
請求書を発行する際の「印刷・押印・郵送」といった一連の作業から解放され、時間とコストを大幅に削減したいとお考えではありませんか。電子印鑑を導入すれば、請求書発行の全プロセスがパソコン上で完結し、業務効率は劇的に向上します。
この記事では、無料ツールを使った電子印鑑の具体的な作成方法から、WordやPDFへの正しい押印方法、さらには法的効力やセキュリティといった専門的な知識まで、網羅的に解説します。この記事を読めば、明日からでも自信を持って電子印鑑を活用できるようになるでしょう。
法律やセキュリティに関する懸念をお持ちの方もご安心ください。本記事では、一つひとつの項目を誰にでも理解できるように丁寧に解説します。あなたに最適な電子印鑑の選び方と使い方を、確実に身につけることが可能です。
目次
請求書に電子印鑑が求められる理由
電子印鑑の導入を検討するにあたり、まずその必要性とメリットを理解することが重要です。法的な義務からビジネス上の利点まで、電子印鑑が現代の業務において不可欠となりつつある背景を解説します。
法律上の義務ではなく商習慣として重要
まず理解しておくべき点は、法律上、請求書への押印は義務ではないということです。民法では、契約は当事者間の合意があれば成立するため、請求書に印鑑がなくともその効力に変わりはありません。
しかし、日本のビジネスシーンでは長年にわたり「押印された文書は正式なものである」という商習慣が根付いています。押印は、その請求書が企業によって正式に発行されたものであるという信頼性の証しとなり、取引先に安心感を与えます。
実際、企業によっては押印のない文書を正式なものと見なさないケースも存在するため、円滑な取引のためには押印が望ましい行為といえるでしょう。この慣習は電子化された請求書にも引き継がれており、電子印鑑を押印することが新たなビジネスマナーとなりつつあります。
電子印鑑がもたらす4つの大きなメリット
電子印鑑を導入することは、単に従来の印鑑をデジタルに置き換えるだけではありません。業務プロセス全体に大きな変革をもたらし、具体的なメリットを生み出します。
業務効率の劇的な向上
従来の請求書発行業務には、書類の印刷、押印、封入、郵送という一連の物理的な作業が伴いました。電子印鑑を導入すれば、これらのプロセスがすべてパソコン上で完結します。担当者は場所を選ばずに請求書を発行でき、作業時間を大幅に短縮することが可能です。
大幅なコスト削減
物理的な作業がなくなることで、さまざまなコストが削減されます。具体的には、紙代、プリンターのインク代、郵送費が不要になります。さらに、電子データで契約を交わす場合は、紙の契約書で必要だった収入印紙も不要となるため、印紙税の削減にも繋がります。
テレワークへの完全対応
電子印鑑の導入は、働き方改革やテレワークの推進に大きく貢献します。これまで課題とされてきた、押印のためだけに出社する「ハンコ出社」の必要がなくなります。これにより、従業員は場所にとらわれず、柔軟な働き方を実現できます。
ペーパーレス化と管理の容易さ
請求書を電子データとして扱うことで、ペーパーレス化が促進されます。物理的な保管スペースが不要になるだけでなく、過去の書類を探す際も、ファイル名や日付で簡単にデータ検索ができるようになります。書類管理の手間とコストも大幅に削減されるでしょう。
これらのメリットは、電子印鑑が単なるツールの電子化ではなく、請求業務全体のデジタルトランスフォーメーション(DX)における重要な第一歩であることを示しています。請求書という日常的な業務からDXを始めることで、企業全体の生産性向上へと繋がっていくのです。
電子印鑑の2つの種類と目的別の使い分け
電子印鑑について調べると、「法的効力がない」「偽造リスクがある」といった情報と、「実印と同等の効力がある」という情報が混在し、混乱することがあります。この混乱の根本的な原因は、市場に性質が全く異なる2種類の電子印鑑が存在することを理解していない点にあります。
この違いを明確に把握し、目的別に正しく使い分けることが、電子印鑑を安全かつ効果的に活用するための最も重要な鍵となります。
印影を画像化した電子印鑑(認印タイプ)
