近年、請求書等の電子化が加速しており、紙の請求書との扱いの違いに混乱したり、保管のしかたに迷ったりと、お困りの状況にある方も多いでしょう。ここでは、請求書原本の保存や、電子化された請求書を扱う上での注意点、法律で定められた要件についてご紹介します。
目次
請求書原本の保存義務
電子帳簿保存法では、紙で受け取った請求書は特定の要件を満たした上で電子データとして保存することが可能となりました。もちろん、電子データにせずにそのまま紙の状態のまま原本を保存することも問題ありません。
請求書は、企業間での取引を証明するための、証憑書類にあたります。この証憑書類は、一定期間保存することが義務付けられているため、確定申告が済んだあとも破棄することはできません。
請求書は、コピーではなく、必ず原本を保管することも重要なルールです。偽造や不正会計につながらないようにする目的もあるため、原本は大切に扱いましょう。
請求書原本の電子化にかかわる法律
請求書が電子データで届くことや、電子データで保存することにまだ慣れておらず、戸惑う方もいるでしょう。請求書原本の電子化については、以下の法律でルールが定められています。
PDFの請求は法的に許可されている
請求書などの書類を電子データで保存できるようになったのは、1998年に施行された電子帳簿保存法が大きく関係しています。この法律は、紙の文書の管理負担を減らすなどの目的で施行されたものですが、当初は紙で渡された請求書は紙のまま保管しなければならないというルールがありました。
のちに、2005年に制定されたe-文書法に伴い、電子帳簿保存法も改定され、特定の要件を満たせば紙で受け取った請求書等も電子データとして保存できるようになっています。
このように、今はPDFで請求書を作成し取引相手に送付することが法的に許可されており、受け取る側も法律に基づいて保存する必要があります。
請求書原本の保存方法
請求書原本の保存は、紙で受領した場合と電子データで受領した場合とで適した方法が異なります。それぞれ詳しく確認しましょう。
紙で受領した場合
紙で受け取った請求書の保存は、そのまま紙の状態で保管する方法と、スキャンして電子データで保管する方法の2通りがあります。
紙のまま保管する場合は、受け取った請求書を確認し会計処理を終えた後、ファイリングをして保管庫等にしまっておくのが一般的です。紛失してしまわないように十分に注意しましょう。
紙の請求書を電子データで保管する場合は、以下の手順で行います。
・請求書原本をスキャナで読み込むかスマートフォンで撮影する
・画像のデータを社内システムにアップロードする
・データを削除した際の記録が残らないシステムであれば、2ヶ月以内にタイムスタンプを付与する
・セキュリティ対策を行いながら保管する
紙の請求書をスキャンして保管する際は、法律に基づいた要件を満たさなければなりません。以下の要件も守れるように注意しましょう。
スキャナ保存の要件:真実性の確保
スキャナ保存における真実性の確保とは、簡単に言えば改ざんや削除が行われないように対策することを指します。
・パソコン画面やプリンタなどですぐに確認、出力できる状態にしておく
・電子化システムの操作説明書等を備えておく
・電子化システムに検索機能を備えておく
・請求書と帳簿の関係が説明できるようにしておく
スキャナ保存の要件:可視性の確保
さらに、税務調査が来たときにすぐに検索でき、明瞭な状態で確認できるように、以下の要件も満たしておく必要があります。
・受け取った請求書をすぐにスキャナ保存する
・タイムスタンプを付与する
・データ削除や改変時に記録が残るシステムを採用する
・スキャナ保存した担当者が分かるようにしておく
・200dpi以上の解像度、約1677万色以上での読み取りに対応させ、解像度や階調、大きさ等の情報も保存しておく
こうした要件を守った上でデータ化した請求書は、次にご紹介する電子データを保存する際の要件も満たす必要があります。
電子データで受領した場合
電子データで送られた請求書原本の保管は、以下の要件を満たす方法で行わなければなりません。
電子データの請求書の保管要件:真実性の確保
電子データを保管にあたり、真実性の確保のために次のうちいずれかを実施する必要があります。
・タイムスタンプが付与された書類データのやりとりを行う
・受取後は速やかにタイムスタンプを付与する
・データ削除や改変時に記録が残るシステムを採用する
・削除や訂正の防止に関する事務処理規定を備える
電子データ請求書の保管要件:可視性の確保
可視性の確保に関する要件は、次のとおりです。
・パソコンやプリンタなどですぐに確認できるようにしておく
・日付や金額などから保存データの検索ができる機能を備えておく
・電子化システムの操作説明書等を備えておく
電子化した領収書の原本は破棄して良い?
