用意されています。これらを組み合わせることで、自社のニーズに合わせたカスタマイズが可能です。

例えば、預かった領収書や請求書を規定に沿って台紙に貼ったり、ファイリングしたりする「証憑ファイリング」サービスがあります。

通常よりも短い納期で月次レポートなどを納品してもらう「特急対応(スピード納品)」や、事業部や店舗ごとに損益を分けて管理したい場合に利用する「部門別会計」も便利なオプションです。また、将来の資金の流れを予測・管理するための「資金繰り表の作成」を依頼することもできます。

これらのオプションを理解することで、漠然とした「丸投げしたい」という願望を具体的な業務の組み合わせに分解し、本当に必要なサービスだけを適切な価格で依頼することができます。

記帳代行を導入するメリットとデメリット

記帳代行の導入は多くのメリットをもたらしますが、一方で注意すべき点も存在します。両面を理解し、対策を講じることで、その効果を最大化できます。

主なメリット

記帳代行を導入する最も大きなメリットは、本業へ集中できることです。経理作業に費やしていた時間を解放し、売上向上やサービス開発といった本来のコア業務にリソースを割くことができます。また、コスト削減の効果も期待できます。

経理担当者を一人雇用する場合、給与だけでなく社会保険料や福利厚生費、採用・教育コストもかかりますが、記帳代行を利用すれば、多くの場合それよりも低いコストで専門的な業務を委託できます。

専門家が作業を行うため、入力ミスや勘定科目の誤りが減り、帳簿の正確性が向上することも大きな利点です。インボイス制度や電子帳簿保存法といった複雑な法改正にも対応してもらえるため安心です。

さらに、経理業務を社内の特定の担当者一人に任せていると業務がブラックボックス化し、不正のリスクが高まりますが、外部の第三者が関与することで業務の透明性が増し、内部統制の強化にも繋がります。

注意すべきデメリットと対策

もちろん、外部に委託するための費用が発生するというデメリットはあります。ただし、これは自社で対応した場合の人件費や、ミスが発覚した際のリスクと比較して総合的に判断すべきです。

また、書類を送付してからレポートを受け取るまでに時間がかかり、リアルタイムで自社の経営状況を把握しにくいという課題も指摘されます。しかしこのデメリットは、クラウド会計ソフト(INVOYなど)に対応した業者を選ぶことで、ほぼ解決できます。クラウド上でデータを共有するため、依頼者もいつでも最新の経営数値を確認することが可能です。

業務を丸投げしてしまうと、経理や会計に関する知識や経験が社内に蓄積されないという懸念もあります。対策としては、完全に任せきりにするのではなく、納品されたレポートを必ず確認し、内容について質問するなど、業者と定期的にコミュニケーションを取る機会を設けることが有効です。

最後に、会社の財務情報という機密データを外部に渡すため、情報漏洩のリスクはゼロではありません。このリスクに対しては、契約前に業者のセキュリティ体制を徹底的に確認することが重要です。具体的なチェックポイントは次章で解説します。

失敗しない記帳代行サービスの選び方5つのポイント

失敗しない記帳代行サービスの選び方5つのポイント

数あるサービスの中から、自社に最適なパートナーを見つけるためには、体系的な視点での比較検討が不可欠です。以下の5つのポイントをチェックリストとして活用してください。

ポイント1:サービス範囲と料金の明確さ

契約前に、基本料金でどこまでの業務が含まれるのか、そしてどのような場合にオプション料金が発生するのかを、書面で明確に確認しましょう。料金体系が複雑で分かりにくい業者は避け、詳細な見積書の提出を依頼することが重要です。

ポイント2:セキュリティ体制の信頼性

財務情報は企業の最重要機密の一つです。業者の情報管理体制が信頼できるかを確認することは、価格以上に重要です。

具体的には、プライバシーマークやISMS(ISO27001)といった第三者認証を取得しているか、秘密保持契約(NDA)を締結できるか、といった点を確認しましょう。また、データのバックアップ体制やアクセス管理がどのようになっているかも重要な確認項目です。

ポイント3:クラウド会計ソフトへの対応

2024年現在、これは業務効率化のための必須条件と言えます。クラウド会計ソフト(freee、マネーフォワード クラウドなど)は、前述の「タイムラグ問題」を解決するだけでなく、データの自動取り込みや自動仕訳によって業務を大幅に効率化します。

依頼先がクラウド会計ソフトに対応しているか、また自社が利用したいソフト(または導入を検討しているソフト)を使えるかを確認しましょう。クラウドに対応していない業者は、非効率な業務運営を行っている可能性が高いと考えられます。