一つ目は、印影、つまりハンコの跡を画像データにしたものです。このタイプは、WordやExcelの図形機能、無料の作成ツール、あるいは手持ちの認印をスキャンする方法などで作成できます。
特徴として、誰でも簡単に作成でき、コピー&ペーストで容易に複製が可能です。そのため、その印鑑を「誰が押したのか」を技術的に証明する機能はありません。
法的な効力に関しては、本人証明ができないため証拠能力は低いとされています。これは、文房具店などで購入できる一般的な認印と同じ位置づけと考えると理解しやすいでしょう。
主な用途は、請求書や領収書、見積書、社内回覧といった日常的な書類です。取引先との信頼関係がすでに構築されており、厳密な法的効力が求められない場面での利用に適しています。
識別情報を持つ電子印鑑(実印タイプ)
二つ目は、印影の画像データに「誰が」「いつ」その文書に合意したのかという識別情報(本人認証情報や時刻情報)を記録したものです。この識別情報は、一般的に「電子署名」や「タイムスタンプ」といった技術によって付与されます。
このタイプの電子印鑑は、主に有料の電子契約サービスなどを通じて作成、利用されます。暗号技術に基づいているため、押印したのが本人であること(本人性)と、押印後に文書が改ざんされていないこと(非改ざん性)を証明できます。
法的効力の面では、電子署名法という法律に基づき、手書きの署名や実印の押印と同等の効力が認められます。そのため、契約書や合意書など、法的に重要な意味を持つ書類に使用されます。
請求書に利用する場合、基本的には前者の「印影を画像化した電子印鑑」で十分なケースがほとんどです。しかし、電子印鑑について正しく理解するためには、この2つの種類が存在することを常に念頭に置くことが重要です。この区別を理解することで、今後の情報を整理しやすくなり、自社の状況に最適な選択ができるようになります。
無料で電子印鑑を作成する3つの方法
請求書などの日常的な書類に使う「印影を画像化した電子印鑑」は、特別なソフトウェアがなくても無料で簡単に作成できます。ここでは、代表的な3つの作成方法を、それぞれの特徴とともに具体的に解説します。
Word・Excelの図形機能で作成する
ほとんどのビジネスPCにインストールされているWordやExcelを使えば、すぐに電子印鑑を作成できます。ツールの導入が不要で、デザインの微調整がしやすいのがメリットです。
角印の作成手順
まず、枠を作成します。「挿入」タブから「図形」を選び、「正方形/長方形」または「角丸四角形」を選択します。Shiftキーを押しながらドラッグすると、きれいな正方形を描くことができます。
次に書式を設定します。作成した図形を選択し、「図形の書式設定」から「図形の塗りつぶし」を「塗りつぶしなし」に、「図形の枠線」を「赤色」に設定します。枠線の太さは好みで調整してください。
続いて文字を入力します。「挿入」タブから「テキストボックス」または「ワードアート」を選び、会社名を入力します。フォントを印鑑らしい書体(例:楷書体)に変更し、文字色も赤色に設定します。
作成した枠の図形と文字のテキストボックスの両方を選択し、右クリックメニューから「グループ化」を選びます。これで、枠と文字が一体のオブジェクトとして扱えるようになります。
最後に、グループ化した印鑑の上で右クリックし、「図として保存」を選択します。ファイルの種類で「PNG形式」を選ぶことが重要です。PNG形式で保存することで、印鑑の背景が透明になり、書類の文字の上にきれいに重ねることができます。
丸印(認印)の作成手順
基本的な流れは角印の作成手順と同じです。枠を作成する際に、図形で「円/楕円」を選択します。この時もShiftキーを押しながらドラッグすると、完全な正円を描くことが可能です。
無料の電子印鑑作成ツールやサービスを利用する
WordやExcelでの自作が面倒な場合や、より手軽に作成したい場合には、無料のオンラインサービスやフリーソフトが便利です。
ブラウザ上で完結するサービスとしては、「マイスタンプメーカー」や「くいっくはんこ」、「はんこ作成Web」などがあります。これらのサービスはソフトウェアのインストールが不要で、ブラウザ上で文字を入力するだけで認印や角印、日付印などを手軽に作成できます。
