
書類電子化(ペーパーレス・Web化)の流れは年々加速しており、請求書においても実施されております。
今回は、請求書の電子化するメリットや関連する法律について解説します。
1.請求書は電子化して問題ないのか?
請求書の電子化にあたり、法律やそれにもとづく要件を理解しておく必要があります。
以下の法律や要件を理解していただき、請求書の電子化に取り組みましょう。
1.1電子帳簿保存法について
電子帳簿保存法は1998年7月に制定された法律であり、国税関係帳簿書類の全部または一部を電子データでの保存を認めた法律です。この法律が制定される前は、紙の請求書で保存することが義務付けられていました。
しかしながら、書類は毎年のように保管していくとかさばってしまい管理が大変でした。特に国税関係帳簿書類は多岐にわたるために、わかりやすく管理するのも労力がかかるものです。
そのような課題から国税関係の書類について、電子化での管理が進められてきたということになります。
1998年の7月に法律が制定されてからは、何度か改正されて請求書などの書類が電子保存しやすい環境となっています。
法律の制定当初は電子化の対象が3万円までなど要件がありましたが、2015年以降はその上限が撤廃されて請求書の金額を問わず電子保存が可能となっています。
原本の保存義務も当初は7年間の保存が決められているものの、2016年の改正からその義務も無くなりました。
ただし、請求書を電子化して電子保存するには2つの要件を満たすことが必要です。
- 請求書の電子保存を始める日の3カ月前までに所轄税務署長に申請する
- 真実性と可視性の確保
1つ目の要件である、申請については「3カ月前」という時期が決まっていますので注意が必要です。
例えば、4月1日から請求書の電子保存を始めるときは、前年の12月31日までに申請する必要があります。その後、税務署長の承認を受けると本格的な請求書の電子保存が可能です。
2つ目に、真実性と可視性の要件があります。
真実性:請求書は改ざんされておらず、本物であると証明できること
可視性:誰もが視認できる状態を確保すること
以上は概要ですので、実際に申請するときには細かな要件項目を確認するようにしてください。
それから、請求書の電子化、電子保存を導入する流れは次のとおりです。
- 導入の検討(電子保存によりどのような課題が解決・軽減されるか確認)
- 業務の整理(現状と導入後の業務フローを整理して、導入効果の整理)
- 請求書の電子化をするためのサービスを選定(必ず電子帳簿保存法に対応したシステムを選ぶ)
- 所轄税務署への申請
以上の流れを念頭に置いて、請求書の電子化に取り組んでみましょう。
1.2 e-文書法が施行される
e-文書法も併せて理解しましょう。
この法律は2005年に制定され、商法や税法で保管が義務付けられた書類の電子保存が認められています。
e-文書法の範囲としては、医療関係、人事・労務関係、総務・庶務関係、そして国税関係が含まれています。しかし、請求書などの国税関係の書類は、電子帳簿保存法の管轄となるためe-文書法は適用されません。
また、e-文書法においても書類を電子化する際の要件があります。
- 見読性:データが見やすいかどうか。PCなどのディスプレイで確認できることが必要。
- 完全性:改ざんされた書類でないこと。訂正があればその事実が確認できるようにする。
- 機密性:認められた人しかデータを見ることができないようにする。
- 検索性:データをすぐにみつけられるようにする。(検索する能力)
これらの要件をもとにさまざまな書類を電子化していくことになります。なお、繰り返しですが、請求書はe-文書法の適用ではありません。
(参照)「厚生労働省の所管する法令の規定に基づく民間事業者等が行う書面の保存等における情報通信の技術の利用に関する省令」の概要
1.3スキャナ保存要件とは
電子帳簿保存法では、「スキャナ保存要件」を設けています。紙ベースの請求書をスキャンして保存することも電子化になるわけですが、法律の施行から「原稿台と一体型のスキャナのみ」が認められていました。
つまり、請求書をスマートフォンやデジタルカメラで撮影した電子保存は認められなかったわけです。しかし2016年の改正により、スマートフォンやデジタルカメラもスキャンできる機器と認められました。
これは請求書をスマートフォンで撮影、そのあとシステムに送信して保存というような管理も可能ということです。
2.請求書を電子化するメリット
請求書を電子化することで、4つのメリットがあります。
2.1単純作業をなくす
紙ベースの請求書の場合、毎月決まった時期に作成して郵送し、入金の確認などルーティン化していることが多いです。ルーティン業務となれば、普段から慣れた作業ですので迅速に行えるかもしれません。しかしながら、人による作業がほとんどの業務は人為的なミスの可能性をゼロにするのは困難です。