ポイント4:コミュニケーションとサポート体制

業務を進める上で、円滑なコミュニケーションは不可欠です。問い合わせへの返信は迅速か、説明は分かりやすいかなどを確認しましょう。電話、メール、チャットなど、自社が使いやすい連絡手段が用意されているかもポイントです。また、専任の担当者がつくのか、チームで対応するのかといった体制も、安定したサービスを受ける上で重要になります。

ポイント5:専門性と実績

業者のウェブサイトなどで、これまでの実績や得意な業種などを確認しましょう。特に、自社と同じ業界での実績が豊富であれば、特有の会計処理にもスムーズに対応してもらえる可能性が高まります。

また、単なる入力作業だけでなく、正確性を担保するために、日商簿記2級以上の資格保有者や税理士が業務を監督する体制があるかどうかも、品質を判断する上での一つの基準となります。

税理士法違反にならないための注意点

記帳代行を依頼する上で、経営者が必ず知っておかなければならないのが「税理士法」に関するルールです。知らなかったでは済まされない法的なリスクを避けるため、この境界線を正確に理解してください。

記帳代行そのものは資格不要

まず、前提として、領収書などの資料に基づいて会計ソフトに入力する「記帳」という作業自体は、税理士の資格がなくても行うことができます。そのため、税理士資格のない記帳代行会社やフリーランスがこのサービスを提供しても、それ自体は法律違反にはなりません。

「税理士の独占業務」の境界線

問題となるのは、記帳業務の範囲を超えた場合です。法律(税理士法)により、特定の3つの業務は、国家資格を持つ税理士にしか行うことが許されていません。これを「税理士の独占業務」と呼びます。

第一に、納税者に代わって税務署への申告や申請、調査の立会いなどを行う「税務代理」。第二に、確定申告書、法人税申告書、消費税申告書など、税務署に提出する書類を作成する「税務書類の作成」。そして第三に、具体的な取引に関して「この経費は認められるか」「どうすれば節税になるか」といった税金の計算に関する相談に応じる「税務相談」です。

安価な記帳代行業者の中には、サービスの一環として「確定申告も手伝います」といった提案をしてくるケースがあります。これは明確な法律違反です。万が一、その申告内容に誤りがあった場合、最終的な責任を負うのは納税者であるあなた自身です。無資格の業者に税務業務を依頼することは、極めて高いリスクを伴う行為だと認識してください。

「提携税理士」という言葉への注意

一部の業者は「提携税理士がいるから安心」と謳っています。正当な提携関係を結んでいる場合もありますが、中には税理士が名義を貸しているだけで、実質的な業務に関与していない「名義貸し」という違法行為の隠れ蓑になっているケースも存在します。

このリスクを見抜くために、契約前に具体的な質問を投げかけてみることが有効です。「税務申告をお願いする場合、その税理士の方と直接契約を結ぶ形になりますか?」や、「最終的に税務署へ提出する申告書には、その税理士の方の署名・捺印がされますか?」といった質問です。

さらに、「申告内容について、責任者である税理士の方と直接お話しすることは可能ですか?」と確認するのも良いでしょう。

これらの質問に対して、回答が曖昧だったり、はぐらかされたりした場合は、非常に危険なサインです。その業者との契約は見送るべきでしょう。

まとめ

記帳代行サービスの選択は、単に面倒な作業を外注するだけの行為ではありません。それは、事業成長を加速させるための戦略的なパートナー選びです。最後に、最適なパートナーを見つけるための要点を再確認します。

記帳代行の「相場」は、依頼先の種類(税理士、代行会社、フリーランス)と取引量(仕訳数)で決まります。月額料金だけでなく、決算申告料を含めた年間総コストで比較することが賢明です。

まずは、自社のニーズを明確にしましょう。必要なのは単純なデータ入力(記帳代行)か、請求・支払まで含めたサポート(経理代行)か。税務相談や申告まで一括で任せたいのか。目的によって選ぶべき相手は変わります。

候補となる業者が見つかったら、本記事で紹介した「失敗しない選び方5つのポイント」(料金の明確さ、セキュリティ、クラウド対応、コミュニケーション、専門性)を使って、体系的に評価してください。

そして最も重要なこととして、税理士法という法律の境界線を絶対に越えないでください。税務申告や税務相談は、資格を持つ税理士にのみ依頼する。この原則を徹底することが、あなたの事業を法的なリスクから守ります。

適切なパートナーを見つけるために時間と労力を投資することは、あなた自身の最も貴重なリソースである「時間」を、事業の本質的な成長のために使うための投資です。この記事で得た知識を基に、ぜひあなたのビジネスを次のステージへと導く、信頼できるパートナーを見つけてください。

この記事の投稿者:

hasegawa

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