また、パソコンにインストールして使用するフリーソフトもあります。「クリックスタンパー」はダウンロードするだけで使える手軽なソフトです。「パパッと電子印鑑Free」は、無料ながら多機能で、より本物に近い印影を作成できると評判です。
これらのツールは数ステップで手軽に印鑑画像を作成できる反面、デザインの自由度が低い、あるいは他人と同じ印影になる可能性がある点には留意が必要です。
手持ちの印鑑をスキャン・撮影して画像化する
現在使用している印鑑の印影をそのまま電子印鑑として使いたい場合は、この方法が適しています。
まず、きれいな白い紙に、かすれやにじみがないようにはっきりと押印します。次に、押印した紙をスキャナで取り込むか、スマートフォンのカメラで真上から影が入らないように撮影し、画像データとしてパソコンに保存します。
取り込んだ画像には紙の白い背景が写り込んでいるため、背景を透明にする「透過処理」が必要です。Canvaなどのデザインツールや、無料の画像編集ソフト、オンラインの背景透過サービスなどを利用して、印影以外の部分を透明にし、PNG形式で保存します。
この方法は使い慣れた印影を再現できるメリットがありますが、セキュリティ上のリスクが最も高い点に注意が必要です。特に、偽造されると深刻な被害に繋がる実印や銀行印の印影をスキャンして画像化することは、絶対に避けてください。
作成した電子印鑑の押し方(PDF・Word・Excel)
電子印鑑を作成したら、次は実際に書類へ押印します。ここでは、ビジネスで最も一般的に使われるPDF、Word、Excelのそれぞれについて、具体的な押印方法を解説します。
PDF(Adobe Acrobat Reader)に押印する最も一般的な方法
請求書のやり取りはPDF形式が主流のため、この押印方法は必ず覚えておきましょう。無料で利用できるAdobe Acrobat Readerには、電子印鑑を押すための便利な機能が備わっています。
スタンプ機能を使う方法
あらかじめ印影画像を登録しておくことで、スタンプのように手軽に押印できます。まず、Adobe Acrobat Readerで任意のPDFファイルを開き、カスタムスタンプを登録します。「ツール」タブから「スタンプ」を選択し、スタンプパネルで「カスタムスタンプ」から「作成」を選びます。
次に、「参照」ボタンを押し、事前に作成した印影の画像ファイルを選択して登録します。取り込める画像はPDF形式のみの場合があるため、PNG画像を一度PDFに変換しておく必要があるかもしれません。
押印する際は、「ツール」から「スタンプ」を開き、スタンプパレットを表示させます。登録したカスタムスタンプを選択し、PDF上の押印したい場所でクリックします。クリック後、印鑑のサイズや位置、角度を自由に調整できます。
入力と署名機能を使う方法
画像を都度読み込んで押印する方法もあります。この方法ではスタンプ登録の手間が不要で、PNG画像を直接利用できます。「ツール」タブから「入力と署名」を選択し、上部に表示されるメニューから「自分で署名」を選び「追加」をクリックします。
次に、タブを選んで作成した印影のPNG画像ファイルを選択し、「適用」をクリックします。マウスポインタが印影に変わるので、押印したい場所でクリックします。その後、サイズや位置を調整して配置してください。
Word・Excel文書に画像を挿入して押印する
PDF化する前の元データに押印したい場合は、画像の挿入機能を使います。WordまたはExcelのファイルを開き、「挿入」タブから「画像」を選び、「このデバイス」を選択します。作成した印影のPNG画像ファイルを選び、「挿入」をクリックしてください。
挿入された画像を選択した状態で、「図の書式設定」タブを開きます。「文字列の折り返し」から「前面」を選択します。「前面」に設定することで、印鑑を文書内の文字や図形の上に自由にドラッグして配置できるようになります。角をドラッグしてサイズを調整し、適切な位置に置いてください。
電子印鑑の法的効力とセキュリティ