請求書の作成、封入、郵送、入金確認、ファイリングというのが、紙ベースの請求業務です。これらは単純作業でありますが、いずれも人為的なミスの可能性が潜んでいます。
入力ミス、誤郵送、入金確認漏れ、未収確認漏れなど、さまざまなミスが考えられます。単純作業にとはいえミスはトラブルのもとになりますので、極力防ぎたいところです。そこで、請求書の電子化を導入すると、顧客管理機能などを使ってミスを防ぐことが可能です。
利用するサービスによっては毎月決まった日に請求書が自動作成される場合もあり、作成忘れや未送信を防げます。従来の請求業務のほとんどの工程を自動化できるため、単純作業が無くなります。それにより、ほかの業務に注力できる時間を確保できるでしょう。
2.2即日送付/受取が可能
システムやサービスを活用して、請求書を電子化すると請求書の送信も行うことが可能です。メールですぐに送信できるため、取引先がすぐに請求書を受け取って内容の確認ができます。
紙の請求書では郵送となるため、早くても翌日の到着になります。担当者が外していれば、請求書の確認にも時間がかかることもあります。その点、電子化した請求書は即日送付・受取ができるので効率的です。
2.3コスト削減できる
紙の請求書ではさまざまな費用がかかります。
・請求書の用紙代
・封筒代(専用の封筒作成を外注すれば、その外注費)
・切手代
・インク代(プリンターや印刷機) など
以上のコストは1通あたり数十円かもしれません。しかし、取引先が膨大になり、なおかつ毎月のように郵送するとなればコストも膨れ上がります。年間で考えると数十万円になることも珍しくありません。
一方、電子化した請求書は上記のコストが不要ですが、システムやサービスの利用料金が必要になるものの、年間で考えるとコスト削減になる場合が多いのではないでしょうか。
2.4場所を問わず作業できる
請求書の電子化のサービスで、クラウド型を利用すると場所を問わず作業ができます。ソフトウェアの場合、それを入れているパソコンでしか作業できません。
一方、クラウドはインターネット上のサービスとなるため、ログインIDとパスワードがあればサービスの利用が可能です。サービスによりスマートフォンで編集して、そのままメールで送信できる場合もあります。
クラウド型であれば、部署内での情報やデータの共有もしやすく、訂正や変更があってもすぐに対応できます。また、営業部門で作成した請求書を経理部門に見てもらうなど、部署の垣根を超えたデータの共有は非常に便利です。
紙の請求書となると、事務所のフロアを移動して直接持っていくことになりますので、クラウド型のサービスがいかに利便性の高いツールであるかがわかります。
ただし、クラウド型サービスはインターネット環境が必要になります。
3.請求書を電子化する際の注意点
請求書を電子化することで、様々なメリットがありますが、導入や運用には注意が必要です。
3.1取引先が電子化していない
請求書を電子化しても、取引先が電子化していないとやり取りができません。
取引先が普段から紙で請求業務を行っており、Webでのやり取りに慣れていないことも考えられます。
業務フローの変更は現場の混乱を招くことも考えられ、かえって業務効率が悪化する可能性もあります。取引先に強制することもできないため、取引先が請求書の電子化をしていないと紙の請求書でやり取りすることになり、業務効率化につながらないこともあるわけです。
3.2社内ルールを決める
自社内外の状況を把握し、請求書の電子化が決まったら社内ルールを決めることも大切です。請求書の電子化をすると従来の業務フローが大きく変わり、現場が混乱しないように、あらかじめ請求業務の社内ルールも考えておきましょう。
請求書は税務に関することですので、下記3つのポイントを意識して、顧問税理士も交えて社内の管理者や経営者で社内ルールを作成してみましょう。
・誰が、いつまでに、何をするか明確にする
・やらされ感を持たれないようにする
・十分なトレーニングをする
既に実施している企業を参考にしたり、実施しながら社内ルールを整えたりしてみても良いかもしれません。
4.請求書を電子化するには?
4.1クラウド請求管理サービス「INVOY」
INVOYを使っていただくことで、請求書の電子化を実現することができます。
INVOYで作成した請求書は、メール機能で取引先に送信可能で、取引先情報の管理をすることもできます。
作成を簡略化するだけでなく、請求業務全般を効率化することができる点が特に魅力的といえます。
サービス利用料が無料であることから、急な導入でもリスクなくご利用いただくことができます。
この機会に是非ご利用をご検討してみてはいかがでしょうか。
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