紙で受け取った請求書を紙のまま保存する場合は、一定期間の保管が義務付けられており、期間内に破棄することはできません。しかし、電子帳簿保存法に定められる要件を守り適切な方法でデータ保存すれば、紙の請求書は破棄しても問題ないとされています。
電子化した原本を送る際の5つの注意点
請求書を受け取る側ではなく、取引相手に電子化したデータを送る場合、どのような注意点があるのかも抑えておきましょう。
①電子化の可否を確認しておく
取引先によっては、電子化に必要な設備・システムが整っておらず、紙の請求書を希望されることもあります。あらかじめ電子化の可否について確認し、 取引先の事情に応じた方法で請求書を渡せるようにしておきましょう。
②セキュリティ性を確認
請求書をメールで送信する場合、送信先が正しいかどうか十分に確認する必要があります。また、マルウェアへの感染などセキュリティの問題も起こり得るため、最近はセキュリティ対策がしっかり行われているファイル転送サービスや請求書発行システムの利用などが多く選ばれています。情報漏洩を防ぎ取引先との信頼関係を維持するためにも、セキュリティの高い方法がとれる手段を検討しましょう。
③請求書だとわかるように
請求書を送信するメールには、件名に「請求書添付」などと記載して、相手側がひとめで分かるように配慮することも大切です。日々、たくさんのメールが届くような会社の場合、中身が分からなければ気づかないケースも考えられます。
④改ざんを防ぐフォーマットで
WordやExcelで作成された請求書データは、後に日付や数字を書き換えるなどの編集がしやすく、悪意のある人の手に渡れば改ざんされてしまう恐れがあります。PDFなど、改ざんしにくいフォーマットで送信されることをおすすめします。
⑤押印の必要性を確認
長きにわたり、紙の請求書には会社の印鑑が押されるのが習慣化していますが、これは必須ではありません。請求書への押印は法的な定めもなく、本来は紙の請求書に無くても問題になりません。電子化した請求書にも押印の必要はありませんが、取引先によっては請求書への押印をルール化している場合もあるため、事前に確認しましょう。どうしても必要な場合は、電子印鑑の利用や印鑑画像の添付といった手段で対処することが可能です。
請求書原本の保存を電子化するメリット4つ
慣れないうちは大変かもしれませんが、請求書原本の保存を電子化するメリットは多いです。詳しく解説します。
①リードタイム減少
紙の請求書は、発行から相手側の受け取りまでに時間がかかり、直接手渡す場合はそのために社員の時間をさく必要もありました。しかし、請求書を電子化し送信できるようになると、請求書そのものの作成の手間が少なくなり、短時間で相手の手元に届きます。郵送代や人的コストが削減でき、お互いに便利で請求書業務がスムーズに行える点が大きなメリットと言えるでしょう。
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②事務作業の負担軽減
請求書を紙で作成する場合、封筒に相手の住所や名称等の宛名を書き、挨拶文を入れ、封入して郵便局へ持っていくか社員に持参させる等の手間が生じます。紙の請求書を受け取った場合は、中身を確認して入力作業を行いファイリングするなど、これもまた手間が多くかかります。請求書のやりとりが電子化できると、紙の請求書で行っていた手順を大幅に省けます。
③テレワークに対応可能
紙の請求書の作成や保管は、会社の事務所などで行う必要があります。しかし、請求書が電子化されると、インターネット環境と社内システムへのアクセス環境さえ整っていれば、その場を動かずとも処理ができ、テレワークでも問題なく対応可能です。近年は、働き方も多様化し、リモートワークを行う人も増えており、こうした時代に合った職場環境が実現しやすくなるでしょう。
④セキュリティ性の向上
紙の請求書は、紛失や改ざんなどへの懸念もあり、アナログな方法でできる限りの対処を行っている会社が多かったでしょう。請求書の電子化でセキュリティのリスクがゼロになるとは限りませんが、きちんと保管できていれば紛失のリスクは少なくなります。また、システム上に記録が残る機能があることで、改ざん防止にもつながります。
請求書原本の保存を電子化するデメリットはある?
請求書原本の電子化には、メリットがある一方でデメリットも少なからずあります。例えば、以下のような問題が発生するかもしれません。
・取引先によっては電子化に対応できない
・電子データの取り扱いが適正に行えるように業務フローを見直す必要がある
・電子化のための体制作りには初期費用がかかる
・システムの維持管理や運用にはコストがかかる
昨今は請求書等の電子化を進める企業が多いですが、導入までには準備が不可欠です。また、自社の体制が整っていたとしても取引相手の状況によっては電子の請求書と紙の請求書が混在する可能性もあるでしょう。
請求書原本の電子化のポイント
これから請求書の電子化を目指す場合、以下のポイントを踏まえて準備されることをおすすめします。
社内規定の整備
電子帳簿保存法に定められた要件を満たせるように、事務処理のしかたや社内規定の見直しを行いましょう。従来の紙の請求書発行や受け取りで行ってきた業務フローとは、異なる点がたくさん生じます。電子帳簿保存法についてよく理解した上で行うことが大切です。
トラブルの対応方法決める
導入したシステムのトラブルを想定して、システムとは別にバックアップを取っておくなど、できる限りのリスク管理を行いましょう。サーバー障害、セキュリティ障害、停電など、突発的なトラブルがおきた時にどのように復旧するのか、その手順をマニュアル化しておくと安心です。
自動化ツールを導入する
請求書の電子化が行えるシステムの中には、請求書の発行や送付、受け取った請求書のデータ化などを自動化するツールもあり、とても便利です。事務・経理の業務を大幅に削減できる自動化ツールの導入は、コスト削減にも大きく貢献できるでしょう。
経理業務の効率化なら「INVOY」
「INVOY」は、請求書の発行がスマホからでも簡単に行える、クラウド請求書プラットフォームです。取引先から受け取る請求書は簡単にデータ化でき、支払いもスムーズ。請求書を作成した後は、その場ですぐにメール送信も可能です。請求書以外の帳票作成にも便利で、電子帳簿保存法にも対応しているため利用するだけで完全対応可能です。
無料プランで対応できる範囲が広く、予算控えめに始めたい方にも使いやすくなっています。まさに、電子帳簿保存法に対応できる体制を整えたい方や、請求書の電子化に移行したい方にぴったりなサービスと言えるでしょう。
まとめ
紙の請求書を受け取った場合は、従来の方法で処理し保管するか、要件を満たした状態で電子化して保管することとなります。請求書には一定期間の保存義務があり、いずれにしても紛失しないように適切に管理する必要があります。請求書を電子化する場合は、法律で定められた要件を満たさなければならず、慣れるまでは大変かもしれませんが、メリットも多いです。請求書の管理や発行業務を効率化し、時代に合った方法で取引先とのやりとりができるように、電子化を検討してみませんか。
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