無料ツールで作成した電子印鑑は手軽で便利ですが、その裏にはビジネスで利用する上で無視できないリスクが存在します。ここでは、無料の電子印鑑が抱えるセキュリティ上の課題と、法的な効力を持つ電子印鑑との違いを明確に解説します。
無料電子印鑑の2大セキュリティリスク
画像データに過ぎない無料の電子印鑑には、主に二つの大きなリスクが伴います。
偽造・複製のリスク
印影の画像データは、誰でも簡単にコピー&ペーストが可能です。また、無料の作成ツールを使えば、全く同じ見た目の印影を第三者が作成することもできてしまいます。これは、物理的な印鑑が精巧に作られているのに対し、デジタル画像は完璧に複製できてしまうという本質的な違いに起因します。
なりすましのリスク
無料の電子印鑑では、その印鑑が「本当に本人によって押されたのか」を技術的に証明する手段がありません。悪意のある第三者があなたの印影データを不正に入手した場合、あなたになりすまして書類に押印し、不正な取引を行う可能性があります。
これらのリスクから、無料の電子印鑑はあくまで「認印」としての利用に留め、契約書などの重要書類には絶対に使用すべきではありません。
法的効力の要となる「電子署名法」と「電子署名」
では、どのような電子印鑑なら法的な効力を持つのでしょうか。その鍵となるのが「電子署名法」と、それに基づく「電子署名」です。
電子署名法とは、電子文書が法的に有効な証拠として認められるためのルールを定めた法律です。この法律では、「本人による電子署名が行われている」電子文書は、本人が押印した紙の文書と同様に「真正に成立したもの」と推定される、と定められています。真正な成立とは、本人の意思で作成され、改ざんされていないことを指します。
電子署名とは、目に見える印影画像のことではなく、その電子文書に付与される特殊なデジタル情報です。高度な暗号技術を用いて、本人性の証明と非改ざん性の証明という二つの役割を果たします。
本人性の証明は、その電子署名が間違いなく本人によって行われたことを証明するものです。非改ざん性の証明は、電子署名が付与された後、文書の内容が一切変更されていないことを証明します。
これを物理的な印鑑に例えると、電子印鑑の印影画像が「ハンコの見た目」であるのに対し、電子署名は「印鑑登録証明書」に相当します。
実印が法的な効力を持つのは、印鑑そのものではなく、役所に登録された印鑑証明書があって初めて本人性を証明できるからです。同様に、電子文書も電子署名という「証明書」がセットになって初めて、法的な効力が認められるのです。
文書の信頼性をさらに高める「タイムスタンプ」
電子署名に加えて、文書の証拠能力をさらに強固にする技術が「タイムスタンプ」です。タイムスタンプは、第三者機関である時刻認証局(TSA)が、「その時刻に、その内容の文書が確かに存在していたこと」と「その時刻以降、文書が改ざんされていないこと」を客観的に証明する仕組みです。
電子署名が「誰が」を証明するのに対し、タイムスタンプは「いつ」を証明します。この二つが組み合わさることで、電子文書の信頼性は非常に高いものとなります。
重要書類には電子契約サービスの利用を推奨
請求書や見積書であれば無料の電子印鑑でも対応可能ですが、契約書や発注書、合意書といった、より高い法的証拠能力が求められる書類には、有料の「電子契約サービス」の利用が不可欠です。
なぜ有料サービスが必要なのか
無料ツールで作成した電子印鑑と、有料の電子契約サービスが提供する電子署名との違いは決定的です。有料サービスは、前述した電子署名法に準拠した「電子署名」と「タイムスタンプ」を、契約プロセスの中で自動的に文書へ付与してくれます。
これにより、無料ツールでは決して担保できない、高い法的効力を確保できます。裁判においても有効な証拠として扱われるレベルの証拠能力です。また、不正アクセスや改ざん、なりすましを防ぐための高度なセキュリティ対策が施されています。
さらに、契約書の作成支援、承認ワークフロー、送信、相手方の署名状況の追跡、締結後の文書保管まで、契約に関する一連の業務をシステム上で完結できるというメリットもあります。
電子契約サービスの選び方と比較ポイント
自社に最適な電子契約サービスを選ぶ際には、いくつかのポイントを比較検討すると良いでしょう。
まず料金体系です。月額固定料金のサービスか、送信件数ごとに費用が発生する従量課金制のサービスかを確認し、自社の契約頻度に合わせて選びましょう。
次に機能面です。承認ワークフロー機能、テンプレート機能、契約書の管理機能など、自社の業務に必要な機能が備わっているかを確認します。
また、freeeやマネーフォワードなどの会計ソフトや、SalesforceなどのCRM(顧客管理システム)といった外部システムと連携できるかどうかも重要なポイントです。
主要な電子契約サービス
ここでは、代表的な電子契約サービスを3つ取り上げ、それぞれの特徴を解説します。自社に最適なサービスを選ぶ際の参考にしてください。
クラウドサイン
導入実績が豊富で、業界標準ともいえるサービスです。主な機能として、電子署名とタイムスタンプの付与、テンプレート機能、書類のインポート機能、API連携などが挙げられます。
ユーザー数が無制限のプランも用意されており、多くの部署や従業員が利用する大企業や中堅企業に適しています。料金プランは月額10,000円(税抜)からで、送信料は1件あたり200円(税抜)です。
freeeサイン
freee会計をはじめとするfreeeシリーズとの親和性が非常に高いサービスです。特徴的な機能として、法的効力が異なる電子サインと電子署名を使い分けられる点や、Wordのテンプレート機能があります。
送信料が無料の電子サインを活用すれば、送信頻度が高い場合でもコストを抑えやすいため、特にfreee会計ユーザーやコストパフォーマンスを重視する企業におすすめです。料金は月額5,980円(税抜)から利用可能です。
マネーフォワード クラウド契約
マネーフォワードが提供する各種クラウドサービスとの連携が強みのサービスです。紙で締結した契約書もスキャンして電子データと一緒に一元管理できる機能や、高度なワークフロー機能が特徴です。
送信料が0円のプランがあり、コストを抑えたい企業にも適しています。マネーフォワードのサービスをすでに利用している企業や、紙と電子の契約書をまとめて管理したい企業に最適です。料金は月額2,980円(税抜)からとなっています。
なお、料金や機能は変更される可能性があるため、導入を検討する際は各サービスの公式サイトで最新の情報を必ずご確認ください。
電子印鑑を円滑に利用するための注意点

電子印鑑は非常に便利なツールですが、使い方を誤ると取引先とのトラブルに発展する可能性もあります。技術的な側面だけでなく、実務上のコミュニケーションにも注意を払うことが、円滑な導入の鍵となります。
事前に取引先の承諾を得ることが鉄則
電子印鑑を押した請求書や、電子契約サービスを利用した契約書を送付する前には、必ず取引先にその旨を伝え、承諾を得るようにしてください。
企業によっては、社内規定で電子文書の受け取りを認めていなかったり、特定のシステムにしか対応していなかったりする場合があります。また、長年の慣習から紙の書類でのやり取りを希望する取引先も少なくありません。
事前の合意なく一方的に電子書類を送付することは、相手方に不信感を与え、スムーズな取引の妨げになる可能性があります。導入の際は、丁寧な説明と合意形成を心がけましょう。
相手方が電子契約サービス未導入の場合の対応方法
自社が電子契約サービスを導入しても、取引先が未導入であるケースは少なくありません。しかし、その場合でも契約締結は可能です。
現在主流の「立会人型(事業者署名型)」と呼ばれる電子契約サービスの多くは、契約書を受け取る側はサービスへのアカウント登録や費用の負担なしで署名できる仕組みになっています。相手方は、送られてきたメールのリンクをクリックし、画面の指示に従って操作するだけで契約を締結できます。
この点を丁寧に説明し、相手方には手間やコストの負担がないことを伝えることが、理解を得るための重要なポイントです。必要であれば、サービス提供元が用意している相手方向けの操作マニュアルなどを共有し、安心して手続きを進めてもらえるようサポートする姿勢が大切です。
よくある質問
Q1. 電子印鑑に使うフォントやサイズのおすすめはありますか?
フォントは、印鑑らしさと読みやすさを両立できる「楷書体」「古印体」「行書体」などが一般的におすすめです。WordやExcelに標準で搭載されている「HG正楷書体-PRO」なども適しています。
サイズは、実際の印鑑の大きさを参考にすると自然な仕上がりになります。目安として、認印なら直径10ミリから12ミリ、法人用の角印なら一辺が21ミリから24ミリ程度です。これを一般的な印刷解像度350dpiのピクセル数に換算すると、12ミリは約165ピクセル、21ミリは約289ピクセルとなります。
Q2. 請求書に押すのは角印と個人の認印のどちらですか?
法人が発行する請求書には、会社の正式な書類であることを示すために「角印(社印)」を押すのが一般的です。個人事業主やフリーランスの場合は、屋号の角印を作成して使用するか、個人の認印を使用します。
Q3. 無料で作った電子印鑑を契約書に使ってもよいですか?
推奨しません。無料で作成した電子印鑑は、本人であることの証明ができず法的効力が弱いため、契約書のような重要な書類には不向きです。万が一トラブルが発生した際に、契約の有効性を証明することが困難になるリスクがあります。契約書には、必ず電子署名が付与される有料の電子契約サービスを利用してください。
Q4. 電子請求書は電子帳簿保存法と関係がありますか?
はい、非常に関係があります。メールなどで受け取った電子請求書は「電子取引」に該当し、2024年1月から施行された改正電子帳簿保存法に基づき、電子データのまま定められた要件を満たして保存することがすべての事業者に義務付けられています。電子印鑑の導入と合わせて、電子帳簿保存法への対応も必ず確認するようにしてください。
まとめ
本記事では、請求書に用いる電子印鑑の作成方法から、その背景にある法的効力やセキュリティ、さらには実務上の注意点までを網羅的に解説しました。最後に、重要なポイントを再確認します。
請求書への電子印鑑は法的に必須ではありませんが、業務効率化、コスト削減、テレワーク対応の観点から導入するメリットは非常に大きいです。
電子印鑑には、画像データのみの「認印タイプ」と、電子署名が付与された「実印タイプ」の2種類があります。この違いを理解し、書類の重要性に応じて厳密に使い分けることが最も重要です。
請求書や見積書など日常的な書類には、Wordや無料ツールで作成した「認印タイプ」の電子印鑑でも対応可能ですが、偽造やなりすましといったセキュリティリスクを理解した上で、慎重に運用する必要があります。
契約書など、高い法的証拠能力が求められる書類には、必ず電子署名とタイムスタンプが付与される有料の電子契約サービスを利用してください。電子印鑑や電子契約の導入を成功させるためには、ツールの準備だけでなく、取引先への事前の説明と合意形成というコミュニケーションが不可欠です。
この記事を参考に、自社の業務内容や目的に合った最適な方法で電子印鑑を導入し、請求業務のデジタルトランスフォーメーションを成功させましょう。
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